エピローグ 暴言
「ハイトどうだ?例の奴は見つかったか?」
「はい、ガルア様が怪しいと思われていた5名の候補者のなかにいました」
そう言って、ハイトはモニターに5人の半獣を映す。
ガルアはそれを訝しげに見つめる。
「やっぱりか。それにしても、大分この部屋の機械の操作にはなれたようだな」
「いえいえ、正直驚きましたよ。こんなものがこの城の地下に合ったなんて。しかも、このモニターと言うもので絵を写し出し、キーボードと言うもので何でも調べられる。こんな物を作る技術をもってる人がいたなんて」
「お前は物覚えが良いからな。それとこれを作った人は極秘だ。表舞台には出ない奴なんでな」
「そうでしたか。それは失礼な事を言いました」
「まあ、いい。それでその例の奴は誰だった」
「はい、こいつです」
ハイトは慣れた手付きでキーボードを叩くとモニターにある人物を写し出す。
「なるほど、やっぱりそうか。これは少し面白いことになりそうだな」
不気味な笑みを浮かべるガルアの目には、無邪気な笑顔でかつと歩いてるデビの姿が映されていた。
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黒の魔法使いアジト
「ああ!!腹減った!!何か食わせろ!!」
突如トガが奇声をあげたことによりスイも負けじと声を荒げる。
「うるさいわね!ゴリアはバナナでも食ってなさいよ!」
「何だとスイ!テメェは相変わらずムカつくな!」
トガの怒りの矛先が空腹からスイに切り替わり、二人は喧嘩を始める。
「それはこっちの台詞よ!簡単に魔法使いに負けちゃってさ。そのせいで私達が危険を犯すはめになったんだからね。そこら辺、ちゃんと理解してるの?足手まといさん」
「よーし、決めた!表出ろ!ぼこぼこにしてやるよ」
「やってみなさいよ!この単細胞!」
「もーやめなよ2共。痴話喧嘩はよそでやってよ」
アルバが飽きれぎみに言うとその瞬間、スイが机を叩き割る。
そして鋭い目付きでアルバを睨み付ける。
「アルバ、次そんなこと言ったらあんたを殺す」
「じょ、冗談だろ。そんなに怒るなよ。本当にスイは怒りっぽいな。もうちょっと優しくなれないのか」
「あんたらがムカつくことしなきゃ私もいくらでも優しく出来るわよ」
そう言うとスイは折れた机を蹴りあげて手をはたく。
「お前が優しくしてる所なんて見たことねぇぞ」
「だから、あんたらが私をイラつかせるからでしょ。何であいつが居ないのにこんなに苛つかなきゃいけないのよ」
「あいつって誰?」
「決まってんでしょ。ラルダよ、ラルダ。あいつ本当にムカつくわ。しかも、気持ち悪いし」
「おい、仲間の悪口は終わったか?」
するとクラガが戻ってきてスイを睨み付ける。
スイはクラガが居るとは思っていなかった為目を丸くさせて萎縮する。
「自分の思いを吐露するのは大いに結構だが、作戦に支障をきたすのなら除外せざる終えないな」
「ご、ごめんなさいリーダー」
「今は作戦に集中しろ。これから起こることは俺達の運命を決めるんだからな」
クラガに叱られたことに先程よりもスイの元気がなくなる。
それを見た二人は思わず笑みをこらえる。
「ふふふっ怒られてやんの」
「笑ってやんなよ。ぶふっ!かわいそうだろ」
「こいつらぁー」
スイが再び怒りをわき上がらせていると、奥から気の抜けた声が聞こえてくる。
「すっごーい!そんなことも出来るんだ~」
その声により皆の視線が一気にそちらに集まる。
そこには机の上で作業をしていたサキにリツが関心を示していた。
「このパソコンって奴すごいね~私も欲しいよ~」
「もう1つ予備があるから、それ貸してあげる」
「本当に~!ありがとう~!」
『『『あのサキが普通に会話してる!!!』』』
目の前の驚くべき出来事に3人は唖然とする。
そんな三人を気に求めずにクラガはサキに話しかける。
「どうだ、サキ。入り口は開けそうか?」
「この機械を入り口の近くにおけば開くよ」
そう言って、小型の機械を手に取る。
「よくやった、流石だ。よし、貴様ら仕事だ。これを封印されてる入り口の近くにつけろ。バレずにだぞ」
「ああ、分かったぜ」
「隠密任務か。神経使うんだよな」
「あんたは意外とおっちょこちょいだからね」
「いや、おっちょこちょいじゃないぞ俺は!ただ、予定と違うことされると動揺するだけだ!」
「それはそれで、駄目だと思うんだけど」
すると、リツがクラガの方に歩み寄る。
それに気づいたスイがすぐにクラガの前に立つ。
そこには明らかな敵意があった。
「リーダーになんか用?」
「そんな怒んないでよ~私はただクラガに私は何すれば良いのか聞きたいだけだよ~」
「そう言って、あんたリーダーを殺そうとしてんじゃないの。怪しいのよ。この時期にあんたが急に仲間として入ってくるなんて。第一あんたミノルと仲いいんでしょ?どうにも私には2人が裏で繋がってるとしか思えないのよね」
そう言って、リツに疑いの視線を向ける。
だがそれに対してクラガが答える。
「スイ、リツは俺達の味方だ。そもそも、こいつは黒の魔法使いを抜けてない」
「え?どういうこと?」
「ミノルを監視させるために付けといた。リツも黒の魔法使いを脱退したと思わせてな」
「つまり、リツは最初から私達の味方ってこと?」
「そういうことだ」
「そうだよ~」
クラガの言葉を聞いて少し考え込むと、スイは納得させるように頷く。
「リーダーがそう言うなら信じるよ」
言葉ではそう言っているが、リツを見る視線は全く信じていなかった。
それに対してリツはいつも通りの笑みを見せる。
「リツ、貴様は引き続きミノルの暗殺を任せる。出来るな」
「大丈夫だよー」
そう返事をすると、リツは再びサキと話に戻る。
「島王選はまもなくだ。貴様ら各々のやるべきことをまっとうしろ!」
「「「おおーー!!!」」」
王を狙う者、復讐を果たす者、友を殺そうとする者、様々な思惑が混ざりあい今、島王選が開かれる。




