表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十四章 黒の時代
350/827

その二十五 仲間の帰り

「な、何なんだよ……あれ」


それはデビの頭上に現れた謎の球体。

それ自体がまるでこの世のものとは思えないほどの不気味さと妖しさを醸し出していた。


「あの球体に何かが集まってる?」

「分けられたゲートを1ヶ所に集めている。それにより完全なゲートを作ろうとしている」


あの球体の影響なのか天候が悪くなり、強烈な風と雷が鳴り響き、雨も降り始め嵐のようになる。


「怖くないのかよ」

「何がだ?」

「地獄と繋がったら魔力暴走で死ぬんだぞ。体が弾け飛ぶんだぞ。それはお前だって同じだろ。自分も死ぬことになるんだぞ!」

「死は怖くはない。むしろ喜ばしいことだ」

「死ぬのが嬉しいってことかよ」

「生き残るのは人間だけでいい」


そう言って俺に冷たい視線を向ける。

こいつ、本当に何が目的なんだよ。

半獣を殺すことに何の意味があるって言うんだよ。


「人間を生かしたいんだろ?でも、ゲートを完全に繋げたら悪魔もこの世界に来ちゃうんじゃないか。そうしたら、人間も殺されるだろ」

「それはあり得ない」


こいつ、そんなはっきりと。


「そんな根拠どこにもないだろ」

「そもそも悪魔がこの世界に来るメリットがない。それに自由に行き来できるのに、この島には悪魔が2体しか居ない。それはこの世界に来る必要がないと言うことだ。以上の事を踏まえ悪魔が来る可能性はない」

「じゃあ、何でラルダはこの世界に来たんだよ。その理由を何も知らないんじゃないか。もしかしたら、この島の半獣を殺すこと事態が奴の作戦だとしたら。半獣を殺してこの島を……いや、この世界を支配するためだとしたら?どうするんだよ!奴の掌で踊らされてるんじゃないのか!?」


なるべく時間を稼ぐしか今俺が出来る方法はない。

ここを離れるわけには行かないんだ。

今は捕まっているが、奴が動揺して油断した隙に振り払ってやる。


「奴はただの暇潰しだ。そして、この世界を支配することはまず不可能だ」

「な、何でそんなこと言えるんだよ」

「貴様に言う権利があるのか」

「っ!それは……」

「そこで大人しく捕まってろ。どちらにしろもうじき弾け飛ぶことになるのだから」


こいつの言葉の言い回しに何かを感じる。

こいつは一体、何を考えているんだ?


――――――――――――――――――

「グアアアアァァアア!!!」

「きゃあああ!!」


現在ミノル達は足場を攻撃されて逃げ回っている状況だった。


「ミノルさん!早くこの岩に飛び移ってください!」

「うん!はあっ!」


ミノルは新たに作り出された岩に飛び移った瞬間、先程乗っていた岩が破壊されてる。


「デビっち激おこ悪魔モード入っちゃってるよ!」

「完全に意識を失っていますね。これじゃあデビさんを誘導できませんよ」

「分かってるわ。でも、ここで止まるわけにはいかないわ!っ!来るわよ!飛び移って!」


ミノル達は現状攻撃される前に岩に飛び移ることしか出来なかった。

だが、そんなことをしてる間にも扉は少しづつ開いていく。

そんな様子を下にいるイナミ達は不安げに眺めていた。


「ミノルさん達大丈夫でしょうか。あんな状態になってしまって、もしかしたらもう意識を失ってるんじゃ」

「ていうか、どう考えてももう無理でしょ!こっちだってなけなしの魔力使って足場作るのも限界なのよ」

「あっ!そういえば………はいこれ」


すると、イナミは思い出したかのように数個の魔石と回復のポーションを取り出す。


「数は少ないけどこれで何とかしのごう」

「ていうか、あんた……持ってるなら先に言いなさいよ!」


そう言ってイナミの頭を殴って勢いよく魔石を回収する。


「痛い……何で殴られなきゃいけないんだ」

「大丈夫ですか?イナミさん」

「ありがとう、ナズミ。こう見えて殴られ慣れてるから、ははは」

「それはよかったです」

「あんた達何無駄話してるのよ!早く手伝いなさい!」

「分かってるよ!」

「はい!」


イナミ達は魔石を握りしめてピンカを手伝う。

足場へとミノル達が飛び移るがそれも限界が近づいていた。


「くっ!このままじゃキリがないわ!」

「逃げることしか出来ません!デビさんの動きが落ち着いてくれれば何とか出来るんですけど」

「デビっち激しすぎだよ!私もうくたくた!」

「他に作戦はないの?」


そう言ってミズトは剣を取り出し3人に質問する。

答えが出なければ殺しに行くつもりだ。


「私に作戦があるわ」

「え?作戦ですか?どんなのですか」

「私も手伝うよ」

「皆はここに残っててもしもの時が合った時に任せたから」


すると、ミノルはピンカの方を向く。


「ピンカさん!デビちゃんに近い所に岩を展開して!!」


突然のミノルの発言にリドルは思わず目を丸くさせる。


「っ!?本気ですか!?今のデビさんは無差別に攻撃をします!近づけば殺されてしまうかもしれないんですよ」

「そうだよ!ミノッち!冷静になろうよ!」

「大丈夫、これくらいの事をしないとデビちゃんは帰って来ないと思うから。それにこれ以上デビちゃんの苦しむ姿は見たくないから」


そう言ってミノルは2人に微笑んだ。

すると下からピンカの大声が聞こえてくる。


「本当にいいのね!」

「ええ!お願いするわ!」


すると、デビの近くに岩が展開される。

それにミノルは岩を伝って向かう。


「デビちゃん!苦しいよね!今助けて上げからね!」

「ガアアアアア!!」


その瞬間、デビはミノルに向かって拳を振るう。


「っ――――――――」

「魔剣水式、流し打ち!」


ミズトはその間に魔剣を滑り込ませるとデビの拳が大きくミノルから逸れる。


「っ!ありがとう、ミズトさん」

「もう防げないわ。次来たら逃げなさい」

「大丈夫。私は逃げないわ。だからミズトさんはここを離れて、私に任せて」


そう言ってミノルは真っ直ぐな目でミズトを見る。

ミズトも静かにそれを受け入れると魔剣をしまう。


「………分かったわ、あなたに任せる」

「ありがとう、ミズトさん」

「責任取ってきなさい」


そう言ってミズトはその場から離れる。

デビと一番近く岩場に一人で立ちながら、ミノルは大声でデビに語りかける。


「デビちゃん!覚えてる!初めて会った時のこと!初めはただの小さな女の子だと思ってたけど、でも誰よりも勇敢な女の子だってあの日から気づいてたよ!」

「ガアアアアア………」


その時、先程まで無差別に攻撃していたデビの動きが止まる。


「落ち着きましたね……」

「ミノッち………」

「デビちゃんにはいつも元気をもらった!デビちゃんが皆が居たから私は毎日笑顔でいられたんだよ!本当にありがとう!」


デビはミノルの話を聞いているのか、暴れる様子はなく真っ直ぐミノルを見ている。

その瞳は見ただけで誰しもが身震いするほどの物だったが、ミノルは臆することなく話しかけ続ける。


「結婚式の事覚えてる?デビちゃん達、私のために色々してくれたよね。私が勝手に居なくなって、皆が私を助けにお城に来てくれた時、本当に嬉しかった。デビちゃんが一目散に私のところに来てくれた時、本当に涙が出そうな位嬉しかったの。デビちゃんは怒る訳じゃなく、会いたかったって、寂しかったってそう言って涙を流してくれた。自分のために涙を流してくれる人が1人でも居るだけで、救われた。だから、今度は私がデビちゃんを助ける。デビちゃんをこれ以上苦しめない!だからデビちゃん、戻ってきて!」

「グオオォォオ…………」

「デビちゃん!」

「はあー!しょうもな、見てて鳥肌もんだよ」


すると、ラルダが退屈そうに話に入ってきた。


「要は自分のために何かしてくれてありがとう。自分は助けるべき者だとそう言いたいだよね」

「違う!私は―――」

「何も違くないよ!君達は自分のことばかりで、彼女の事を1度も見ようとしなかった。だからこそ彼女が何者かすら気付かなかったんじゃないの」

「そんなことない!私はデビちゃんをちゃんと見てる!」

「助けてくれてありがとう!一緒に居てくれてありがとう!それはお前の気持ちだ。彼女は本当に一緒に居たかったか?辛かったんじゃないのか?仕方なくここに来たんじゃないの?彼女を苦しめてたのはお前らだったんじゃないのか?お前らと一緒に居たからこんなことになったんじゃないのか」

「ちょっとー!さっきから何も知らないくせに―――」

「外野は黙ってろ!!」

「っ!?」


そう言ってメイ達の言葉を遮った。

先程までの余裕っぷりが嘘かのようにラルダの言葉の端々に焦りが見えた。


「お前が本当にデビを信じてるのか、デビを大切に思ってるのかテストしよう」


すると、指を弾いた瞬間デビに雷が落とされる。


「ッグアアアアア!!」

「デビちゃん!!」

「言葉だけじゃ何とでも言えるよ。要は行動で示せってこと」

「ガアア………オオオオオオ!!!」


雷による一撃で落ち着いていたデビが段々と激しさを増していく。


「まずい!デビさん、また攻撃をしようとしてます!」

「デビとお前の絆が本当なら君は死なないだろう。でも、偽物ならお前は死ぬ。逃げてもいいよ、でもそれはデビから逃げたことになるけど」

「安心して、私は逃げないわ。もう何処にも行かないから」

「ははっ相変わらず生意気な所は変わらないね」


すると、デビが少しづつミノルに近づいていく。

その度に島全体が揺れる。


「アアア………ガアアアアア!!」


その瞬間、ミノルに向かって拳が繰り出された。

だがミノルは岩場から降りることなく、その拳と対峙する。


「………………っ?なっ!?メイ!リドル!」


拳がミノルの直前で止まる。

そこには風の魔法でデビの拳を止めるリドルとメイの姿があった。


「そのテスト……」

「私達もやるよ!」

「お前ら……邪魔しやがって。うせ――っく!」


その瞬間、攻撃しようとするラルダをミズトが止める。


「これ以上邪魔はさせない」

「ちっ!」


リドルとメイは拳を魔法で止めながらデビに語りかけ始める。


「デビさん、覚えてますか?あなたが僕の作ったご飯を毎日3杯以上もおかわりしてくれましたよね。食べるために美味しいと言ってくれて、作ってる側としたらこんなに食べさせがいのある人は居ませんよ。だから、帰ってきてください!」

「デビっち、最初にデビっちと会った瞬間友達になれるって思ったよ。デビっちと一緒にいるのすごく楽しかった。これからも一緒に居たいって思った。それにまだ勝負終わってないぞ!だから、帰ってきて!」

「皆、デビちゃんが帰ってくるの待ってるから。だから、デビちゃん帰ろう一緒に。また皆で冒険しようよ!」

「ガ………アアアア……」


先程まで振り下ろしていた拳のスピードが緩む。

そして抗うようにしてデビが苦しそうな声を上げる。

それを見て、ラルダは信じられないと言った様子で目を見開く。


「っ!?力が緩んでるまさか動揺してるのか。くそっ!」

「魔剣雷式、雷鳴落」

「ぐっ!邪魔するな!」


ミズトは再び雷を落とそうとするラルダの動きを制限させる。


「ガガガカガ………」

「デビちゃん!思い出して!今までの日々と私達の絆を!」

「デビさん!負けないでください!」

「デビっち!待ってるよ!だから!」

「「「帰ってきて!!!」」」


3人の思いが言葉が、まっすぐにデビへと届いていく。

するとデビの動きが完全に停止した。

そして、ゆっくりとその口を動かす。


「っ!?………ミノ……ル……」

「っ!デビちゃん?」


その瞬間、拳を下ろして3人を見つめる。


「リドル………」

「はい、そうです」

「メイ………」

「そうだよ!デビっち!」

「思い出したのね」

「皆………仲間………」

「っデビちゃん!」


すると頭上の球体の動きが止まる。

それと同時に風が止んだ。


「まさか、意識を取り戻すなんて。予想外だったよ。絆って奴は厄介な物だね」

「…………………」


その頃かつは………………


「どう言うことだ。なぜ動きが止まった。何が起こっている」


やったのかあいつら、デビの意識を取り戻したのか。

それじゃあ、俺も自分の役目を全うしないとな!


「うぐっ……ああっ!」

「っ!何をしている。まさか、俺を振りほどこうとしてるのかっ!」


その瞬間、クラガが俺の折れた腕を思いっきり捻る。


「があっ!くっ………あああっ!」


だが、俺はそれでもクラガを振りほどす為に力一杯抵抗する。


「っ!?力が上がってる。貴様……腕が要らないと言うのか。良いだろう、望み通り引きちぎってやる」


クラガは力一杯右腕を引っ張ったが抵抗されて上手く出来ない。


『こいつ、腕が折れていると言うのに何て力だ。頭がおかしいのか。いや、違う!まさかこいつ!』


「がああぁああっ!」

「―――――っ!」


俺はジブンの力を全て使ってクラガを振り落とした。


「はあ……はあ……くっ!ファイヤーボール!!」


その瞬間、俺は空中に炎の玉を飛ばした。


「さあ……終わりにしようぜ。クラガ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ