エピローグ やり直し
「ここまで来れば大丈夫だろう」
ハイは十二魔道士から何とか逃げ切れていた。
だが少し怪我をしてしまい、人気がない場所で身を隠していた。
壁に寄りかかり周囲を観察していた時、声がかけられる。
「ずいぶんとやられたみたいね」
その声にハイは安堵する。
「仕事モードとは珍しいな」
「私はいつでも真面目よ」
「まっ長い付き合いだし、それくらい分かるよ」
そう言うと、ハイは地面に尻を付ける。
体力が限界に近かったからだ。
それを見てローがハイの傷の具合を心配する。
「大丈夫?怪盗は相手を欺き華麗に物を盗む。怪我をしたり罠にはまるのは三流だったんじゃなかったの?」
「嫌味か?これでも大分頑張ったんだぞ。2人の十二魔道士に狙われてな。しかも1人は俺を見た瞬間、魔法を放ちやがったし。あいつの名前を叫んでたから、もしかしたら何か因縁が合ったのかもな」
「まっご苦労様ね。ほら、手貸しなさい」
差しのべられた手にハイは掴み立ち上がると、そのままローを支えにする。
「そういえば、あいつらは?無事にやるべきこと出来たのか?」
「そうね。ちゃんと作戦は成功したわよ。かつから伝言を預かってるわ」
「何だ?」
「『ありがとな。助かった!』だそうよ」
それを聞いてハイの口元から笑みがこぼれる。
「そうか……………俺達がやったこと、他の人の役にたったんだな」
「そうね」
「なあ、覚えてるかロー?俺達が最初に決めたこと」
「覚えてるわよ。誰かの役に立つそんな人になる、だったはよね。義賊みたいな考えって思ってたけど」
「ああ、最初はそんな人になるために怪盗になったんだよな。でも、中々上手くいかなくて、気付いたら裏社会の仕事しかしなくなったな」
「そうね。そんなことしかしなくなったわね」
「なあ、ロー?」
「何?」
「1からやり直すか」
「そうね。私達なら何度でもやり直せるわ」
その言葉を聞いて、ハイは通信機を壊した。




