その十 ゴールドフィッシュの争奪
「それで渡したいクエストって何?」
「実はこれでして…」
「えっ!?これってゴールドフィッシュの討伐(捕獲)依頼じゃない!」
「そうです!今回は特別にミノルさんにだけお渡しします。前にクエストを渡すのを失敗してしまったのでそのお詫びも兼ねて」
「ほっ本当に貰って良いのこれ?」
「もちろんです。その代わり沢山取ってきてくださいよ」
「任せて沢山取ってきてくるわ」
「はい。お待ちしております。あとこの事は他言しないでください」
「分かってるわよ」
「それじゃあお気をつけて」
話し終わったのかミノルがこちらに近づいてきた。
満面の笑みで向かって来ているが何か嬉しい事があったのだろうか。
「どうだったクエスト貰えたのか」
「バッチリ!極上のクエストを貰えたわ」
「それなら良かったけど……それでどんなクエスト貰ったんだ?」
ミノルは拳を強く握りしめクエストを突き出してきた。
「ゴールドフィッシュの討伐よ!!」
その瞬間さっきまで騒がしかった音がピタリと止み、みんなこちらを一点に見つめてきた。
「え?どうしたんだ」
一体何が起こったんだ。
俺が戸惑っているとカウンターの奥から声が聞こえた。
「ミノルさん、し〜!」
何やらルルが何か伝えようとしている。
それを理解したのかミノルは慌てて皆に説明する。
「あっえっと何でもないです!気にしないで下さい!」
その言葉を聞いて皆また騒ぎ出した。
これって一体どういう事だ。
「おいミノル今の何だよ。ゴールドフィッシュの討伐って言ったら一斉にこっち見てきて、俺めちゃくちゃ怖かったんだけど」
みんなが向けてきた視線は完全に欲望に満ちた目をしていた。
「ちょっとこっち来て」
「ん?何だよ」
俺は魔法協会の端っこまで連れてかれてみんなに気付かれないように身を小さくした。
端っこにいるせいでミノルと顔が近いな。
「実はこれ極秘のクエストなのよ」
「え!?そうだったのか。ていうかなんでそんな大事なクエストをミノルに渡したんだよ」
「前渡したクエストが私が頼んだクエストと違ってたからそのお詫びとしてこのクエストをくれたのよ」
お詫びにしてはでかくないか?
まあルルさんなりの優しさなのかもしれない。
「なるほど。それでどういうクエスト何だ?」
みんなの反応や極秘のクエストと言ったりしているという事はこれはとんでもないクエストなのは確かだ。
問題はそのクエストの難しさ。
内容によっては俺は辞退するしかないだろう。
強くなるには強いモンスターと戦うのがベストなのだろうが、あいにく俺はレベル1の魔法使いだ、レベルに合った敵と戦いたい。
「クエスト内容はそのまんまゴールドフィッシュの討伐または捕獲よ」
「なるほど。それでそのゴールドフィッシュって強いのか?」
「強さはそこまでね。たまに体当りしてくるけど動きが遅いから簡単に避けられるわ」
「それって俺でも倒せるのか?」
俺は心配になりながらもミノルに聞いた。
「倒せるわよ」
「それは良かった」
俺は安心して胸をなでおろす。
これで俺はこのクエストに参加する事が出来るな。
「それじゃあクエストの報酬金って何ガルアだ?」
「このクエストには事前に決められた額は無いの」
「え?それってもしかして討伐した数によって貰える報酬が変わるって事か」
「そう言う事。しかも1匹の討伐額は何と1万ガルア!」
「1万ガルア!?まじかよめっちゃ貰えるじゃん」
これはホントにめちゃくちゃ良いクエストかもしれない。
「そうよ。これがこのクエストの凄い所よ。しかも普通なら大人数でこのクエストはやるんだけど今回は私達二人だけ!」
「てことは普通よりも沢山金が手に入るって事か!」
「そう言う事!かつこれはビッグチャンスでしょ。確実に大金を手に入れる為に作戦が必要じゃない?」
ミノルは興奮して鼻息が荒くなっている。
俺はミノルの興奮を抑えるため少し冷静になった。
「確かにそりゃそうだな。一度リツの魔道具店に行って作戦会議しよう」
「そうね。あそこなら作戦が決まったらすぐ道具集められるわね。かつ今お金持ってる?」
「いま宿屋に置いてあるな」
「それじゃあ必要なものを持って3時に魔道具店に集合ね」
「了解!それじゃあまた後で」
想像以上にヤバイクエストだな。
うまく行けば大量に金が手に入る。
それなら当分は師匠の所で修業が出来るな。
俺は溢れる笑顔を抑えながらすぐに自分の宿屋に向かって行った。




