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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十章 奪われた花嫁
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その三十五 自分の気持ち

穴の空いた天井から謎の3人組が出てくれば、貴族たちが騒ぐのも無理はないな。


「な、一体何なんですか!」

「警備どもは何をしている!」


まあ、そうなるよな。

貴族達はパニック状態で扉へ向かう。

だが、そこにローが立ち塞がる。


「これ以上先には行かせられないよ」

「おーロー?何で怪盗の姿になってんだ?」

「色々あってね。今はそんなこと気にしてないで早くミノルを助けなさい」


気にしないでと言われても、ものすごく気になるのだが。

ていうか、ローが標準語の時点で気になるんだよな。

すると、こちらにリツが駆け寄ってくる。


「ぜっちゃん~よかった~無事みたいだね~」

「リツ!助かったよ!お前のお陰で怪我せずに着地できた」

「私は~ほんのちょっと手助けしただけだよ~」

「こちら、リドルです。ハイさん!聞こえますか!」


リドルがハイに通信を試みてるが上手く行かない。


「おい!絶対かつ!!よくここまで来たな!さすがの俺様もびっくりだ!」

「やっぱり繋がらないか?」

「はい、もしかしたら捕まってしまったのかもしれませんね」

「おい!聞いてるのか!俺様の話を聞け!」

「そんな!捕まってしまったのか?」

「いや、あいつはそう簡単には捕まらないだろ。でも、十二魔道士には気を付けないとな」


もしかしたら、もうすでにこっちに向かってきてるのかもしれない。

だとしたら早々にミノルを助けた方がいいな。


「おい、ムラキ!ミノルを離せ!」

「くっ!さっきまで無視してたくせに………うるさいバカ!お前なんかにミノルを渡すわけないだろ」


そう言って子供みたいな悪口を言う、まあ実際に子供なんだけどな。


「ていうか、お前らはここまで来たところで意味ないんだよ!ミノルが今どんな状況なのか知って――――――」

「借金だろ」


俺がその言葉を発すると、ムラキの口が止まる。


「全部知ってるよ。ミノルが何でそんなところにいる理由もちゃんと知ってる。全部知ったうえで俺達はここにいるんだ」

「かつ……………」

「ぐぬぬぬ………なら、なおさらだ!」


そう言って、ムラキは紙を取り出す。


「これは契約書だ!ここに家を一時的に貸すがお金は後で払うと言う契約だ!その金額4億ガルア!お前らにはどうすることもできない金額だ!当然ミノルも払えず、お金を払わない代わりに俺と結婚すると言う事でミノル自身が了承した!このお金を払わずにお前らがミノルを連れ出した瞬間!契約違反と見なして法的処置をとらせてもらうぞ!すなわち死刑だ!」

「子供なのに難しい言葉知ってるんだな」

「子供じゃねえ!」


その瞬間、貴族の人たちがざわざわしだす。

先程の動揺のざわざわではなく、ムラキの事についてだ。


「そんな契約をしていたのか」

「なるほど、だからこんな結婚式が」


貴族の人たちもこの結婚式の裏事情を知ったところでそろそろ終わらせるか。


「いいのか?そんなことペラペラと言って」

「うるさい!俺様はミノルさえ手に入れられればそれでいいんだよ!だが、これで分かったろ!この借金だらけの女を救ってもお前らには何の得もない!自分が苦しむだけだぞ!」

「何言ってんだ?」

「は?だから、お前らがミノルを救ったところで、お前らに危険が――――」

「危険が及ぶとか、苦しむとかそんなの知らないよ。俺達はただ仲間を迎えに来ただけ、そんだけだ」

「かつ……………」

「ぐぬぬぬ………………」


そろそろだな。

俺はリドルとデビの方を見る。

2人は何かを察知して頷き前に出る。


「様は金さえ払えば良いってことだろ?」

「え?ちょっと待て、まさかお前!」

「リドル、デビ!」

「了解じゃ!」

「はい、分かりました」


その瞬間、持ってきた鞄を放り投げると、中に入っていた金が床にばらまかれる。


「うおおおーー!!」


その瞬間、周りの貴族が声をあげる。


「全部で4億ガルア、ぴったり用意したぞ」

「う、うそだ!お前ら一般魔法使いがこんな大金集められるわけがない!何か汚い手を使ったんだろ!」

「そんなことしないのじゃ!ちゃんと集めたのじゃ!」

「なんなら、入手経路を調べてもらってもいいぞ。まっ調べられるかどうか知らんけど」


床に散らばった金をムラキは見つめる。

先程まで余裕ぶっていたが、次第に顔色が悪くなっていく。


「こ、こんなの………あり得ない……」

「これで、契約は解除だよな?」

「っ!?」


その瞬間、ムラキはミノルの方を見る。


「ミノル!行かないよな?あんなところ何かより俺のところの方がいいよな?」

「ミノル!もう、そんなところにいる必要はないぞ!早く戻ってこい!」

「うるさい黙ってろ!これは俺とミノルの問題だ!」

「なんじゃと!お主の方こそ黙ってろ!」

「お前!俺様は王なんだぞ!口の聞き方には気を付けろ!」

「王ならルールをちゃんと守ってください!」

「うるさいって言ってんだろ!ミノルはここに残りたいんだよ!」

「ミッちゃん!自分の気持ちに従っていいんだよ!」


俺達がムラキと口論している最中、静かにミノルが口を開く。


「本当は嬉しかった……………皆がここに来てくれて」

「っ!ミノル………」

「こんな私なんかのために、ここまでしてくれるなんて、本当は私なんて救う価値もないのに」

「ミノル!それは違う!そんな風に思うな!」

「いいの、私は今まで、やっちゃいけないことを沢山してきたから。だから、罪滅ぼしがしたかった。今ある命、自分の人生を自分じゃなくて他人のために使おうと思った。だからこそ、自分のしたいことをしちゃダメだと思った。そう思ってきたのに、かつはそんなのどうでもいいって私に言ってくれた。そんな風に考えたことなかった」

「ミノル………」


ミノルの瞳から涙がぽたぽたと溢れ落ちる。


「皆が来た時私は本当は来るなって言うべきはずなのに、その言葉が出てくるより先に助けてって思っちゃったの………ねえかつ、私みたいな人がわがまま言ってもいいのかな?」

「お前みたいなやつが言っちゃ駄目なら誰もわがままなんて言えないよ」

「……ぐすっありがとうかつ。今日だけはわがまま言わせてね。私を………ここから助けて!」

「「「「了解!」」」」

「フラッシュ!」


その瞬間、辺りが光に包まれる。


「ワープ!」

「な、何だ!?眩しい!ミノルは!俺のミノルはここにいるのか」

「私は誰の者でもないわよ」


周りが見えるようになった時にはすでにミノルは俺達の元にいた。


「なっ!?み、ミノル!!」

「ごめんね、ムラキ。私はもう我慢しないことにしたから、嫌なことは嫌って言うし、やりたいことはやるって決めたの」

「そ、そんな………」

「よし、それじゃあここを離れるぞ。早くしないと、十二魔道士が来ちまうかもしれない」


目的は達成された、これ以上ここに残る必要もない。

俺達はすぐにテレポートの準備をする。

だがムラキはまだ諦めきれてないのか必死にミノルに呼び掛ける。


「待ってくれミノル!いかないでくれ!何がいけなかったんだ!嫌なところはちゃんと直すからー!だから!!」

「あいつ、諦め悪いな」

「大丈夫、私に任せて」


そう言って、ミノルは一歩前に出る。

それを見てムラキは一瞬笑みを浮かべる。


「そうねえーあなたの悪いところは沢山あるけど強いて言うなら私、子供は論外なの」

「ガーン!」


その言葉にムラキは口を開いたまま固まってしまった。

これは完璧にストレート入ったな。


「お前、以外とえげつないな」

「本心を言っただけだからね」


こいつ、以外と毒舌なのかもしれないな。

だがこれで問題は解決した、すぐにでもここを離れよう。

そう思った瞬間、ドアが勢いよく吹き飛ばされる。


「うわっ!!何だ何だ!?」


その時全身の毛が逆立つ。

これは危険だ、確実にやばいやつがいる。

すると吹き飛ばされた扉から女の魔法使いが出てきた。


「なるほど、あんたが絶対かつかい。どんなやつかと思ったら以外と普通の青年とかわりないね。だけど、仲間のためにここに侵入するなんて度胸はなかなかあるみたいじゃないかい。まっわたしに捕まったらその度胸も意味ないんだけどね」


この女、確実にヤバイ!

これが噂の十二魔道士か。


「かつさん!今の僕達にあの人たちと戦える力はありません!早く逃げましょう!」


リドルがあせる理由もわかる。

この人は俺達とは確実にレベルが違う。


「ああ、そうだな!ミノル!!早くテレポートを!」

「ちょっと待って!今準備してるから!」


扉が空いたお陰で貴族たちが大急ぎで外に出ていっている。

このパニック状態を上手く利用できればいいが。


「あたしがそう簡単に逃がすと思うかい!」


その瞬間、物凄いスピードでこちらに近づいてくる。

まずい!これは、避けられない!

そう思った瞬間、何かがその十二魔道士の前に立ち塞がったような気がした。

その時、十二魔道士が動きを止める。


「あんた、どういうつもりだい?」

「すみませんが、ここから先は行かせられません」

「マナ!何してるの!」


ミノルが十二魔道士を見て焦ったように声を荒げる。

マナ?そうか、確かこの人は招待状を届けてくれた人だ!


「ミノル、よかったですね。仲間とようやく再開出来て。もう失っちゃダメですよ」

「何やってるのマナ!あなたがあの十二魔道士に勝てるわけないじゃない!」

「そんなこと、自分が1番分かってます。せめて時間稼ぎくらいはやらせてください」

「何で!何でそこまでしてくれるの!?」

「それは、ミノルが私の友達だからです」

「………マナ」


すると、十二魔道士がマナを睨み付ける。


「あんた、うちの使用人だよね。あたしの邪魔するってんなら、容赦しないよ」

「はい、私もそのつもりですからね」

「マナ!ダメ!」


マナの元へと行こうとするミノルを俺達は必死に留まらせる。


「ミノル!!行くな!ここで行ったら、意味ないだろ!」

「でも!マナが!私の友達なの!大切な、友達なの!」


まずい!このままじゃミノルと十二魔道士が戦っちまう。

それにこんなところで長々と戦ってしまえばもう1人の十二魔道士が合流してしまう!

そうなったら、今度こそ万事休すだ!


「あんた、中々良い目をしてるね。その目嫌いじゃないよ」

「褒めていただき、ありがとうございます」

「ただの使用人だと思ってたけど、中々度胸があるじゃないかい。なら、私も本気でいかなきゃ失礼ってもんだね」


その瞬間、肌にピリつくほどの魔力を感じる。

まさか本気で戦うつもりか。


「やばい!やばいって!確実にやばいやつ来るって!」

「よし!そっちがそう来るなら、妾も!」

「デビさん!対抗心持たないでください!ミノルさん!早くテレポートを!」

「でも、マナが……マナを助けなきゃ」

「ミノルさん!まだわからないんですか!マナさんは何のためにあの行動をとっているんですか!僕達を逃がすためですよ!このまま十二魔道士戦ってしまったら、マナさんの行動は無意味なものとなってしまうんですよ」

「分かってるわよ!でも…………」


ミノルの葛藤も分かる。

少なくてもムラキの城で1人ボッチだったミノルにとって、唯一の理解者であり、心を許せる人だったんだ。

だけど……

その時、白いマントを翻し、俺達の前に現れる。


「フラッシュ!」


その瞬間、光が辺りを包む。


「今の内に早くこの場を離れて」

「ロー!ありがとな!ミノル!今の内だ!」

「………………」


だが、ミノルはまだ迷っていた。

そんなミノルに対してローが優しい口調で声をかける。


「安心して、あの使用人は私が守ってあげるから」

「本当!?ていうか、あなた怪盗ハイ&ロー!?」

「今さら!?まあ、いいけどね。ここであなたとの協力関係は解消。こっからは好きにやらさせてもらうわよ。だから、私のことは良いからはやく脱出しなさい」

「お前はそれで良いのか!?」

「私は怪盗よ。盗むのが仕事なの」


そう言って笑みを浮かべるローを見て、俺は思わずかっこいいと思ってしまった。


「………変な喋り方じゃなきゃ、すごく頼りがいがありそうだな」

「その言い方は無いんじゃないの?」

「冗談だよ。ありがとな、助かった!ハイにもそう伝えてくれ!」

「行くわよ!テレポート!」


そうお礼を言って、俺達はキンメキラタウンを脱出した。


「やってくれたね。まさか、あんたも仲間だったのかい?」

「私はただのキャラがある怪盗ざます」


そう言って、ローは再びフラッシュを放った。


―――――――――――――――――――


テレポートを使い俺達はようやく自分達の家に戻ってきた。


「はあ………きつかった~」

「本当ね。本当に大変だったわ」

「妾はお腹が空いたのじゃ~」

「そうですね、早く家に入りましょう。ご飯作ります」

「それじゃあ~今日はパーティーだね~ミッちゃんお帰りパーティ~!」

「おお!大賛成じゃ!早速始めよう!」


そう言って意気揚々とリツとデビが家の中に入る。


「僕達も中に入りますか」


リドルもそれに続いて中に入る。


「それじゃあ、私達もなかに入りましょうか」

「あ、ああそうだな」


ミノルも中に入る為にドアノブに手をかける。

だがその前に俺は気になっている部分をミノルに訪ねる。


「そう言えば、そのドレス来てきちゃったな。服とか置いてきちゃったけど、大丈夫か?」

「大丈夫よ。それに、ドレスで逃げてくるなんて、何かワクワクしたしね」


たしかに、ありがちではあるがドレスで結婚式場から逃げる展開は、妙にワクワクする。

やられた本人はたまったものではないだろうが。

それしてもミノルがドレスを着てるってなったら、何だか妙に意識してしまうな。


「に、似合ってるぞ。その白いドレス。何か、すごく良い」

「何それ、でも私実はあんまり白好きじゃないのよね」

「え?そうだったのか?何か、ごめんな」

「ううん大丈夫。今、好きになったから」


そう言ってミノルはイタズラっぽく笑みを浮かべた。


「え?」

「じゃあ、中に入りましょう」


ミノルが家に入っていくなか俺は未だにその場に佇んでいた。

どうしようもなく、胸の高鳴りが抑えられない。

ドレスを着たミノルのあの笑みを見てから、心臓が苦しい。

ああ、そうかそういうことだったのか。

ミノルが居なくなってからどうしてあんなに必死だったのか、仲間として居なくなるのが寂しいからと思っていた。

だけどそれは違っていた、いつの間にか俺は仲間としてではなく、一人の女性として。

俺はミノルの事が本気で好きになっていたようだ。



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