その十二 禁断の魔法
「ほらほら、どうした?早く俺を殺してみなよ!」
そう言ってラルダは無数の腕で攻撃してくる。
「くそっ!手数が多すぎる!これじゃあ、ミカの元に行けない」
「スピードも威力も先程とは違います!このままでは先にこちらがやられてしまいます!」
「魔力も無限にある訳じゃないしね。確かに、何か決定だをしないとやられちゃう」
「安心しろ!殺すときは仲良く皆、一緒に殺してやるから!」
そう言って不気味な笑みを浮かべながらこちらを攻撃してくる。
「ううっ!爪が鋭くて邪魔くさいのじゃ!へし折ってやりたいのじゃ!」
「爪以外も見せてやろうか!強力な毒針もプレゼントしてあげるよ!」
そういうと鋭い針がラルダの無数の手のひらに現れる。
「まじかよ!くそっ!長引かせるのはまずい!俺も協力して倒す!」
「駄目よ!かつはとにかくミカを助けてあげて!私達が必ず隙を作るから!」
「隙を作るったって、こんなやつに隙なんか作れないだろ!」
無数の腕を弾く度に俺の魔力は削られる。
こいつは魔法使いなんじゃない。
悪魔だ、だからこそ俺達には時間がない。
あいつは体力があればいくらでも、攻撃を繰り出させる。
たいしてこっちは魔力と言うタイムリミットがある。
リドルの言う通りこちらが先にやられてしまう。
だったら少しでも勝機を上げるためにも、やっぱり俺が残った方がいいんじゃ。
「誰1人逃がすわけないだろ!ここまで俺をコケにしたんだ!そのお礼をたっぷり返さないとなっ!………あ?何言ってんだ?………ちっ計画為ならしょうがない」
『あれ?攻撃の手が緩んだ?今がチャンス!これならあの魔法をぶつけられる!』
「喰らいなさい!レベル魔法!リュートプリズンフリーズ!」
ミノルのレベル魔法によって全ての手が凍りつく。
それによりラルダの猛攻が止まり隙ができる。
「うおおおっ!すごいのじゃ!」
「いつまで持つか分からないわ!かつ!早く今のうちに行って!」
「わ、分かった!ありがとな!後は任せたぞ!」
俺はミカが吹き飛ばされた方向に急いで向かった。
後は任せたぞ、みんな
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リドル達はかつが行った後、その隙を見逃さずに攻撃の準備をする。
「今のうちです!攻撃を―――」
「よっと」
その瞬間、凍っていた腕を平然と砕いた。
「こやつ、自分の腕を捨てたのじゃ!」
「いや、違うわ」
その時、砕かれた腕が1ヶ所に集まり1つになる。
それは段々と形をなしていき、うねうねと動き始める。
「まさか、仲間を増やすなんてね」
「変化出来ると言ってもこれはずるいのじゃ!」
「大丈夫、安心して。こいつは俺よりほんの少し弱いからさ」
「それは安心できませんね」
その瞬間無数の魔法陣が出現する。
「これは、かつさんがいつも出している魔法陣の倍の数はありますよ!しかも、どれも異なる魔法です!」
「1度に多数の魔法陣を展開するだけでも大変なのに、異なる魔法の魔法陣も同時展開するなんて化け物ね」
「こっからは魔法使いらしく魔法で戦おうよ。頼むから死ぬときはなるべく悲鳴を出して死んでね」
そう言って一斉に魔法が放たれた。
―――――――――――――――――
「くそっ!何なのよ、その魔法!」
ミズトは魔剣でスイを追い詰めていた。
「くっ!ロックスタンプ!」
「っ!」
スイが出した魔法を意図も簡単に切る。
「調子に乗らないで!グランドファイヤー!!」
「滝登り!」
炎を真っ二つに切りスイとの距離を詰める。
「ロックタワー!」
スイの目の前に巨大な岩が出現する。
だが、ミズトの剣はスイを逃がさなかった。
「なっ!?剣が曲がっ―――ウォーターガン!」
水の魔法により剣を弾きその場から離れる。
「はあ……はあ……あんたのその剣確かに厄介ね。伸びたり、曲がったり、うねったり、規則性の無い動きをしてくる。固定概念に捕らわれてたら思わぬ1撃を喰らう。でもね!あんたが散々ブン回してくれたお陰で、もうその剣の太刀筋は把握したわ」
「………………」
「あんたを殺せばもう1人の魔法使いは大したこと無さそうだし、後は簡単に殺せそうね。あんたの顔を見るとイライラするからさっさと死になさい!」
そう言ってスイはミズトに真っ直ぐ突っ込んでいく。
ミズトは躊躇なくスイに刃を振るう。
「だから、分かってるって言ってるでしょ!アグレッシブフルート!」
その瞬間、魔剣が風に巻かれる。
「がら空きよ!死ね!ウォーター―――」
「魔剣雷式」
その瞬間、先程まで対峙していたミズトが既にスイの背後にいた。
「雷光迅速」
「ぐふっ!?」
スイは苦しそうに声を上げるおその場で膝をついて倒れる。
「な、何で………完璧に捕らえたのに」
すると、ミズトらゆっくりとスイに近づく。
「イライラしているのはこっちの方。さっさと死ね」
ミズトが持っていた剣は先程まで使っていた剣とは違い、雷を纏っていた。
「くっ!っ!?」
体を起き上がらせようとするが、思う通り体が動かない。
スイは雷光を放つ剣を見て何かを悟る。
「雷の剣……そういうこと」
『魔法によって作り出された剣。それで魔剣か。完全に理解してたつもりだったけど、私はまだ固定概念に捕らわれていたのね』
その瞬間、スイの首に向かって剣が振り下ろされる。
「きゃああああっ!!??」
「っ!」
すると上空から叫び声が聞こえてくる。
何事かと一斉に見上げた時、上空からミカが落ちてきた。
「なぜ?―――っ!」
余所見をしたミズトの隙を突き、スイは魔法を放ちその場から離れる。
ミズトはそれを剣で防ぐと小さく舌打ちをする。
互いににらみ合う中、落ちる直前に風の魔法で勢いを殺していたミカは何とか立ち上がると、土埃で汚れた伏を八田区でのできます
「ふう……あともう少しで死んじゃうところだった。ん?あっ!ミズト先輩にナズミ先輩!何して………あーすみません。お取り込み中だったみたいで」
「ど、どうしてミカさんが上から落ちて……お姉さま?」
すると、ミズトがゆっくりとミカに近づいていく。
「えっと……ミズト先輩?何か、妙な威圧感を感じるんですけど、痛い!ミズト先輩痛い!」
ミズトは無言でミカの頭を掴む。
「あなたのせいで殺せなかった。責任とりなさい」
「責任て何ですか!?ていうか、何か物騒なもんをこっちに向けないでください!」
「お姉さま、今はそれよりも」
そう言ってナズミがミズトをなだめて何とか魔剣を納める。
それを見てミカは安心したように胸をなでおろす。
「ありがとうね、お嬢ちゃん。あんたのお陰で殺されずにすんだわ。なるほどね、その魔剣様々な属性に変化できるのね。雷は触れたら体を痺れさせるみたいだし、水は切れ味抜群ということかしら?」
「死ぬ時がずれただけよ。あなたが死ぬ事には変わらない」
「そう、なら死になさい。レベル魔法!ウォーターブレイクトレント!」
その瞬間巨大な激流が3人を襲う。
「あのレベル魔法は!なるほど、どうやらあいつは水の魔法が得意みたいですね」
「関係ないわ。切れば全て済むから」
「は?切る?」
その時、ミズトの剣が光出す。
「魔剣炎式」
その瞬間、剣が炎に包まれる。
「え?炎が出た?」
「炎の渦!」
その瞬間、激流を飲み込む炎がスイに一直線に向かっていく。
そしてそのままスイの体を燃やそうと纏わりついてくる。
「っ!ぎゃあああっ!?」
「す、すごい!何今の!?まさか、オリジナル魔法!?」
「ぎゃああっ!熱い!熱い!熱い!」
炎に包まれたかのようにスイはその場で転げ回る。
「あれがお姉さまのオリジナル魔法、魔剣です」
「魔剣?何それ?あの細長い奴が相手を切ってるの?」
「はい、魔剣は魔法の属性と同じで炎、水、雷、風、岩、毒、氷、光の8種類に分かれてます。それぞれ能力は異なっていて、例えば水は最も切れ味があります。雷は切りつけた相手に電撃を浴びせて行動を封じます。炎は文字通り相手を燃やす事が出来ます。その他にも色々あるんです」
「へぇ、対応力も優れていて使いやすいですね。すごいオリジナル魔法を作ったみたいですね」
「ミュウラ様がくださったんです」
「え?ミュウラ様が」
「はい」
ミズトはゆっくりとスイに近づく。
スイはようやく炎を消したがまだそのダメージが体に残っていた。
ふらつきながらも立ち上がると、苛ついた視線で奥歯を噛みしめる。
「くっ!何よその目。その目で私を見るな!!」
そう言ってスイはミズトに殴りかかっていく。
その瞬間、刃を振り下ろしてスイの腕を切る。
「あ………あああぁあぁっ!!?」
あまりの激痛にスイはその場でうずくまる。
「うるさい」
そう言ってもう片方の腕を切り落とすために刃を上に上げる。
「っ!」
その瞬間、危険を察知してスイはその場から離れる。
「はあ……はあ……あのバカな王の十二魔道士の癖に。そんな蔑んだ目で見るんじゃないわよ。くそ半獣がぁー!!」
その瞬間、辺りに血を撒き散らす。
「な、何してるの?」
「もしかして、頭でも狂っちゃったんじゃないですか?」
「あんた達に地獄を見せてやるわ」
すると飛び散った血を使って、地面に何かを書き始める。
「何かの魔法陣を書いていますね」
「…………あっ!ミズト先輩!早く殺してください!あいつ、禁断の魔法を使おうとしてます!」
「え!?禁断の魔法ですか!?」
「あの魔法陣は間違いなくそうです!早く!」
その言葉を聞いてすぐにスイの元に向かう。
「もう遅いわよ。魔法陣は書き終わったわ。我、悪魔の力を授かりし者」
「ふんっ!」
刃を振り下ろした瞬間、見えない壁に刃を防がれる。
「っ!?」
「特殊な結界が張られてるんです!休まず攻撃してください!」
「魔剣光式、光輝斬」
光の速度で無数の斬激を繰り出す。
「我、悪魔に生贄を捧げる者」
「あの攻撃だとかえって邪魔になっちゃいますね」
「頑張ってください!お姉さま!」
「我、悪魔と契約を結ぶ者」
「呪文が終わっちゃいますよ!」
「はあっ!!」
その瞬間、結界が破壊される。
「よし!」
「止めをさしてください!お姉さま!」
「ふっもう遅いわ」
「っ!?刃の部分だけ」
振り下ろそうとした瞬間、刃を振り下ろす部分を先に復元させ攻撃を防ぐ。
「クルスエン――――」
「ウォーターガン!」
その瞬間、ミカか放った水の魔法がスイの心臓を貫く。
「ぐふっ!?くそ……が……」
そう言って血を吐きながらその場に倒れる。
ギリギリのところでスイを殺したことで三人はほっと胸をなでおろす。
「はあ、はあ、危なかった………」
「や、やりましたね。お姉さま、ミカさん」
「あなたねぇ!私の獲物を勝手に取らないで!」
そう言って怒鳴りながらミカに詰め寄る。
だがミカは悪びれる様子もなく答える。
「あのままだったら禁断の魔法が発動してましたよ。むしろ褒めてほしいくらいです」
「私があいつを殺せたの。あなたは黙って見てればよかったのに。余計なことをして、私の復讐を果たせなかったでしょ!」
そう言って胸ぐらを掴む。
「ミズト先輩っていうかミュウラ様の復讐ですよね」
「………ちっ!」
ミズトは乱暴にミカを解放する。
「ミュウラ様の願いは私の願いよ」
「そうですか」
『何か、すごく喋ってたな。声聞いたの初めてかも』
「ナズミ、行くわよ」
「あっはい!お姉さま」
「どこ行くんですか?」
「………………」
「また、無言ですか?別に今は話してくれてもいいじゃないですか。別に敵同士では無いんですし。黒の魔法使いが現れたら協力しろって言われてるじゃないですか」
「私は馴れ合いをするために十二魔道士になった訳じゃない。さよなら」
そう言って森を突き進んでいく。
「相変わらず頭固い人だな」
「全ての者を殺す」
「え?」
ミカは声がする方に視線を向ける。
そこには倒れてるスイの姿があった。
「気のせい?」
「家族も殺す」
「っ!気のせいじゃない」
「友達も殺す。他人も殺す。動物も殺す。生きてる者を全て殺す」
そんなことを呟きながらスイの体が宙へ浮かんでいく。
「み、ミズト先輩!ナズミ先輩!」
ミカはすぐさま二人が向かっていった方向に呼びかける。
その声を聞いたナズミがミズトを呼び止める。
「お姉さま!ミカさんが呼んでます!何か、変です」
「………行ってみましょう」
ミズト達が戻るとそこにはあり得ない光景が広がっていた。
「何あれ、浮かんでる?」
「何かを呟いています。でも、なぜ生きてるんですか!?」
「どういうこと、ミカ!説明して」
「説明もなにも私も驚いてるんですよ。とにかく急に浮かび出したとしか言えないです」
「皆殺す。全て殺す」
「ちっ!」
その瞬間、再び魔剣を発動させる。
「お姉さま!?」
「あまり刺激しない方がいいですよ!」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
「魔剣水式!」
「殺す」
「っ!?」
血の涙を流すスイと目が合い体が硬直する。
『こいつは……半獣なの?』
その瞬間、骨が軋み体が変形してくる。
「ひっ!」
「ナズミ、見なくていいわ」
「これは、悪夢ですね」
背中から翼を生やし、体を突き破って腕が現れる。
そして、目玉は真っ黒に変色し、体中から血を流す。
「ごろずー!!!」
「な、何なんですか、あれ」
「悪魔………悪魔が降臨したの」




