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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十一章 売られた少女と闇マーケット
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その六 王女の休日

「ううー暑いのじゃー」

「まさか、のぼせるまでお風呂に入ってるとは思いませんでしたよ。そんな長い時間何をしていたんですか?」


リドルはのぼせてしまったデビの体を風の魔法で冷やす。


「いや、別になにもしてないからな」

「はい、はい、分かってますよ。ミノルさんには黙っておきます。ですが、デビさんが大人の階段を上るには少し早い――――」

「だから何もやってないって言ってるだろうが!!」

「ははは、すいません。冗談ですよ」

「いやいや、お前の冗談は分かりにくいんだよ。表情もいつもニヤニヤしてて読みにくいし」


そう言ってる間も表情がニヤついてるして。


「まあ、これはそうですね。仕事病みたいものですかね」

「仕事病?リドルはたしか、アルバイトじゃなかったっけ?」

「仕事もアルバイトも同じようなものですよ」

「そーか?そんなもんなのか?」


まあ、この世界のアルバイトと仕事の基準は分からないしな。

もしかしたら、本当に違いが無いのかもしれない。


「それじゃあ、僕はデビさんを部屋まで運んできますね」


そう言って、リドルはデビをお姫様抱っこする。

デビはいつの間にか寝てしまっていたらしい。

気持ち良さそうに寝ている。


「おお、任せたぞ」


俺は少しのぼせたのもあって体を動かすのがだるかったから助かった。


「料理、先に食べちゃっててください。あと、ついでにミノルさんの様子も見に行ってきますね。かつさんも気になっていると思いますし」

「ああ、よろしく頼む」


生返事をして、俺はソファーに横たわる。

一人きりになったことで改めて先程の会話が脳裏に思い出される。


「好きってどういう意味なんだ?」


あの時、たしかに言ってたような気がするんだよな。

でも、俺も少しのぼせてたし、聞き間違いだった可能性もあるしな。


「ていうか、俺なに真面目に考えてるんだろう」


あの言葉の意味何て、1つしかないだろ。

あいつは仲間を持てて幸せと思っている、つまり仲間のことが好きだと言うことだ。

仲間として好き、そう言う意味以外ないだろ。


「はあ、ご飯食って寝よう」


そう思い、俺は椅子に座るのだった。


――――――――――――

次の日、俺は朝8時と少し早めに起きた。

まあ、何故早く起きたかと言うと、ラミアとの約束があるからとしかいえない。


「ふわぁ~あ」


俺は大きめのあくびを1つしてリビングに向かう。


「ん?おはようなのじゃ!先に朝食を頂いておるぞ!」

「うーん………………」


そこには朝食とは思えない量を爆食いしてるデビ、苦しそうにソファーに横たわるミノルの姿があった。


「えっと…………これはどういう状況だ?」


その異様な光景に思わず質問してしまった。


「ああ、ミノルのことか?妾が起きた時にちょうど一緒になってのう。昨日妾どうやら寝てしまっていたらしくご飯が食べれなかったのじゃ。だから、早く起きてご飯を食べようと一緒に食べていたら、こやつがお腹一杯になってしまって、今こんなことになっておるのじゃ」


長々と説明をしながらもデビは食べ続けていた。

器用だなあいつ。


「ミノル、お前自分の食べられる量ぐらい自分で調整しろよ」

「違うのよ~デビちゃんがすごい進めてくるから断りづらくて、いつの間にかお腹一杯になっちゃったのよ」

「いや、断れよ」

「すごく嬉しそうに渡してくるから、つい」


こいつ、デビに対しては本当に甘いな。


「まあ、自業自得だな。それより体調は大丈夫なのか?」

「ええ、大丈夫よ。多分疲れてたんだと思う」

「そうか………」


本当に疲れていたのだろうか。

もし、あの本を見て頭が痛くなったのなら、あの本と何か関わりがあると言うことになる。

でも、それを確認するにはミノルに本をまた見せなければならない。

見せれば1番手っ取り早いんだけど、それでまたミノルの体に異常が起きたとしたら…………


「ねえ、かつ大丈夫?」


すこし苦しそうにしながら、心配そうな顔でこちらを見る。


「……いや、何でもないよ」


そんな急がなくても大丈夫だよな。

今はミノルの心配をするべきだな。


「そう、ならいいんだけど。はあーやっぱり食べ過ぎたわね。お腹パンパンよ」

「へえーどれどれ」


そう言って、俺はミノルのお腹を触る。

たしかに、お腹が張っているな。


「きゃっ!ちょっと!急にさわらないでよ!!」


そう言って、ミノルは触られたお腹を押さえながら飛び起きる。


「え?ああ、ごめんつい。でも、ミノルのお腹プニプニしてて気持ちよか――――――――――」


その瞬間、左頬に強烈な一撃が入った。


「な、何で…………?」


俺はそのまま、地面に倒れた。


「デリカシーのないやつはこうなって当然よ」

「ふふふ、ふはははは!ふはははははは!!!」


すると、デビが急に笑い始めた。


「いや、お前………なに笑ってんだよ」

「デビちゃん、笑いすぎなのはよくないわ。かつは最低なことしたけど、追い詰めるのはいけないわ」

「いや、本当に元に戻ったんだなと思ってのう。嬉しくて、思わず笑ってしまったのじゃ」


その言葉を聞いて俺とミノルは目を合わせる。


「ふふ、たしかにちょっと嬉しいわね。いつもの日常に戻ったってだけなのに」

「当たり前の事が1番幸せって言うからな。ていうか、俺殴られてんだけど」

「もう、居なくなったりしないよな?」


デビはミノルにそう訴える。

ミノルはデビの顔をしっかり見つめて。


「大丈夫よ。居なくなったりしないわ」


そう、優しい笑みで答えた。

その笑顔を見て、デビはミノルの胸に飛び込む。

そして、ミノルもデビを抱き締める。


「ミノルーーーー!」

「デビちゃーーん!」

「何なんだこれ」


そんな意味分からん状況を無視して俺は冷蔵庫にあるおかずを暖かくして、朝ご飯を食べる。


「あっ今日俺用事あるから、クエストとか出来ないぞ」

「え?そうなの。最近活動資金が足りなくなってきたから稼ぎたかったのに。それじゃあ、残りの3人でやろうか。ねっ?デビちゃん」

「お主は何の用事があるのじゃ?」


デビは俺の用事に興味を示す。


「ちょっとラミアと約束があるんだよ」

「ラミアって、ガルア様の妹様のこと?」

「まあ、そうだな」


言っちゃまずかったかな、いやまあ別に大丈夫だよな。


「何じゃ、そいつ!妾知らんぞ!」

「あれ?お前会ったこと無かったっけ?」

「デビちゃん、城でご馳走して貰った時会ったでしょ?」

「うーん、ご飯の事しか覚えてないのう」

「何の話をしてるんですか?」


するといつの間にか起きてきたリドルがやって来る。


「リドルおはよう」

「おはようー」

「おはようなのじゃ」

「皆さんおはようございます。それで、何の話をしているんですか?」


リドルは今起きてる状況を確認しようと、俺達のところに集まる。

その事に対してミノルが説明を始めた。


「デビちゃんがラミア様のこと忘れてるって言ってたから、思い出させてたのよ。リドルも知ってるでしょ?ラミア様のこと」

「ああ、知っていますよ。ガルア様の妹様ですよね。ちゃんとお話ししたのは、城でごちそうを頂いた時ですよね」


ていうか、そんな話だったっけ?

俺がラミアの所に行く話じゃなかったっけ?

まあ、いいや。

朝ごはんも食べ終わったし、そろそろ行くか。

何か、話し合ってるみたいだしここは静かに出ていくか。

皆が話し合っている中俺はこっそりと外に出た。


「ねえ、思い出せないの?そういえば、ラミア様が話しかけてたのに食べることに夢中になってて、ラミア様、無視させられたと思って、ショック受けてたっけ」

「そうでしたね。そういえば、かつさん今日何か用事があるんですか?」

「え?何で?」

「だって、かつさん外出て行ったので」

「え?あっ!!かついつの間に!」

「デビさんも居ませんよ」

「デビちゃんも!もう、どこ行ったのよ」


―――――――――――――――――

「ふうー間に合いそうだな」


話が長くなりそうだから途中で抜けて正解だったな。

俺は城の近くまで来ると門番の人に止められる。


「あの、呼ばれてきたんですけど」

「すみませんが、招待状をお見せいただきませんと」


見せろと言われても、持ってないものを見せることは出来ない。


「いや、そう言うんじゃ無いんですね。分かりませんか?ここに結構通ってるかつってもんなんだけど」

「それは知っております。ですが、ご本人かどうか確認できるものが無いので」

「いや、確認ていうか本人だから」

「言葉ではなく、物で示してください」


こいつぅ~意地でも入れない気か?

だが、このままじゃ約束の時間に遅れてしまう。

せっかく誘ってくれたのに遅れるわけにはいかない。


「物って具体的になんですか?」

「招待状など、ガルア様から呼ばれたと言う証拠とかですかね」


それ、招待状持ってなかったら出来ないじゃねえかよ!


「あのーだから持ってないって言いましたよね?」

「では、お引き取りを」


やっぱりこいつ、意地でも俺を入れない気か!

くそ!これじゃあ、遅れちまう。

こうなったら強引にでも進むしかないか。

まあ、事情を説明すればガルアも分かってくれるだろう。

俺が強行突破を試みようとした時、どこからか声が聞こえた。


「すみませーん!」


そういいながら、可憐な少女のラミアは門の所に近づいてくる。

すると門番が慌てた様子で敬礼をする。


「ら、ラミア様!?どうしたのですか、そんなに急いで」

「この人は、私のお客様です。通してあげてください」

「そ、そうでしたか!申し訳ありません!」


門番は勢いよく頭を下げるとすぐに門を開ける。

やっぱり本人が来てくれた方が一番手っ取り早いな。

俺は意気揚々と城の中へと入っていく。


「ありがとな、助かったよ」

「私の方こそ、門番の方に伝えるのを忘れてしまっていて、すみません」


ああ、何て礼儀ただしいんだ。

うちのデビとは大違いだな。


「どうしました?」

「え?いや、ちょっとな。俺の仲間にもラミアと同じくらいの子供が居てな。それがラミアとは全くの真逆なんだよ。ラミアを見習ってほしいもんだな」

「その方ってもしかしてかつお兄ちゃんの後ろに居る方ですか」

「え?」


俺は後ろを振り返ると、何故かデビがそこにいた。


「よっ!」


デビは平然と挨拶してきた。


「うおおおい!何で居るんだよ!」

「妾も一緒に行きたいのじゃ!」

「は!?何言ってんだお前!早く帰れ!」

「嫌じゃ!妾も一緒に行くのじゃ!」

「何わがまま言ってんだよ。ほら、今日のところはおとなしく帰れ」

「嫌じゃ!嫌じゃ!いーやーじゃ!!」


そう言って、駄々をこね始めた。

まじかよこいつ。

こいつには恥ずかしさと言うものが無いのか。


「あ、あの……私は別に大丈夫ですよ」

「え?いいのか?でも」

「はい!人数は多い方が楽しいですからね」


いいこだ!!

何て良い子なんだ!!

それに比べてあいつときたら。


「おい、デビ!ラミアに感謝しろよ。今回だけだからな」

「ほんとか!何じゃ、付いてきて欲しかったのなら最初から言えばいいのじゃ」

「お前は~!」

「かつお兄ちゃん?」


ラミアの声で思わずはっとなる。

危ない危ない、思わず暴力を振るってしまうところだった。


「と、とりあえず、こいつはデビだ。デビ、ラミアだ。ちゃんと挨拶しろよ」

「妾は子供ではないぞ!挨拶ぐらい言われなくても出来るわ!ふふん、妾はデビじゃ!よろしくのう」

「はい、私はラミアです。よろしくお願いしますね」

「ああ、よろしくなのじゃ!ラミア!」


そう言って、王の妹を前に偉そうにしている。

これ、下手したら極刑とかになるよな。

誰もいなくてよかった。


「おい、俺が言うのも何だがあんまり偉そうな態度とかするなよ。一応、この島の王の妹なんだから」

「一応!?かつお兄ちゃん!私、一応ではなくれっきとしたガルアお兄様の妹ですよ」

「ああ、悪い悪い。ごめんな」


何故だろう怒った姿もかわいい。

俺、ロリコンじゃないよな。


「何をデレデレしておるのじゃ。気色悪いのう」

「別にデレデレしてないから。ていうか、言葉にはちゃんと気を付けろよ」

「別に大丈夫ですよ。私、デビさんとお友達になりたいです」


ラミアは純粋無垢な笑顔でそう言いきった。

え?ラミアマジで言ってんのか?


「友達じゃと?べつによいぞ。友達なら呼び捨てでもタメ口でも良いじゃろ?よろしくなラミア」

「はい!デビ!」


そう言うとデビとラミアは互いに呼び捨てをし始める。

何か、友達になってしまってるんだけど。

これ、とても嫌な予感がしてしまう。

デビと友達になってしまったら悪い影響しか起きない気がする。


「それで、今日はどこに行くのじゃ?」

「はい!実は皆さんとやりたいことがあるんです」

「やりたいこと?」

「はい、私は呪いの影響を受けており、自由に外を出歩くことが出来ませんでした」


いや、呪われてなくても自由に外は出歩けないんじゃないかと思いながら話を聞く。


「だから、今日は私のやりたいことを全部やりたいと思って」

「なるほど、いいぜ。今日はとことん付き合うよ」

「本当ですか!?ありがとうございます。かつお兄ちゃん!」


『お兄ちゃん!』


「っ!?」


今、声が………


「ん?どうしたのじゃ?」

「………いや、何でもない」

「もしかして、具合が悪いのですか?」

「いやいや、本当に何でもないよ。早くいこうぜ」


俺はそのまま元気よく歩き出して二人が心配しないようにする。

この声、また聞こえた。

誰かが俺をお兄ちゃんと呼ぶこの声。

一体何なんだ。


「それじゃあ、行きましょう!」


そう言って、意気揚々と門を出た。



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