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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十四章 黒の時代
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その二十三 脱落

「俺はクラガを探しにいく!皆はデビを暴れさせないようにしてくれ!クラガを見つけたら合図を送るから、そこに撃たせるようにしてくれ!それじゃあ、頼んだぞ!」


かつはクラガを探しにいくために1度皆と別行動した。


「それじゃあ、早速デビちゃんを救いましょうか」

「足止めするって言っても何すれば良いのよ。あんた達なら何か分かってるんでしょ」


そう言ってピンカはミノル達を指差す。


「こんな状態のデビちゃんを見るのは初めてだし、上手く行くかは分からないけど、策はあるわ」

「それじゃあ、さっさとその策ってのを教えなさいよ。じゃないと私達も動きたくても動けないの」

「分かってるわ。私が考えた作戦は食べ物で誘い作戦!」


ミノルの作戦にナズミは難しそうな顔をする。


「食べ物ってそんなもので気を引くことが出来るんですか?」

「デビちゃんは食いしん坊だからね。悪魔になっても元はデビちゃんだから、多分大丈夫だと思う」

「お仲間が言うんだから信じるわよ。それより、イナミ!あんたは1度会場に戻んなさい」

「え?何でだよ!俺だってみんなの為に何かさせてよ」


そう言ってイナミは必死にピンカに訴える。

だがピンカはそんな事を気に求めずに戻るように催促をする。


「それなら尚更1度帰んなさいよ。そんなお荷物抱えて、協力したくても出来ないでしょ」


ピンカはイナミが背負っているマイトを指差す。


「あっそっか……確かに1度帰った方がいいか」

「やっぱり足手まといは要らないわよね」

「いや、別に足手まといって訳じゃないけど、マイトの安全のためにも1度帰るよ。すぐに戻るから!テレポート!」


イナミはマイトを休ませるために1度会場に戻っていった。

そして、残りのメンバーで改めて作戦について話し合うことになる。


「それで、食べ物で誘導作戦ですけど肝心の食べ物はどうしましょうか」

「そういえば、そうでしたね。お姉さま、何か良い案がありますか」


するとミノルが自信満々に答える。


「そこは私がちゃんと考えてあるわ。モンスターを使うのよ」

「モンスターならそこら辺に沢山死んでたよ!首とかしゅぱっと切られたりしてたのが、多かったから形はそのままだったよ」

「急いでたから、一撃で殺してたの。まっいいんじゃない。彼女の言う通りモンスターならそこら辺に沢山転がってるしね」

「それじゃあ、すぐにモンスターを集めましょう。集めたモンスターはここに置きにいくと言うことで」

「別に構わないけど、あんたに命令される筋合いはないから」


ピンカは不機嫌といった様子でリドルを睨み、リドルも特に気にする様子を見せずに笑みを浮かべる。


「いや、別に命令と言うわけではないですけど」

「ピンカさん今は仲良くしましょう」


二人の空気を察してナズミはピンカをなだめる。

するとピンカはふんっと鼻を鳴らすと森の奥に行ってしまった。

その後に続いて、ミズトも森に行きナズミは何度も頭を下げながらその後について行った。

ミノル達ははその後ろ姿を見届けることしか出来なかった。


「十二魔道士って変な人が多いのね」

「気むずかしいて言うか、色々あった分警戒心も強いんでしょうね」

「確かに、あの人たちの私を見る目敵意満々って感じだったよ。特にあの長い水の棒持ってた人とか、ちょっと怖かったかも」

「大丈夫よ。少なくとも今は仲間だしね。私達も早く探しに行きましょうか」

「そうですね………あれ?」


すると、リドルが辺りをキョロキョロと見始める。


「どうしたの?もしかして、おしっこしたいの?大丈夫!ちゃんと隠れてるから行ってきなー」

「いや、そういうのではなくて」

「じゃあ、何を探してるの?」

「リツさんは何処に居るんですか?」


―――――――――――――――――――――

「はあ……はあ……」


俺はクラガが居るであろう場所に急いで向かう。


「あそこだ!」


俺はその場所に着いた瞬間絶望した。


「っ!?居ない………」


そこにはもうクラガの姿がなかった。


「くそっ!確かにずっとこんなところで待ってるわけがなかった」


どうする!事態は最悪、ミノル達がデビを上手く誘導できたとしても、俺がクラガを見つけられなかったら全て台無し。


「とにかく、早く探さないと!」


まだそんな遠くまで行ってないはずだ。

早く!早く探さないと!

俺は再びクラガを探すために走り出した。


――――――――――――――――

イナミはテレポートで会場に着いていた。


「ふう……早くマイトを休ませないと」


イナミは休憩室を探すために辺りを散策し始める。


「そういえば、試合に集中しすぎて何処に何があるか分からないな」


会場の地図を見とけばと後悔しながらもイナミは少し小走りで辺りを見渡す。


「早く、戻って助けたいのに………ん?あれ、誰かいる」


その人は挙動不審で辺りを警戒しながら走っていってしまった。


「何だ今の……あれ?そういえば、会場が妙に静かだ……」


イナミは妙に静まり返った会場に違和感を感じて、すぐに客席へ向かう。

その時客席の方から男が急いで出てきた。


「おっと!ちょっと待って!」


イナミはその男の腕を掴んだ。

すると男は慌てた様子で声を荒げる。


「なっ!?誰だよ、今俺は急いで………あれっ!?もしかしてイナミさんですか!」

「え?あっ」

『そういえば今の俺はここにいちゃ行けないんだった』


ほんの少し喋りかけたことを後悔するが、相手はそんなことを知りもしないのでグイグイ話しかけてくる。


「イナミさんですよね、背中に乗ってるのはもしかしてマイトさんですか?そうですよね!」

「えーっと……それは……」


イナミはここにいる理由を頭の中で必死に考えていた。

その間にも男はどんどん詰め寄ってくる。

その圧に若干イナミは押されていた。


「ここで何してるんですか?今競技中ですよね。ガラスが壊れちゃって今確認できないんですけど、今何が起こってるんですか?」

「えっと、その質問には答えられないと言うか」

「答えられないと……」

『まさか、こんなところで十二魔道士のイナミと鉢合わせる何て!俺の経験上はこれは何か不足の事態が起きたとみて間違いないな。このチャンス情報屋として逃すわけにはいかない』


ニヤリと笑みを浮かべるその男の正体はサキトだった。

何が起きてるのか把握する為に会場を出た直後に偶然にもイナミと会ってしまったのだ。

サキトは情報を引き出そうと次の手に出る。


「ずいぶんとボロボロですね。激しい戦いを繰り広げたみたいで」

「まあ、魔法とかが厄介だったからな」

「魔法?相手はモンスターじゃなかったんですか?」

「っ!?しまっ……と、とりあえず俺は急いでるから!それじゃ」


そう言ってイナミはその場から離れようとする。


『くっそのまま行かせて溜まるか!情報屋の交渉術を舐めるなよ』

「休憩室知りたくないですか?」

「っ!?」


その言葉に明らかにイナミは食いついた。

長年情報屋をやっているサキトはその様子を見て瞬時に察知し、さらに提案を持ちかける。


「情報交換しましょうよ。休憩室を教える代わりに今何が起きてるのか教えてください。もちろん、この会場で何が起きてるのかも教えますよ」

「………………」

「マイトさん、早く回復のポーションを飲ませないと死んでしまうかもしれません」


チラリと後ろにいるマイトにサキトは視線を送る。

すると、先程まで慌てていたイナミが冷静な口調で告げる。


「お前、何者だ?」

「俺はただの知りたがり屋ですよ」

「ちっ分かったよ。教えるから、場所を教えてくれ」

「分かりました、俺に着いてきてください」

『よっしゃあ!これで、情報ゲットだ!上手くやれば今後も情報交換できる間柄になれるかも知れねえ。そうすれば他の情報屋が持ってないような情報も自然と流れてくる!このビッグウェーブ、乗らせてもらうぜ!』

「ささっ!こっちですよー!」


サキトは内心ガッツポーズをしながら、意気揚々と道案内をする。

イナミは疑いつつも言われるがままサキトに着いていった。


「ああ、そういえば自己紹介がまだでしたね。俺はサキトって言うのでサキトですよ。サキトね、覚えてくれましたか」

「ああ」

「あっここですね。この中が休憩室なんで」


そう言ってサキトは目の前の扉を開けようとする。


「そうか、ありがとな」

「いえいえ、借りは情報をくれればいいですよ」

「情報か………すまないな」

「え――――」


その瞬間、サキトはイナミに気絶させられる。

ドサリと床に倒れるサキトをイナミは見下ろす。


「お前にやる情報は1つもない」


イナミはそのまま中に入ろうとしたがすごし考えて、倒れているサキトを担ぎドアの前に置いておく。


「少しの間だけ眠っててくれ」


イナミは再びマイトをおんぶしたまま休憩室に入る。


「よし、早くマイトを休ませて戻らないと……っエング!?それにサザミも!」


イナミはすぐにベッドで寝てる2人の元へ駆け寄る。

服は着替えられていて、回復のポーションを飲んだのか傷も治り、ぐっすり眠っている。

それを見てイナミは心の中でホッとする。


「あんたも帰ってきたのかい」

「っ!その声はサラか」


声のする方を見ると壁に寄りかかっているサラが居た。

すでに治療を受けた痕跡があり、ほんの少しだけ顔色が悪かった。

サラは背負っているマイトに視線を送る。


「マイト、大丈夫なのかい?」

「ああ、そうだマイトを休ませるために戻ったんだよ。単なる魔力不足と疲労による気絶だと思うけど、一応回復のポーションと休めるベッドを用意してくれないか?」

「回復のポーションなら、沢山あるよ。奥のベッドが空いてるからそこを使いな」

「ありがとう」


イナミはすぐにマイトを休ませるために奥へと進む。

その時、2つのベッドに視線が止まった。


「ツキノ……ガイ……お前らも」

「ガイはクラガに首を締め付けられ骨が折れてる。ツキノはもっと重症だよ。クラガによってマナを直接吸われたんだ。あともう少しで死ぬところだったんだから」

「そうなのか……お前らも地獄を見たんだな」


すると、サラがイナミの顔をじっと見る。

突然のことでイナミは一歩引く。

それを見て、サラは小さく笑みを浮かべる。


「ふっ変わったね。顔つきや気迫が以前とは比べ物にならないよ。自信がついたみたいだね」

「そんな、俺はまだ助けられてばかり」

「あたいの方が助けられてばかりさ。ガイとツキノが居なかったら、あたいもうとっくのとうにあの世行きさ」


サラは落ち込んだように下を向く。

今まで見たいに声に張りはなく弱々しい。


「マイト、早くベッドに寝かしてやりな」

「ああ、そうだった」


イナミはマイトをベッドにゆっくりと降ろす。


「ほらっ」

「あっありがとう」


サラから回復のポーションを受け取り、マイトの喉に詰まらせないように慎重に口に流し込む。


「これで後は自然と回復するな」


イナミはマイトに優しく布団をかける。

任務を果たしたことでイナミはようやく気が楽になった。


「それにしてもあたいが居なくなった後でとんでもないことが起きたようだね」


そう言って手に持ってる鏡をじっくり見る。

そこには悪魔化したデビが映っていた。


「こいつ、何者なんだい?急に現れて大暴れしてるけど、こいつの攻撃がこっちの会場を揺らすほどだし、放っておくとまずいんじゃないかい」

「それ、かつの仲間らしいんだよ」

「っ!?あのかつのボウヤの仲間……ならとんだ疫病神だね」

「っそんな、言い方するなよ」

「ふっ確かにそうだね。あそこに居ないあたいが言えることじゃないね」


乾いた笑みを浮かべるとそのまま視線を鏡に落とす。


「俺は戻るけどサラは戻らないのか?」

「あたいはもう戦いから降りた身さ。足手まといはごめんだよ」


イナミは何か言葉をつけたそうとしたが、まだ対人の話し合いには不慣れな為考えるのをやめた。


「……そうか、みんなのこと任せた」

「ああ、命かけてるやつに言う台詞じゃないんだけどね……死ぬんじゃないよ」

「分かってる」

「そうかい、ああ後1度王に会った方がいいよ。あたいも帰ってきた時にカノエ様にお会いしたからさ」

「分かった、行ってみるよ。それじゃあ」


そう言ってイナミは出ていった。


「ふふっ死ぬなか。本当にあたいが言えることじゃないよね」


残されたサラは誰に言う訳もなくポツリとつぶやいた。



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