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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第三章 黒いモンスターの謎
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その一 弱肉強食

「えっと…これってどうやって帰るんだ?」


ケイガの2人組を何とか倒して、ゴールドフィッシュを魔法協会に持ってく為に帰ろうとしたが、帰り方が全く分からん。


「確かこのクエストの紙に何か書いてそれから地面に置いてたよな。問題は何を書いたかだけど……」


クエストの紙には何か書く欄がある訳でもない。

かと言って書かなければ多分帰れない。


「ミノルがテレポートを出している所は何回も見たけどやり方とかよく見てなかったな。こんな事になるならもっとちゃんと見とくんだった」


まっ後悔した所でもう遅いしな、多分クエストを選んだ人にしか出来ないのかも知れないしミノルが起きるのを待つしかない。


「て言っても、もう暗くなってくるな」


辺りは太陽が出ていた時とは真逆で、何かが出るのではないかと思わせる程の不気味な雰囲気をもたせる。

夜はモンスターがより活発になるので、夜になる前に大抵の魔法使いは皆帰るのだが……あいにく帰り方が分からない今の状況じゃ帰りたくても帰れない。


「なるべくモンスターに見つからないように、洞窟とかに隠れるか。ていってもここら辺に何があるかなんて分からないし下手に動くと危険か?でもここで待ってるのも危険だし………」


俺が1人で自問自答していると草むらを掻き分ける様な音がした。


「――――っっ!今の音は……モンスターか?」


日も沈んで暗くなってきたし本格的にやばいかもな。

やっぱりちょっと離れるか。

俺はその場から離れる為にミノルをおぶろうとした時また奥から音がした。

今度のはさっきより大きいな。

もしかして近いのか?

するとまた音がした。

今度は段々と音が大きくなってきている。

こっちに近づいて来ているのか。

すぐにミノルをおぶって逃げるのは無理だな。


「やるしかないって事か」


音からしてそこまで大きくないはず、俺でも倒せるモンスターならいいんだが。

音が段々大きくなり近づいて来た。

すると直前の所で音がピタッと止まった。

自分の心臓の音が聞こえる。

俺は全神経を集中させて草むらを一点に見続けた。

覚悟を決めろよ俺。


「ゴクっ……」


風で草や木の葉が擦れる音がするだけの空間で、その時はやって来た。

勢い良く草から何かが飛び出して来た。


「――――っっ!」


その何かは俺の横を素早く通り過ぎて行く。

俺はその飛び出した何かにすぐ視線を移した。

するとそこにはウサギによく似た生き物だけだった。

だが少し歯が長く、爪も出ていて、足の筋肉が盛り上がっていてやはりモンスターだなと思わせるフォルムをしていた。


「ふぅ……何だよ…、びっくりさせるなよ。ビビって損した」


なんか緊張が溶けてどっと疲れたな。

ん?何かこういう展開、漫画とかで見た事あるような気がするな。

何かやばい奴が来ると思ったら大した事なくて、ほっとしてると後ろに居るっていう……


「誰だ!」


俺はすぐに後ろを向いた。

だが後ろには何もいなかった。


「まあそんな漫画みたいな事流石に起きないか」


すると後ろかな大きな足音が聞こえてくる。

いや多分それは気のせいだな、疲れて幻聴が聞こえるんだろう。

その足音は体が大きいのかズシンと不規則に音を出している。

そしてその音は俺の真後ろでピタリと止んだ。

ほらやっぱり俺の気のせいだったか。


「フシュー、フシュー!」

「なんか生暖かい風が来ているが多分気温が変化したんだろ。うん、それ以外無いしな」

「グルルルル!」

「何かうめき声が聞こえるが多分誰かの腹の音だろ。全くちゃんと飯を食わせなきゃ駄目だろ」


そうだこれはモンスターじゃない、後ろを見れば分かるはずだ。

ここまで2回もモンスターが出そうな場面で出なかったんだ。

3回目も無いはずだ。

3度目の正直だ。

ん?何か今使うとモンスターが出る意味にならないか?

まあ良いいくぞ、見るぞ!

3、2、1!

俺は意を決して後ろを振り返った。


「グルガアァァァァァ!!」


そこには犬の様に細長い口を大きく開けて威嚇しているモンスターの姿がありました。


「――――ぎゃああああっっ!!」


やっぱり居たのかよ!

いや何となくそう思ったけど認めたくなかった。

でも見てしまった以上仕方ない、モンスターはやっぱり居た!


「とっとりあえず逃げなきゃ!」


俺はミノルをおんぶして逃げ様とした。

だがモンスターが俺に向かって一直線に突撃してきた。


「クソ!こっちに来たか!」


俺は避け様としたがモンスターのスピードが速く避け切れず当たってしまいその衝撃でミノルと離れてしまった。


「くっ!―――――しまった!」


このままじゃミノルが危ない!


「ミノル―――――痛っつ!」


すぐに立ち上がろうとしたが、さっきの当たりが効いたのか体が言う事を聞かない。


「グルルルル……」

「おいモンスター!こっちに来いよ!かかってきな!」


俺はこちらに注意を向ける為モンスターを挑発する。

だがそのモンスターは俺に目もくれずミノルの方にゆっくりと向かっている。

このままじゃまずい!


「おいミノル!起きろ!早くしないと食われちまうぞ!」


遠くにいるミノルを起こす為大きな声でミノルに呼びかける。

だが全く起きる気配がない。

もう毒はとっくのとうに解けてるはずだ。

となると気絶しているのだろう。

このままじゃ本当にミノルが殺されちまう。

何かないのか!


「ジュルリ!」


垂れてきたよだれを長い舌で舐め取る。

あのモンスター完全に食う気満々じゃないか!


「ミノルマジでやばいって!起きろってミノル!お前早起きは得意だって言ってただろ!」


ミノルは起きる気配が全く無くモンスターはミノルのすぐそこまで来ていた。

このままじゃホントに死んじまう!

その時ふとミノルの言葉が思い浮かぶ。

初めて俺がモンスターを倒した時、罪悪感に陥って落ち込んでた俺に向かって甘い考えは捨てなさいって言ってたな。

モンスターを倒すのは生き残る為、いつの間にかそんな事すっかり忘れてた。

この世界は日本とは違う。

弱肉強食の世界そのものだ。

クエストに行くということは命を失う可能性があるという事だ。

いつ死んでもおかしくないんだ。

今まさにミノルがこんな状況になっているのもあり得なく無いんだ。


「ミノル……駄目だそんなの!」


だいぶ体も動けるようになってきた。

まだ痛むが動けないほどでもない。

俺は最後の力を振り絞って立ち上がり、モンスターに向かって石を投げた。


「――――ガウっ!?」

「おい、どこ行こうとしてんだよ発情犬。お前の相手はこの俺だ!」


するとそのモンスターが石を投げた事に怒っているのか、それとも挑発した事に怒っているのか分からないがとにかく敵意剥き出しの顔はしていた。


「グルルルル!ガウ!」


そして1つ吠えた瞬間こちらに向かって来た。

やべぇ!突っ込んできた!

どうする魔法で対抗するか?

いや駄目だ!

あの巨体に俺の魔法何て蚊に刺された程度の威力だろう。

そんな事を考えている間にモンスターはすぐそこまで来ている。

逃げなきゃ!でも足がすくんで動かない。

なんでこんな時に限って!

モンスターは爪を構え俺の方に向かって振り落とした。

あっ死んだ―――――


「ギガサンダー!」


その時後ろから声が聞こえたのと同時に魔法陣が出現し、そこから雷が出てモンスターに直撃した。


「グガァァァァァァ!!」

「うっうわ!?」


なんつー衝撃だ。

雷の勢いだけでも吹っ飛びそうだ。

その魔法を受けたモンスターは苦しそうな声を上げながらその場で倒れた。


「いっちょ上がりだな。うーん……やっぱ強いモンスターとじゃなきゃ調子でねぇーな。ん?何だお前?こんな所で何やってんだ」


その謎の男は岩の上に乗りこちらを見下ろす。

ゴーグルのような物を首に掛け、黄色の髪の毛をしている。

そしてミノルと同じ様にローブを身に纏っている。

だが杖は持っていないようだ。


「おっ俺か?俺は絶対かつだけど……」


やばいつい反射で答えちまった。


「絶対かつか……俺はガイだ。そこで何してたんだ?見た所異様な光景で状況がよく分からねえんだけど。何でこいつ縛られてるんだ?」


突然の出来事で頭がこんがらがっている。

とりあえず帰る方法を教えてもらおう。


「そいつは気にしなくて良い。それよりガイ。テレポートのやり方とか知らないか」

「俺の質問は無視か……まあいいや、それでテレポートのやり方だっけ?お前まさか知らないのか」

「いやちょっとド忘れしちゃって」


俺の言葉に少し疑いの眼差しを向ける。

まあこんな所までクエストをしに来てるのに帰り方が分からないなんて怪しいよな。


「ふ〜んド忘れねえ。まあいいぜ教えてやるよ」


よし!何とか誤魔化せたぞ!


「まじかありがと!これがクエスト何だけど」

「ゴールドフィッシュの討伐か。もうそんな時期だったっけか」


あっやばいそういえばこれ秘密だったな。

つい見せちゃったけど大丈夫か。

でもあんまし興味なさそうだし大丈夫だよな……多分。


「ほらここに文字が書いてあるだろ。そこにクエスト完了って書けば良いんだよ」


下の文字欄の所を指差す。


「え?それだけ。この文字の上に書けば良いのか」


予想してたのよりだいぶ簡単だった。


「それだけだ。てか普通忘れないんだけどな」


当たり前の事も出来ないんだとは言えないしな。


「ちょっと物忘れが酷くてな。ありがとこれで帰れるよ」

「まあそれなら良かったが。それじゃあな」


そう言って岩から飛び降りた。


「ちょっと待て!お前は帰らないのか。もう暗いし1人で居るのは危ないんじゃないのか」


そうするとガイが俺に何言ってんだと言わんばかりの顔をしてきた。


「は?お前何言ってんだ。俺はガイだぞ。大丈夫に決まってんだろ」


全く答えになってないんだが。


「え?それってどういう事だ」

「そのまんまの意味だよ。それじゃな」


そう言ってガイは草むらの中に消えて行った。


「何だったんだあいつ」


でもあのモンスターを一撃で倒す位だから凄い奴何だろうな。

モンスターも即死だしかなり強力の魔法なんだろう。


「まあとりあえず疲れたから帰るか」


俺はクエストの紙にさっき教えて貰ったやり方で文字を書いてそれを地面に置いた。

するとその周りが光りだした。


〘クエスト終了を確認。テレポートを開始します〙


「何かこの声も久しぶりに聞いた気がするな」


俺は光に包まれながら魔法協会にテレポートした。


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