その十一 第2競技
「えーただいまアクシデントが起きまして、急遽出場選手を変えることとなりました!ミカ選手に変わりまして、絶対かつ選手が出場となります!」
俺はリボンを受け取り、尻尾に付ける。
意外とぴったりくっつくな、移動中に外れる心配はしなくても良さそうだな。
でも取ろうと思えば取れる程度か、あまり油断はできないな。
「かつ後輩、絶対に勝ってくださいね!」
「ああ、任せておけ」
「ちょっと待ちなさいよ!変えるのがありなんて聞いてないわよ」
ん?何だ、ピンカが騒いでるのか。
どうやら不服なのかピンカが文句を言っているようだ。
「ミカ選手には出場できない理由がありましたので、変更になりました」
「何よ、その出場できない理由って」
「えっと……それは」
まさかの実況の人が困るとは、嫌なクレーマーみたいだな。
まあ、尻尾が敏感なので巻けませんは言いにくいのかもしれないな。
すると、ガルアが立ち上がった。
「ミカの出場理由についてはこちらが了承している。王全員が出場選手を変えて良いという許可も降りた。理由としてはこんなものだ」
「で、ですがそれなら私も選手を変えたいのですが」
「お前は俺達を納得させる理由を持っているのか?」
「っ!それは………」
ピンカは特別な理由がないのか黙ってしまった。
「話は以上だ。進行を続けてくれ」
「は、はい!それでは、進行を始めたいと思います!」
「……くそ!」
ピンカは八つ当たりのように地面を蹴飛ばす。
ふう、なんとか丸く収まってよかった。
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王の席では先程の話で盛り上がっていた。
まずカノエが豪快な笑い声を上げる。
「ガッハッハ!たしかに、交換したい気持ちも分かるな。あのイナミってやつは魔力は中々あるのに力を存分に発揮できてないな。自分に自信がないのか?十二魔道士の癖に自信がないなんてそんな奴よく十二魔道士にしたな、シンラ」
その視線がシンラに注がれると、シンラは微笑みを返す。
「そんなことないですよ。イナミはやれば出来る子ですから。私は信じています」
「かぁー相変わらず聖母だな」
「私はお母さんではありませんよ」
そう言って、もう一度優しい笑みを見せる。
「誉め言葉だっつーの、相変わらず冗談が通じないな。にしても風間、こんな面白いゲームよく思い付いたな!ただの奪い合いに見えるが、誰を狙うかどう奪うか、そしてどう魔法をうまく使うかも試されてる戦略的かつ魔法の力も試される良い競技じゃねえか」
今度はカノエは風間に話を振ると、風間は褒められたのにも関わらず冷たい態度を示す。
「そりゃあ、どうも。ていうか、いきなりそんなベラベラ喋ってどうした?」
「興奮してんだよ!俺の仲間がお前の仲間とバチバチに戦ってるのがよ!嬉しくてたまんねぇよ!そうだろガルア!」
「ああ、そうだな」
次に狙われたのはガルアだった。
ガルアは少しめんどくさそうに返事をする。
だがカノエは構わずガルアに突っかかってくる。
「ガルア!俺は今回、本気で王を狙うぜ!覚悟しろよ!」
「ちょっと待て!俺様のこと忘れてないか!俺様も王を狙ってるんだぞ」
王という言葉に過敏に反応を示したムラキが椅子から立ち上がり、カノエを指差す。
「ガキまだ居たのか。ママに怒られる前に早く帰れよ」
「俺様はガキじゃない!なめてると痛い目に合うぞ!」
「街に侵入されて挙げ句の果てに花嫁を持ち去られる様な王に誰がびびるんだ?」
「ぐっ!うるさい、うるさい!」
するもムラキは怒りをあらわにしてカノエに突っ込んでいく。
カノエは余裕でムラキの突撃を躱すと、ムラキはもう一度カノエの腹に突撃する。
「うるさいのは、あなたたちです!」
その時取っ組み合いをする2人にミュウラが一喝する。
カノエとムラキは目を丸くさせてその場で固まる。
「今回のメインは十二魔道士ですが、この席は王の席。私達に泥を塗るような行為はやめてください。神が言ってますよ、静かにしろとね」
「お、おう」
「分かった……」
2人は大人しく元の席へと戻っていった。
そして、いよいよ会場に次の試合の開始のアナウンスが響き渡る。
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「出場選手以外の十二魔道士が席についたので早速始めたいと思います!今回はエリアの外に出ては行けませんよ!制限時間は30分!それでは、行ってらっしゃい!」
その瞬間、俺の体を光が包み込んでくる。
いよいよ、始まる。
島王選、第2競技が!
光が消えると最初の景色は森林だった。
「また、森?」
だが、よくよく見ると地面がゴツゴツしていて急斜面もあり、先程の森とは違った。
そして、その景色は見たことがあった。
「ここってたしか修業の時に使ってた山だよな」
ここは、ダリ師匠とサクラに鍛えられた。
「懐かしいな、あの時は何回ゲロ吐いたか」
あの時の苦しい日々も今となっては良い思い出だ。
「それでは、よーいスタート!!」
空から高らかに開始の合図がなる。
「始まったか」
また、皆とは別々なんだろうな。
どこから奇襲が来るか分からないし警戒しておこう。
時間は十分にある、この戦いはどれだけリボンを持つ勝負じゃない。
先ずは――――――――
一方その頃、別の場所ではすでに十二魔道士が出会っていた。
「やあ、こんにちは。君はイナミ君だったよね」
マイトが軽く挨拶をするがイナミは依然として何も言わない。
「………………………」
「君の魔法、結構興味合ったんだ。俺と手合わせ出来たら嬉しいな」
「………………………」
だが、イナミは答えるわけもなく黙ったまま佇む。
「無口なのか、それとも自分を押さえてるのか。もっと自信持っても良いんじゃない?イナミ君の魔力、とても力強くて俺結構好きなんだよね」
「…………………………」
『本当に何も喋らないな。このまま戦おうとしても何か一方的で後味悪いし、ここは一旦引き下がろうかな』
すると、イナミが魔法時を出現させる。
「あれ?戦うの?」
「…………………………」
「黙ったままだけど、戦うってことで良いんだよね」
「……………………………」
「それじゃあ、やろうか!!」
――――――――――――
「お姉さまに繋げるためにも、頑張らないと」
ナズミはそう意気込んで山をどんどん登る。
だがその姿を一人の魔法使いが目撃していた。
「みーつけた」
その時、何かがもうスピードでナズミの元に突っ込んでくる。
ナズミは何かを察知して思わず足を止める。
「えっ?この魔力、もしかして」
「よお!奇遇だな!!」
そして空を見上げた時空中から巨大な男が飛び出してくる。
「え、エングさん!」
「お前はたしか、1位で50ポイント持ってたよな」
「っ!このポイントは渡せません」
そう言って、ナズミは自分の尻尾を抱える。
「がっはっは!ここは勝負の場だ。女だからって容赦はしないぞ」
「分かってます。私も覚悟を決めて来ましたから!」
「良い顔つきじゃねえか。やりがいがありそうだな!」
――――――――――――
「ここ、どこだ?」
ガイは現在迷っていた。
ただいま、マイトVSイナミ エングVSナズミ
かつ? ガイ道に迷い中




