その十六 仕掛けられた種
「暗いわね。何も見えないわ」
「おそらくこの森も魔物何でしょうね。この暗さは以上ですし」
「上見ても真っ暗だしな。これじゃあ空の色が見えねえな」
炎の周り以外は本当に何も見えず進んでるのかすらも分からない。
だが、近づくと木が見えたりと森の中に居るのは確かだ。
「このまま普通に歩いても外には出れないと思いますよ」
「確かにそうだな。何処に向かってるのか分からないし、このままじゃ時間切れになっちまう可能性もあるし」
「そうね、あっ!それなら―――っ!」
その時ミノルが突然周りを警戒し出す。
「どうしたんだ?」
「しっ!何か聞こえる」
耳を澄ますと微かに何かが動いた音が聞こえる。
木の葉が揺れて葉っぱ同士が擦れる音、さらに何かが通り過ぎた時に起こる風、間違いなく何かが動いている。
「魔物ですかね」
「多分ね。でも、かなり素早いわ。かつ、明るければここの魔物は来れないのよね」
「多分な。例外も居るかも知れないけど、森自体がこんな暗いし来れないと思うぞ」
「それなら、一塊になってなるべく明るい所にいましょう。炎も周りじゃなくて私達を照らすようにして」
「別に良いけど、それじゃあ歩きにくくないか?」
「魔物の正体は見ておくべきでしょ。あの魔物は暗い場所しか歩けないから、こちらに近づいてきたら一気に照らして」
「なるほど、分かった」
俺達は身を寄せ合い炎で近くを照らす。
すると、音が先程よりも大きくなり魔物が少しづつこちらに近づいてくるのが分かる。
俺はタイミングを見計らいこちらに最も近づいた瞬間を狙って。
「今だっ!」
俺は魔物がいる場所を一気に照らした。
その瞬間、その魔物が正体を現す。
「なっ!?なんだこいつ!」
そいつはひどく体が細く1つ目で指は2本で四足歩行の魔物だった。
「ギィィイィイイイイ!!」
「うわっ!?うるさっ!!」
その魔物は超音波のような物を発すると、体がドロドロと溶けていった。
そして、最後には何も残らなくなった。
「どっどういうことでしょうか?」
「照らされたからか?照らされただけでこんなことになるんなら、そりゃ光を嫌いになるわけだ。ってミノル!?大丈夫か!」
ミノルは猫耳を押さえながらうずくまっていた。
よく見るとミノルの耳から血が出ていた。
「お前血がっ!もしかして耳をやられたのか」
「片方だけね。心配しないで大丈夫よ」
そう言って片方の耳を押さえながらゆっくりと立つ。
「あまり長居は出来ませんね」
「ああ、すぐに出ないとまた何かしてくる可能性があ――――っ!?」
「ギイィィイイイっ!!!」
その瞬間、先程と同じ超音波が四方八方から襲いかかる。
「うるっさ!何なんだよ!」
「同じ魔物が攻撃をしてきているのかもしれません!」
「仲間がやられて怒ってるのか!」
それにしてもこのままだとまずい!
これ以上やられると耳が完全に聞こえなくなってしまう。
何とかしないと、超音波のせいで魔法に集中出来ない。
切り替えようにも耳を手で押さえてないと耐えられない。
「かつ………火よ………」
「え!?すまんミノル!超音波のせいで聞こえない!」
その瞬間、俺の胸ぐらを掴み引き寄せる。
そして耳元で呟いた。
それに対し、思わずドキッとしてしまう。
「火を付けて。木に付ければ周りを照らせるから」
「火を……て言うかミノル耳がっ!」
「私のことはいいから早く」
「でも………」
「いいから、お願いかつ」
ミノルは耳から血を流しながら俺に真剣な表情で頼む。
「分かった!待ってろ!」
あいつ、鼓膜が破れてる癖にそれなのに耳を塞がずに。
「くそっ!すぐに燃やしてやるからな!魔物共!」
燃やす木を決めて早速俺は火をつける。
その瞬間、木が一気に燃え上がると同時に声が聞こえてくる。
「なっ!?何だ!」
「よく燃やしてくれた」
木が次々と燃えていく。
その度に声がどんどん増えていく。
どうやらこの森の木が話しかけてきているようだ。
「これでお前らを殺せるよ」
「ありがとう」
その言葉が次々と木から発せられる。
「やはりこの森は魔物でしたか」
「どういう性質か分からないけど、どうやら燃えるのはあちら側にとっては好都合のようね」
火が次々と他の木に移っていく。
それにより森は段々と明るくなってくる。
すると、木に捕まっていた超音波を出していた魔物の体が次々と溶けていく。
「お前らはここから出られない」
「俺達の宿り木になってもらう」
「1つになろう」
そんな気色の悪い言葉を木々は連呼し始める。
「どういう意味だ!うっ!?」
その時強烈な悪臭により思わず鼻をつまむ。
何だこの臭いは!
もしかして木が焼けた臭いなのか!?
でも、こんな臭いにはならないはずだ。
「良い臭いだろ?」
「は?」
「いつかお前もそうなるぞ」
「何言って………」
「かつさん!何してるんですか!早くここを出ましょう!」
「わ、分かった!」
炎により周りが照らされて道が開ける。
俺達はその道を一気に駆け抜ける。
だが、その時に炎に包まれた木がこちらをじっと見て、不適な笑みを浮かべたような気がした。
――――――――――――――
「はあ、はあ、大丈夫か、皆…………」
「ええ、なんとか」
俺達は何とか森を抜けることに成功した。
後方では未だに炎が広がっている森があった。
「それにしても不気味な森でしたね」
「ああ、でもこれであそこに居た魔物は全員死んだのか?」
「分からないわ。少なくともあの森はもう二度と来ることはないでしょうね」
そう言って俺達は炎上している森を見つめる。
罪人の森、それはここにやって来た者達で作られた森。
種を体に残して時間が経つに連れてその種は大きくなり1つの巨大な木に成長する。
宿り木を吸収して。




