その二十四 決死の一撃
デブドラゴンの魔物は怒り狂って周りを無差別に攻撃し始める。
「少しは落ち着けって!俺が死んじゃうから!」
俺はリドルを担ぎながら、何とか攻撃を避けている。
ウィンドやソイルで動きを鈍らせ軌道をずらしているが、決定打にはなりにくい。
「やっぱりインパクトを撃つしかない。けど………」
俺は紫色に腫れている右腕を見る。
インパクトを撃つ度に腫れが酷くなってくる。
魔力も足りなくなってきたし、無駄撃ちは絶対に出来ない。
撃つとしたら絶対に倒せると思った瞬間だけだ。
「て言ってもそんな状況になる気がしないんだけど!」
「パギャッ!」
「おわっ!?いい加減怒るのやめろよ!」
あの強固な壁も何度も魔物に攻撃を受けた為ヒビが入ってきている。
「どうせやるなら、ガラスの方を攻撃してくれよ!」
ガラスは壁よりも強い素材で出来ているのか、傷1つ付いてはいない。
ミノル方は白い霧のようなものが出ているのか、あっちの状況が分からない。
ただミノルの方も大変なんだと言うのが分かる。
「このままじゃ、全滅だ。どうすれば………」
俺がこの後の作戦を考えていると、魔物が息を吸い込み、炎を吐く体勢に入る。
すぐにその場から逃げようとした瞬間、魔物は炎を吐くわけでもなく、ただの息を吐いた。
「っ!?がっ!」
突然の強風により俺は体勢を崩し、壁に激突する。
その隙をついて、また魔物は炎を吐く体勢に入り、間髪いれずに炎をこちらに向かって吐く。
「ちょっ!まっ―――――――」
体勢が悪く、リドルを投げられなかった俺はワープを使うことが出来なかった。
強烈な炎が部屋中に広まる。
「はあ、はあ、ぐふっ……あああっ!いてー!!」
インパクトの威力が弱く、完全に炎を防ぎきれず炎を体に受けてしまう。
それにより、全身やけど状態になり更に腕が腫れる。
「くそっ!くそくそくそっ!死ぬ!死んじまう!何で、こんなところで!!」
俺は身体中に痛みが走り、それをごまかすために大声出す。
だが、それでも痛みは晴れず死んでしまうと言う現実が押し掛けてくる。
すると、魔物が再び俺に止めを指すために炎を溜める。
次の攻撃は絶対に防げない、恐らく死ぬ。
右腕の感覚もなくなってきた、左腕はまだ平気だけど利き手じゃない方だと正確に魔法が撃てない。
でも、やるしかない。
「生きるか、死ぬか……決めるか」
「スゥゥ――――パギャ――――」
「ワープ!」
俺は魔物が、炎を出す瞬間に魔物の頭に移動する。
そして、左腕を頭に当てる。
「インパクト!!」
「バギュッ!?」
その瞬間、炎が暴発して口の中で爆発する。
魔物は突然の事で驚き思わず口を開く。
俺はその瞬間、魔物の口の中に侵入して右手を突き出す。
「んぐっ!?んぐんぐっ!」
「これで終わりだ!いんぱ――いっ!?」
インパクトを放とうとした瞬間、右腕に痛みが走る。
俺は腕を固定して、痛みを我慢しながら再びインパクトを唱えた。
「インパクト!!」
「バギュッ――――――」
魔物の体の中がインパクトの襲撃に耐えられずに、破裂する。
その瞬間、血が飛び散り内臓も壁やガラスにはっつく。
「はあ、はあ………んあっはあ」
俺はそのまま力なく倒れる。
腕の感覚はなく、目もかすれてよく見えない。
「くそ……せっかく倒せたのに………」
薄れ行く意識の中で、後悔と無念を感じながら目を閉じた。




