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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十五章 ようこそ地獄へ
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その十五 暗い刺客

「きゃあああっ!」

「ミノル!!」


俺はミノルの手を取り引き寄せる。

何とかミノルを掴むことが出来たが、まっ逆さまに落ちてるのは変わらない。

このままだと頭を地面に叩きつけて死んでしまう。


「リドル!頼む!」

「分かってますよ!ラノストーム!」


強力な風魔法によりスピードが緩やかになり何とか無事に着地することが出来た。


「すまないなリドル。魔力使わせちゃって」

「これくらいなら構いませんよ。それより、怪我はありませんか?」


リドルはミノルの方を見て心配そうに声をかける。


「ええ、大丈夫よ。ごめんなさい、ドジ踏んじゃって」

「足場が脆かったんだ、仕方ないだろ。それよりも空にヤバイ魔物が居るみたいだしな」


俺達は上空を見上げる。

空はエンマの言う通り真っ赤に染まっていた。


「赤色と言うことはまだそこまで時間は経ってないようですね」

「洞窟を早めに出られたのが良かったな。にしても、ここまで広いとは思わなかった」


崖から見たこの世界は何とも神秘的で何とも絶望的だった。

禍々しいこの世界を生き残りデビの元までたどり着かなければ行けない過酷さが、これを見てよくわかる。


「それでこれからどうしましょうか」

「とりあえず、この森を抜けるか」


崖から落ちた場所は怪しげな森が広がっていた。

その奥は何故か薄暗く先が見えない。


「不気味な森ですね」

「この世界で不気味じゃない場所を探す方が難しいけどな」

「それに妙な視線を感じるわ。誰か見てるのかしら」


俺達は森の中を進むのを躊躇うが覚悟を決めて前に進む。

その時、突然地面が大きく揺れだした。


「うおっ!?何だ地震か!」

「いえ、これは地響きです!」


その時、さっき落っこちた後ろの崖が動き出す。


「おいおいおい、ちょっと待て嘘だろ!」

「崖が動いてる!?」

「いえ、これは崖じゃありません!これは………魔物です!!」

「ガゴォォォ!!」


その瞬間、崖が裂けて口のような物から砲口が辺りに鳴り響く。


「おわっ!?」


俺達はその砲口に吹き飛ばされる。

何とか木に捕まりギリギリ踏ん張ることが出来た。


「ちょっと待って!この崖全部が魔物なの!?」

「1つの巨大な魔物ってことかよ!にしても、デカ過ぎだろ!」


全貌は把握できてはいないが少なくとも10メートルはあるだろう。

その瞬間、地面からその魔物が離れていく。


「足が生えた!?」

「洞窟から始まったと思ったらまさか魔物の中から始まったなんてね!」

「とりあえず、急いで森の中に逃げましょう!踏み潰される訳には行きませんから!」


俺達は急いで避難するために森の中に入っていった。


―――――――――――――――――――――――――――――

「おい、これを調べてくれデベット」


サキトは鍵職人であるデベットに南京錠を手渡した。


「いいよ。ただし、お代は頂くから」

「分かってるってとにかく調べてくれ」

「ほ、本当に大丈夫なのか。何か不潔そうな女だけど」


そう言ってカビットは汚い者を見るかの様にデベットを見る。


「おいお前それは失礼だろ。すまないなデベット。こいつひねくれものだから」

「別に金さえもらえれば何でもいいから。はいっ」


そう言って先程から見ていた南京錠を投げ捨てる。


「あっ!ちょっと待て何すんだよ!」


サキトは急いで南京錠を拾う。

するとデベットは興味なさげに別の鍵をいじり始めた。


「そんなガラクタ見せてきてあんたの方が失礼なんじゃないの」

「へ?どう言うことだ」

「これを開ける鍵なんてこの世には存在しないってこと」

「は?意味が分からん。俺の経験上これは南京錠だろ」

「だからガラクタだって言ってんだろ。それは鍵何か入れられない。ただの飾りだって言ってるの」

「飾り!?それじゃあこれは南京錠じゃなくてただの鉄の塊ってことか?」

「そう言うこと。鍵職人にこんなガラクタ押し付けて合鍵作れって言われた時はバカにされた気分だったよ」


そう言って少し怒ったような視線を向ける。


「わ、悪かったって。お詫びに金は払うから」

「いらない。なにもしてないのに金なんか貰えるわけないだろ。分かったらとっとと出てけ!」


そう言って強引にサキトを追い出す。


「おっおい!ちょっと待てよ!……たくっ強引なやつだな。それじゃあこれからどうす……あれ?あいつどこ行った?」


カビットは既に南京錠がガラクタと知った瞬間、その場から去っていた。

そして、カビットは耳につけた通信機を付ける。


「例の南京錠飾りだったぞ」

「そうか、ご苦労だったな」

「それじゃあ俺はもう仕事は終わったから」

「ああ、お前のお陰で色々助かった。ありがとな」

「礼なんかほしくない。散々こき使われてこっちはもう最悪の気分だ。だから………」

「ああ、望み通りお前は生かしてやるよ」

「その言葉忘れないからな!」


そう言って通信は途切れた。


――――――――――――――――

あれから森の中を進み続けているが、一向に出る事が出来ない。


「はあ……はあ……大分奥まで来ちゃったな」

「そうね。必死で走ってたから何処に居るのかも分からないわ」

「空が見えませんね。木で隠れてしまってるようです」

「て言うか暗すぎないか。まともに歩くのも難しいぞ」


一切の光を通さない暗黒の森。

そこから未だに何かの気配がする。


「とりあえず、進みましょう。こんなところに居るよりはマシだわ」


そう言ってミノルは前に進もうとする。

だが、その時何処からか音が聞こえた。


「っ!?何ですか、この声は」

「いや、これ声って言うより歌か?」


この場の雰囲気とは合わない美しい音色が森中に響き渡る。

普段なら聴き惚れるような歌声でも、この状況ではかえって不気味だ。


「何でしょうこの不思議な音は」

「何だか、眠気が………」


その瞬間、ミノルが突然倒れた。


「ミノル!?」


俺はすぐにミノルの元へ向かう。

すると、気持ち良さそうに寝息を立てていた。


「寝た?何でだ」

「かつさん、早く逃げてください」


リドルも足がおぼつかずにその場で倒れる。


「リドル!?どうしたんだよ!」

「おそらくこの音には催眠効果があります。早くしないと……かつさんも眠って………しま……」


そう言ってリドルも目を閉じてしまった。


「くそっ!やばいっ俺も眠気が………」


このまま寝たら間違いなく殺られる。

この近くに魔物が居るんだ。

そいつがこの音色を奏でてるんだ。


「このままじゃ……駄目なのに……寝たら……だ……め…」


自らの思いとは裏腹に強制的に眠気が俺のまぶたを閉ざす。

その瞬間、俺は頭を思いっきり地面に叩きつけた。

何度も何度も、血が出ても何度も。


「はあ、はあ、よし!頭が冴えたぞ!」


多少強引だがこれで眠気は無くなった。


「正体現しやがれ!ファイヤー!」


俺は炎の魔法で辺りを照らした。

その瞬間、闇に隠れていたモンスターが姿を現した。


「ぎゃああっ!見つかっちまった!!逃げろー!!」


その瞬間、照らされた魔物共が一斉に逃げ出した。


「おい!ちょっと待て!逃げんじゃねぇよ!」

「ううっ!あああっ!!!」


すると、突然ミノルが奇声を発した。


「ミノル!?ちっ!」


俺は魔物を追うのをやめてミノルの元へと向かう。


「ミノル!おいミノル!大丈夫か!!」

「やっやめて!私は!私はもう違うの!!」

「ミノル!!おいっミノルどうしたんだよ!!」


ミノルは何かにうなされてるのか寝言を発して、そして暴れまわっている。


「うぅっ!あああっ!!」


すると、リドルも突然うなされる。


「くそっ!リドルもかよ!これもあの魔物のせいなのか!?」


もしかしたら悪夢を見せているのかもしれない。

それなら一刻も早く起こさないと。


「ミノル!起きろっ!」


俺はミノルの体を何度も揺するが何故か起きない。

これは強行手段に移るしかない。


「すまんミノル!起きてくれ!」


俺はミノルの頬を何度も叩く。

起きるまで何度でも。


「ちょっ!いたっ!何すっ……痛いって!」

「ミノル!起きろミノル!!」


何度でも何度――――――


「痛いって言ってんでしょ!!」

「ごはっ!?」


その瞬間俺は上空に吹き飛ばされた。


「いったーっ何すんだよ!」

「当たり前でしょ!何私の事ぶっ叩いてんのよ!」

「それはっああもう!今はそれどころじゃねえよ!」


俺は急いでリドルの元に行く。


「リドル!大丈夫か、早く起きろ!」

「え?どう言うこと?」

「リドルが悪夢にうなされてるんだ!早く起こすの手伝え!」

「え!?どういうこと」

「いいから早く!」

「わっ分かったわよ!」


ミノルはすぐにリドルの元に向かう。

だが、何度も声をかけてもミノルの時と同様に起きる気配がない。


「くそっ!やっぱりミノルと同じ様に叩いて起こすしかない!」

「え?ちょっと待って!叩いたのってそれが理由!?」

「じゃなきゃお前の事を叩くわけないだろ!リドル!起きろ!」


俺はミノルと同じ様に何度もリドルの頬を叩く。


「っ!?痛い……かつさん何して………っ!?」

「リドル!起きろリドル!」

「かつ!もうリドルは起きてるわ!」


その瞬間、ミノルは俺の腕を掴む。


「え?ああ!ごめんリドル」

「大丈夫です。むしろありがた―――っ!?」


リドルが何かを見た瞬間、リドルの顔が真っ青になる。


「リドル?どうしたの?」


その瞬間、ミノルの手を振り払う。


「リドル?」

「っ!すみません、ちょっと困惑してしまってて」

「無理もないだろ。悪夢にうなされてたんだから。それよりも早くここから出よう。また魔物に襲われるかもしれないからな」


俺は炎の魔法で辺りを照らす。


「何してるの?」

「ここにいる魔物は姿を見られるのが嫌いなんだよ」

「それで周りを照らしてたんですね。それなら早くここから出ましょう」


俺達は暗い森を炎を頼りに進んでいった。



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