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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十三章 開幕!島王選
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その一 地獄の控え室

「この城には何度も来てるけど、今日は何だか妙に緊張するな」


何だか体が思うように動かない、指先も震えてる。

やっぱり、緊張してるよな。

でも、やると決めたからには最後までやり通す。


「よし!行くか!」


俺は頬を叩き自分に気合いをいれてから早速城の中に入る。


「お待ちしておりました。絶対かつ様」


そう言って、シニアが出迎えてくる。


「シニアか。そういえば、シニアも見に行くのか?」

「私はお留守番させていただきます。かつ様のご武運を城でお祈りしております」

「ありがとう。俺、頑張るよ」


シニアに激励を貰い俺はさらに張り切る。

そのままシニアの後を付いていき、客間に着いた。


「この中でお待ちしております」


俺は扉の前で深呼吸をして中に入った。


「それでな………おっ!来たようだな!」


部屋の中にはガルアとミカが談笑していた。

ミカも始めてのはずだけど意外と緊張してないのか?


「かつ後輩遅かったですね」

「あ、ああちょっとご飯食べるのが遅くなってな」


いや、何か分からないがガルアを見た途端また緊張してきた。

実感が湧いてしまったと言うことなのか?

くそ、しっかりしろこんなんじゃ島王選で活躍できないぞ。


「はっはっは!何だお前、今にも死にそうな顔じゃねえか!」

「なっ!人の顔をバカにするな!」

「緊張してるんですか?」

「っ!?べ、別に緊張してねえよ!」

「分かりやすいですね。意外とそう言うのには緊張するタイプなんですね。しっかりしてくださいよ」


ミカは澄まし顔でそう言ってくる。

こいつ、偉そうに。


「お前はどうなんだよ?緊張してないのか?」

「私はぜーんぜん。むしろ早く戦いって感じです」

「マジかよ。まあ、お前は十二魔道士と戦ったことないしな」

「ていうか、そもそも私達も十二魔道士ってこと忘れないでくださいね。十二魔道士になった以上、気合いで負けたら終わりですよ」

「分かってるよ。臆するわけないだろ」


そうだ、俺は負けるわけにはいかないんだ。

絶対勝ってやる!

するとガルアが大きく手をたたく。


「よし!気合いも入ったところで時間だ。カルシナシティに行くぞ」


いよいよだ、遂に島王選に参加するんだ。

十二魔道士はヤバイ奴らばかりだけど、もう弱いままの俺じゃない。

ここで見せてやる、見返してやる風間に。


「行くぞ!テレポート!」


―――――――――――――――――――――


目が覚めるとそこにはドデカイドームが待ち構えていた。


「デッカー!あんなデカイの合ったか!?」

「急ピッチで作らせたんだよ。あれが島王選の会場だ。時間短縮のために闘技場を少し改良して作られたみたいだな」

「あっ通りで何か見たことあると思った」

「あそこで戦うんですね。ちょっと興奮してきた!」


ミカはヤル気満々でジャブをする。

こいつ、魔法で戦うのに何で拳振ってるんだ。


「それじゃあ、早速中に入るぞ。他の奴らももう着いてるだろうしな」


俺達は早速ドームの中に入って行った。

中には既に沢山の観客が席に付いていた。

こんなに人がいっぱい居るのか。

流石、この島1番の大会だな。


「この部屋だな」


そこには扉のプレートに王様方と書かれていた。


「お前らもちゃんと挨拶しろよ」


そう言うと、ガルアはすぐに扉を開けた。

その瞬間、異様な殺気が部屋から漏れだしてくる。

やべーめちゃくちゃ怖いんですけど。

まあ、そりゃそうだよな、こんな大会で仲良くなんて出来ないよな。


「あら、遅かったわね。皆さんが集合してから5分も待たせるなんて、王者の余裕と言う奴かしら」

「すまねえな、かつを待ってたら遅くなっちまってよ」

「っ!?」


ばかガルア!こいつ完全にやったわ!

その時、その威圧的な視線がこちらに向けられるのを感じとる。


「ほお、十二魔道士が我ら王を待たせるなんてずいぶんなご身分なのね」


完全に敵意むき出しだで、めちゃくちゃ怖いんだけど!


「ガハハハ!なるほど、エングの言った通り面白い奴だな!!」


するともう一人の王、カノエが立ち上がり俺に近づいてくる。

やばっ!デカっ!2メートル余裕で越えてないか!?


「いい試合にしようぜ」


そう言って、カノエは握手を求めてくる。

俺は恐る恐る手を伸ばすが焦れったくなったのか、届く前に俺の手を掴んで握手をする。


「そう、恐縮すんなよ!楽しくやろうぜ」

「そんな風にしてしまったら、怖がるのは無理ありませんよ」


この場の雰囲気に似合わない心が暖まる優しい声が奥から聞こえてくる。

声の方を向くと、シンラがティーカップを手にこちらに微笑んでいた。


「今日は楽しい日にしましょう」


そういえば、この人会議の時もあんな風に笑顔を送ってくれたな。

殺伐とした王の中でも女神のような人だな。


「おい、お前いつまで居るつもりだよ。ここは王の控え室だぞ!お前らの控え室はあっちだ!とっとと消えろ!」


くっムラキ相変わらずムカつくがここは大人しく従うか。


「分かりました。それでは失礼します」


俺はさっさとここから出て行こうと思ったが、ミカは何故か動かない。


「ミカ?」


嫌な予感がする。

今すぐにでもここから立ち去りたいくらいの嫌な予感が。


「せっかく王の方々がいらっしゃるので、言わせていただきますね」


その言葉に王の視線がミカに集まる。

おい、やらかすなよ。


「あなた方全員完膚なきまでに叩き潰させていただきます」

「「「「なっ!?」」」」

「ばか野郎!!」


こいつ案の定やらかしやがった!

俺はミカの頭を殴りすぐにその場から立ち去った。


「宣戦布告と捉えていいのですね、ガルア?」

「うーん、まっ面白そうだからそれでいいぜ」

「そうですか。なら、神は言っています。あなたは完膚なきまでに叩きのめされると」



――――――――――――――――――


俺はミカを引きずって控え室に向かう。


「たくっ!お前なんであんなことを急に言ったんだよ。完全に他の王を敵に回したぞ」

「こういうの1度やってみたかったから、スッキリしました!」

「スッキリしたじゃねえよ。俺も巻き込みやがって」


にしても、風間が何故か俺に突っかかって来なかったな。

何かあったのか?

いや、あいつの心配なんかしてる場合じゃねえ!

今は俺もかなりヤバイ状況だし、人の心配してる余裕ないからな。

廊下を進んでいくと、1つの扉が見えた。

そこには十二魔道士様と書かれている。


「ここが、十二魔道士の控え室か」

「ていうか、そろそろ引っ張るのやめてもらえません?」

「お前がバカなことするからだろ。もう、変なことするなよ」


ミカを離すと、ミカはゆっくりと立ち上がり引きずられて擦った箇所を手ではたく。


「十二魔道士では宣戦布告とかするなよ」

「もう、遅い感じはありますけどね」


たしかに、こいつ会議の時に喧嘩売ってたな。


「とにかく、無しだからな」

「了解です」


そう言うとミカは指先を揃えて頭の前におき敬礼する。

本当に大丈夫なんだろうな。

かなりの不安を残して俺はついにその扉を開いた。


「おっ!来た来た!遅かったなお前ら!」


開口一番にそんな言葉が俺たちにかけられる。

どうやら俺達のことを待っていた様子だ。


「そんなに待たせてたのか?」

「ていうか、あんた達後輩なんだから普通、私達が来る前に控え室に居るのが礼儀なんじゃないの?しかも、1番最後に来るなんてバカにするのもいい加減にしないさい。優勝するきがないなら即刻消えることね、不愉快だから」


相変わらずこのちびっ子は俺達に突っかかってくるな。


「だ、駄目ですよピンカさん。こんなところで喧嘩なんかしたら、出場停止になってしまいます!」

「分かってるわよ、ナズミ。心配しなくてもこの私がこんな奴らと喧嘩するわけないでしょ」

「もしかして、ビビってるんですか?」

「あ?」


ミカの言葉にピンカの目のはしがつり上がる。

始まった、あれほど煽るなと言ったのに。

こいつはもうダメなのかもしれない。


「もしかして、今まで散々煽ってきたのは自分がビビってるのを隠すためとか?戦うのは怖いから口だけで喧嘩しようとしたんですか?でも、安心してください、私が勝つのは普通なんで」

「あんた、どうやらぶっ殺されたいみたいね」

「あ、あの!喧嘩は駄目ですって」


そう言うと、先程もピンカをなだめていたナズミが仲裁に入る。

あのナズミって女の人、始めてみるな。

誰の十二魔道士何だろう。


「調子乗ってるのも今の内よ。その鼻へし折ってやるわ」

「それよく言われますけど、私別に調子乗ってませんよ。ただ負けたことが無いだけなので。ていうか、それくらいでイラついちゃうなんて、見た目も器もちっちゃいんですね」

「っ!?上等よ!今ここでぶっ飛ばしてやるわ!」

「あー!!やめてくださーい!」


ミカとピンカの喧嘩が始まろうとしたその時、外から誰かの足音が聞こえてくる。

そして、その足音と共にドアが勢いよく開く。


「絶対かーつ!!」

「うおっ!?」


その瞬間、何かが俺に突撃してきた。

その衝撃で俺は後ろに倒れる。


「久しぶりだな!やっと会えたぜ!」

「お前は、ガイか!久しぶりだな、確か森で迷った時以来か?」

「ああ、ずっと会いたかったぜ。お前と戦うために色んな所に行ったが、ことごとく外しちまった!だけど!今日ようやくお前と会うことが出来た、かつ、戦おうぜ!」

「いや、その前に降りてくれないか」

「いいぜ!」


そう言って、すぐに退いてくれた。

俺はゆっくりと立ち上がり、改めてガイと対峙する。

するとガイはキラキラとした瞳でこちらを見ていた。


「それじゃあ、勝負するか!」

「いや、ここでは戦わないぞ」

「何でだよ!」

「いや、こっちの台詞だから。戦うとしたら島王選だろ?」


第一今、絶賛戦いが始まりそうなんだよ。

これ以上めんどくさくなるようなことは避けたい。


「ちっしょうがねえな!島王選では覚悟しとけよ!俺の修業のせいか見せてやるよ!」

「ああ、いい勝負にしよう!」

「ていうか、あんたら私を無視するじゃないわよ!」


そう言って、俺達の間に割り込んでくる。

するとガイは下を見ながら告げる。


「いたのかピンカ?ちっこいから分かんなかったぜ」

「あんたねえ、ガイこれ以上の私の身長を弄るならあんたの背を縮ますわよ」

「怒んなよ、ちょっと冗談言っただけだろ?」

「あんたの冗談は私の神経を逆撫でするのよ」

「やっぱり、ちっちゃいですね」

「あんたもしつこいのよ!!」


あーあ、もうよく分かんない事になってる。

ここは一旦離れるか。

ん?待てよ、あそこに居るのって。

俺はもしやと思いすぐに静かに本を読んでいる人の所に駆けつけた。


「ツキノ久しぶり!まさか、お前も十二魔道士だったなんてな!ここで会えるなんて思っても見なかったよ!」


ツキノは読んでいた本を持ちながら俺の方をじっと見る。


「もしかして、風間の十二魔道士なのか?そうだったら言ってくれればよかったのに。あいつの十二魔道士とか色々大変だろ?何か変なことされてないか?」

「………………………」


あれ?何でさっきからずっと黙ったまま何だ?

もしかして、俺が誰か分かってない?

まじかよ!それならすごく恥ずかしいじゃん!

何もなかったように、逃げようかな…………


「久しぶり……………」


そう言って、俺に少しだけ笑顔を見せる。


「え?」


今、答えてくれた?


「あれ……久しぶりじゃ………無かった……?」

「いや、久しぶりだけど。俺のこと覚えてるのか?」

「…………っ?……かつ………でしょ?」

「あ、ああ!そうだよ、かつだよ!よかったー、なんにも言わないから忘れられたかと思ったよ」

「ちょっと………驚いたから………」

「ああ、そうだったのか。それは悪いことしたな」


にしても、昔よりも表情が柔らかくなったな。

初めてあった時ポーカーフェイスかなって位表情変わんなかったしな。


「そんなことない…………かつは………ガルア様の………十二魔道士なの…………」

「ああ、一時的だけどな。島王選ではお互い頑張ろうぜ」


そう言って、俺は握手をするために手を出す。


「…………うん………頑張ろ」


その手をツキノは優しく握ってくれた。

本当に表情が柔らかくなったな。


「下の上だね」

「うわっ!?誰あんた!」


いつの間にか俺の背後にそいつは立っていた。

何だこいつ、行きなり出てきたな。


「お前の強さ。下の上ってお前弱いな。ちなみに俺は上だ」

「は?お前何言って」


その時、アナウンスみたいな物が聞こえてくる。


「ピンポンパンポーン!ただいまより、開会式を行います。王様、そして十二魔道士の方々はドームの中央に集まってください」


そのアナウンスは2回繰り返された。

いよいよか、遂に始まるんだな。


「俺はカノエ様の十二魔道士のサザミだ。よろしく」


そう言って、不気味な笑顔を見せてサザミは行ってしまった。

カノエの十二魔道士ってことはエングと同じってことか。


「何だったんだあいつ」

「かつ後輩、行きましょう」

「あっああ、それじゃあまた後でな。ツキノ」


俺は別れを済ませてすぐに会場に向かった。

本当に始まるんだ、島王選が王を決める戦いが。

俺は強く拳を握りながら会場へと向かった。



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