その二十七 罠の達人
「くそぅ!まじで罠多すぎるだろ!」
罠が森中に仕掛けられてる為、魔物と会うことはほとんどないがそれでも罠が邪魔で全然先に進めない。
「まずいですね。ここで足止めを食らってる場合じゃありませんよ」
「そうね、まだこの先にも色々あるって言うのに、こんなところでつまずいてたら時間が無くなるわ」
木や地面、草や小石にも罠が仕掛けられているだけでなく、見えにくい透明な糸が張られたりと罠の種類が多すぎる。
これだけの罠を森中に仕掛けていると言うことは、かなりの知能を持った魔物が潜んでいるのか?
「厄介な場所に来ちまったな。取り敢えず、最短ルートで進むことを考えよう」
「それは分かってるんですけど、やはり罠が仕掛けられては満足に進むことも出来ません。なので、かつさんが先に行ってくれませんか?」
「え?どういう事だ?」
「かつさんの足なら罠を踏んでも発動する前に逃げられるじゃないですか。なので、僕達が進む道の罠をあらかじめ発動させて、全部の罠がなくなったことを確認できたら進むってのはどうでしょう」
「確かにそれ良いアイディアね。かつ、お願いできる?」
「まあ、行けると思う。確かにそれが確実な方法かもな。よし、それじゃあ早速やるか」
確か、この道を真っ直ぐ行ったら最短ルートだよな。
俺は行く道をしっかり確認して、そして走り出した。
「すごいわね。もう、あんな遠くに行っちゃったわよ」
「罠もどんどん発動していますね。これならこの森を抜け出すのも簡単ですね」
そして、俺は数秒で森を抜け出すことが出来た。
「よし、これで進む道の罠は全部発動したかな?それじゃあ、さっさと戻るか」
俺がミノル達の元に戻ろうとした時、何処からか声が聞こえた。
「おい、お前!それは反則だろ!」
その声が聞こえた直後、小さな魔物が沢山出てきた。
「な、何だお前ら!?」
小型の魔物か?見た目は手足が長くて鋭い牙が生えている。
魔物みたいだけど、強いのか?
「俺達の作った罠をあんな方法で解決するなよ!」
「そうだ、そうだ!せめて、ちゃんと引っ掛かってくれよ!」
「俺達は罠の仕掛けを誇りを持ってやってるんだ!」
「罠職人に対しての最大の侮辱行為だぞ!」
何かすごい怒ってるな。
話の内容的にこいつらが罠を仕掛けてたのか。
数はパッと見て約30体位か?
相手の強さによるが、もしそこまで強くないならごり押しで突破できるな。
「おい、聞いてるのか!」
「いや、そんなこと言われても俺には時間がないんだよ。すまないけど、罠にかかってる場合じゃないんだ。じゃあな!」
「ちょっと待て!逃がすと思うか!」
そう言って、そいつらは俺の前に立ちふさがる。
「邪魔するのか?」
「罠にちゃんとかかれ!」
「すまないけど、忙しいから無理だって言ってるだろ。それでも邪魔するなら!」
俺はその瞬間、一匹の魔物に近づき殴り飛ばした。
「力付くで退いてもらうぞ!」
「ふぐっ!」
殴られた魔物は軽々と吹っ飛んでいってしまった。
いける、この魔物大して強くないな。
これなら、魔力を温存できる。
「なっ!ぼ、暴力反対だぞ!」
「じゃあ、前退けよ。邪魔するなら戦うしかないだろ」
「お、お前!調子に乗るなよ!俺達が弱いと思ってんのか」
「いやぁ、まあそりゃあ」
殴って倒せるんだったら、そう言うことなってしまうな。
そもそも攻撃手段が罠を張るなんだから、力じゃ敵わないことを言ってるようなもんだし。
「後悔することになるぞ!俺達の力を見せてやる!」
「何するつもりだ?罠を仕掛けることしか出来ないだろ?」
「それだけなわけないだろ!ポチっとな!」
すると、謎のボタンを取り出してそれを押した。
何だ、あのボタンは。
その瞬間、地面が裂けて中から謎の巨大な物体が出てくる。
「こ、これって!?」
「はっはっは!驚いたか!これこそ、俺達が作った最高傑作!グレートジャイアントトラップだ!」
「ていうか、ロボットじゃねえか!」
この世界にそんな兵器みたいなものが存在するのか!?
ていうか、材料とか何処で手に入れたんだよ!
待てよ、もしかしてあのベルルが関係してるのか?
「よっしゃあ、皆乗り込め!」
そう言って魔物達は一斉にその兵器に乗り込む。
「俺達の恐ろしさを思い知らせてやるよ!」
すると、ロボットが本当に動き出した。
そして、鋼鉄の拳が俺に向かって振り下ろされる。
「ま、マジかよ!」
俺は何とか拳を避ける。
その衝撃で地面にヒビが入る。
攻撃力は中々高い、さすがに殴りで破壊できるものじゃないな。
「逃がすか!網ショット!」
すると、鋼鉄の網がこちらに放たれる。
燃やしても切れない鋼鉄の網、捕まったらかなりまずい。
俺はさらに後ろに飛んでロボットから距離を取る。
すると、何かを踏んだ感触が足裏から感じる。
しまった!
そう思った瞬間、俺の足はワイヤーで固定された。
「くそっ!足に絡まって抜けない!」
「かかった!罠をバカにするからだ!潰されて死んじゃえ!鉄球プレス!」
ロボットの体から巨大な鉄球が出現して、それを振り回し始める。
あんなもん喰らったら一溜りもない。
「このっ駄目だ取れない!」
ワイヤーが複雑に絡んでほどくことが出来ない。
すると、真上から鉄球が降り注ぐ。
やるしかねえ!
「っインパクト!」
「なっ!?」
俺はインパクトで鉄球を吹き飛ばした。
そのせいでロボットはバランスを崩して、後ろに倒れる。
そして、振り回していた鉄球が1回転してロボットの顔面にぶつかる。
「ふぎゃっ!?」
「よし、今の内に………ほどけた!」
俺は何とか足に絡まったワイヤーをほどき、脱出する。
「こ、この野郎………よくもやりやがった」
「いや、そりゃあやるだろ!お前と戦ってる暇なんてないんだよ!速攻で終わらせるぞ!」
出し惜しみなんてしてたら余計に時間を食ってしまう。
ここはすぐにぶっ飛ばす。
俺は近距離でインパクトを放つために、まだ倒れているロボットに近づく。
「そんなことさせるか!ジェットパンチ!」
「おわっ!?そんなことも出来るのかよ!」
ロボットの腕が伸び、俺は何とか右に避ける。
こいつらの技術力は何処から学んだんだ?
「まだまだディアブルソード!」
そう言っていつの間にか立ち上がっていた、ロボットの背中から剣を取り出した。
「何でもありかよ!ワープ!」
俺はワープをしてロボットの後ろに瞬間移動する。
これ以上長引かせるわけにはいかない、まだ何か色々な仕掛けがあるだろうし、出る前に倒す。
「インパ―――」
「させるか!究極接着砲!」
「なっ!」
その瞬間、背中から透明な液体が飛んできて体にはっつく。
「な、何だこれ!くっついて離れない!」
謎の液体が体に引っ付いて身動きが取れなくなる。
「はっはっ!これで終わりだ!デストロイハンマー!」
まずい!死ぬ―――――
「――――バガン!!」
当たる直前、空から巨大な岩が落ちてきた。
そして、その岩がロボットに激突した。
「な、何が起きたんだ!」
「っ!?あ、あれって………あの時のゴーレム!?」
俺がインパクトで吹き飛ばしたゴーレムが落ちてきたってことはずっと空中に飛んでたのか。
「何かよくわかんないけど、今の内にこのねばねばを取らないと」
にしても、これどうやって取るんだ。
取り敢えず、熱で溶けるかやってみるか。
俺はファイヤでくっついてる物を燃やした。
すると、粘着力が落ちて体から剥がれていく。
「はあ、ようやく取れた」
「くそっ!おい、さっさと降りろ!」
ゴーレムがロボットの上に乗ってくれているお陰で身動きが取れないで居る。
「ラッキー!今の内にさっさとこの場から逃げよう」
「ちょっちょっと待て!!俺達との勝負を受けろ!」
「損傷率80パーセント以上を確認。自爆モードに移行します」
「え?今どっから声出た?」
あのロボットが言ったのか?
いや、声はあいつからじゃなくてあのゴーレムから聞こえたような。
「まずい!作った変形ロボットの自爆プログラムが発動した!全員逃げるぞ!」
その瞬間、中に入ってた30体程の魔物が逃げていく。
「お、おいちょっと待て!あのゴーレムもロボットなのか!?」
「そうだよ!あれは俺達が作った岩に変形するロボットだよ!」
「ま、マジかよ!」
すると、カウントダウンが始まった。
「10………9………8………」
「くそっ!取り敢えず、ミノル達の所に行かないと!」
「7………6………5………」
俺は急いですぐにミノル達の元に戻っていく。
俺がミノル達を見つけると、ミノル達は待ちわびていたかの様にゆっくりと立ち上がる。
「あっお帰りかつ。遅かったわね」
「そんなに遠かったんですか?」
「いや、そこまでは遠くなかったんだけどちょっと色々あってな。それよりやばいんだよ!」
「え?何がやばいの?」
「4………3………」
「規模はどれくらいかは分からないけど、念のためここから離れた方がいい!」
「規模ってどういう事ですか?何かが来るんですか?」
「2………1………」
「爆発するんだよ!」
「0―――――――」
爆発音が響き渡った瞬間、爆風と共に炎が森全体に広がっていく。
その音を聞いた瞬間、俺は2人を引っ張ってその場から全力で逃げ出す。
この爆発は洒落にならない!
普通に死んでしまう!
ていうか、自爆の威力おかしすぎだろ!
俺はただがむしゃらに走り続けた。
その結果、俺達は何とか爆発に巻き込まれずに逃げ切れたが、あの自爆のせいで森の半分が消し飛んだ。
ミノルは無残な姿となった森を呆然と眺めながらつぶやく。
「ね、ねえ今の一体なんだったの?」
「尋常ではない爆発でしたけど、何かと戦ってたんですか?」
「はあ、はあ、ふうっ罠を張ってた魔物と戦ってたんだよ」
「え?罠を仕掛けてた魔物を見つけたの?」
「ああ、そしたらさっき吹っ飛ばしたゴーレムが上から落ちてきて、そしたらゴーレムが爆発したんだよ」
「ゴーレムって、あの爆発はあのゴーレムによる物だったんですか。にしても、威力が高すぎますね」
そう言って、リドルは焼け野原になってしまった森を見る。
「まあでも、お陰で罠も全て吹き飛んだことですし、生きているので良しとしましょうか」
もしかしたら、ゴーレムの爆発によって下敷きになっていたロボットも爆発したからあんなすごい威力になったのかもしれない。
取り敢えず、道が開けたからリドルの言う通り良しとするか。
「取り敢えず、先に進みましょうか。死にそうになることなら何回も経験してるし、これくらいの事で足を止めてる場合じゃないからね」
そして、俺達は毒の沼を目指すのだった。




