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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十四章 黒の時代
332/827

その七 正体

「ガハハハっあいつららしい最後だな」


そう言ってカノエは席を立つ。


「おい、何処に行くんだよ」

「決まってんだろ、あいつらの元にだよ」

「それは許されないわよカノエ。今は緊急事態と言えど競技中。もし、あなたがあの2人を助けた瞬間、棄権とみなしますよ」

「構わねぇよ。俺はもう十分だ。今のあいつらに必要なのは休養だ」


ミュウラの中国をものともせずにカノエはそのまま席を離れようとする。

それを見てミュウラはかすかにほくそ笑む。


「そうですか。カノエがいいなら私はもう何も言いません」

「ガルアが来たら言っといてくれ。全てが終わったら会議を開いてくれと。内容はこれからのにゃんこ島についてだ」


そう言ってカノエはエングとサザミを迎えに向かった。


「別にわざわざ言うつもりは無いですよ。私もそう思ってましたから」


―――――――――――――――――――

「トガがやられた、ああ…………案の定モンスターを使わなかった。ああ……ああ……迎えにいく必要はない。注意しろよ、十二魔道士は俺達の敵ではないと油断していると足元を掬われるぞ。トガはそれにやられた。奴らは覚醒はしていないが戦いの途中で限界を越える可能性がある。慢心せずに殺せる時は殺せ」

「ライジングサンダー!」


地面を這って向かってくる雷をクラガは平然と避ける。

するとすぐにその魔法を放った者へと視線を向ける。


「貴様は………」

「黒いモンスターを相手にしてて時間かかったけど、ようやく見つけたぜ。久しぶりだな、クラガ!」


意気揚々と飛び出してきたガイはそういうとクラガへと指を指す。


「サラ……来たか十二魔道士」

「あたいは始めましてだけどね。あんたが黒の魔法使いのリーダーかい?」

「俺は特にリーダーと言う立場ではない。他にいなかったからなったまでだ」

「おい、ちょっと待てよ!俺のことを無視するなよ!」


そう言ってトガはクラガに食って掛かる。


「忘れたとは言わせねぇぞ。あれはかつを追いかけてる途中だった。森に入った時にお前を見かけて俺と戦っただろ!」

「忘れた」

「なっ!」

「覚えていてなんになる。覚えたところで意味はない。因縁をつけたいのならもう少しマシな事を言え」

「っ!クラガぁ!」


するとガイが怒りに任せてクラガに襲いかかろうとするが、それをサラが止めにはいる。


「離せサラ!こいつは俺が殺す!」

「落ち着きなガイ!感情のままに攻撃すれば奴の思う壺だよ!」

「構わねぇ!上等だよ!」

「殺すんだろ奴を!なら、冷静になれって言ってんだい!あんたは1人で戦うのかい!」

「っ!」


その言葉を聞いてもがいていたガイが、動きを止める。


「あたいらは仲間でパートナーだ。1人で戦ってる訳じゃないんだよ。それを忘れたらあたいら負けるよ」

「………分かってる。1人じゃ勝てねぇことくらい分かってる。サラ……一緒にあいつを殺すぞ」

「師匠だって言ってるだろ?でも、今は許してあげるよ」

「茶番は終わったか?」


そう言って2人に興味がないのか無防備で空を見つめる。


「待たせて悪かったな。やろうぜ」

「良いだろう。貴様らからかかってこい。すぐに殺してやるから」

「やってみやがれ!クラガ!」


――――――――――――――――――――――――

「はあ、はあ、はあ、ちょっとこれまずいんだけどー!」


そう叫びながらミノル達は黒いモンスターから逃げていた。


「すごくいっぱい来てるのじゃ!大行列なのじゃ!」

「今日はモンスターパーティーだ!皆で盛り上がるぞ!!」

「この状況で盛り上がれるのはメイさんだけですよ。それにしてもさすがにこの状況はまずいですよ」

「駄目だよ~私達は~お邪魔しちゃってる立場なんだから~競技に使うモンスターを勝手に倒したら~怒られちゃうよ~」

「て言うかこれ、バレてないの?大丈夫?もう、ガルア様とかに見つかっちゃってる気がするけど」

「それに関しては僕も同意見です。この事態を王様方が知らないわけが無いと思います」


その時木をなぎ倒して出てくる巨大な熊みたいなモンスターが現れる。

すると先頭にいるリツがそれを回避しようと曲がり始める。


「みんな~こっちだよ~」

「ちょっと、本当にこっちで合ってるのよねリツ!ただでさえ強い黒いモンスターがこんな数向かってきてるのよ!ゲートについてもこれじゃあ意味ないんじゃないの!」

「それは心配ないよ」

「っ!」


その瞬間、後ろにいた全ての黒いモンスターが一瞬で殺される。

それにも驚いたが、すぐに視線は声が聞こえた方へと注がれる。


「あ、あんたは………」

「久しぶりだね、ミノル。そして、さっきぶりデビ、メイ。そして、初めましてリドル。最後に裏切り者のリツ。ようやく会えたね」

「何でここにいるのよ。ラルダ!」

「そんな怖い顔しないでよ。まあ、そんな顔のミノルも好きだけどね。恐怖に歪んだ時のギャップがたまらないからさ」


そう言いながらラルダは恍惚な笑みを浮かべる。


「相変わらずのサイコパスね。あんたは黒の魔法使いの中でもある意味1番相手にしたくなかったわ」

「俺は嬉しいよ。皆と戦うのが1番面白そうだし。あっそうだ、リツまさか君が裏切るなんてね。俺は残念だよ、リツのアホみたいな平和ボケボイスを俺の大好物な声にしたかったのに」


相手をけなしながらも流し目でリツの方を見る。

だがリツは気にすることもなく両の手を合わせる。


「ごめんね~私は最初っからミッちゃんの味方だから~」

「そうか、ならしょうがないね。でも、まさかリツがミノルの事を裏切ったんじゃなくて、俺達黒の魔法使いを裏切ってたなんて全く気づかなかったよ。多分クラガも気付いてないよ。すごいね、その演技力があるなら詐欺師にでもなれたんじゃない?」

「私は~今は魔道具店の店主だから~」

「あーそうだったね。毎週水曜日の定期連絡やってた場所か」


ラルダが納得したように頷く。

すると余裕そうな様子を見ていたミノルが痺れを切らしてラルダに問い詰める。


「そんなことよりもラルダ!あんた、いや黒の魔法使いは一体何をたくらんでいるの!?この島の半獣を全て殺す何て一体どうしてそんなことするのよ!」


ミノルが怒鳴り声をあげるとラルダは薄気味悪い笑みを浮かべる。


「あはっ!あはははは!なに当たり前の事を聞いてるんだよ!思わず笑っちゃったじゃん。俺達がやろうとしてることなんて皆殺しに決まってんじゃん」

「っ!皆……殺し……」


言葉の意味とは裏腹に笑みを浮かべるラルダにミノルは嫌な雰囲気を感じる。


「どうしてそんなことをするか?殺したい殺すんだよ。子供もが自分の欲求に素直なように、やりたいことをやる。それだけだ」

「違うよ~」

「っ!リツ?」

「リツさん違うってどういうことですか?」

「黒の魔法使いは~ちゃんと意味を持って~やってるんだよ~意味のない殺しはしないよ~」

「な、何で黒の魔法使いを庇う言い方をするのじゃ?」

「デビちゃん……」


デビは体を震わせながら必死に口を動かす。


「黒の魔法使いは完全にイカれた集団なのじゃ!あいつらに信念も何もないのじゃ!」

「それは~違うんだよ~」

「違くないのじゃ!」


震えながらデビはラルダを指差す。


「こいつはこの島に居ちゃいけないのじゃ!」

「ちょっと……ネタバレが過ぎるなー」


その瞬間、強力な雷がデビに襲いかかる。


「ぐあああぁぁぁあ!」

「デビちゃん!」

「まだ駄目だよデビ。その話は役者が揃ってからじゃないと。でも、居なくていい人は1人居るなぁ」


そう言ってメイを凝視する。


「っ!な、何かようでござんすか?」

「君ってさぁこのパーティーに必要とされてるの?」

「っ!」

「ふざけたこと言わないで!デビちゃんもメイもこれ以上傷つけさせない!」

「それ以上攻撃するなら僕達も容赦はしません」

「ふふっ良いねぇその顔良いねぇ。すごくいいよ、その顔が恐怖に歪み姿を思い浮かべると、堪らなく興奮するよ」


底知れぬ悪意にその場にいた人々は思わず息を飲む。

そして悪意に満ちたその瞳はぐるぐると動くとある人物で止まった。


「これ以上はもう待てないし、1人位は殺しても良いよね」

「くっ!」


ミノルは危険を察知してメイを守る。


「いや、殺すのは駄目だ。腕を折って足を折って、死なない程度に傷付けて悲鳴を聞いてそれから殺そうかぁ」


『来るなら来なさい。返り討ちにしてあげる』

『黒の魔法使いの好きにはさせません』

『怖いけど、メイは妾が守るのじゃ』

『ラルダを落ち着かせないとね~じゃないと~本当に殺されちゃうよ~』

『私もしかして大ピンチ!?かつっち助けてー!』


「いや、もう我慢出来ないや。沢山いるし、もう殺しても良いよね。良いよね!」

「来るわよ!」


その時地面が大きく揺れだした。


「な、なにこれ!」

「ミノルさん!後ろからモンスターが!」

「グオオォオォ!」


リドルの言う通り後ろから巨大なモンスターが飛び出してくる。


「こんな時にモンスターが!」

「殺しちゃっても良いよねー!」

「しまっ!」


その瞬間、モンスターに目も呉れずラルダが勢いよくメイの元に走り出してくる。

メイにラルダの魔の手が襲いかかろうとした瞬間、別の人物が横槍をしてくる。


「いいわけねぇだろ!」

「ぐふっ!?」

「かつ!?」


その瞬間、ラルダはかつに思わぬ一撃を食らい吹き飛ばされる。


「おい、大丈夫か!?」

「かつー!怖かったよー!」


そう言ってメイがかつに抱きつく。


「おい、離れろ!て言うか、何でお前らがここにいるんだよ。思わず殴っちまったけど」

「リツに呼ばれてきたのよ」

「リツ!?え!お前、ミノルを殺しに来たんじゃなかったのか!?」


消えたはずのかつての友人が戻ってきたことで、かつは驚いた声を上げる。

そしてリツは冷静に事の経緯を語る。


「黒の魔法使いを~裏切ったんだよ~私は元々~ミッちゃんの仲間~」

「え?そうなのか?なんか話がよく分かんないけど、皆と居るって事は本当みたいだな」

「かつ後輩モンスターの討伐終わりましたよ」


そう言って一仕事終えたミカがかつ達の所に戻ってくる。


「ミカ!お主の事を見ておったぞ!かっこよかったのう!」

「ありがとう!デビ!でも、今は無駄話してる場合じゃないみたい」


そう言ってラルダの方を見る。

折れた幹からゆっくりラルダが立ち上がり、殴ってきたかつの方を見る。


「ラルダ、まさか最初に会う黒の魔法使いがお前とはな」

「かつか………ちょっとタイミング悪いなぁ。あともう少しでその女を殺せたのに」

「メイは殺させない。それよりお前に聞きたいことがある」

「何?」

「黒の魔法使いは地獄のゲートを使って何をしようとしてるんだ?」

「だから、皆殺しだって。それさっき説明したんだよね」

「その先の話だ。皆殺しをする理由はなんだ?何が目的でそれをする」


黒の魔法使いの情報は少ない。

目的もはっきりしてないし、動機もわからない。

でも、絶対何かあるはずだ。

ただの皆殺しをしたいだけでここまでの事は出来ない。

するとそんな質問に対して、ラルダはおかしそうに笑い声をあげる


「ふふあはははっ!興味ないな!俺は誰かを殺せればそれでいい!骨の軋み音を!痛みで泣き叫ぶ声を!命乞いをし、生命が尽きるまでのメロディーを!聞きたいだけだからさ」

「っ!こいつ、やっぱり頭おかしいよ!」

「メイ、落ち着け。こいつが頭おかしいのは俺が1番知ってる」


久しぶりに会うとやばさにかなり磨きがかかってるな。


「それにしてもかつ、成長したね。前は泣き叫んで許しを乞うことしか出来なかったのに」

「ああ、昔とは違う。もう2度とあんなことはしない!」

「残念だなぁ。あの時みたいに腕をへし折って泣き叫ぶ声が聞きたかったのに。それとも実際に折ったら泣き叫んでくれるのかな?」

「お前がそうするなら俺がお前の腕を折る」

「………本当に変わったみたいだな。つまんないな、本当につまんない」


そう言うとラルダは冷めた視線を送る


「つまんないのはあんたの頭の中でしょ」


するとミカが突然、ラルダを挑発する。

ラルダはそれに気づくと目を細めてじっとミカを見つめる。


「お前はたしか、十二魔道士のミカか」

「あんたのくだらない理論を聞いて、こっちは既に気分が悪いの。いい加減に空気読んでくれない?ねっかつ後輩」

「おい、急に俺に振るなよ」

「威勢が良いねぇ。僕の好きなタイプだ」

「言っとくけど私は弱音を吐かないし泣きごとも言わないから」


ちょっと前に言ってた気がするけど、まあ一応黙っておくか。


「ムカつくなぁ、何なんだよ一体。怖がってびびって何にも出来なかった癖に。身体的に強くなったからって粋がらないでよ」

「確かに、俺は修業して心も体も強くなった。昔の俺だったらビビって泣き叫んでみっともない姿になってお前に弄ばれてたかもしれない。でも、今は違う!今は自分が傷付けられても恐怖に陥ったりはしない!今は別の怖さがある」

「何なんだよ、その怖さって」

「今は仲間が死ぬことが怖い!自分よりも仲間が居なくなってしまうことが怖いんだ!もう誰も死なせたくないんだよ!」

「かつ………」


すると、ミノルがかつの肩に手を置く。


「私達は死なないわ。誰1人欠けることもない、置いていったりしない」

「そうじゃ!妾達は最強なのじゃ!」

「かつっちと皆がいれば百人力だー!」

「僕だってこんなところで死ぬわけにはいきませんからね」

「まだ~皆と遊びたいからね~」

「かつ後輩、私は天才ですよ。天才は死なないんです」

「………ありがとう、皆。一緒にあいつを倒そう!」

「「「「「「おう!!!!!!」」」」」」

「あーそういうの1番嫌いだ。友情とか絆とか聞いてるだけで虫酸が走る。あーここ最近見ない間に本当に気持ち悪くなったな」


その瞬間、ラルダの右手が以上に膨れ上がる。


「もういいや。全員殺そ。その断末魔を聞くだけで十分だ」


その膨張した右手は変形して巨大な鋭い5本の爪を生やす。


「な、何だよお前………半獣じゃないのか?」

「あーそういえば、自己紹介が遅れたね。俺の名前はラルダ·エグゾディーブ、地獄から来た悪魔だよ」



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