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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十四章 黒の時代
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その六 悪と正義

「本気で言ってるのか?ボロボロのお前が俺を殺せると、本気で思ってるのか?」

「お前だってズタボロじゃねぇか。ほら、サザミ」


エングはサザミに回復のポーションを飲ませて近くの木に休ませる。


「そいつはもう助からねぇよ。見てわかんねぇか?全身火傷で大量の出血。幸い火傷で血は止まってるみたいだが、それでも確実に死は迫ってる。神経もイカれて生き残ったとしても後遺症は残るだろう。死なせた方がまだこいつの為にもなるんじゃねぇか?」

「うるせぇよ。お前がこいつの何を分かるんだよ。こいつを分かってんのはこの俺だ」


そう言ってエングは覚悟を決めてトガの前に立ちはだかる。

エングは軽蔑するような視線をトガに送る。


「やっぱりお前は救いのねぇクズ野郎だ」

「クズ野郎だと?さっきから悪とかクズとかお前こそ何が分かるんだよ」

「知らねぇよ。知りたくもねぇ」

「はははっお前らは何も分かってねぇ。わかってねぇのに戦ってる。どちらが正しいのかも知らずにな。俺達が何でこんなことしてるか、分かるか?」

「………………」

「この腐った世の中を変えるためだ。それの始まりに過ぎねぇんだよ。先ずは半獣を全員殺す。だから、邪魔すんな」

「がっはっはっは!邪魔すんなだと?笑せんじゃねぇよ!とことん邪魔してやるよ。地獄の果てまでもな」


そう言って魔力を高める。

そんな様子を見てトガは余裕の笑みを見せる。


「やめとけよ。もう魔力はこれっぽっちも残ってねぇだろ?それ以上やれば自滅するぞ?」

「やってみなきゃ分からねぇだろ」

「はあ……死に損ないに興味はねぇんだよ。それにそこまで頑張る必要はねぇんだぞ。お前らは利用されてる。あいつらに言い様に使われてんだよ」

「何だと?」

「考えてもみろ。お前らがこんなに頑張って得するのは誰だ?王だ。王しか得はしねぇんだよ。お前らは王がこの島の王になった瞬間、用済みだ」


トガはそう言うと首を切るジェスチャーをする。

それを見たエングは奥歯を噛み締め、怒りをあらわにする。


「違う、お前はなにも分かってない。俺の王はそんな人じゃねぇ!」

「そう言う奴だよ。お前の今まで貰った色々な物も全ては王が島の王になるための投資だ。お前はただの捨て駒何だよ」

「テメェにカノエ様の何が分かるんだよ!あの人は俺達に色々なものをくれた!それが自分が王になるためだとしても、俺達はそれに救われてんだよ!失わせるだけのお前らとは違う!王は沢山の人に与えてるんだよ!尊敬されてるんだよ!カノエ様こそ、この島の王にふさわしい!」


エングは鋭い目付きでトガを睨む。

だがトガはそんな事気に留めずに口火を切る。


「人間はどうなんだよ」

「あ?」

「その沢山の人に与えられてるって言う人に、人間は入ってんのかって聞いてんだよ!」


トガの怒鳴り声とその言葉を聞いてエングはまゆを細める。


「何だと?」

「そこに人間が含まれてない限り、俺達にとってお前らは悪なんだよ!全ての奴らに尊敬されてると思うなよ。人間にとってお前らが悪で俺達が正義だ!」

「正義だと?ふざけんじゃねぇ!覚えてるか、昔俺はお前と会ってるんだぞ」

「昔?そんなことあったか?」


トガは本気で忘れているのか、そのまま首を傾げる。

それを見てエングは更に口調を荒くさせる。


「やっぱりテメェは覚えてねぇか。なら、教えてやるよ。俺は昔黒いモンスターが現れだした時だ。街から少し遠い森に黒いモンスターが現れた知らせを受けて、俺はすぐにその場所に向かった。そこに誰が居たと思う?」

「俺が居たってことか?」

「それだけじゃねぇ。その場に居たのはトガと黒いモンスターと大木の下敷きになっていた小さい女の子だ」

「………………………」


トガは何も言わずにエングの話を聞く。

エングもそのまま話を続けた。


「俺はその時何が起こってるのか分からず、思わず足を止めちまった。その時、見たんだよ。お前が女の子を見向きもせずに立ち去った瞬間をよ。同情するわけでもねぇ哀れむわけでもねぇまるで興味がない、どうでもいいと言ってるようで、その瞬間死ぬほど腹が立ったのを覚えてる。幸い女の子は一命を取り留めたがあの時のお前の目を思い出す度に腸が煮えくり返る!」

「だからなんだ?助けろと?反省して悔い改めろとか言うのかよ。冗談よせよ、何で俺が半獣を助けなきゃいけねぇんだよ」

「っ!人間は助けるのに半獣は助けないってことかよ!」

「ああ、そうだ。お前らもやってることだろ。ただ助ける奴が違うだけだ」


そう突きつけてくるトガに、対してエングは全力で否定をする。


「違う!お前らがやってるのは見殺しだ!何が正義だ、ふざけんじゃねぇ!」

「何だと?」

「目の前の小さい命すら救えねぇ奴が正義な訳ねぇだろ!」

「テメェ………」

「そんな奴が人間を救えるわけねぇんだよ。そんな奴に救われたくもねぇよ」

「調子に乗ってんじゃねぇぞくそが!」


そう言ってエングの顔面に魔法陣を出現させる。


「もうお前黙れ。さっさと死ねよ」

「死ぬのはテメェだ」

「諦めの悪いお前に1つ良いことを教えてやるよ。俺は限界を越えてんだ。だから、絶対にお前は俺を殺せない」

「限界だと?そんなもん何度も越えてきた」

「そう言う身体的限界じゃねぇよ。魔法使いの限界だ。何か分かるか?」

「魔力レベルか……」

「正解だ。そう、魔法使いの限界のレベルは10だ。それは越えられない壁、つまり限界だ。だがな、俺はその限界を越えたんだよ!」


その瞬間、今まで感じたことのない膨大な魔力をトガから感じた。

エングは先程まで毅然とした態度を取っていたが、それを感じ取った瞬間思わず絶句する。


「何なんだよ……その魔力」

「分かるか?だてに十二魔道士じゃねぇか。俺の魔力レベルは11だ!これの意味が分かるよな?」

「何でお前が魔力レベル11何て魔力持ってんだよ!」

「修業だよ。たまにはやってみるもんだな」


『嘘じゃねぇな。この魔力量……本気で魔力レベル10の壁を乗り越えたのか』


「9、10の魔力の差がどれだけか分かるだろ?1つ上がるだけでその差は歴然だ。なら、11になった俺の魔力がどれだけ高いか分かるだろ?魔力抵抗ももちろん11だ。そんな状態でお前の魔法が俺に通じると思ってんのか?」

「だから、耐えられたのかよ。俺のインフェルノキャノンを」

「ああ、そう言うことだ」

「なるほどな。本当に良い話を聞かせて貰ったぜ」

「冥土の土産になったか?それじゃあ死ね―――」


その時エングが魔法陣を殴る。


「越えてやるよ。限界って奴をよ!」

「何だと?そんな簡単に越えられるわけねぇだろ!」

「がっはっはっは!案外簡単かもしれねぇぞ」


そう言ってポケットから魔石を取り出す。


「テメェ、それ………」

「魔石だ、これで限界を超えてやるよ」


そう言うとエングは口を大きく開き2つの魔石を飲み込んだ。


「んぐっ!」

「お前、マジかよ」

「がっ!うぐっぐわぁ!」


その瞬間、魔石から大量の魔力が放たれエングの体を襲う。

膨大な魔力が体から飛び出そうと暴れだす。

エングはそのあまりの衝撃に立つのもままならずに、その場で膝をつく。


「そんなことで越えられるわけねぇだろ。まさか、自滅するとわな。まっそれまでの男だってことか」


そう言ってトガは最後までエングを見届けずその場を去ろうとする。

そして耳元に手を添える。


「おい、俺だ。ああ、片付いた。そっちの助けに行こうか?必要ねぇか。それじゃあ――」

「おい」

「っ!ぐっ!」


その瞬間、トガは殴られた頬を庇いながら後ろに下がる。


「何終わった気でいんだよ。喧嘩はまだ終わってねぇぞ!」

「ははっマジかよ。マジかよ!おもしれェ!延長戦と行こうじゃねぇか!」


そう言って魔法陣を出現させる。

エングも本気で魔法陣を出現させる。


「やっと本気で戦えるぜ!だがな、所詮は一時凌ぎだ!長丁場じゃ圧倒的に不利だぜ!」

「長丁場にする気はねぇんだろ?」

「分かってんじゃねぇか!」

「見つけたぜ!」


その時、森から沢山のモンスターが現れる。


「そういや、モンスターが居やがったな」

『まずいな。トガ1人なら何とかなったのにこいつらまで来んのかよ。うざってぇ、あいつらに使う魔力すら貴重だってのに』


「トガ様加勢に来ました!」

「後は俺達に任せてください!」

「おいお前!ぶっ殺してやるから覚悟しろよ!」

「くそっ!何でこんな時に」

「おい、テメェら」

「はい、何でしょうか」

「勝手なことしてんじゃねぇぞ」

「っ!?」


その瞬間、空気が一気にピリついた。


「こっからおもしろくなるって時によ。邪魔すんじゃねぇよ。殺すぞ」

「っす、すみません!おら、帰るぞ!」


そう言って他のモンスターがその場からあっという間に消えた。

トガがモンスター達を遠のけたことでエングは純粋な疑問を口にする。


「良いのかよ。絶好のチャンスだったのに」

「バカ言うんじゃねぇよ。タイマンしようって時にモンスター連れてくバカはいねぇだろ」

「そう言うところはちゃんとしてんのかよ。なら、全力でいかせてもらうぜ!」


そう言ってエングはインフェルノキャノンの魔法陣を展開する。


「俺は負けねぇぞ!まだ倒したい奴に会ってねぇんだ。テメェを殺してあいつも殺しにいくんだよ!」


そう言ってレベル魔法の魔法陣を展開する。


『下手な小細工をしてる余裕はねぇ。この一撃に全ての魔力を注ぐ。じゃねぇとあいつは殺せねぇ』


「行くぜトガー!!」

「かかってこいよエングー!!」


その瞬間、お互いの魔法陣が光輝く。


「インフェルノキャノン!!」

「レベル魔法!ファイヤーバーニング!」


そして、お互いの生涯最高の一撃がぶつかり合った。


「「うおおおおおっ!」」


お互いの魔法は最高点に到達し、そして巨大な爆発と共に消えていった。

その衝撃は互いの体を吹き飛ばすには十分だった。


「………がふっ!げほっげほっ」


『頭がボーッとする。どうなってんだ?もう痛みすら感じねぇ。体がだるい。あいつはどうなったんだ?』


エングは状況を確認しようと周りを見渡した瞬間、土埃の中から人影が見える。


「はあ……はあ……」

「うそ……だろ……」

「がはっ!ははっ」


エングはその場で日本足で立っていた。


「くそが……まだ動けるのかよ……俺はもう駄目だってのに……」


エングは飽きられるように唇を噛みしめると、トガはその場に立ち止まり自嘲の笑みを浮かべる。


「たくよ……これだから、あいつと同じ目をしてる奴と戦うと………ろくな目にあわ……ねぇ……」


そう言って真っ正面から倒れた。

それを見てエングはホッとするもすでに体は動かせないでいた。


「ちくしょう……殺さなきゃいけねぇのに……」


限界に達したエングも気絶するようにその場で倒れた。


トガVSエングサザミ 勝者エングサザミ



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