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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十五章 ようこそ地獄へ
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その四 ミカの日記

「な、何でアキサさんがここに!?て言うか、何でミライさんに化けてたんだ!」

「あはははっ動揺しすぎだよ。私がミライってこと」

「え?」


突然の状況に思考が追い付かない。

ミライさんがアキサさん、アキサさんがミライさんつまり同一人物?


「え?もしかして、最初に会ったときのミライさんも」

「私が変装してたのよ」

「なっそう言うことか!携帯とか言動とか色々不自然な点があるな。よくよく考えれば動揺する必要もなかったか………」

「君はもっと冷静だと思ったけど本当に追い込まれると動揺しちゃうみたいね」

「いや、だってここでバレるわけにはいかないし、アキサさんの話を聞いたらより一層それが強まったって言うか」

「確かに、重たくしすぎたかもね。でも、重く考える必要はないのよ。そもそもこれは私のお願い事だから。君にはそもそも関係のなかったことだしね。私が無理矢理連れてきてしまったから関わりを持ってしまっただけだから」


そう言ってアキサさんは優しく笑う。

どうやらアキサさんなりに俺に気遣ってくれているようだ。


「最初はそう思ってたけど今は他人事とは思えません。仲間も出来ましたし、死んでほしくない人も沢山居ますから」

「そっか、なら私も少なからず協力させてもらうよ」

「ありがとうございます」


アキサさんが協力してくれるなら頼りになるな。

ちょっと変わった人だけど、この島を守ろうとしてくれるいい人だし。


「もし困ったことがあったらここに来てね。そうすれば相談くらいは乗ってあげるよ」

「それじゃあ、聞きたいことがあるんですけど」

「何?」

「以前、ここで占いをしてもらったと思うんですけど、それって本当なんですか?」


俺の質問にアキサさんは真面目な顔で答える。


「本当だ」


何となく分かっていた、アキサさんが嘘の情報を教えるわけ無いと、でも………


「本当なんですね」

「実はあの時占った頃と今は少し変化してるんだ。今は親しいじゃなく、君と関係がある人が死ぬ」

「俺と関係がある人が?それって―――」

「詳細なことは何も言えない。ごめんね、それを言ったら駄目だからさ」

「分かってます、聞けると思ってませんでしたから」


試しに言ってみたくらいのものだ、それに誰か死ぬとわかってしまったら今後どう接していけばいいかわからないしな。


「だけど、諦めないで欲しい。未来は変えられる。それは今君がしようとしてることだ。だからこそ、諦めずに前に進んで欲しい」


どうやら、また気を使わせてしまったようだ。

これ以上心配かけられないように、俺は力強く頷く。


「大丈夫です。この命が尽きるまで頑張りますから!」

「うん、君に頼んで本当によかったよ。それじゃあ、そろそろ」

「分かりました。また来ます」


俺はそのまま占いの館を出た。


「未来は変えられるか…………」


俺にはそんな力があるのだろうか?


――――――――――――――

館を出てから俺は帰路についていた。

その間にもアキサさんに言われたことを考える。

未来は変えられる、それが本当だとしたらいつその時が来るのだろうか。

俺はちゃんとそのときに未来を変えられるのだろうか。


「おーいかつ!!」


その時、何処からか声が聞こえてきた。


「ちょ、デビちゃん!?待ってよ!」


誰かが走ってくるのが見えると、それが誰かすぐに分かった。


「ん?おお、ミノル、デビ!よかったここに居たのか」

「何処行ってたのじゃ?もうご飯は買ってしまったぞ」


そう言ってデビは大量の食材を見せる。

相変わらずすごい買うな。

この殆どがこいつの分なんだと思うと恐ろしい。


「買い物は済ませたのか。よし、それじゃあこれから行きたいところがあるんだ」

「え?何処にいくの?」

「とりあえず、リドルも一緒に行きたいから、荷物を置いていこうぜ。俺が持つよ」


俺は2人の荷物を持つ。


「ありがとう、それじゃあ急ぎましょうか」


俺達は人があまりいない場所でテレポートをしてすぐに家に帰った。


「たっだいまー!」

「リドル帰ったぞー!早くご飯を作って欲しいのじゃ!」

「お帰りなさい、皆さん。ご飯を炊いといたのですぐに出来ますよ」


さすがリドル準備がいいな。


「それならご飯を食べる前にちょっと行きたいところがあるんだけど」

「え?どっか行くんですか」


リドルはご飯を準備する手を止めると、こちらに向き直る。


「そうみたいね。かつが皆で行きたい場所があるんだって」

「まっ行ってみれば分かるよ」


俺は三人を連れてすぐにガルアの城に向かった。

ガルアの城に辿り着くと後ろの三人が不思議そうに聞いてくる。


「ガルア様の城で一体何するの?」

「何か面白いものでもあるのか?」

「面白いって言うか見て欲しいものがある。ここだ」


俺はミカの墓の前で足を止める。


「何これ?石?」

「花が沢山置かれているのじゃ」

「これが僕達に見せたかった物ですか?」

「ああ、ここにはミカが眠ってるんだ」


そう言うと3人は困惑の表情を浮かべる。


「それってどういうこと?」

「お墓って言うんだけどさ、ミカの骨をこの下に埋めてあるんだ。そうすればいつでもミカに会えるだろ?ここで手を合わせて心の中で言葉を投げ掛けるとミカに聞こえるんだ。だから、皆にも伝えたくて…………」


こういった風習はこの世界にはなさそうだったからな。

このままミカを弔う事もせずに終わらせることは、俺には出来なかった。


「そう言うことですか。初めて聞きました。また新たに生まれ変わる為に以前の体を完全に失くして自然に帰すと言う風習はありましたけど」

「まあ、全部燃やすんじゃなくて、こうして骨だけでも残してミカの居場所って言うか帰る場所を残したくてな。まあ、俺も思い付きでやったわけだからあれだけど…………」


そういえば、よくよく考えてみたら何で俺墓参り言ってないんだろ。

おじいちゃん、おばあちゃんの遺影が家には無かったから生きてるからだと思ったけど、そうか元々居なかったからなのか。

聞かなかったから分からなかったけど、そう言うことだったのか。


「なあ、ミカは死んでしまったのか?」

「っ!?」


そういえば、デビは悪魔の姿になってたから知らなかったのか。

するとミノルは優しくデビの頭を撫でる。


「ごめんなさいデビちゃん。色々あって伝え忘れちゃって」

「すまん、デビ。本当はもっと早く伝えるべきだったんだけど」

「良いのじゃ。バタバタしてしまったからのう。そうか死んでしまったのか………」


そう言ってデビはお墓に近づき、しゃがみこむ。


「ミカは頑張ったんじゃのう。最後まで戦ったんじゃな。死ぬのは別に悲しいことじゃないのじゃ。命ある者は必ず死ぬものじゃ。だから、仕方の無いことなのじゃ」


そうか、デビは悪魔だから死者との交流が多いのか。

俺達よりも死についてより身近に感じてるって事だよな。


「墓の前で手を合わせるんじゃったな」

「ああ」


すると、デビは手を合わせ意志疎通をするかのように目を閉じる。

俺達も同じ様に手を合わせて目をつむる。

1分経った頃に俺は目を開けた。

他の皆も同様に目を開けるがデビは目を閉じている。

そして、少し経った頃に目を開けた。

それからデビは晴れやかな様子で俺達の方を見る。


「それじゃあ、帰るとするかのう」

「そうね。お腹も空いてきたしね」

「それじゃあすぐに作りますね」

「じゃあな、ミカ!また明日な!」


最後にミカの墓にお別れを告げて、俺達は自分の家に戻っていった。

それからご飯を食べ終えて、俺は自分の部屋に戻っていた。

椅子に座りライトを付けて机に置いてあるミカの日記を見つめる。


「ミカ、見させてもらうよ」


俺は覚悟を決めてミカの日記を開いた。

始めに日記を書き始めた経緯が書いてあった。

お母さんに文章の練習として日記を書くことになったみたいだ。


「ん?待てよ、お母さん?」


たしか、ミカはお母さんは自分が生まれた時に死んでしまったって言ってなかったか?

俺は急いで次のページをめくる。

すると、お父さんのことについて書かれた部分があった。

お父さんも生きている?


「死んでなかったんだ2人共、じゃあ何でミカは死んだってことにしたんだ?」


色々とおかしい点がある。

この日記を読んでいくと特に平和そうに見える。

復興の時期じゃなかったのか?

買い物へ行ったり友達と遊んだり普通の生活をしている。


「ん?学校?学校なんて合ったのか?」


俺が知らないだけでもしかしたらあるのかもしれない。

ここら辺は調べてみないと分からないな。

すると、ある日を境に日記に変化が見られた。

今まで、面白かったとか楽しかったとか喜びの感情を書いている事が多かったが10歳を気に不安や痛みなど悲しいことばかり書いている。


「何が起きたんだ?」


さらに読み進めると父親による体罰学校でのいじめ、お母さんの育児放棄など明らかにミカが厳しい環境におかれているのが分かった。


「何なんだよこれ。一体何が起きてるんだ」


ミカの言ったこととの食い違いそして、この日記から分かるミカの日々の体罰と痛み。

痛い、やめて、苦しい、助けて、これらの文字ばかりが日記に書かれている。

もう日付は書かれていない。

楽しかった日々が絶望の日々へと変わっていく、ミカはこんな経験をしてたのか。

すると、乱雑な文章からキチンと線に沿った文章に変わる。


「知らない人が2人やって来た。目の前でお金をお父さんとお母さんに渡してた。お父さんとお母さんは嬉しそうだった。私はその人に手を捕まれた。怖かったお父さんとお母さんは私のことを見てくれなかった。助けてくれなかった。私はそのまま連れてかれた。怖いよ暗いよ助けてお父さんお母さん…………どうなってるんだ?」


その後の日記はあまりにも酷かった。

ほぼ言葉を書けてはいなかった。

精神が壊れるほどの何かを体験させられたんだ。

謎の男、それを見て見ぬふりする大人たち、お金を渡して子供を買ったってことか?

てことは親は自分の子供を売ったのか?


「ありえない。こんなことが本当にあるのか?」


日記に書かれているのだから本当だろう。

黒く塗りつぶされたその後の日記は何も書かれていなかった。

だが、最後の方で新たに文字が書かれていた。


「これは、最近のやつか?」


これは俺の知っているミカが書いた日記だった。


「ガルア様の元で働くことになった。私は事故により記憶を失っているみたいだ。確かに私自身記憶がない。正直言うとこの世界が分からない。そう相談したら私が昔書いていた日記をくれた。日記の内容を見てみるとあまりにもひどい内容だった。私はこんな人生を本当に送ったのだろうか?信じられない。だから、記憶が戻るまで信じないことにした。いつか戻ると良いなー」


ミカ自身記憶がなかったのか。

その後ガルア様の元に居て起きた出来事を毎日ではなく、思い付きで書いてあった。

ハイトはやはり、最初の頃はミカの事を敵視していたみたいだ。

この日記を見せたらハイトはさらに落ち込むだろうな。


「あっこれって俺の家に来た時のやつか?」


俺は早速その部分を読み始めた。


「今日、かつ後輩の家に行った。かつ後輩の仲間は皆優しくて暖かかった。そんなに仲もよくないのに話を聞いてくれたり、逆に話をしてくれたりと本当に優しかった。私もこんな人達が近くに居てくれたら良かったのにな。そんなことを思ってしまう私は贅沢かもしれない。今でも十分幸せだし、それにこんな私に居場所があるって気づけたから。もうすぐ島王選だ、間違いなく大変な1日になると思うけど天才な私とかつ後輩なら絶対勝てる」


日記はそこで終わっていた。


「……………」


読み終わったあと何度も頭の中でミカの言葉が繰り返される。

『私が生まれた時に母親は死んじゃいました』

『父親はモンスターに襲われました』

『私天才じゃ無いんですかね?』

『死にませんよ、私』


「もっと早く気づいてあげれば何か変えられたのか?」


過ぎたことを後悔してももう遅い。

それが、現実だ。


「これしかないんだよな。俺が後悔したらミカに悪いよな」


窓を見ると外はもう真っ暗だった。


「そろそろ寝るか」


明日は早速調査に行こう。

俺はそう思いベッドに横になった。

次の日


「うーん………もう朝か」


俺はすぐに下に降りて歯を磨く。


「ご飯出来ましたよー!」


リドルの声で他の人達も下に降りていく。

いつもの日常、何気ない日々かようやく始まる。


「おっ!旨そうだな」

「もう出来てますから早く食べましょう」

「そうね。ふわぁー眠たいわ」


あくびをしながらミノルも席に座る。

ご飯の前で顔を合わせる仲間たち、そうこれこそが俺が求めていた平和だったんだ。


「それじゃあ、食べましょうか」

「ちょっと待って、デビちゃんが居ないわ」


デビの席を見るとそこには誰もいなかった。


「あれ?珍しいなデビが朝ごはんで遅れるなんて」

「何かあったのかしら。私見に行ってくるわ」


そう言ってミノルはデビを起こしに行ってしまった。

まああいつもまだ本調子じゃないのかもしれないな。


「今日も墓参り行くんですか?」

「まあな、お前も行くのか?」

「そうですね、僕も行けたら行こうと思います」


こうやって食卓を囲み何気ない会話をする。

こんな感じも久しぶりだな。

今日はミカの墓参りを終えたあと何をしようか。


「リドルー!!かつー!!」

「っ!?」


その時上の階からミノルの叫びの声が聞こえる。

リドルと俺は互いに顔を合わせると、すぐに上の階に向かった。

何気ない日常を取り戻したはずなんだ。

みんなで頑張ってこうやってまた集まれたんだ。

何も心配するはずはない、そう思っていたんだ。


「どうした!?ミノル………」


俺はすぐに部屋の中を確認する。

ミノルは部屋の中にいた、だが棒立ちのまま動こうとしない。

すぐに視線を移動させる。


「嘘だろ………」


皆で食卓を囲み、他愛のない話をして、笑ったり、喧嘩したり、冒険したりするそんな日常を。

取り戻したはずなのに。

そこにはデビの姿がなかった。



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