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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十五章 ようこそ地獄へ
358/827

その二 十二魔道士の解体

「ええ!?十二魔道士制度の撤廃!?」

「何じゃミノル!急に大声を出すでない!」

「ああ、ごめんね。ていうか、それほんとなの?」


ミノルは冷静に質問する。

デビは再び干し芋を食べ始める。


「本当だよ~掲示板見ていく~?」

「いえ、良いわ。リツが言うなら本当なんでしょうね。でも、何でこのタイミングで?」

「さぁ~?分からないよ~」


そう言ってリツは先程淹れた紅茶を飲む。


「何か、すごく嫌な予感がするのよね。黒の魔法使いの件といい、何かすごく良くないことが起きそうな気がするの」

「ミッちゃんの周りは~いつも大変そうだよね~」

「私の周りって言うか、かつの周り?かつがこの世界に来てから色々あったわよね」


そう言ってミノルも紅茶を飲む。


「確かにそうだね~私もぜっちゃんと会ってから~色々あったな~」


そう言ってリツは懐かしそうに遠くを見つめる。


「もしかしたらかつって私達助けてくれる為に来てくれたりして」

「私は~ミッちゃんを助けるために来たと思うな~」

「何よそれ」

「だって~今のミッちゃんすっごく幸せそうだもん~」

「ま、まあ、皆と一緒に居られて昔よりは幸せかもしれないわね」


そう言ってミノルはコップの縁をなぞる。


「ところで~」


すると、リツがミノルの座っている椅子に割り込んで半分座る。


「な、何?」

「ぜっちゃんとはどんな感じなの?」

「っ!?は、はぁ!?ななな、何言ってんのよ!」


ミノルは動揺のあまり紅茶をこぼしそうになる。


「ミッちゃんて本当に分かりやすいね~」

「そ、そんなんじゃないから。からかわないでよ」


そう言って頬を赤くする。

それを見ながらリツはニヤニヤと笑みを浮かべる。


「かわいいね~ミッちゃんは~恋する乙女は美しいね~」

「もう、やめてってば」

「でも~本当に早くしないと~取られちゃうよ~ぜっちゃんは~優しいから~ライバルも多いんじゃない~?」

「そんなこと………」


その時ミノルは今日の出来事を思い出す。

メイが別れ際にかつに行ったあのキスを。

それを振り払うようにミノルは頭をブンブンと振るう。


「もしかして~本当だった~?」

「違うわ!そんなわけないんだから!」

「何の話をしているのじゃ?」


すると、デビが突然会話に入ってくる。


「デビちゃん!?何でもないからね!干し芋食べてて!」

「もう失くなっちゃったのじゃ」


そう言って空になった袋を見せる。


「そうなの、それじゃあもう行きましょうか!」


ミノルはすぐに店を出ようとする。


「ええ!もうちょっと居たいのじゃ」

「わがまま言わないの。子供じゃないんでしょ。ほら、晩御飯のお買い物に行きましょう」

「しょうがないのう。リツ!また来るのじゃ!」

ーーーーーーーーーーー


その頃各地の王は十二魔道士に会議の結果を報告をしていた。


ネッパニンス

2人の十二魔道士は王の間に来ていた。

そして、王の席にカノエは座っていた。


「よっ!完全復活したみたいだなお前ら。町の復興も手伝ってくれたみたいだし、まっこの町はさほど被害はなかったけどな。ガハハハっ!」

「カノエ様こりゃどういうことですか。俺は納得いきませんよ!」


エングは見せつけるようにして掲示板に張っておいた紙を取り出す。


「俺達に相談もなしに十二魔道士を解体するなんて。俺達は用済みってことですか?」

「そう言う訳じゃねぇよ。ただ単に島王選が開催されなくなったから、十二魔道士の必要性も失くなっただけだ」

「だからって俺達はまだまだやれます」

「ああ、十二魔道士として残らせてくれよ!」

「1度言ったことを覆せるわけねぇだろ。十二魔道士は解体だ」


カノエは二人の言葉を聞きつつも頑なにそれを言い続ける。

二人はそれでもなお納得出来ずに食い下がる。


「でも―――」

「お前ら何か勘違いしてないか?」

「え?」


すると、王が立ち上がる。


「別に十二魔道士を解体するだけでお前らをやめさせる何て一言も言ってないだろ?」

「そ、それじゃあ」

「今後は俺の右腕として大いに働いてくれよお前ら」


そう言ってカノエは2人に手を伸ばす。

それを見た二人は先程までの苦悶の表情は晴れ、迷いなく答える。


「っはい!!」

「がっはっは!当たり前だ!」

「ガハハハ!そうか!当たり前か!さすが俺が選んだ十二魔道士だな!」


3人の笑い声が王の間に響き渡っていた。


ウォータープラメント

ミュウラとミズトとナズミは一緒に朝食を食べていた。

これはいつも日課で行われていることだが、今日だけは何かが違っていた。


「…………………」


黙々と静かに食事をしている中1人だけソワソワとしていた。

それに気づいていたミュウラは食事の手を止める。


「どうしました?ナズミ、あまり食事に集中できないのだけれど」

「すみません、ミュウラ様」

「言いたいことがあるのなら、言ってごらんなさい。神は言っています、すぐに言えと」

「分かりました」


ナズミは持っていたナイフとフォークを置く。


「十二魔道士を解体するというのは本当なのでしょうか」


恐る恐るナズミはミュウラに尋ねる。

それを聞いたミュウラもナイフとフォークを置く。


「本当です。十二魔道士は今日を持って終わりです。だから、あなた達も今日で解散です」

「それは―――」

「それは納得いきません!」


その瞬間、ミズトが席を立つ。

ミズトの思わぬ行動にナズミは目を丸くさせ驚く。


「お、お姉さまが大声を出すなんて」

「私はまだあなたの傍を離れたくありません。まだ、あなたの傍で働きたいのです。誰かではなくミュウラ様の傍でミュウラ様のために生きていきたいのです」


その熱意に当てられナズミも慌てて伝える。


「私も同じです!ミュウラ様には沢山のことを教えてもらいました!沢山の経験をさせてもらいました!だからこそ、恩返しがしたいのです!どうか、お傍に居させてください!」


そう言って2人は頭を下げる。


「ふふ………あはははっ」


すると、ミュウラが突然笑い出した。

その声を聞いた二人が下げていた頭をかすかに上げる。


「ミュウラ様が笑うなんて珍しい……」

「ごめんなさい、まさかここまで思いが一緒とは思わなくて。私もあなた達と一緒にこれからを歩んでいきたいと思っています」

「それじゃあ………」

「そうですね。これからは十二魔道士ではなく、私の側近としてこれからも傍に居てくれますか?」


そう言ってミュウラは優しく微笑んだ。


「もちろんです」

「ミュウラ様と一緒なら何処へでもお供します!」

「ありがとう」

「後もう1つ聞きたいことがあります。なぜ島王選を行わなくなったのですか?ミュウラ様は島の王を辞退されたということですか?」


ミズトはもうひとつの疑問をミュウラにぶつける。

それに対してミュウラは静かに頷く。


「島の王はもういいと思いましたので、辞退しました」

「それで、よかったんですか?」

「はい、私はこの島の王よりもこの町の王が合っていますから。がっかりしました?」

「そんなことはありません。私の王はミュウラ様だけですから」


そう言って3人はこれからも共に向かっていくことを誓った。


ウォームウッズ

巨大樹の中に作られた城でシンラはいつもの朝読書を楽しんでいた。

そんな時、部屋の外から騒がしい足音が聞こえてくる。

そして、勢いよく扉が開いた。


「はあ、はあ、はあ」


息を切らしながら、ピンカとイナミが突入してくる。

シンラは栞を挟み本を閉じると、その二人に優しい眼差しを向ける。


「どうしたんですか?そんなに慌てて」

「こ、これってどういうことですか!」

「聞いてないんですけど!!」


そう言って2人は掲示板の紙をシンラに押し付ける。


「ああ、これですか。そう言えばお伝えしておりませんでしたね」

「お伝えしてないって普通言うでしょ!」

「そうですよ!何で言ってくれないんですか!ていうか、解体ってどういうことですか!」

「えっと、2人共落ち着いてください。興奮しすぎですよ」


その言葉を聞いて2人は興奮を抑え冷静になる。


「それで、どういうことなんですか。説明を求めます」

「これは会議で決めたことです。私達は島の王になる権利を破棄しますので町の王を存続させるという約束をしました」

「つまり、島の王にならないから島王選も必要ないし、十二魔道士も存続させる理由もないから解体させるってことですか?」

「そう言うことです。イナミは賢いですね」


そう言ってイナミの頭を優しく撫でる。

イナミは少し恥ずかしながらもそれを受け入れる。


「あ、ありがとうございます」

「それじゃあ、私達はクビということですか!?」

「え?違いますよ」


その言葉にシンラはキョトンとする。

釣られてイナミも目を丸くさせる。


「え?違うんですか?」

「あなた達は今後も私の護衛兼付き人として活動してもらいます。肩書きはありませんけどそれで不満はありませんよね」

「ありがとうございます!これからもシンラ様の為に尽力していきます!」

「本当にいいんですか?」


すると、ピンカは納得がいかないのかあまり嬉しそうではなかった。


「どうしたの?嬉しくないの?」

「嬉しいとかそう言うのじゃなくて、シンラ様の傍に私は居ていいのかと思って。シンラ様はもっといい人を雇った方がいいと思います。自分はそんなに器用ではないし、皆から嫌われていますし、別に自分は気にしませんがシンラ様の名誉が傷付いてしまうのではないかと」


普段の勝ち気は性格とは反するような消極的な態度を示す。

すると、シンラはピンカを優しく抱き締める。


「私はこの町の王であります。民の為にも最善の選択をして来ました。そして、どの選択も1度も後悔したこともありません。ピンカもそうです。私はあなたが良かったから選んだのですよ」

「シンラ様………」

「これからです。何事もこれから変われば良いのです。期待していますよ、ピンカ、イナミ」


耳元で囁くようにピンカに伝え、そしてイナミは向けられた視線に答えるように頷いた。


「……はいっ!」

「ピンカ、泣いてるのか?」

「泣いてないわよ!!」

「がはっ!?」


そして、イナミは殴られた。

だが、今までよりもその拳は優しかった。


キンメキラタウン

ムラキはサラとガイに会議で決まったことを報告していた。


「と言うわけだ。だから、お前らを縛るものは無くなったし、お前らがここに残る理由もなくなった。俺様は島の王にはなれねぇし、お前らも俺様に従う理由もねえ」


ムラキは不満そうに二人にそう告げる。

サラとガイは特に驚く様子も見せずにその事実を受け入れていた。


「へぇそうなのかい。ずいぶん急に決まった事だね。何か裏がありそうだけどね?」

「俺様は何も知らねぇよ。他の奴らが勝手に決めやがった。俺様は反対だったけど、1人だけが反対したところで意味ないからな。俺様を子供だと思ってなめてやがるんだ。パパなら何か知ってたかもだけど」

「そうなのかい。それじゃあ、あたいらは好きにさせてもらおうかね。ガイ!あんたはどうするんだい」

「うーん、俺は別にここに残りたいとは思えねぇしな。戦えないならここに居る意味ねぇし」


その言葉を聞いた瞬間ムラキは少しだけ寂しそうな顔をする。

だがすでに鋭い目つきに戻ると怒鳴り声を上げた。


「そ、そうかよ!なら勝手にしろよ!」


そう言ってそっぽを向く。


「そうかい。それじゃあ、今までお世話になったね」


軽い挨拶を済ませるとそのまま2人は出ていってしまった。

そしてそこには家臣だけが残った。


「ああ、せいせいしたよ!こっちだって願い下げだ!忠誠心の欠けられも無いような連中が居ても困るしな!」


ムラキの声だけが部屋に響き渡る。

答える者が誰もいないため気まずくなったムラキは堪らずに声を荒げる。


「ま、まあ帰ってきたいんだったら今なら許してやってもいいけどな!しょうがない奴らだ全く!扉のところに居るんだろ!早く入ってこい!」


だが、誰も答えるわけでもなく静寂だけがその答えを言っている。


「じょ、冗談だろ!本当はそこに居るんだろ!俺様を困らせようたってそうはいかないぞ!」


静寂の中でムラキはその言葉の答えを待つ。

だが、誰も答えてはくれない。


「ああもう!分かったよ!俺様が悪かった!帰ってきてくれ!お前らがいないとどうしていいか分からないんだよ!護衛がいないと外もろくに歩けないし、心配だよ!」


ムラキは椅子から降りて駆け出すと扉を勢いよく開ける。

だが、そこには誰もいなかった。


「ほ、本当に居ないのか?本当に出ていったのか。嘘だろ……そんな………帰ってきてくれよーー!!」


ついにムラキはその場で泣き出してしまった。


「たくっやっぱりまだまだ子供だね」


呆れたような声が聞こえてくると、ムラキの前にサラとガイが現れた。


「お、お前らなんで」

「泣き虫王が心配だって師匠が言うからよ。仕方なく戻ってきたんだよ」

「ばっ!何言ってんだい!あたいはこの町が心配だって言ったんだよ!」

「帰ってきてくれるのか?」


鼻水と涙でグショグショになった顔で2人見上げる。


「地位と精神が合ってないんだよ。まだあんたは子供だからね、一応約束は守らないといけないんだ。立派な王にするってね」

「まっ俺はどっちでもいいんだけど、この城に居た方が面白そうだからな」

「お、お前ら~!!!」


そう言ってムラキはサラの胸に飛び込む。

サラはそれを仕方なく受け止める。


「ははっ本当に子供だねあんたは」


すると、どさくさに紛れて胸をもみだした。


「っ!?調子に乗るんじゃないよ!!」


その瞬間、ムラキをぶん投げた。

そのまま空中にムラキの体が吹っ飛んでいく。


「ぎゃああああ!!!」

「あははっ!!なにやってんだよお前!」


こうして、サラとガイは城に残ることを決意した。


カルシナシティ

風間はツキノとマイトにすぐに報告をしていた。


「まあ、俺自身正直言って十二魔道士は解散するがお前らをクビにするつもりはない。お前らの仕事ぶりは俺も評価してるし、出来るなら今後も活躍してもらいたい。まあ、お前らが良ければだけど」


内容を聞き終えた二人はそんな風間の提案に肯定的な視線を見せる。


「そうですね。僕自身は今後とも風間様に使えていきたいので、護衛として雇ってもらえれば全然問題ないですよ」

「じゃあ、今後ともよろしくな。それじゃあ、ツキノだけど体は大丈夫なのか?」


風間はツキノの方を見る。

ツキノの体はほとんど傷がなく、顔色も良くなっていた。


「はい………」

「そうか、ツキノはどうしたい?一応ガルアの十二魔道士からこっちに移籍したわけだけど、戻りたいのならそれでいい、お前はどっちがいいんだ」

「……………風間様は……どうしてほしいですか………」


まっすぐに風間を見つめる。

逆に質問されたことに対して風間は咎める様子を見せずに律儀に答える。


「俺は残ってもらった方が嬉しいけど」

「……………そうですか」


風間はツキノの意図が分からず少し困惑する。

そんな様子を見かねたマイトがフォローに入る。


「ツキノさんは正直に言って欲しいと思います」

「え?何をだ?」

「残って欲しいと」


その言葉を聞かされて風間はようやく理解する。


「そう言うことか。分かった。えっと………ツキノここに残ってくれないか。俺にはお前が必要なんだ」

「……分かった………残ります」


風間の言葉にツキノはすぐに答えだした。

残ると言われたことで風間は安心するように胸をなでおろす。


「そうか、ありがとな」

「よかったですね」

「まあな、ありがとなマイト」

「感謝はいりません。僕もツキノさんには残ってほしかったので」


そう言ってマイトは部屋を出ていった。


「そろそろ時間だな」


シアラルス

ガルアは地下室にいるハイトの所に向かった。


「よっ!どんな感じだ?」

「あっガルア様………今のところは何もありません」


ガルアに気づいたハイトはすぐに姿勢を正し、お辞儀をする。


「そうか、会議で俺が島の王に正式に決定になった。今後は替わることはねぇ」

「っ!?他の王が辞退したんですか?」

「まあ、そう言うことだな」


ハイトは信じられないという表情をしているが、ガルアが嘘をつく意味はないと思い信じる。


「てことは十二魔道士は失くなったってことですか?」

「ああ、だから今後はお前以外を雇うことはない。すまねぇな、ミカの遺志を継ぐって言ったのに」

「戦いだけが全てじゃないですから。この町と島のために頑張りますよ」

「そうか、頼りにしてるぞハイト」

「……ちょっと席を外してもいいですか?」

「ん?どっか行くのか?」

「会わなきゃいけない人達がいるので」


そう言ってハイトはテレポートをした。



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