そのニ 新しい自分
「えっと〜…つまりミノルは本当の魔法使いってことか?」
「そうよ。ていうか、かつは疑ってたの」
「コスプレかと思って」
「コスプレなわけ無いでしょう!」
「だよな。分かってるって」
「本当に分かってるのかしら…」
何か疑われているが、とりあえず現状について整理しよう。
ここまでをおさらいすると、ここは異世界で、この世界では魔法が使えてさらに12個の島で作られた世界だということがわかった。
俺はその中のにゃんこ島と言うところに来てしまったらしい。
改めて考えると、まんま異世界だな。
にしても……ミノルが思ったより美人なのが驚きだ。
最初フードで隠れて見えなかったけど見れば見るほど美人だな。
この顔を見ただけど異世界に来たのだと痛感する。
俺がミノルの顔に見惚れていると、ミノルが自分の顔を見られているのに気づいて頬赤らめながらそっぽを向いた。
「何よ。ジロジロ見て」
おっと、意外と可愛いところがあるじゃないか。
だけど俺はそれよりも気になっていることがある。
フードが取れたときも気になったが、ミノルの頭の上にネコ耳がある。
この島の名前がにゃんこ島ということもあって、この島の風習なのだろうか。
「なぁミノル。お前の頭の上にあるその猫耳って、カチューシャなのか?」
「何言ってるのよ。これは本物の猫耳よ」
そう言って自分の頭の上に付いている耳を手で動かした。
「えっ?本物?」
よく見ると勝手に動いたりしているな。
それにお尻のあたりにしっぽも生えている。
さすが異世界、こうゆう種族もいるのか。
「なぁ、ミノルみたいな種族は他にいないのか?」
「人間以外の種族は、半獣だけよ」
「半獣?」
また知らない単語が出てきた。
「私みたいに、猫耳の人のことよ」
なるほど、半獣っていう種族なのか。
ていうかそれしかいないのか。
俺の思ってた異世界とはちょっと違うな。
もっとエルフとかいるもんだと思ったのに。
そういえばこの島の名前も気になるな。
「なぁこの島の名前がにゃんこ島っていうのは、半獣がいるからなのか」
「名前の由来は知らないけど、この島にしか半獣はいないって噂だから多分そうなんじゃない」
噂?確定ではないのか。
「この島にしかいないのか。だとしたらこの島には人間がいないのか」
「居るには居るけど数はかなり少ないわね」
人間が居るってことは、一緒に生活してるのか。
だけどかなり少ないってのが少し引っかかるな。
すると考え事をしている俺をミノルが怪しい人を見るような視線で睨んできた。
「なんだよ。言いたいことがあるなら言えよ」
「あなた知らな過ぎじゃない」
「何がだよ」
「この島のこと、この世界のこと、私達のこと、魔法のこと、全てのことにおいて知らなすぎじゃない。まるでこの世界に始めてきたみたい」
そう言いながらこちらに詰め寄ってくる。
「まるでっていうか、本当なんだが」
「そんなわけ無いでしょ。あなたはこの島に来ているはずよ」
「そんなこと言われても……」
ふとミノルの方を見ると自分の頭の猫耳を突いていた。
俺はそれを見てまさかと思い自分の頭の上を触ってみた。
すると確かに感じたことの無い感触が頭の上に伝わった。
その時ミノルが俺に鏡を渡してきた。
恐る恐る見てみると、そこにはミノルと同じ猫耳を付けた、俺が映っていた。