プロローグ あの日
「はあ〜まさかまたここに戻って来る事になるとは思わなかったな〜」
汚いゴミが散乱し、壁に所々落書きの様な跡があるこの路地裏に俺は再び戻って来た。
一度ちゃんとクエストすると誓った場所でもあり、俺的にはもう戻らないと思ってたのだが。
「それはこっちの台詞だがな。何故帰ってきた」
そんな言葉を投げかけるのは1人しかいない。
そこには壁に寄りかかりながらタバコみたいな物を吸うケインの姿があった。
もちろんケインの周りにはゴミが一切散らかっては居ない。
流石はケイン、女子力が異様に高いな。
「まあ色々あったんだよ。それよりケイン、このリュック凄いな!まさか無限に入れられる何て、どこで手に入れたんだよ」
「それは俺が作った」
そんな結構すごい事をさらっと言う。
「え!?…まじ?」
「ホントだ」
あのドヤ顔……ほんとに作ったっぽいな。
「すげーなお前。ていうか料理も得意じゃなかったか」
「簡単なものなら多少な」
「そういえばお前ってここの皆の分のご飯も作ってんだろ。裁縫も出来て、料理も出来て、皆に気配りができるとかお前って地味に女子力高いよな」
するとケインが怪訝そうな顔をする。
女子力が高いは褒め言葉にならないか。
「どういう意味か知らんが褒め言葉として受け取っておく。それよりお前はこれからどうするんだ」
「ん〜どうしようかな………」
なぜ俺がこのマイハウスに戻って来たかというと色々な事情があったりする。
本当だったら今頃お金持ちでウハウハな生活を送っているはずなのに、今の俺には多額の借金が出来てしまった。
なんでそんな状況になっているかというと、時は俺達がゴールドフィッシュの討伐を終えて魔法協会に帰ってきた2日前に遡る。
そう俺達が死闘を終えたあの日が俺達の地獄の始まりだった。




