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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十五章 ようこそ地獄へ
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その二十二 死のカウントダウン

「ここが終着点だよ」


ドラは目の前にある扉を指差す。

この世界の終着点であるこの扉に入れば、魂が失われ2度と生まれ変わることも出来ない。

それはデビにとってもドラにとっても辛い現実だった。


「まさか、デビビと一緒にこんなところに来ると思わなかったよ」

「妾もじゃ。人生何が起こるか分からんのう」


そう言って笑いながらデビは床に座る。

そんな様子を見て、ドラは不安げな表情をする。


「デビビ、何でそんなに笑ってられる?こんなこと言いたくないけど、デビビ死んじゃうんだよ」

「妾は死なないのじゃ」


迷いのない言葉にドラは思わず感情に任せて口を動かす。


「本当にあいつらここまで来るって思ってるの!?ここが生まれてから今まで300年間1度も帰ってきた奴なんて居ないんだよ!」

「難しいのは分かっているのじゃ。でも、あやつらはどんな状況でも必ず助けに来るのじゃ。そういう奴らなのじゃ」


かつ達の事を信じて疑わないその目は、余計にドラの心を抉る。

デビの様に仲間を信じて疑わなかった人達を大勢見てきた。

その全員が必ず裏切りに合い、絶望の表情で死んでいったからだ。

そんな表情を見たくない、そう思ったドラはデビの手を握る。


「ん?どうしたのじゃ?」

「逃げよう」

「え?」

「ここから逃げようデビビ!このままじゃ本当に死んじゃう!僕はデビビに生きててほしいから!だから―――」

「ドララ、妾は行かないぞ。そんなことをしたらドララが殺されてしまうかもしれんからな」

「デビビが死ぬよりはマシだよ!」


だが、デビはゆっくりとドララの手を退ける。


「妾の心配をしてくれてありがとな、ドララ。でも、妾は大丈夫じゃ。ほら、こんなに元気なんじゃぞ!」


そう言ってデビは楽しそうに辺りを飛び回る。

それは明らかな空元気と分かっているからこそ、ドラは悲しげにデビの名前を零す。


「デビビ………」

「妾はこんなところで死ぬ気なんてないのじゃ。だから、お主も心配するでない」


デビはこれから死ぬ人とは思えないほどの笑みを見せる。

いや、本当に死ぬとは思ってないのだろう。


「分かったよ」


そう言ってドラはゆっくりと腰を下ろす。


そして現在


「おいおい、嘘だろ」


時のエリアを抜けると大きな崖が俺達の歩みを止める。


「これは大分深いですよ。落ちたら確実に死にますね」


下を除くと思わず身震いするほどの深淵が広がっていた。

そしてそこから微かに何かの声も聞こえる。


「落ちたら死ぬだけじゃすまなそうね。どうしましょうか」

「他に行ける場所もないしな。何とか行くしかないけど、リドル悪いけど風の魔法で行けるか?魔力は後どんくらいある」

「大丈夫ですよ…………っ」

「よし、それじゃあ早速頼む」


空の色は既に黄色に染まっていた。

時の魔物の言う通り外と中の時間の流れは違っていたらしい。

この場合中が遅くなっていたのだろう。

そのせいで大幅に遅れてしまった。

この遅れを取り戻すためにも早く行きたいところだが………何故かリドルが魔法を発動しない。


「リドル?どうした」

「………………か、かつさん。ごぼっ!」


その瞬間、リドルが大量の血を吐きだした。


「リドル!どうしたんだよ!」

「う、うう………」

「まさか!」


ミノルはリドルの服をめくり背中を見る。

その背中はおぞましいほど紫色に腫れ上がっていた。


「な、何だよこれ!」

「はあ……はあ……魔物にやられたのかもしれません」

「魔物にやられたのかもしれません、じゃねえよ!お前なんでずっと黙ってたんだよ!」

「かつ、怒ってても仕方ないでしょ。リドル、いつからなの」

「砂漠エリアからですかね」

「大分前からじゃねえか。何で黙ってた」

「2人に迷惑はかけられないと思いまして」

「何だそれ、ガキかお前は」

「……………がはっがはっ」


リドルは再び吐血する。

顔色は優れず、目も虚ろになっている。


「とりあえず、早く何とかしないと。回復のポーションとか持ってないの?」

「そう言うものは…………持ってません」

「俺もないな。くそっ何か方法はないのか」


辺りを見ても薬草や木の実など生えてはいない。

それ以前に治す方法があるかすら分からない。


「とりあえず、先に進もう。奥に行けば何かあるかもしれない」

「いい………ですよ」

「は?」

「これ以上は迷惑はかけられません。僕を置いていってください」

「何だと?」


その言葉に思わず眉がつり上がる。


「お前勝手なこと言ってんじゃねぇぞ!」


俺はリドルを睨み付ける。

リドルは苦しそうにしながらも、俺の目を真っ直ぐ見る。


「僕は足枷になるつもりはありません。ですから………」

「ふざけんなって言ったのが聞こえなかったのか!ここでお前に死なれた方が迷惑なんだよ!いいから黙って生きることだけ考えろ!」

「ただでさえ生き残るのが厳しいこの世界で、怪我人を抱えていけるほど甘くなんてありません。僕達の目標はデビさんを取り戻す事です!その為にも僕はここに残ります!」

「おま―――――」

「アォーーン!!」


その瞬間、何処からか遠吠えが聞こえる。

周りを見ると数10匹の魔物に囲まれていた。


「いつの間に!」

「喧嘩してる場合じゃないわよ!早く逃げましょう!」


角を生やした狼のような魔物が四方八方に現れる。

これは早急に逃げ出したいところだけど、リドルはこんな状態だから精密な魔法操作は出来ない。

となるとミノルだけだけど。


「ミノル、あそこまで何とか渡れるように出来るか?」

「出来るわ。アイスコールド!」


その瞬間、崖の間が凍り付いて道が形成される。


「今の内に行きましょう!」

「ほら、リドル肩貸せ!」


俺はリドルの肩を持ち、歩きだす。

だが、後ろから魔物が迫ってくる。


「こっち来んじゃねえ!」


俺は魔法を撃って何とか魔物を牽制する。

だが、それでも魔物は退かず次々と迫ってくる。


「かつ私も手を貸すわ!だから今のうちに早く!」


ミノルも魔力消費を押さえつつ魔物に魔法を当て続ける。

だが、魔物はすぐに対応してきて当たらなくなっていく。


「くっ!ちょこまかと動かないでよ!」


その瞬間、ミノルは先程よりも威力の高い氷の魔法を放ち、全員を凍らせる。


「よしっ!早く行きましょう!」

「ああっ!リドルもう少し早く歩けるか」

「はい、大丈夫です」

「よし、それじゃあ早く―――――」

「キャイン!」


その時、後ろから氷が砕け散る音と共に真下から巨大な手が魔物を握りつぶしていた。


「――――――っ逃げるぞ!!」


その瞬間、危険を感じ歩くスピードを早める。

やっぱりこの崖の下には何かが住んでる。

それもとんでもないやつが。

すると、その巨大な手は凍ってる道を次々と破壊しながら近づいていく。

氷の砕け散る音ともに死が迫ってくる。

早く、早く向こうの渡らねぇと、じゃないと死―――

その瞬間、歩いていた氷が砕けちり足場が崩れる。


「……………ミノル!」

「かつ!!」


落ちると思ったその瞬間、ミノルが俺の手を引っ張ったくれたお陰で落ちずに向こうに渡れた。


「何ぼーっとしてるの!次来るわよ!」


すると、その巨大な手は再び攻撃しようと手を振り下ろそうとする。


「くっ!」


俺は何とか飛んでその攻撃を避ける。

その瞬間、地面が砕け俺が居た場所に穴が空く。


「ガァァァァァ!!」


崖の下から謎の叫び声が響いてくる。

それ以降手が出てくることはなかった。


「はあ、はあ、あぶねえ。死ぬとこだったな」

「全く油断は出来ないわね。リドル、大丈夫?」

「はい、何とか」

「嘘つけ、背中がやけに熱いぞ。なのに汗もかいてない。やせ我慢するなよ」


こいつの体は今異常事態が起きている。

もしかしたら、もう既に………いやその考えはやめておこう。


「とりあえず、先に進むぞ。リドルの体を治さねえと」

「僕は全然大丈夫ですから」

「まだそんなこと言ってんのか。これ以上弱音吐いたら許さないぞ」

「僕はただ事実を述べてるだけです。それにこれ以上足手まといになるのはごめんですからね」


そう言ってゆっくりと立ち上がる。

だが足元はふらついていて、今にも倒れそうだった。


「足手まといだって思ってんならなおさら俺の言うことを聞け。それともお前はそんなに死にたいのか」

「っ!………そんなわけないじゃないですか」


すると、突然リドルの声色が変わる。


「僕がそんなに死にたそうに見えましたか!」


その瞬間、豹変したリドルは俺の胸ぐらを掴む。

だが俺もそんなリドルに気圧されることなくはっきりとした口調で言い返す。


「ああ、見えるね!そんなに足手まといって自覚あんなら、迷惑かけずに俺の言うことを聞けよ!」

「僕は!ただ最善の策を提案しているだけです!このまま行けば確実に死にます!でも、僕はこんなところで死ぬわけにはいかないんです!だからこそ、少しでも成功する確率をあげるためにも僕はここに残るべきなんです」

「1人欠けたらそこで終わりなんだよ!全員で生きなきゃ意味ねぇんだよ!」

「全員で死ぬよりはマシです!それに僕は死なないと言ってるでしょ!」

「今のお前に1人で生きていけるわけねぇだろうが!」

「生きるっていってるでしょうが!」


俺達はお互い睨み合う。

そして、次の瞬間俺達は自然と拳を握りしめていた。


「「この――――」」

「やめなさい!!」


直後、ミノルは俺達の頭を思いっきりぶっ叩いた。


「いっ!お前何すんだよ!」

「ミノルさん、急な横やりはやめてください」

「あんた達バカでしょ。こんな所でそんなしょうもない喧嘩してんじゃないわよ!」

「なっ!お前しょうもないって!」

「しょうもないからしょうもないって言ってんの!あんた達はどっちも目的を分かってないじゃない!」

「目的はちゃんと理解していますよ」

「いーえ!分かってないわ!私達の目的はデビを取り戻すことでも全員で生きることでもない。皆で一緒に家に帰ることが目的でしょ!」

「っ!」


皆で一緒に帰ること………

ミノルは一度落ち着くと冷静な口調で話し始める。


「かつは生きることにこだわりすぎて周りが見えてないし、リドルはデビの奪還を優先しすぎて冷静になってないし。辛いのも苦しいのも分かる、けどこんな時だからこそ助け合って進んでいかなきゃ行けないんじゃないの?」


助け合って生きていく。

その事を俺は忘れていたのかもしれない。

生きることに必死でただ逃げることに夢中で、助け合って来てなかったな。


「すまん、ミノル、リドル。ちょっと冷静じゃなかった。これからはちゃんと話を聞くし、提案もしていく」

「僕もすみません。作戦を押し付けるような真似をしてしまい。2人の気持ちを踏みにじるような事を言ってしまって」


俺はリドルも顔を合わせて、握手を交わす。


「これで、仲直りね。それじゃあ今後のことについて決めましょう」

「そう……です……ね」


その時、リドルがゆっくりと地面に倒れた。


「っ!?おい、リドル!大丈夫か!しっかりしろ!リドルーー!」



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