その七 特異体質
かつが激闘を繰り広げている頃、ミカの方も戦っていた。
「かつ後輩!」
「おおっと!行かせねぇぞ!」
そう言って、ミカの前にエングが立ちはだかる。
「かつを助けに行きたかったら、先ず俺を倒すんだな」
「そうですね。先ずはエング先輩を倒そうと思います」
「がはっはっ!やっぱりお前面白いなぁ。普通萎縮する所なんだが」
「自分よりも弱い相手に萎縮なんてしませんよ」
「がはっはっはっは!!!」
すると、より一層高い声で笑う。
ていうか、この人何でずっと笑ってるの?
私、そんな面白いこと言ったかな?
「お前みたいな生意気な新人はピンカ以来だな。その自信は天才だからこその余裕か?自信あるのは大いに結構!上を目指すなら向上心は常に持っとくもんだ。だが、勝てねぇよお前は」
少し、雰囲気が変わった。
「能力はあるみたいだが、圧倒的に経験が足らねぇ。互角の相手との勝負では経験の差が勝敗を分ける」
「経験は確かに必要ですけどそれが無かったから負けるなんてのは理由になんてならないです。経験がないのなら相手が経験したことない戦い方をすればいいだけでしょ」
「お前には経験すらも関係ないと言いてぇのか?」
「戦いに必要なのは経験でも力でも魔力でもないですよ。圧倒的な才能です。才能がある人には勝てないんですよ」
「がっはっは!お前の才能は俺すらも上回ると言いてぇのか!やっぱりおもしれぇな。だが、下克上はありえねぇぜ」
その時、空気中のマナがエングに集まっていく。
ついに体感できる。
十二魔道士の戦いを!
「アイススプラッシュ!」
「っ!」
その瞬間、氷柱が雨のように降り注ぐ。
「グランドファイヤー!」
それを炎ですべて溶かす。
別のところから魔力が!
後ろっ!
「ロックニードル!」
「アイスクラッシュ!」
後ろから飛んで来る鋭い岩を氷で砕く。
やっぱり、何かおかしい。
「っ!もしかして」
「気づいたか」
「エング先輩の魔法陣、少しおかしい。気のせいって思ってたんですがやっぱり、気のせいじゃなかった。エング先輩の魔法陣は普通の魔法陣よりも一回り大きい」
「その通りだ。俺は特異体質でな。普通の人よりもマナを取り込める量が多いんだよ。その分魔法陣も一回り大きくなってるって訳だ」
「でも、それだけですよね」
「ん?」
「当たらなければ意味はない。ですよね、エング先輩」
ごめんなさいエング先輩。
私、出来ないことを出来るとは言わないんですよ。
出来るから自信を持って言うんです。
下克上はさせてもらいますよ。
「次はこっちの番です!スプラッシュネット!」
「水の網か?俺を捕まえようなんて10年早いぜ!ファイヤーブライト!」
だが、炎を受けてなお私の魔法は勢いを止めずエングに襲いかかる。
「チッ!ハイソウルウィンド!」
風の魔法によって水が弾き飛ばされる。
『俺の魔法よりも純度の高い魔法を出しやがった。マナをそのまま魔法に込めてやがる。あの威力からして得意魔法だなありゃあ。俺も得意魔法出したのに真っ向勝負で負けちまった。天才?いや、ちげぇなありゃ化け物だ』
「次は倒します」
『ちょっち本気出すか。久しぶりにたぎって来たぜ!』
何?何かとても嫌な予感がする。
あれが本気なわけないしまだ何か奥の手がある?
だけど関係ない、それすらも乗り越えて倒してやる。
「まだまだ大会は続くが関係ねぇ。ここでお前を倒すぜ。おりゃあ!」
その時、地面に巨大な魔法陣が出現する。
さっきよりも大きい、これが本気。
あの魔法陣の中にかなりの魔力が込められてる、受ければただじゃすまない。
一旦距離を取った方がいいかも。
「おっと!逃がさねぇぜ!レベル魔法!ツイングランドファイヤーボール」
その瞬間、2つの巨大な炎の玉が出現する。
あれは、レベル9の魔法。
得意魔法の分、普通よりも上がってる。
「喰らいやがれ―――――」
「ちょっとお待ちくださーーーい!」
その時、アナウンスの声が響き渡る。
「な、何だ?」
「ああ?これからって時に何だよ」
「えーっと、そこは戦闘地ではなく街ですのであまり荒らさないようにお願い致します。街の1つでも傷つけるなら容赦はしないとシンラ様もおっしゃっているのでよろしくお願いします」
そう言って、アナウンスが終了した。
戦闘の警告?
どちらにしろ、さっきの魔法を受けずには済んだ。
「暴走するなって忠告されちゃいましたね」
「チッ!これからって時に。こうなったら、そこそこの魔法でやるか」
「そこそこの魔法で私を倒せると思ってるんですか?」
「分かってるよ、だからよ。壊さないくらいでやりあおうぜ!」
本気の勝負が出来ないのは少し残念だけど、でも勝たせてもらいますよ。
「アイスガン!」
「はっ!その程度の魔法じゃ俺を倒せないぜ!っ!?」
そう、その魔法はフェイク。
エング先輩を倒すための始まりの魔法。
『背後に魔力が高い魔法陣があるな。背後からの奇襲を狙ってるのなら一撃必殺の魔法じゃあ逆にバレちまうぜ!』
エング先輩は必ず真っ正面から突っ込んでくる。
だから、そのとき私も突っ込む!
『何だこいつ、何で突っ込んで来たんだ。かつみたいに殴り合いをする気か?そんな貧弱な腕で俺にダメージ与えられると思ってんじゃねぇよ!』
その瞬間、私は右手を付きだす。
「っ!?右手に魔力まさか!」
気づいてももう遅い。
私の一撃を喰らえ!
『こいつ、切り替えが出来たのか!』
下克上させてもらいますよ!!
「ウォータースピア!!」
決まった!
さすがのエング先輩もこれで!
「………っ!な、何で」
ミカの魔法はエングの頬をかすめていた。
「そんな……避け」
「経験は必要って言っただろ?」
「っ!?」
「足元、注意しろよ」
足元を見るとすでに魔法陣が展開されていた。
「しまっ――――」
「ソシールウィンド!」
やられた!動きが止まって避けれなかった!
数メートル飛ばされた、すぐに着地して態勢を。
「お前に見せてやるよ。俺のオリジナル魔法を!」
「なっ!?」
「上空なら強めに撃っても何も壊れないよな!」
その時上空にさらに巨大な魔法陣が出現する。
今までのがマックスじゃなかった!?
まずい!避けなきゃ!
じゃなきゃ!
「喰らえよ!インフェルノキャノン!」
死――――――――――
上空で巨大な爆発によって衝撃波が広がる。




