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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十五章 ようこそ地獄へ
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その二十三 分かれた運命

「くそっ!死ぬなよ!リドル!」


リドルはあれから目を覚ましていない。

本当に限界が来てしまったのかもしれない。

命の終わりは案外すぐ近くにあるかもしれない。


「かつ!この先に森があるわ!そうすれば雷に当たらなくて済むかもしれない!」


崖を越えるとそこはさらに過酷な場所となっていた。

俺たちを迎えたのは鳴り止まぬ雷の洗礼だった。

それは岩を砕き、生物を寄せ付けない場所、ただ魔物を除いては。


「まったく、この世界はどうなってんだよ!」


すぐ近くで雷が降り注ぐ。

その度に死と言う言葉が頭から離れない。

俺達は何とか雷を避けて森の中に入る。

だが、森を見ると焼け焦げている木が数ヶ所見られる。


「この森もあんまり安全じゃなさそうだな」

「外よりはマシよ。それよりリドル大丈夫?」


俺は背中にぐったりともたれ掛かってるリドルを見る。


「まだ心臓は動いてるから、大丈夫だろうけど、時間がないのは明らかだ。早いとこどうにかしないと、取り返しがつかないことになる」


リドルはおそらく俺達よりもあの芽の影響を受けていたのだろう。


「でも、私達じゃどうしようもないわよ。治し方もそもそもどういう病なのかも」


半獣はあまり病気にはならない。

そもそも免疫力が人間よりもはるかに高いため、病気になることが無いからだ。

だからこそ、あの世界では薬などはなく全て回復のポーションで補っている。

日本の知識でもこの世界の症状は分からないんだけどな。


「とりあえず、薬草っぽいものを見つけるしかない。生えてる木の実とかも片っ端から取るぞ!」

「分かったわ!」


俺達は必死だった。

ただでさえ、デビを探しにいくのさえ難しいのにリドルが瀕死の重症になってしまったこと、そして自分達もリドルの様になってしまうんじゃないかと言う恐怖、更にこの道が本当に正しいのかと言う疑問、それら全てが時間内に間に合わないんじゃないかと思わせる。

精神的にも肉体的にも不安定になりつつある。

こう言う時だからこそしっかりしねえと、リーダーである俺が!


「っ!あれは木の実か?よし、早速取り――――」


その瞬間、目の前で落雷が降り注ぐ。

それにより木は裂けて、木の実も焼け焦げてしまった。


「あ、あぶねえ。あともう少し早く見つけてたら死んでた」


俺が今生きてるのは本当に運が良かっただけなのかもしれない。

もしかしたら俺は勘違いをしてたのか?

自分なら何でもやれると、出来ないことはないのだと。

考えもしないで無鉄砲に突っ込んでいって、その結果がこれだ。

俺があいつらを誘わなかったら、いや俺がこの世界に来なかったら、あいつらはもっと幸せな生活が出来たのかもしれない。


「ああー!!ちくしょう!今さら後悔しても遅いだろ!そんなこと考えてんじゃねえよ俺!」


俺は自分の頬をぶっ叩く。

こんな状況で気持ちも沈んで悪いことばかり考えてしまう。


「今はそんなことよりもリドルだ!空はまだ黄色、だけど時間はねえのは確かだな。早く、木の実と薬草を探さないと」


すると、茂みから物音が聞こえた。


「っ!?誰だ!!」


俺はその方向に手のひらを向ける。


「う、撃たないで!私はあなた達と同じよ!」


そう言って手を上げながら茂みから出てきたのは、俺と同じ半獣だった。


「っ!半獣!どうしてこんなところに………」


生き残りか?

でも、生存者は居ないって言ってたような。


「その子大丈夫なの?」


そう言って俺の背にいるリドルを指差す。


「かなり危機的状況だ。森の魔物にやられて、今はギリギリの所で命を繋いでるところだ」

「森の魔物………罪人の森ね。あそこは種を植え付ける魔物が多いから、より深く根付けられるとそう言う症状になることがあるわ。急がないと生命力を吸われて、あの木のようになるわ。私の屋敷に来て。他の仲間はいないの?」

「………ああ、俺だけだ」


その女は俺達を屋敷まで案内してくれた。

道中は俺の先頭を歩くだけで特に何かしてくる様子はない。


「あんたはどうしてこんなところに住んでるんだ?」

「たまたま生き残っちゃったのよ。それで、仕方なく細々と暮らしてたの。他の仲間は全員やられちゃったけどね」

「そうなのか。大変だったな」

「そうね。色々と大変だったわ。あっあそこが私の屋敷よ」


それは森の中にあるとは思えないほどの巨大で立派なお屋敷だった。

本当にこんな場所に建物が建っているなんて。


「雷対策もキチンとしてるから安心して。さっ早く入って」


そう言ってその女の人は扉を開ける。

俺はその瞬間、女の人に魔力を込めた手のひらを向ける。

すると女の人は扉を持つ手を止めて引きつった表情でこちらを見る。


「………何をしているの?」

「下手な芝居はやめろよ、魔物。お前半獣じゃないんだろ?」

「どうしてそう思うの?」

「お前はこの世界に生き残っちまったって言ってたけど、そんなことは不可能なんだよ」

「何故?」

「24時間経つと心臓を握りしめられて、強制的に殺されるんだよ。だから、生き残ることなんて不可能なんだ」


そう言うと、その女は少し舌打ちをすると開き直ったように喋り出す。


「バレちゃった。まさか、そんな制約があったなんてね」

「騙して俺をこの屋敷に閉じ込めようとしてたみたいだけど、甘いんだよ」

「まあ、そうね。騙してたのは本当だし、閉じ込めようとしたのも本当。でも、1つ間違ってるわ」

「何?」

「わたし魔物じゃなくて、悪魔だから」


その瞬間、地面が消えた。


「っ!?」


まずい、落ちる!


「じゃあね、お仲間さんと仲良くね」


女は遠のいていく俺に向かってひらひらと手を振って見せた。

そしてそのまま女の姿も見えなくなっていく。


「やられた!まさか、穴が空くなんて思ってなかった!」


突発的に起こってしまい、体が動けなかった。

そんな後悔をしてる間にも、真下に光が広がっていく。


「うわっ!?」


真下に柔らかいものがあり、そのお陰で床に激突する事がなくそのまま跳ねる。


「な、何だこれ?」

「ンン?ンギャァアア!」

「っ!?うるさっ!何なんだよ!」


俺その瞬間、自分が何に乗っているのか気づく。

これ、魔物の腹じゃねえか!


「ンガァ!」

「おわっ!?」


その魔物はゆっくりと立ち上がる。

それにより俺はそのまま振り落とされる。

俺はすぐに立ち上がるとその魔物姿を捉える。


「で、デッケェ!!!」


その大きさは全長五メートルの巨大な魔物だった。

しかもかなり太っていて、角が生え翼もありまるでデブのドラゴンみたいな魔物だった。


「はあ、はあ、はあ」


すると、横で誰かの息遣いが聞こえる。

その方を見ると巨大なガラスがあり、その向こうにミノルが居た。


「ミノル!?何でお前がそんなところに!」


俺はガラスの方へと向かうとこちらに気づいたミノルが驚いた表情を見せる。


「かつ!?あなたもここに落とされたの!」

「ああ、てことはお前も落とされたのか」

「そうよ!―――――――っ!?きゃっ!」

「ミノル!」


その瞬間、ミノルに冷気が襲いかかる。

視線を動かすとミノルの方には鬼のような巨大な魔物が居た。


「な、何だあれ。ミノルの所だけ周りが凍りついてる。ミノル!大丈夫なのか!」

「こっちの心配はいいから自分の心配をして!来てるわよ!」

「何に?」


横を見ると先程の魔物が足をあげて俺を押し潰そうとしていた。


「やべっ!!」


俺はリドルを抱えてすぐにその場から離れる。

その直後魔物が地面を思いっきり踏む。

だが、踏みつけられた地面にヒビが入ることはなく、かなりの頑丈さを誇っていた。


「おいおい、ここの建物どんだけ耐久性があるんだよ」


もし、あの俺達を分かれさせてる巨大なガラスがこの建物と同じくらい、もしくはこれ以上に硬かったか場合破壊は厳しいな。


「ワープが使えれば何とかなるんだけどな」


俺は背中にいるリドルを見る。

さすがにリドルを置いていくわけにはいかないよな。

かといって背中にリドルを抱えながらの戦闘は厳しい。

俺は周りを見渡して隅っこに移動する。


「ここで待っててくれ」


俺はリドルをそこに置いて、氷の魔法で壁を作る。


「これで、少しは防げるだろ」

「ガワァァァァ!!」


その魔物は高らかに叫ぶと俺を睨み付ける。

魔物とまともに戦うのは不可能だ、だけどやらなきゃ死ぬって言うんだったらやるしかねえ!


「こっちだぞ!クソ魔物!」

「バギャッ!」


先ずはリドルから距離を取らせる。

戦うのはそれからだ。

だが、その魔物は俺にそっぽを向きリドルの方へ走り出していく。


「なっ!?あの魔物、まさかリドル狙ってんのかよ!」


まさか、リドルが瀕死なのを分かってるのか。

鳴き声からして単純な思考回路しか持ち得ないと思ってたから油断した。

どちらにしろ。


「やめろ!ばか野郎が!」


こうなったらしょうがない、1発ぶちかましてやる!

俺は魔物に向かって魔法陣を展開させる。


「インパクト!」

「ッ!!パギャ!!」

「なっ!?無傷かよ!おわっ!」


その瞬間、翼を思いっきり羽ばたかせる。

それにより物凄い風により俺は吹き飛んだ。


「がはっ!」


その勢いのまま壁に思いっきり激突する。


「いってぇ………」

「パギャッ!」


すると、またリドルを押し潰そうと足をあげる。


「させねぇよ!!」


俺は魔物の目の前で魔法陣を10個展開させる。


「ソイル、ウィンド!」


俺は半分はソイル、もう半分はウィンドで砂嵐を作る。


「バギャァァァァッ!!」


目に砂が入ったのか、痛そうに目を押さえる。


「背中は分厚いから効かなかったけど、顔面ならどうだ!」


俺はワープで魔物の顔に瞬間移動する。

そして、手に魔力を込めてゼロ距離で魔法を放った!


「インパクト!!」

「ブギャッ!?」


さすがに効いたのか魔物は衝撃で大きく仰け反ると後ろから倒れる。


「はあ、はあ、さっきからどこ見てんだよ!お前の敵は俺だぞ!!」

「ガギャァァァァ!!」


攻撃が当たって怒ってるのか、俺を睨み付けて足踏みをしている。

先程よりも声がうるさい。


「スゥゥっ!!」


すると、何かを思いっきり吸い込んだ瞬間、お腹が膨れ上がり爆発音と共に炎を吐き出した。


「っ!?」


俺はすぐにワープで天井に逃げる。


「………な、何だ今の」


炎が通った場所が抉れて壁が破壊されている。


「爆発したかと思ったぞ。さすが、魔物だな」


あまりの力量の差に思わず感激してしまった。

その間にも魔物は発射体制に入っていた。


「スゥゥっ!!」

「まじかよ!」


5秒も経たないうちに2発目を浴びせてくる。

俺はまたワープで地面に移動する。


「………こ、こいつ確実にヤバい」


このまま戦っても勝ち目が無い気がする。

何とか、うまいこと考えないと。

リドルは………って氷溶けてるじゃねぇか!

そりゃそうか、こんな炎撒き散らされたら俺の作った氷なんて当たってなくても溶けるよな。


「とりあえず、仕方ないからリドルには何もせずにここに居ててもらおう。後は―――うおっ!?」

「パギャッ!」


すると、俺に向かって頭突きをしてくる。


「くそっ!考える隙も与えてくれないのかよ!」


真っ正面からの攻撃は不可能だ。

だけど、それ以外でどう倒せば良いんだって言うんだよ!


「パギャッ!!」

「俺を虫みたい踏みつけようとしやがって!それなら」


俺は魔物が踏みつけようとしてる場所に魔法陣を展開させる。

そして、俺はすぐにその場から逃げる。


「吹き飛べ!インパクト!」

「バギャッ!?」 


足元を衝撃波でやられてバランスを崩して、倒れる。

このまま追い討ちだ!

そう思い駆け出した瞬間、痛みが走る。


「ぐっ!?な、何だ!」


俺は腕を見ると少しだけ腫れ上がっていた。


「なっ!?何でだ!」


何処からか攻撃を受けた!?

いや、そんな様子もなかったし、攻撃された感触もしなかった。

突然右腕が腫れていた。

右腕の腫れ、もしかして!


「インパクトによる副作用?」


初めて使ったときも魔力暴走により腕が腫れていた。

まさか、魔力暴走がほんの少しだけ起こったのか?


「なら、何でこんな時なんだよ!」

「パギャッ!!」

「くそっ!」


腕の痛みのせいでチャンスを逃してしまい、再び先手を譲ってしまう。


「駄目だ。このままじゃ魔力不足になって終わる。何とか、何か無いのか!」


時間がない、とにかく早くこの場から逃げないと。

ミノルの方も気になるし。

俺はミノルが居る方をチラリと見る。

その瞬間、巨大な影が俺を覆う。


「パギャッ!」

「やべっ!」


魔物は俺に向かって頭突きをする。

だが、距離が合ってなかったのかガラスに頭突きをする。


「ブギャッ!?」


だが、ガラスはヒビ1つ入らなかった。

壁よりもなお硬いのか。


「やっぱりガラスを壊すのは不可能か。出口もないし、ここから逃げることも難しいって、これどうやって出るんだよ!」

「パギャァァァァ!!」


すると、先程よりも怒りを露にしてこちらに襲いかかってくる。


「何怒ってんだよ!ぶつけたのは自分のせいだろ!」

「スゥゥっ!」


あの構えは!

その瞬間、魔物は勢いよく炎を吐き出す。

この方向はリドルに当たる!


「インパクト!」


インパクトで炎を吹き飛ばした瞬間、そこら中に炎が広がっていく。

熱い、そう何度も吹き飛ばせるような物じゃない。

だがすでにもう2発目を放つ準備をしていた。


「うっそだろ!」


そして、息をつく暇もなく魔物は炎を吐き出した。


「あ、あぶねぇ」


とっさにワープでリドルの元に行き、炎が当たらない場所まで思いっきり投げて、それと同時にワープでその投げた方向に飛び、キャッチした。


「やばいな、腕の痛みが激しくなってきた」


魔力暴走が段々酷くなってきた。

それに体が段々とだるくなってくる。

これってもしかして、魔力不足の予兆か?

それにしても早すぎだろ、魔力暴走によって余計に魔力を使っちまってるのか?

だとしたら、使える数も限られてくる。


「パギャァァァ!!」


どうするっ!!



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