その十七 全てを疑え
俺達は森を後にして砂漠を進んでいた。
「暑いわねぇ」
突然の森からの砂漠、どうやらこの地獄は常識で考えてはいけないみたいだ。
砂漠だからか異様に暑い。
太陽も無いのになぜこんなに暑いのだろう。
理由はすぐに分かった、灼熱の魔物が砂漠に住み着いているからだ。
空には炎を纏った火の鳥が陸にはよく爆発するスライムなどがいた。
おかげでドッカンドッカンと音が鳴り響き地面が揺れて、耳がおかしくなりそうだ。
「やべえ汗が止まらねぇ」
滝のように流れ出る汗を何度も拭う。
だが、それでも汗が止まることはなく、ローブを脱いでなるべく薄着になる。
「こんなに急に気温が変化すると体がおかしくなりそうだわ」
「はあ……はあ……」
「確かにそうだな。このままじゃ熱中症になっちまうよ。なあ、リドル」
「………は、はい?」
リドルの顔を見ると大量に汗をかいているのに顔が真っ青になっていた。
「おいリドル!大丈夫かお前!」
「大丈夫ですよ。気にしないでください」
「気にしないでって気にするに決まってんだろ!あつっ!?」
リドルの手を触ると焼ける程体が熱せられていた。
「お前その熱さなんだよ!」
「別に何でもないですよ」
「何でもなくないだろ!お前、どっか無理してるんじゃないのか」
よく見ると腕から汗が出てない。
こんなに暑いのに汗が出てないなんて。
「だから何でもないって言って………っ!?」
その瞬間、リドルが肩を抱えてうずくまる。
「おい、どうしたリドル!まさか………」
俺はすぐに押さえている肩を見る。
すると、リドルの右肩に植物の芽が生えていた。
「なんだこれ………」
「どうやら植え付けられたみたいです。おそらくかつさん達も」
俺達はすぐに体中を見て、芽がないか探し始める。
俺は脇腹に不気味な芽が生えていた。
「妙に頭痛と吐き気がすると思ったらこれのせいだったのか」
「あの森の言葉の意味はこれだったのね。うぐっ!」
その瞬間、ミノルの太ももにある芽が急に大きくなる。
「まずいな、このままだと芽に栄養を全部取られちまう。リドル、何でこんな大事な事黙ってたんだよ」
「何でって……何ででしょうね何故か言う気になれなくて」
「何だよそれ。お前らしくないじゃないか」
これもあの芽のせいなのか。
どちらにせよ早くこの芽を抜かねぇと。
俺は生えている芽を抜こうと掴んだ。
だが、その瞬間体中に痛みが走った。
「いっ!?」
「かつ、無理矢理抜くのは危険だわ。私が炎の魔法を使うからそれで焼ききって抜きましょう」
そう言って魔法陣を展開させる。
「え?ちょっと待て、それ俺やばくないか」
「調節するから大丈夫よ。それじゃあ先ずはリドルから」
「僕はいいです」
「は?何言ってんだ」
突然の言葉に思わず聞き返してしまう。
「自分の魔法でやりますから、大丈夫です」
そう言ってリドルは魔法陣を展開させる。
「ちょっと待てよ。ミノルがやってくれるって言ってんだから、素直にやってもらえよ。今の体調で無理する必要ないだろ」
「魔力の消費を抑えるためにも自分の事は自分でやった方がいいでしょう」
「だったらリドルはさっき魔法使ったんだし、なおさらやってもらった方がいいだろ」
「だから大丈夫って言ってますよね。それにミノルさんの魔法は信用できないので」
「お前何言って――――」
俺がリドルの元に行こうとした瞬間、ミノルが俺の腕を掴む。
「かつ、らしくないわよ」
「ミノル…………」
「こんな状況だからピリピリしちゃうのもしょうがないわ。リドルも自分の魔法の方がやりやすいわよね」
「そうですね………」
「………ごめん、ちょっと余裕がなくてイラついてた。ミノル、やってくれるか?」
「良いわよ。それじゃあ、暑いけど我慢しててね」
ミノルが魔法で芽を熱して、焼け切った瞬間思いっきり引っこ抜いた。
「ぐっ………ありがとうミノル」
引っこ抜かれた場所は少し火傷したが何とか綺麗に取れたようだ。
「別に良いわよ。それじゃあ私も………ふんっ!」
ミノル太ももについている芽を焼ききって引き抜いた。
その芽は薄く根を広げていて、気色の悪い黒い目のような物が小さく付いていた。
「うえっ気持ち悪いわね。でもこれで体調はよくなるんじゃないかしら」
「そうだな。リドルも大丈夫そうか」
「はい、無事に抜けました。気分も先程よりはよくなりました」
「それならよかった。それじゃあ早速………何だ?」
すると、突然風が強くなり砂漠の砂が宙を舞う。
「風が強くなってきましたね」
「暑さもまた上がった気がするわ」
「ちょっと待てよあれ………炎の竜巻じゃねえか!?」
遥か先に豪炎の渦がものすごいスピードでこちらに向かってきていた。
「にしてもあの竜巻動きが変じゃない?」
「あっちいったりこっちいったりしていますね。もしかすると、魔物かもしれませんよ」
「そんな何でもかんでも魔物って」
「ヒャハー!!俺の炎は最強だぜー!!」
「ありゃ魔物だな」
「十中八九魔物ですね」
やけにテンションの高い炎の竜巻型の魔物だ。
どうやらまだ俺達の事に気づいていないようだ。
「魔物にバレないようにさっさと離れようぜ」
「ここは見晴らしがいいですからね。早く移動しないと見つかってしまいます」
「だな。それじゃあ早速………何だこいつ」
後ろを見るとそこには謎のサボテンがあった。
「なあ、こんなところにサボテンなんか合ったっけ?」
「合ったんじゃない?ていうかそれサボテンって言うの?」
「ああ、何か植物みたいな感じのやつ何だけど」
そういえばあの島にはサボテンなんてなかったか。
「それより早く逃げましょう。砂嵐がひどくなってきました」
俺達はすぐさま別のエリアに行くために走る。
だが、前に進むにつれて砂嵐により視界が悪くなる。
「くそっ前が見にくいな」
「ちゃんと進めてるのかも怪しいわね」
「ていうか、やっぱりこのサボテン動いてね?ていうか、増えてね」
先程は1つだったのにいつの間にか2つになっていた。
「気のせいでしょ。サボテンまで魔物と疑ったらキリがないってかつが言ったんじゃない」
「いや、まあそうなんだけどさ」
ずっと後ろに居る気がするし、何か気配を感じるしで嫌な予感がするのだが。
「くっこれもあの竜巻の影響でしょうか。砂嵐がドンドン酷くなっていきますね」
「目を開けてられないわよ。ここらで一旦嵐が止むのを待つしかないわね」
「まあ、ここまで視界が悪いんじゃ魔物にもバレる心配はないか。それじゃあ一旦休憩するか」
俺達は砂嵐が収まるまで一旦休憩することにした。
しばらく休むと段々と勢いが衰え視界が開けていく。
「よし、そろそろ行けるんじゃないか」
砂嵐が収まり周りが見えるようになった。
「よし!それじゃあ早速すす……」
砂埃が晴れた瞬間、大量のサボテンが俺達の周りを囲んでいた。




