その一 王からの提案
次の日――――――
「うう~頭いった~」
昨日は調子に乗って飲みすぎたな。
そのせいで昨日の出来事がうろ覚えだ。
まあ、ただ飲んで叫んでしかしてないと思うし、まあいいか。
「おはよー」
階段を降りると既にみんなが居間に居た。
「おはようなのじゃ」
「おはようございます」
「おはよーかつ」
デビとリドルとミノルが挨拶を返してくれる中、一人だけ声が聞こえずに見当たらなかった。
「あれ?リツはまだ寝てるのか?」
「リツならもう帰ったわよ」
「え?もう帰ったのか?」
「まあ、お店のこともありますからね。後、伝言で近々お手伝いしてもらうと言ってましたよ」
「ああ、お手伝いか。そういえばそんな約束してたな」
色々あったからすっかり忘れてたけど。
「なあ、リドル水を1杯くれ」
俺は台所で皿洗いをしているリドルに水を頼む。
「かつさんも2日酔いですか?どうぞ」
「ありがとう。そうなんだよ、さっきから頭が痛くてな」
「私も2日酔いで頭がズキズキいってるわ」
ミノルは水を飲みながらも頭を抱える。
そういえばミノルも結構飲むんだったな。
「そりゃそうじゃろ。昨日のお主ら完全にやばいやつになっておったしな」
「え?まじで」
「聞かない方がいいわよ。私は大体予想ついてるから」
そう言って何かを悟ったような顔をする。
「それじゃあ、俺も聞かないでおこうかな」
酒は飲んでも飲まれるなと言うが、これは当分無理な気がする。
「そう言えば、手紙が入ってましたよ」
そう言って、1通の手紙を俺に渡す。
「何か、大体予想つくな」
こういう展開は前にも見たことがある。
俺はある程度予想を立てつつ中身を確認する。
「やっぱりガルアか」
最近の手紙はほぼこいつからしか来てないような気がする。
「ガルア様から来たの?それじゃあ、何か合ったのかもしれないわね」
「いやいや、それは分かんないぞ。とりあえず、読んでみるか。『拝啓かつ殿 いかがお過ごしでしょうか。まあとりあえずそんな堅苦しい挨拶は忘れて俺の城に来い!すぐにだぞ!今すぐだ!待ってるからな!ガルアより』だってよ」
「なにやら、急いでる様子ですね」
「やっぱり何かあったのかも知れないわね。かつ、早く行ってきなさい」
すこし、顔色が悪いミノルが言う。
「え?俺1人で行くのかよ!」
「だって、そこにはかつの名前しかないじゃない。ガルア様はかつをご所望なのよ」
「確かに名前は1つしかないけどよ……」
「どっち道すぐに行くしかないみたいじゃぞ」
デビが窓を指差す。
「まさか………」
俺は嫌な予感がしてすぐに窓を見る。
そこには、白い髭を生やし、きちっとした服装をしているシニアの姿があった。
「行くしかないな」
―――――――――――――――――
「かつお兄ちゃん!!」
城に着くと開口一番に可愛い妹が俺を出迎えてくれる。
「おお!ラミア!呪いで死にかけたんだろ?体は大丈夫なのか?」
「はい、ミノル様のお陰で今は元気一杯です!」
そう言って、俺に笑顔を見せる。
あーやっぱり可愛いな。
いや、俺はロリコンじゃないけどな。
「おお、かつ!相変わらず俺の妹をたぶらかしてるな」
ラミアの頭を撫でていると、少しこちらを睨みながらガルアが近づいてくる。
「おお!ガルア!久しぶりだな!別にたぶらかしてる訳じゃないぞ」
「そう言いながら俺の妹の頭を撫でてんじゃねぇ」
そう言うと、より一層こちらを睨む。
おっとこれ以上はやめとくか。
「それにしても、黒の魔法使いの作ったモンスターのせいでラミアが生死をさ迷うことになるなんてな。でも、本当に生きててよかったよ」
「かつお兄ちゃんもミノル様を救出できて良かったです。心配したんですよ」
「心配してくれたのか?ありがとな、ラミア」
俺がもう一度ラミアの頭を撫でようとすると、ガルアが大袈裟に咳払いをする。
「えーっと!ラミア!俺達は大事な話があるから勉強しなさい」
「えー!もっとかつお兄ちゃんと遊びたいです」
そう言って不満げに頬を膨らませるラミアに対して、ガルアは厳しく言う。
「ラミア、わがまま言うな。お前は王族として、勉強があるだろ。こんなところで遊んでていいのか?」
「はい……分かりました。勉強します。それじゃあね、かつお兄ちゃん」
「ああ、じゃあな」
ラミアは名残惜しそうにこちらに手を振ると、そのまま行ってしまった。
ラミアが部屋に戻るのを見送ってから早速本題にはいる。
「それで、話って何だよ」
「立ち話も何だ、部屋に入ろう」
そう言って、いつもの部屋に案内される。
「ここに来るのも久しぶりだな」
久しぶりのふかふかのソファに若干テンションが上がっている。
「普通久しぶりなんて言葉。一般の半獣からはでないんだけどな」
「まあ、確かにそうだな」
すると、ガルアはおもむろにある紙を取り出す。
「お前の昨日の行為。早速王の間で話題になってるぞ」
それは王様しか配られない新聞だった。
俺は早速その中身を確認すると、大々的に俺の名前が書かれていた。
「ああ、本当だな。何かこんな風に大々的にやられると他の街に入りずらくなるな」
「別に悪いことをした訳じゃないんだ。逆にすごいことだぞ。今まで王を初めて色々なことがあったが、こんなのは初めてだ」
「まあ、早々無いだろうな。王の婚約者を連れていくなんて」
改めて考えてみると本当にすごいことしちゃったんだな。
「まっ世間話はここら辺にして、本題に入るか」
「おっ!ついに本題に入るのか。それで?俺はどういう用件で呼び出されたんだ?」
まあ、王から呼び出されたんだから、少なくとも普通のことではないよな。
「単刀直入に言うぞ」
「ああ」
「俺の十二魔道士になれ」
「え?」
その瞬間、俺の思考は停止した。




