その十八 見知らぬ男と王女様その弐
3人は先程の不可思議な攻撃に困惑してしまっている。
「今の攻撃は一体なんなのかしら」
「分からないな。だが、俺はまだノープロブレムだぜ」
「確かにそこまで強い攻撃ではないですね。ですが、実態が分からない。おそらくオリジナル魔法でしょう」
「ええ、多分と言うか絶対そうね。こんな魔法見たことも聞いたこともないし」
男は未だにその場で立ち尽くしている。
まだ他にも魔法を持っているかもしれないと言う恐怖と警戒により、3人もその場で動けないでいる。
「ちょっと試したいことがあります」
そう言ってリドルが前に進む。
「リドル!」
「大丈夫です。少し試すだけですから」
そう言い残し、リドルは男に近付いていく。
「おいおい、あのリドルってやつ大丈夫なのか?ヘルプしなくていいのかよ」
「大丈夫よ。リドルはそう簡単にはやられないわ」
『でも、敵も異質なのは事実。気を付けてね』
「ここまで来ても攻撃はしてこないんですね」
「……………………………」
「黙ったままですか。それなら、こちらも勝手にさせてもらいますよ」
『ここからの距離は大体10mって所ですかね』
リドルは何かを確認しながらゆっくりと1歩ずつ男に近付いていく。
『6……5……4――――』
その瞬間、リドルに不可解な1撃が襲いかかる。
その衝撃により、リドルは後ろに吹き飛ばされる。
「リドル!!」
ミノルはすぐにリドルの元へ向かう。
だが、リドルはすぐに立ち上がった。
「大丈夫です!多少吹き飛ばされただけですから。ですが、これであの男のオリジナル魔法を大体理解しました」
「本当か!?今のモメントで?」
「はい、おそらく奴のオリジナル魔法は自動的に敵を攻撃をする魔法です」
「自動的に?」
ミノルの問いにリドルは頷く。
「はい、もし意図的に出来るとしたらオリジナル魔法にする必要はありませんし、今この瞬間にも攻撃が来るはずです」
「確かにそうね。自動的に敵を攻撃する魔法ならオリジナル魔法としては成り立つわね」
「先程調べましたが、おそらくあの男から4mが攻撃の範囲ですね。その範囲に1歩でも踏み込めば攻撃が来ると思います」
「ひゅー、やるなリドル。だが少し腑に落ちないポイントがあるな。なぜ、奴はわざわざアタックを受けたんだ?まさか、自分のパワーを見せつける訳じゃないだろ?」
ガビットの疑問にリドルは答える。
「ここからは僕の予想ですが、このオリジナル魔法の発動条件は相手の魔力を知ることだと思います。魔力と言うのは似てるようで人によっては違うものじゃないですか。相手の魔力を理解することで、オリジナル魔法を使えるようになるのだと思います」
「理解したマジカルパワーだけに自動的に攻撃するってことか。そうなると、3人共あいつにアタックしちまってるからもう手遅れだな」
「どっちみち攻撃しなきゃ倒せないもの。遅かれ早かれこうなってたわ」
「それと……ほんのわずかですが微かに先程の攻撃から魔力を感じました」
「てことは攻撃1つ1つ魔力を消費してるってことね。さっき一斉に向かった時にほぼ同時に3人に攻撃してたから少なくとも1度に3以上攻撃出来て、相手の魔力を察するに1度に攻撃出来る数は10位かしらね。それ以上の可能性もあるけど、大体はそれくらいだと思うわ」
「そうですね。それと、発動条件が相手の魔力を理解すると言うことは範囲に入った時の魔力量によっては自動攻撃の威力も上がる可能性があります」
「多分上がるでしょう。そもそも侵入してくる相手を弾き飛ばすんだから力が上下しないなら弾き飛ばせないしね。後は攻撃の間隔がどれくらいかよね。1度攻撃してもまだ範囲内に居た場合もう1度攻撃してくる時の間隔が数秒だったら楽なんだけどね」
「そうですね。次はその事について調べますか」
リドルとミノルはまだ数初しか喰らっていないオリジナル魔法の傾向と対策を瞬時に考え付いた。
それを見ていたガビットはその会話に入れずにただただ愕然としていた。
『なっ……何てやつらだ!こいつら一瞬で相手のオリジナルマジックの性質を理解しやがった!俺だってあいつらの説明がなかったら半分もアンダースタンディング出来なかった!』
「ガビット!まだ戦える?」
「っ!あ、ああ……ノープロブレムだぜ」
『なるほどな……俺はまだまだってことだ。パワーもエクスペリエンスも』
すると、ガビットは少し口元を緩める。
「ガビットさん?どうかしました?」
「いや、何でもない」
『ここからだ……ここから強くなってやる』
3人はすぐに臨戦態勢に入る。
「行くわよ!」
「はい!」
「イエス!」
ミノルの合図と共に再び男に向かっていく。
『4m………ここね!!』
男の攻撃範囲に入った瞬間、3人は弾き飛ばされないように身構える。
そして、予想通り三人の体に見えない一撃が入る。
「「「っ!!!」」」
『たっ………えた!!』
3人が吹き飛ばされずに済んだその瞬間、2撃目が3人を襲う。
『2撃目!ですが!!』
『ノープロブレムだぜ!!』
あらかじめ再び攻撃が来ることを予想していた3人は再び吹き飛ばされずに進行を進める。
「このままの勢いであの男を倒しましょう!!」
「分かったわ!」
『攻撃の間隔はジャスト1秒!これならあいつを倒すことも可能!』
「やってやるぜ!!」
攻撃になれてきたガビットが早速前に出る。
そして、ガビットは馴れてきた為か魔法を打つ余裕すら見せる。
「喰らえ!ギガ―――――っ!?」
その瞬間、先程まで攻撃に耐えていたガビットが大きく吹き飛ばされる。
「ガビット!?」
「ガビットさん!くっ!やっぱり!」
『魔法を使おうとした瞬間、明らかに攻撃の威力が上がった。ですがそれは同時に魔力消費も増えると言うこと!相手も暗殺者ですが魔法使いでもある!魔力は無尽蔵ではないはず』
大きく吹き飛ばされたガビットはすぐに起き上がると、悔しげに言葉を漏らす。
「くっ!デカイの1発食らっちまったな………だが、こんなところでフィニッシュするわけにはいかない!!」
ガビットは怯まず再び猛追する。
「今度はこっちの番よ!プリズン………!」
ミノルが魔力を上げたことによって、威力が増す。
だが、ミノルはその範囲から何とか吹き飛ばされないように踏みとどまる。
「喰らいなさい!プリズンフリーズ!!」
ミノルが魔法を放ったとほぼ同時に吹き飛ばされる。
「がはっ!」
『ミノルさんも吹き飛ばされてしまいましたか!なら、最後に僕が!』
「アグレッシブフルート!」
リドルも魔法を放った瞬間、同様に吹き飛ばされる。
「ぐふっ!吹き飛ばされはしましたが…多少は魔法を当たられました」
「いえ、多分当たってないわ」
「え?」
「ああ、奴はノーダメージだ!」
そこには先程と同じようにその場で立っている暗殺者の姿があった。




