その十三 魔物大量発生
「ん………ここは何処なのじゃ?妾は死んだのか」
デビは目覚めると知らない場所に居たため、キョロキョロと辺りを見渡す。
洞窟のような薄暗い場所に居ることが分かった。
「ここがあの世なのか?でも、妾の生まれた場所もあの世じゃな」
そんなことを考えていると、何処からか声をかけられる。
「デビビ!」
その声の方向にデビは振り向く。
そしてその人物が誰なのか分かると、ぱっと笑みを浮かべて駆け寄る。
「っ!ドララ!!久しぶりじゃな!!」
そう言って、デビは抱きつく。
抱きつかれた方は笑みを浮かべながらも、少し息苦しさを感じていた。
「ちょっ!デビビ、苦しいよ」
「ああ、ごめんなのじゃ。つい嬉しくて、にしても久しぶりじゃのう」
ドララと呼ばれている悪魔の名はドラ。
罪人を地獄に案内する役目を担っている。
その中でも、死罪の罪人担当だ。
「そうかな?つい最近じゃない?」
「そうじゃったか?でも、変わらずに元気そうで何よりじゃ。また会えて嬉しいぞ!」
そう言って楽しそうにしているデビとは裏腹にドラは悲しげな表情を浮かべる。
「僕も嬉しいよ。でも、再開がこんな形じゃなければもっと嬉しかったな」
「あーすまないのう。お主に辛い思いをさせてしまって」
すると、ドラは涙を浮かべる。
「何で、好きになっちゃったの。そんなに、あいつの事が好きなの?」
「ドララ………」
「ごめん、今は仕事をしないとね。こっちに来て案内するよ」
そう言ってドラはデビを最果てへ案内した。
――――――――――――――――――
「ここが、最果てなのか?」
入り口に入ると、洞窟のような場所に出た。
「空が見えませんね。これでは時間の確認が出来ません」
「でも、まだ始まったばかりだしまだ大丈夫でしょ」
そう言ってミノルが前に出ようとした瞬間、俺は何かの殺気を感じ取った。
「ミノル危ない!!」
俺はミノルの腕を引っ張ってこちらに引き寄せる。
その瞬間、ミノルが居た場所が岩ごと切り裂かれた。
「な、何!?」
「モンスターだ!!」
「いや、これは魔物ですね」
そこには俺達の見てきたモンスターとは比べ物にならないくらい、異形の怪物が居た。
「ありがとね、かつ」
「それよりも、この状況をどうにかするしかないだろ」
3匹の魔物、1匹は鋭い爪と長い耳が特徴の2メートルの魔物、もう1匹は背中に無数のトゲを持ち細長い鼻が特徴の四足歩行魔物、そして最後にドロドロの緑の液体の魔物どいつもこいつも格上だ。
「美味しい血肉を吸わせてくれよ」
液体が喋った!?
「どうやら、知能があるみたいですね」
「同じ言葉を使うって時点で驚きだけどな」
「それで、どうしますか」
「どうするってどうすりゃいいんだよ」
この状況、そしてこの狭い洞窟内で動きがかなり制限される。
そして、魔法も使うわけにはいかない。
「我慢できねぇ!八つ裂きにさせてくれよ!!」
そう言いながら爪を思いっきり振り下ろす。
魔力はあまり使えないだけで使わない訳にはいかない!
「ウィンド!!」
俺は威力を低めの風の魔法で爪の軌道を反らした。
「うおっ!?何だ!」
こいつら魔法が分からないのか。
そういえば、地獄には魔法が無いんだったな。
それなら!
「皆!走れ!」
「「っ!?」」
俺の指示にしたがって皆が走り出す。
まともに戦うのは不可能だ。
それなら、周りの環境を利用するしかない。
「ファイヤーボール!!」
俺は3つの魔法陣を展開して3匹の魔物の真上に攻撃する。
すると、頭上が崩れ魔物達が岩の下敷きになった。
よし、これでいくらか時間稼ぎになるはずだ。
「皆逃げるぞ!」
「いいんですか、かつさん。魔力を消費するのはあまり得策とは言えませんよ」
「大丈夫だ。魔力もそんなに消費してないし、大丈夫だ」
「それより、早くこの洞窟を抜けましょう」
「まーてー!!!」
その瞬間、下敷きになった魔物が岩を無理矢理退かして出てきた。
「やばっ!もう出てきたぞ!」
「早く行きましょう」
「よくもやりやがったな!やり返してやる」
爪の魔物がその瞬間、見境なく攻撃をし始める。
それにより、洞窟が崩壊し始める。
「あいつ、俺達を生き埋めにする気か!」
「まずいわ、早く逃げましょう!」
「にがさねぇよ!!」
液体の魔物が前に飛び出してくる。
「お前ら全員俺が―――あぎゃ!」
その時、洞窟の壁がいきなり吐出してきてドロドロの魔物が食われた。
いや、違う。
洞窟の壁が飛び出してきたわけじゃなく、洞窟の壁に擬態していた魔物に食われたんだ
「何あれ!?あれも魔物なの!」
「体の色が洞窟の色と同じですね。それを利用して狩りをするタイプの魔物でしょうか」
「分析してる場合じゃねぇって!俺達も狙われてんだよ!」
その魔物は丸っこい体に大きな口をした、ネズミ色の魔物だった。
「八つ裂きにしてやる!!」
隙をついて爪の魔物が襲いかかってきた。
「やばい!」
「肉塊になれ――――がっ!!」
その瞬間、崩れた岩が爪の魔物の頭に直撃する。
そしてそのままピクリとも動かなくなった。
「まさか、自滅するなんて」
「ああ、俺も思っても見なかった」
「よくもやりやがったな!体に風穴開けてやるよ!!」
すると、今度は鼻の長いトゲの魔物が丸まってこちらに転がって突進してきた。
「あんまー」
すると、洞窟の魔物も口を大きく開ける。
まずい挟まれた。
「死ねやー!!」
「うおっ!?危なっ!」
俺達は勢いよく横に飛んだ。
それにより、トゲの魔物が洞窟の魔物の口にホールインワンした。
「あむ―――ぐむっ!?」
「あがっ!?」
洞窟の魔物は餌が来たと思い、思いっきり噛んだ瞬間トゲにより身体中穴だらけになった。
トゲの魔物も噛み砕かれて、死んでしまった。
結果的に同士討ちのような形になってしまった。
「助かったのか?」
「そうみたいね」
「運が良かっただけですよ。あの魔物は血肉に飢えていた為、周りが見えてなかっただけです」
「確かにそうだな。とりあえず、早く洞窟を出よう」
開始から30分でかつ達は何とか魔物を退けることに成功した。
だが、これから起きる惨劇をまだ知らない。




