その四十 勝手なライバル
「ついにこの時が来たな。かつ!やっとお前と戦えるぞ!」
「そうかよ。俺はあんまり戦いたくはないけどな」
1対1だったらきついがマイトが居てくれるなら何とか戦える。
あれはなるべく使いたくないし。
「お前と初めて会った時、最初は弱っちい奴だと思ってたけど、まさか実力隠してやがったとわな。まんまと騙されたぜ」
「いや、別に隠してないけど」
「ごまかす必要はないぜ。もう分かってるからな。だから、本気で来いよ」
いや、十分本気なんだけどて言うか、ガイと初めて会ったとき俺そんな強くなかったけどな。
「何せお前は黒の――――イダッ!?何すんだ!」
ガイが何かを言いかけた瞬間、サラがガイを思いっきりぶっ叩く。
「あんたバカじゃないかい!何て事を口走ってんだい!その事は言うんじゃないよって口を酸っぱくして言ったよね!」
「分かったって!悪かったよ!」
「いーや!あんた分かってないね。て言うか言葉遣いをちゃんとしなって言ってんだろ!」
「はいはい、分かりました分かりましたよ!これでいいんだろ」
「たくっ!すまないね。続けてくれて構わないよ」
「あ、ああ……」
ていうか、ガイが一方的に話してただけだけどな。
ていうかあいつ普通に黒の魔法使いって言おうとしてたよな、事前に王から黒の魔法使いの名前は出すなって言われてたのに、あいつ普通に言いそうになってるとかどんだけバカなんだよ。
「とにかく!そいつがお前を狙ってるってことは知ってんだよ!つまり!お前はかなりの実力者ってことだろ!」
「いや、そういう訳じゃないぞ。こっちにも色々事情ってのがあるんだよ」
「そんなこと知らねぇよ。とにかく、俺はずっとお前と勝負したかったんだよ」
そう言って笑みを浮かべ魔力を高める。
ヤル気満々って感じだな。
「ちょっと待て、俺がお前らとの1対1を許すと思うか?」
そう言ってマイトがガイに食って掛かる。
「おいおい、せっかくのライバルとの対決に水を差す気か?」
「俺はそれには関係ないからね。そっちの都合をこっちに押し付けないでよ」
「邪魔するってんなら、お前からやるぞ?」
「さっきから俺に攻撃を当てられてないのに、倒せるの?」
一触即発した空気が辺りを包む。
すごいな、これガチの戦いが始まるんじゃないか。
「強がってはいるがお前もう魔力足んないだろ?俺達2人と長い時間鬼ごっこしてたからな」
「………………」
「おっ動揺したな?図星みたいだな!」
確かに魔力は無限じゃない、あの2人を相手にあの魔法をずっと使い続けていたなら、魔力がいつ切れてもおかしくない。
「あの魔法をまだ使えたとしてもせいぜい5分位だろ?」
『参ったな……やっぱり十二魔道士相手じゃ誤魔化しは効かないか』
「そうだね。ガイの言う通り俺はもう長い時間あの魔法を使うことは出来ない。だけどそれは負けじゃないよ。俺を舐めてると痛い目に会うよ」
その言葉を聞いたガイはにやりと笑みをうかべると、サラの方に向き直る。
「サラ!かつには手を出すな。こいつを倒してからかつと戦うからな」
「ちょっと待ちな。今はあんたの因縁に付き合ってる暇はないよ」
「サラはミカを追えばいいだろ」
「っ!?」
こいつ、まじか。
「ミカ?そういえば、居ないね」
「あっちの森に向かってったぞ。多分ボールでも取りに行ったんじゃねえか」
「気づいてたのかい。ならなんで追っかけに行かなかったんだい」
「俺は戦いに来たからな、ボールは興味ねぇんだよ」
ガイ、仲間の俺ですら戦いに夢中でミカが何処にいるのか分かってなかったのに。
1番この状況を理解してたのはもしかしたらガイかもな。
『こいつ……もしかしたら1番の危険人物かもしれない。様子から見てまだまだ発展途上にも見れる。敵である内は早めに倒しておかないとチームの為にも』
「そう言うことならその2人はガイに任せるよ。それじゃあ負けんじゃないよ」
「そっちもな!」
「たくっ口の減らない弟子だね」
そう言ってサラはミカの元に行ってしまった。
くそ、まずい!
せっかくミカがボールを回収してくれているのに、サラに邪魔させるわけにはいかない。
「おい!俺の戦いが終わるまでそこで待ってろよ!」
待ってるわけないだろ。
俺はそう思い急いでサラを追いかけようとする、その瞬間大きな爆発音がする。
「っ!?なんだ!」
音の方を見るとガイとマイトの戦いが始まっていた。
なんつー戦いだ、お互い相手しか見ていないガチンコの勝負。
しかもガイ、最初に会った時よりも魔法の威力が格段に上がっている。
これはどっちが勝つか分からないけど、早めに決着が付きそうだな。
「巻き込まれたら一溜りもない。すぐにあっちに向かおう」
そう思い体の向きを変えた瞬間、一際大きい衝撃音がした。
その音を聞いて俺は確信した。
決着がついたと。
「中々あいつも強かったけど俺ほどではなかったな」
背後から余裕そうな声が聞こえる。
「それじゃあ、かつやろうぜ」
―――――――――――――――――――
「はあ……はあ……これで2つ目の補給場所に着いた………」
ナズミは痛む傷と魔力切れの怠さで思うように体が動かずゆっくりと補給場所に向かう。
「はあ……はあ……うっ!やっぱり、魔力切れはきつい……でも、私がここで休んだら……チームが勝てなくなってしまう」
よろけながらも魔法陣に手をかざす。
「はあ……これで……」
「何してるんですか?」
「っ!?」
ナズミは驚きのあまりしりもちをつく。
「もしかして補給してました?偶然ですね、私もしてたんですよ」
そう言ってミカは10個のボールを見せる。
『この人は確かミカさん……何かと様々な方と口喧嘩している喧嘩っ早いイメージですけど、この状況はまずいかも』
「あれ?結構お疲れみたいですね。もしかしてかつ後輩と戦って魔力切れで負けたとか?」
「見てたんですか?」
「何となくそう思っただけですよ。でも、すごいですね。傷ついて魔力切れでそれでも這ってでもボールを補給しにいくなんて」
「私は……託されましたから」
「責任感が強い人なんですね。ナズミ先輩って。でも、これは勝負なんで仕方無いですよ」
そう言ってミカはナズミにじりじりと近づく。
「っ!」
ナズミは逃げようと体を起こそうとする。
だが、上手く立ち上がることは出来ない。
「ナズミ先輩には申し訳ないですけど、気絶してもらいますよ」
そう言ってミカは魔法陣を展開させる。
「ちょっと待ちな!」
その時何処からともなく声が聞こえる。
「負傷してる相手に追い討ちをかけるやり方はあたいは、気に食わないね」
そこにはミカを追いかけてやってきた、サラの姿があった。
ミカは邪魔されたことで不機嫌そうにサラを見る。
「サラ先輩、何しに来たんですか?こんなところに」
「あんたがボールを回収しに行くところを見かけてね」
「見られてたんですか。結構上手く行けたと思ったのに」
「ナズミ!今のうちに行きな!こいつはあたいが相手するからさ」
サラはナズミにそう言うと、ナズミは重い体をゆっくりと起こして頭を下げる。
「あ、ありがとうございますサラさん」
「いいんだよ。早く行きな」
「なに勝手に話進めてるんですか。私がそう簡単に行かせるわけ――――」
その時光の矢がミカの顔面目掛けて飛んでくる。
それをギリギリのところで避ける。
「早く行きな!」
その言葉を聞いてナズミはボールを持って急いでその場を離れる。
ミカはナズミの向かった方向を確認してから、サラの方へと向く。
「いきなり矢を飛ばしてくるなんてサラ先輩、倒される覚悟は出来てるってことですか?」
「ふっ前からあんたの態度にむかついててね。ガツンと一言言ってやりたかったんだよ。あんたはまだガキのままだよ」
「多分私が余裕で勝ちますよ。私、天才なんで」
「十二魔道士の天才わね。凡人なんだよ」
その瞬間、戦いが始まった。




