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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十一章 売られた少女と闇マーケット
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その十三 牛乳神降臨

「ええええ!?ラミア様が帰ってない!?」

「はい、こちらにはまだラミア様はお帰りになっておりません」


ミノルとリドルはまず、ラミアが帰ってるかどうかを確認するためにガルアの城まで来た。

だが、シニアが言うようにラミアは帰ってきてなかった。


「まさかラミアが帰ってないなんて」

「そうですね。そうなるとかなり不味い状況にはなりますよね」

「すみませんが、そちらにかつ様はいらっしゃらないのですか?」

「かつもまだ帰ってないんですよね。もしかして何か事件に巻き込まれたとか。それか、モンスターに襲われたとか…………」

「そう考えるのはまだ早いですよ。単にまだどこかで何かをしている可能性もありますしね」


そう言って、リドルは一旦ミノルを冷静にさせる。

リドルの冷静な口調のお陰でミノルはこんがらがった頭を一度整理することが出来た。


「そうよね、ありがとねリドル。私達はもう1度探してきます」

「分かりました。何かを合ったらすぐにこちらに来てください。全勢力をもって対処しますので」


頼もしい言葉に安心した時、この状況にいの一番に名乗りをあげる人物がいないことに気づく。


「そういえば、ガルア様は留守なんですか?」

「ガルア様はただいま出張で他の街に出掛けています。もうそろそろ帰ってくると思います。その事は私の口からガルア様にお知らせしとくので」

「分かりました。それじゃあ早速探しに行きましょう」

「そうですね。それでは」

「お気をつけて」


そう言ってシニアは深々と頭を下げる。

ミノル達は外に出て早速行動を開始する。

かつ達が行きそうな場所、観光できる場所、景色が綺麗な場所、色々探し回った。

それから1時間が経過した。

ミノル達は途方にくれるように空を見上げていた。


「全然見つからないわよ!!」

「そうですね。ここまで探して見つからないとなると、何か事件に巻き込まれた可能性が高いですね」

「でも、あの2人がそう簡単にやられるとは思わないの」

「そうですね。僕もそう簡単にやられる人達ではないと思います。思いがけない不意打ちを喰らったとかですかね」

「とりあえず、もうちょっと探してみましょう」


そう言って、ミノルは辺りを見渡す。


「いつの間にか人気の無いところに来ちゃったわね」

「そうですね…………そういえば、ミノルさん知ってますか?ここ最近、若い人が消えると言う話を」

「若い人が?聞いたことないわね」


聞きなれない噂にミノルが疑問符を浮かべると、リドルは続けて言葉を告げる。


「そうですか、ここ最近11から14才の子供を中心に人攫いに会ってるみたいなんですよね」

「何でその年齢の子が人攫いに会ってるの?」

「それは分かりません。ですが、少なくともここ数年で20人近くの子供が拐われています」

「20人!?そんなに居なくなってるの。待って、11から14才ってもしかして………」


ミノルは何かを察してリドルの方を見る。

リドルもミノルを見て頷く。


「もしかしたら拐われてしまったかもしれません」


ミノルは自身が頭の中でそれを思い浮かべたにも関わらず、リドルの言葉に納得がいっていない素振りを見せる。


「でも、そんなすごい人たちなの!?デビちゃんたちを拐うなんて」

「ラミア様はとにかくデビさんはそう簡単には拐われないと思います。強さ以前に性格上、捕まりそうになったら全力で抗うと思いますしね」


やはり同様にリドルもデビが拐われる可能性には否定的だった。

同じ意見を持っていたと言うことでミノルは同意するように深く頷く。


「そうよね。もしかしたら、気を抜いてる隙に眠らされたりして、連れ去られた可能性もあるわね」

「そうですね。王女様も同じ様にして、拐われた可能性がありますね」


いくら能力が高くても子どもっぽさがあるデビには、気を抜く瞬間も多い。

その隙を狙われた可能性は大いにあった。

だがその可能性が出てきたことにより、ミノルは新たな疑問が頭に浮かぶ。


「でも、ちょっと待って!それならかつは何処にいるの?居ないって事が分かったらすぐに助けに行くと思うの」

「そうですね。かつさんならそうすると思います。僕達の所に来ないところを見るともしかしたら拐った人が分かっているのかもしれませんね。そのアジトに侵入してるとか。だからかつさんの姿が見られないと思います」

「じゃあかつは今、2人を助けてるってこと?」

「僕の予想ですけどね」


ミノルは予想だと分かりつつも少し、笑みをこぼす。

すると、リドルが前方に怪しい人影を感じる。


「ミノルさん、あそこにいる人怪しくないですか」


リドルが見つめる先には辺りを不審にキョロキョロ見渡したり、こそこそと動いている人が居た。

それは明らかに何かを警戒している動きだった。


「たしかにあの人怪しいわね。動きもなんか不審だし、もしかしたら例の人攫いかも知れないわね」

「少し、様子を見ますか?」

「そうね。もしかしたらアジトも見つかるかも知れないし」


そう言って、2人は不審者の後を追うのだった。


―――――――――――――

「ねえねえ、ここのボタン押してもいいかな?いいよね」

「ばか!さっきから言ってんだろ!変なボタンは触るな!!」


俺達は今、ラミアを保護してるカビットの元に向かっているが、メイが暴走していて中々進めないでいる。


「おい、かつ。このままだと俺の経験上脱出できないぞ」

「分かってるよ。俺だって精一杯やってるんだよ!ただ…………」

「おい、メイ!見るのじゃ!あそこに模様が違う壁があるぞ!」

「すごいぞ!デビッち!これは多分誰かがジュースを溢したシミだね!」


この2人を抱えて脱出なんて出来るのだろうか。

俺は好き勝手に動き回る二人の元に向かう。


「おい、デビメイ」

「何じゃ?」

「どうしたの?お腹すいた?それならさっき石ころ拾ったから食べる?」

「お前ら、一旦落ち着け。そして騒ぐな。いいか、俺達は脱出するために動いてるんだ。分かるな?」

「分かっておるに決まっとるじゃろ!」

「そうじゃろそうじゃろ!!」


本当に分かっているのだろうか。


「分かってるなら勝手な行動はするな。じゃないとラミアも助けられないし、俺達も脱出できない」

「だから分かっておるわ」

「大丈夫だよかつっち。私だってちゃんと考えてるんだぞ。ほら、見てみて床に牛乳を溢して道に迷わないようにしたんだ」


そう言って得意気に床を指差す。

そこにはかすかに液体が垂れたようなシミがあった。

だがそれはもうほとんど見えないでいた。


「いや、床に染み込んで消えてなくなってるぞ」

「え?ああああ!!そんなぁーー!!私の作戦がぁ!」


なんつー浅はかな作戦だ。

こいつにはもう何も頼まないでおこう。


「こんな状況だ。頼られるのはサキトしか居ない。2人で頑張ろうぜ」

「行くのじゃ!サキト馬!」

「ヒヒーーン!!」


サキトの方を振り向くとデビにこき使われていた。

唯一まともだと思っていた人物が馬になって、デビを背中に乗せている光景を見て、全てを諦めそうになるが俺は何とか声を振り絞りこの状況の説明をしてもらおうと訪ねる。


「何やってんだサキト………」

「ヒヒーン!ヒヒヒーン!」

「こやつはもうサキトでは無いぞ!サキブレットじゃ!行くぞ!サキブレット!!」

「ヒヒヒーン!!」


そう言ってサキトとデビが走っていってしまった。

そして俺は手で顔をおおいそのままうずくまる。


「……………どうすればいいのこれ?」

「まあまあ、かつっち楽にしようよ。気分が落ちてたら何にも成功しないよ!それじゃあ、早速じゃんけんをしよう!」

「しないから!お前ら本気で静かにしろーー!!」

「おい、こっちから声が聞こえたぞ!」


すると奥の方からこちらの声に気付いて、誰かが向かってくる足音が聞こえてくる。


「あーもう!バレちまったじゃないか!おい、早く逃げるぞ!」

「待ってかつっち!私行けない!」

「どうしたんだよいきなり!?足でも挫いたか?」


その場に留まるメイの元にすぐに駆けつける。


「牛乳が!牛乳が溢れちゃったの!!」

「どうでもいいだろうが!てか、さっきどばどばこぼしてただろうが!」

「違うの!これは、賞味期限が今日までなの!だから、最後まで残しておきたかったの!床じゃなくて、ちゃんと水道で流したかったの!」

「どうでもいいわ!てか、賞味期限が切れそうなら飲めよ!」

「何言ってんのかつっち。牛乳って言うのは新鮮が1番でしょ」

「このわがままが」

「見つけたぞ!」


そんなことをしているうちに、こちらにやって来ていた追ってに追い付かれてしまった。


「逃げられると思ったか!」

「くそ!見つかってしまったか!」


何故かメイが悔しげに舌打ちをする。


「元はと言えばお前のせいだろうが!!」

「何だ?仲間割れか?」

「こりゃあいい。あいつらが勝手に暴れてくれれば楽に捕まえられるな」

「おい!警戒を怠るな!相手は魔法使い油断はするなよ!」


人数は3人か……魔力レベル自体は大したこと無さそうだし、ごり押しで行くか?


「かつっち、私に任せて」


そう言って自信満々で前に出る。


「いけるのか?」

「見ててね」


何か策があるのだろうか?

とても不安だが、あの自信少しは信じてみるか。


「何だ、お前?力付くでやるってんのか?」

「待て!相手の様子を伺おう」


相手もむやみに近づかず同行をうかがうようだ。

さあ、どうするんだメイ。

すると、相手の目の前で止まり手を広げる。


「控えろ愚民ども!私は牛乳神であるぞ!」


開口一番に意味不明なことを高らかに告げた。


「………………は?」

「えっと………どういう意味だ?」

「何だ?もしかしてこいつ、バカにしてんのか?」


さすがの三人も状況を理解できずに幻惑しているようだ。

その気持ちは非常に分かる、何せ味方である俺ですらこいつ何言ってんだってなってるもん。


「待て!もしかしたら何かの暗号かもしれない。もう少し様子を見よう」


敵の一人がメイの行動を深読みして慎重になる。

いやっこれ様子見るまでもないだろ。

味方の俺ですら呆れてしまうほどの意味不明さだ。


「私のことを知らないのか。全知全能の神、牛乳神を!」


本当に何を言ってるのだろうか?


「何だ、こいつ。もしかして頭おかしいのか」


それに対しては同意だ。


「感じぬか?牛乳を感じないか?」

「牛乳を?………!?何だ、この感じは!?」

「ああ!俺にも分かる!この臭い!牛乳を雑巾で絞ったような強烈な臭いを感じる!」

「ここに牛乳なんてないはずだ!なのに何故……くそ!どう言うことなんだ!もう少し様子を見るか」

「気付きましたか。それこれこそ私の力。無いはずの牛乳を感じさせることが出来るこの力こそ私の神通力だ!」


いや、さっき牛乳を辺りに撒いてただけなんだけどな。

それが乾いたことにより、そんな匂いが辺りに漂ってるだけだ。

だがそんなことを知らない敵さんはメイの言葉と目の前で起きている出来事に絶句している。


「これが神通力…………」

「くそ!それが何だってんだ!鼻さえ塞えじまえば関係ねぇ!」

「まて!迂闊に行動するな!もう少し様子を見よう!」

「それ以上、私をバカにすると言うのならこのゆびが黙ってないぞ」


メイは2本の指を見せつける。

それを見た三人がその指を警戒するようにじっと見つめる。


「私の指からは牛乳を分泌出きるのだ。このゆびを直接鼻にぶちこんでもいいのだぞ」


いや、どんな特殊人間だよ。

あっ半獣か。


「は?それが何だってんだ!」

「まて!この距離からもすごい臭いなのに鼻に直接入れられたら…………」

「バットエンドだな。やはり様子を見て良かったな」

「くっ!それがなんだ!俺はそんなんじゃ退かないぞ!」


ああっ全く引く必要ないしな。

てか脅しが地味すぎるんだよな。


「このゆびから出る牛乳はただの牛乳ではないぞ。鼻の中に入ったら脳に臭いを染み付けさせて身体中から腐った牛乳の臭いが放出され続けるぞ」

「な!?そんな………嘘だろ」

「試してみるか?」


そう言ってメイは2本の指を主張させながら近付いていく。

近付く度に男の顔が恐怖で歪んでいく。

あれ?これもしかして意外と行けているのか。


「それでは行くぞ!」


2本の指が男の鼻に入れられる前に男はすぐさま土下座をする。


「申し訳ありません!!お許しください!無知な私めをどうかどうかお慈悲!」


そう言って男は泣きながら謝罪する。

すると、周りの人達も同じ様に土下座する。


「どうか許してやってほしい!こいつには来月結婚する人がいるんだ!そんな人に牛乳の臭いが放出されたまま会えば……どうかお許しを!」

「俺達のやったこともすべて謝罪します!様子も見ません!だからどうか!!」


いやっそもそも牛乳神って何だよ。

もしかしてこいつらバカなのか。


「顔をお挙げなさい」


優しい口調に導かれて3人は顔をあげる。


「あなた達は心が綺麗ですね。その心を決して忘れてはいけませんよ」

「「「はい!!!」」」


そして3人はいい返事をした。

長い悪夢を見ていたような感覚だ。

これで何とかなったのは奇跡としか言いようがないな。


「それでは早く帰り――――――――」

「サキブレットアタック!!」

「ヒヒーン!」

「「「ぐへば!!」」」


その瞬間3人の男が蹴り飛ばされた。

そして、勢いよく地面に着地するとデビがサキトの背中の上で自信げに親指を突き立てる。


「大丈夫かお主ら!妾が来たからもう安心じゃ!」

「ヒヒーン!!」

「もうっデビッち!ナイスタイミングーー!」


そう言ってデビとメイはハイタッチをする。


「えっと…………まあいいか」


俺は考えるのをやめた。


「ふう……疲れたな」


デビが背中から降りたことで解放されたサキトは、良い仕事をした後のように爽やかに汗をぬぐう。


「おいっサキト。お前だけはまともな奴だと思ってたぞ」

「かつ。それは違うぞ。俺はまともなやつだ。さっきデビに馬となれと言われてな。長年の経験上、ああ言うタイプは聞く耳を持たないからな。仕方なくやったまでだ」

「本当にか?結構ノリノリじゃなかったか?」

「そんなわけ無いだろ。もう2度とごめんだ」


そう言って何故か達観したような顔をする。

端から見れば馬そのものになっていたような気がするが、もうこの事について考えると頭が痛くなるのでそういうことにしておこう。


「そう言えばさっきあっちで階段を見つけたのじゃ!多分上に繋がってると思うのじゃ!」

「でかしたデビッち!それじゃあ行こう!」

「そうじゃな!行くぞ!サキブレット!」

「ヒヒーン!!」


俺は考えるのをやめた。



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