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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十四章 黒の時代
345/827

その二十 デビ暴走

圧倒的な力を見せつけられると人は戦意を失うという。

死を覚悟するものもそう多くはない。

だけど、私はまだ諦めるわけにはいかない。

――――――――――――――――――――


「ん?まだ立ち上がろうとするの?それともまだ勝てる気で居るってことかな?」


ラルダによる無差別の魔法攻撃によりミノル達はボロボロになり、倒れてしまう。


「行かせない……地獄のゲートには行かせないわよ。この先は私達が死守する!」


そう言ってミノルは立ち上がった。

そして、それに続いて他の仲間も立ち上がる。

それを見て、ラルダは喜々とした声を上げる。


「ははっやっぱりすごいね。君達の底力って言うのかな?死ななきゃ本当に諦めないみたいだね。でも、そろそろ作戦を進めなきゃいけないから、終わらせるか」


そう言ってもう1度大量の魔法陣を展開する。

それは今の状況からして絶望の光景だった。


「はあ……はあ、もうさすがにこれ以上は無理ですよ」

「妾も限界じゃ」


『さすがにもう皆限界ね。テレポートで逃げようにもそんな時間あいつがくれるわけないし。ごめんかつ、守れなかった。後は任せたわ』


「それじゃあな。中々楽しかったぞ!」

「アイスガン!」


その瞬間、どこからか氷の塊が飛んでくる。

そして、ラルダは魔法が撃たれた方向に首を曲げる。


「お前何してんだ?」

「これ以上ミノッち達に手出しはさせないよ!ミノッち達は私が守ったらーい!」


そう言って今まで隠れていたメイが前に出てくる。


「メイさん!?魔法使えるんですか!」

「あんまり上手くは出来ないけど、このまま黙って指しゃぶしてる場合じゃないからね!私だってかつっちのパーティーメンバーなんだから!」

「メイ……そうよね!私達はかつのパーティーメンバーなんだから、リーダーが頑張ってるのに私達が先にやられてちゃかっこつかないわよね!」

「リーダーが託してくれたんですから、それに応えるのが僕達ですからね」

「妾もまだまだ戦えるのじゃ!妾達をなめるんじゃないのじゃ!」

「行くわよ!皆!」

「「「おお!」」」


掛け声と共にミノル達は再び立ち上がった。

先程まで死を覚悟していた者たちが奮起する姿を見て、ラルダは首を傾げながら考える。


「んーなるほどな。仲間の絆か。俺にはまったくもって理解できない理論だけど、これにより瀕死の人達が立ち上がったのは明白だしな。それじゃあ、その仲間の絆ってものがどれだけなのか、試してみるか」


すると、先程まで大量に作られた魔法陣が1つに集まり、巨大な魔法陣が出現する。


「なっ!?何あれ!どう言うこと!?」

「俺にはオリジナル魔法を作れる技術は無いからね。だから、まとめてみた。これは俺が持ってる全ての魔法の集合魔法陣だよ」

「そんなことが可能なんですか!?」

「奴の馬鹿げた魔力と多数の魔法陣を操れる技術を使えば可能でしょうね」

「その絆とやらでこの魔法耐えられる物なら耐えてみろよ。もし、耐えられたら君たちの勝ちだ」

「やってやるのじゃ!どっからでもかかってこい!」

「やってみろ!!アルティメット!」


その瞬間、全ての魔法が一気に襲いかかる。

すべてを飲み込もうとするその魔法に対して、ミノル達は臆することなく立ち向かう。


「レベル魔法!リュートプリズンフリーズ!」

「レベル魔法!リュートアグレッシブサイクロン!」

「デビルオンインパクト!」

「アイスガン!」


4人の本気の一撃がラルダの魔法と拮抗する。


「くぅ……ああっ!」


『さすがに威力が強いわね。でも、負けるわけにはいかない。私達しかここを止められないのなら、全ての魔力を使ってこの男を止める!』


「「「「はあああああっ!!!」」」」


その瞬間、互いにぶつかり合っていた魔法が限界を迎え爆発する。

それによりミノル達は大きく吹き飛ばされることになる。

ミノルは地面を何度も転がり、ようやく止まった頃には元の場所から大きく離れていた。


「げほっ!げほっ!はあ、生きてる?よかった、私生きてる!」


ミノルは自分が生きていることに気付き、喜びの声を上げ安堵する。


「そうだ、皆!?みんな!大丈夫!?」


ミノルはすぐに他の仲間達の安否を確認するために動き出す。

土埃を掻き分け他の皆を探す。

すると、同様に倒れているリドルの姿を見つける。


「リドル!無事なの!!」

「がはっ!だ、大丈夫です!魔力をかなり消費して今動けませんが」

「大丈夫よ。しっかり休んでて、メイとデビは」

「私はここだよー!もう辛くて動けないー!」


そう言って寝転んでるメイが手を振り上げる。

ミノルがそちらの方へで駆け寄ると、いつも通りの笑みを見せてくれる。


「メイ!よかった……無事みたいね。一緒に戦ってくれてありがとう」

「へへ~当然だよ。私だって仲間なんだから!仲間は信じ合うものなんでしょ?」

「ふふっええそうね。あとはデビちゃんだけね。土埃も晴れてきたし、そろそろ姿が見え………」


その時、デビの胸に光の矢が突き刺さっていた。


「デビちゃん!」


ミノルはすぐにデビの元に向かい、倒れている体を揺する。

すると、デビの胸元から何が落ちた。


「え?これって……首飾り?しかも欠けてる……っ!」


ミノルはすぐさまデビの刺さっていた場所を見る。

そこには傷もなく、デビの体に刺さった様子はなかった。


「よかった………首飾りが防いでくれたのね」


そう言ってデビを抱き締めるがデビはそれを突き放す。


「デビちゃん?」


デビの表情を見るとまるでこの世の終わりのような絶望的な表情をしている。


「逃げ……じゃ」

「え?」

「早く逃げるのじゃ!はやく、今すぐ!ここから!妾が暴走する前に!」

「え?ちょっデビちゃん?何を言ってるの?」

「早くするのじゃ!じゃないと取り返しのつかない―――あがぁっ!?」


その瞬間、デビが突然苦しみだしてその場でうずくまる。

突然のデビの症状にミノルは困惑しながらも、デビへと駆け寄る。

それは他の仲間も同様だった。


「デビちゃん!?ねえ、どうしたの!」

「デビッち苦しいの?私が癒しのキスしてあげようか?」

「どう言うことでしょうか。デビさんの身に一体何が」

「ははははっ!あはははは!」


するとラルダが突然高笑いをし始める。

空中には悠然とこちらを見下ろすように浮遊している、悪魔の姿があった。

それを心底不快そうにミノルが睨みつける。


「何笑ってんのよ」

「いやあ君達があまりに馬鹿すぎて思わず笑っちゃったよ」

「それはどういう意味ですか?」

「デビって悪魔なのよ」

「…………は?」


あまりの突然の告白に3人は思考が停止する。

そして、数秒後にようやくミノルが口を開いたがその声は震えていた。


「な、何いってるのよ。そんなわけないでしょ」

「ラルダ……や……めるのじゃ………あああ!!」

「デビちゃん!」 


苦しみデビを気にする様子もなく、ラルダは話を続ける。


「俺の目的はゲートの解放じゃなく、デビを悪魔の姿に戻すこと。はなからお前らと勝負するつもりはなかったんだよね」

「うるさいわよ!そんなわけないでしょ!デビちゃんは半獣よ!」

「なら、その姿を見ても言えるのか?」

「は?どういう………っ!」

「あぐっ!ああっ逃げて……もうむり……ああっああああ!!」


その瞬間、デビの周りに漆黒の闇が纏わりつく。


「デビちゃん!―――っ!」


すると、先程まで苦しそうに声を荒らげていたデビが静かになる。

そして項垂れるようにして無気力状態でデビが宙へ浮かんでいく。


「デビッち!?どこ行くの!」

「さあ、封印されていた魔力が解放されるぞ!それはすなわち悪魔に変貌するということだ!」

「ぐあああああっ!」


突如奇声を発した瞬間、デビの姿が変貌していく。

巨大な角が生え、風を切り裂く凶悪な翼も生え、鋭い爪と悪魔の目を持ち、その巨大な姿は小さいデビの姿の面影はなく、完全な化け物それは悪魔の姿だった。


「グオオオオオッ!」


大地を揺らすほどの砲口がミノル達に現実を突きつける。


「そんな、デビちゃんが悪魔だったなんて………」

「信じられませんね……確かに見たことのない魔法を使ったり、魔法の威力も凄まじかったですけど、まさか悪魔なんて」

「人生のなかで1番の衝撃だよ」

「これはまずいわね」


――――――――――――――――――

「な、何だあれは」

「あれが貴様の仲間の姿だ」


そこには巨大な禍々しい悪魔が砲口をあげながら現れた。

あれが俺の知っているデビなのか?


「デビが本当に悪魔だったなんて……嘘だろ」

「これで俺達の計画は完遂した。あとはゲートが完全に開くのを待つだけだ。奴の魔力がゲート同士を引き合わせる。そして、全てのゲートが繋がった瞬間、この島と繋がる真の地獄の入り口が開かれる。そうなればもう抗う術はない」

「クソが……俺の仲間を利用するんじゃねえよ!」

「俺達が利用しようとしてた奴が貴様の仲間になっただけだ。まっそのおかげでむやみやたらに探す手間は省けたんだが。ご協力助かる」

「協力なんてしてねえよ!今すぐデビを元に戻せ!」

「それは無理だ。そして、貴様はここで死ぬんだからな」


その瞬間、俺の首を絞めている右手に魔力が籠められる。


「ぐっ!がっ!?」


まずい!魔法が発動する!

そうならば俺は抵抗することなく死ぬだろう。

こんなところで死ぬわけにはいかない!

俺は折れた右手の痛みを我慢して必死に動かす。

これでも喰らえ!

俺はポケットに入れた魔石を掴み、クラガの手に魔石をめり込ませる。


「っ!?」


その瞬間、クラガは思わず手を離す。

それによりは俺は解放された。


「がはっ!はあっはあっくっ!」


俺はすぐさまその場から離れた。

ミノル達と合流しよう。

今はデビを何とか元に戻すことが先決だ。


――――――――――――――――

「ちっ!魔石を持っていたのか」


クラガは手に刺さっている魔石を引き抜く。

そして、それをジロジロと見始める。


「これは高級な魔石か。なるほど、だから異様に魔力を取り込んでしまったのか。まあいい、どうせ逃がしたところで結果は変わらない。半獣は死ぬのだから」


―――――――――――――

「待ってろデビ!すぐに助けてやるから!」


俺はデビを救うためにミノル達の元に急いで向かった。

デビがあんな姿になったのには何か理由があるはずだ。

それはミノル達なら分かるはずだ。


「見えた!あそこか!」


皆が一箇所に集まっているのが見える。

なにやら上に飛んでいるラルダと対峙しているようだが。


「私達で元に戻すわよ!」

「でも、凄く大きくなってるよ!」

「大丈夫ですよ。デビさんは悪魔モードと半獣モードに切り替えが出来るみたいですし。だとすればあの状態からいつものデビさんに戻せることも可能ってことです」

「とにかく、ラルダ!教えなさい!どうやって元に戻れるの!」

「それは―――」

「おーい!みんなー!!」


俺は皆を見つけて、すぐに声をかけ皆の元に向かう。

その時、俺止めがあった皆が一様にホッとした評定をする。


「よかった!無事だったのね!」

「当たり前だ!とっ言いたいところだけど結構ギリギリだったな。でも、今はそれよりデビだよ!あれ一体どうなってんだ!?」


とにかく今の状況を整理しなければ。

何かしらの情報を得ようとミノル達に聞くが、俺の質問に対して皆が困った様子を見せる。


「私達もわからないのよ。急に苦しみだしてそしたら悪魔になってて、本当にわけわからなくて」

「分かった。てことは現状は何も把握できてないって事だな。それじゃあ、ラルダ!」


1番はこれを行った首謀者だ。

こいつに聞いたほうが話しは早いだろう。

教えてくれるかどうかは別としてな。

すると、ラルダは俺の話を無視して何かをブツブツと呟いている。


「ああ……そうだよ。それは確実だ」

「おい!聞いてるのか!」

「ん?何だよ。こっちは取り込み中だってのに。それで俺に何か用?」

「デビを元に戻すやり方を教えろ!」


そう言って俺は空中を飛んでラルダの胸ぐらを掴む。

だが何も抵抗することもせずに、俺に対して小馬鹿にするようにほくそ笑む。


「どうして俺がお前に教えなきゃいけないの?」

「いいから教えろ!」

「ちっ調子に乗るな、殺すぞ」

「っ!?」


あまりの殺気に俺はとっさにその場から離れる。

これが、悪魔の殺気。

心臓を鷲掴みされているような感覚に陥る。

すると、数秒後にいつも通りの煽るような笑みを見せてくる


「冗談だよ。そんなに怖い顔するなよ。ここで殺したらもったいないでしょ?せっかくこれから弾け飛ぶ所が見れるんだからさ」

「お前………」

「教えてラルダ。私達には時間がないの」

「そうだろうね」


ラルダはまるで興味ないというかのように答える。


「デビを助けたいの!本当はこんなこと望んでないから」

「俺に言われても、説得しただけで俺が教えると思うか?俺は悪魔だからさ、情報が欲しいならそれと同等の対価を渡してもらわないと」

「うぅーーー!もういいわ!私達だけで何とかしましょう」


ミノルはラルダを無視して話し合おうとするが、ラルダはやれやれといった様子で声を出す。


「しょうがないな。まあこの計画を実行できたのは君達のおかげだし、ちょっとだけヒントを教えてやるよ。今の奴は空腹、だから大きくなった」

「は?どういう意味だ」

「これ以上は教えないよ。あとは自分で考えな」


そう言ってラルダは黙ってしまった。


「空腹ってどういうこと?」

「お腹が空いたってことじゃないの?私の牛乳プリンあげよっか?」

「いや、そう言う意味じゃないんだと思う。もっと何か別の意味だと思う」


何だ?どういう意味だ?

空腹ってつまり何かが少ないって意味か?

その何かって一体なんなんだ?

悪魔の姿をした理由は空腹だから?

つまり、悪魔と何かしらの関係があるってことなのか?


「………もしかして、マナとかですかね?」

「っ!?」

「ほら、悪魔は半獣よりも魔力を大量に保有できますし、あの首飾りがもしかすると魔力を抑えていたのかなと」

「それが破壊されて本来の魔力が戻ったと。本来の魔力が戻ったと同時にマナが枯渇してしまい、マナを大量に取り込むためにも巨大な悪魔の姿になったってことか」

「確かにそれなら空腹だからなったって意味に繋がるな」

「てことはお腹いっぱいになったら満足するってことだよね!それじゃあ早くお腹いっぱい夢いっぱいにさせないと!」

「いや、ちょっとま――――っ!?」


その瞬間、悪魔化したデビが突然暴れだす。


「ガアアアアア!!」

「ははっかなりの暴れっぷりだね。早くしないとゲートが繋がる前にこの島がもたないかもね」

「何?」

「デビは今間違いなくこの島で最強のモンスターだよ。ひとたび吠えれば木々が吹き飛び、羽を羽ばたかせれば竜巻が起こり、歩くだけで地響きを起こし、拳を振れば全ての物が無に帰す。今はそう言う存在さ」

「デビはモンスターじゃねえ!俺達の仲間だ必ず元に戻して見せる」

「だったら早くしなよ。じゃないとお前の仲間が傷つく事になるぞ?」


そう言って空を指差した。

その方向に人影が見えた。


「あれは…………ミズト!?何で空にて言うか、まさか攻撃しようとしてるのか!早く止めないと!」


俺はすぐにミズトを止めるために走り出した。


「私達も行きましょう!」


俺がミズトのもとに行こうとすると、俺のあとに続くようにしてミノル達も走り出す。


「さてと………どっちに転がるかな」



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