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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十章 奪われた花嫁
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その三十三 怪盗出陣 

「それでは!新郎の入場です!」


そう言ってリツが座ってる席の後ろの大きな扉がゆっくりと開く。

その瞬間、席に座っていた貴族が一斉に立ち上がり、拍手を送る。

そこから嬉しそうに手を振っているムラキが現れた。


「あーどもども!いやぁー皆来てくれてありがとねー!」


めちゃくちゃ浮かれてるね~。

とりあえず、報告しなきゃ~。

リツはなるべく怪しまれないように通信機を使う。


「こちらリツ~ムラキが現れたよ~」

「分かった。俺達も今そっちに向かってる。多分間に合うと思う」

「りょうか~い、警備の人にばれないようにね~それじゃ……………」


通信機から手を離した瞬間、悲鳴が通信機から聞こえてきた。


「こちらハイ!現在超絶ピンチなんだけど!まだ、逃げてなきゃダメなのか!!」

「あ~ハッちゃんか~いきなり叫び声が聞こえたから~ビックリしたよ~」

「ビックリしたじゃないだろ!十二魔道士が追っ掛けてきてやばいんだよ!て言うか、かつのことものすごく恨んでる奴もいて、すごく大変なんだけど!俺と戦おうぜーとかすごい言ってくるんだけど!」

「何やってるざます!それでも怪盗ハイ&ローざますか!弱音を吐かずにちゃんと自分の役割を全うするざます!」

「お前は結婚式場に細工する安全な役割だからそんなこと言えんだよ!ぎゃああ!こっちきたー!!」


その叫び声と共に、通信が切れた。

何だか~大変そうだね~


「と、とりあえずハイはもう少し頑張ってもらうしかないな」

「ハイ、可愛そうじゃのう」

「しょうがないざます。そういえばこっちの方は終わったざます」

「分かった。後は俺達が来るだけだな。ローは最後に頼むな」

「分かってるざます」

「それじゃあ皆、また後で会おうな」


そう言って、通信が切れる。

気が付くと皆、拍手をやめ椅子に座っている。

リツだけ座ってなかったので貴族の冷たい視線が集まる。


「ご、ごめんなさい~」


リツは少し恥ずかしそうに椅子に座る。

参ったな~通信に夢中になっちゃってたよ~。

恥ずかしいな~。

するとムラキが1つ咳払いをして大袈裟に身振り手振りをし始めた。


「えーっと、改めて来てくれてありがとう!今日は俺様じゃなくて、俺にとっても皆にとっても、最高の1日になる!しかも、ついに俺の夢にまでみたミノルが俺のものになる日だ!これがどれだけすごいことかお前らには―――」

「ムラキ様!」

「ん?何だ?」

「あの、そろそろ時間です」

「ああ、そうか」


そう言うと服装を整え、ムラキは背筋を伸ばしてその場で待機する。


「それでは、早速ご登場します。ムラキ様の花嫁。新婦の入場です!」


進行の人の発言により先程ムラキが出てきたドアが勢いよく開く。

その瞬間、真っ白い純白のドレスを着たミノルが、扉からゆっくり出てくる。

それを見た男の貴族がざわめきたつ。


「ふっ羨ましいだろ。低級貴族ども。あれは俺の物だぞ」


ミッちゃん、本当に綺麗だね。

その白いドレス、本当に似合ってるよ。

でも、今はその姿を見たくなかったな。

相手があんなやつの時に見たくなかったな。

本当だったら顔からあふれでちゃうくらいの幸せそうな顔で出てきて欲しかった。

本当だったら、ミッちゃんが心から大好きと言える相手の時がよかった。

ゆっくり、そして俯きながら進んでいく。

そして、ミノルが顔を上げると、犬が待てをされているような顔のムラキが居た。

だがミノルは視線を合わせようとはしなかった。


「やっとこの時が来たなミノル」

「………………………」

「その様子だと、かつが助けに来てくれると思ってたのか?」

「……………………………」

「別にそれはいいことだと思うぞ。相手がこの街の王だとしても助けに来てくれるなんてな、これだから馬鹿は困るんだよ」

「…………っ!」

「やっと目、合わせてくれたな」

「……………棒で高さ調整しなきゃ、目も合わせられないくせに」

「その生意気な口調も俺との新婚生活で無くなるな」

「かつは、バカじゃないわ」

「まだ、気にしてたのか?」

「少なくとも、あなたよりわね」


一体何の話をしてるんだろう~?

まあ~ミッちゃんが睨み付けてるから~いい話では無いんだろうな~。

それにしても~まだ、発動しないのかな~。

ロッちゃんはちゃんと設置したって言ってたけど~。


「それでは、2人共前に来てください」


聖職者の人は2人を前に出す。

そして、ムラキは聖職者の方を向き、ミノルは俯く。


「汝らは健やかなる時も苦しい時も離ればなれになった時も旅行に行って財布を落とした時も知らない人の髪の毛が落ちてた時も育児に疲れて逃げ出したい時も一生側にいると誓いますか?」

「誓います!」

「………………………」

「誓いますか?」

「………………………」

「え?あの、誓うって言ってくれないと、あの、進まないんだけど」

「あ、誓うって言ってましたよ」

「そ、そうなの?こ、こほん。それでは、誓いのキスを」 


そう言うと、ムラキはミノルの方を向く。

だが、ミノルはムラキの方を向かない。

ミッちゃん………………。


「こちらリツ、ぜっちゃん早く来て」

「こちら、かつだ。後5分くらいで着く」

「それじゃあ、間に合わないよ」

「おい、ミノル。これ以上駄々こねるなら」

「……………」


するとミノルは大人しく、ムラキの方を向く。

ミッちゃん!駄目だよ。

だが、リツの気持ちとは逆にミノルはムラキの方に顔を近づける。

こうなったら、私の手で!

そう思い立ち上がろうとした瞬間、耳をつんざくような音が式場に響きをわたる。


「な、何ですの!?一体どうなってますの!」

「この音………まさか!」


この音が鳴ったってことはもしかして……………

その時、大きな扉から1人の警備員が慌てた様子で出てきた。


「地下の秘密の入り口から侵入者です!」

「やっぱりか!思った通りだ!あいつらなら絶対あの秘密の通路を使ってくると思ったぜ!」

「どういうことムラキ!」

「ふっお前の最後の希望は無くなったってことだよ。警備員!全員秘密の通路でかつ達を捕まえろ!1人も逃がすなよ」

「「「「はっ!!!!」」」」


式場に居た警備員が全員秘密の通路に向かう。

その様子を見てリツは慌てて通信機をしようする。


「こちらリツ!ぜっちゃん、デッちゃん、リッちゃん!聞こえる?」

「こちら、デビじゃ!今……は、はっ――――――!!」

「っ!?………ビックリした~なに今の音~」


突然通信機からキーンと言う機械音が耳に響き渡る。

その音に思わず、通信機を耳から離す。


「今の音ってもしかして……………」

「ああ、そうだ。魔道具だよ。特殊な魔法陣を道の途中にはっつけて、そこに触れるか通りすぎると、音が鳴り響く罠だ。言ったろ馬鹿なんだよあいつらは、俺様がその通路を見逃すはずないだろ」

「くっ!かつ…………」


ミノルがムラキを睨み付けてる間にリツは急いで通信機を耳に付けなおす。


「こちら、リツ!聞こえるぜっちゃん!」


だが、返事は来ない。


「そんな………もしかして、捕まっちゃったの?」


すると、ムラキがまだ現場に向かっていない警備員を見つける。


「ん?お前まだ居たのか。報告ご苦労!お前もすぐに行ってこい」

「いえ、行く必要はありません」

「は?何言って――――」

「アイスロック!」


その警備員は突然ドアを凍らせる。

氷はあの巨大なドアを隙間なく凍らせ、完全に開かないようにさせた。


「な!?お前何やって…………いや、お前俺様の警備員じゃないな」

「ふっばれちゃったわね。よっと!」


その瞬間、白いマントが体を一瞬隠したと同時に、先程の警備員の格好ではなくなっていた。

純白のマント、そして白い仮面、まさしく………。


「お前は怪盗ハイ&ロー!何でここに!」

「へえ、知ってるんだ。私も結構有名になったものね」


やっぱり~あの警備員ロッちゃんだったんだ~。

でも、何で怪盗ハイ&ローになってるの~?

作戦には、そんなのなかったんだけどな~。


「もう1人はどうした!たしかお前らは2人組だったろ!」

「もう1人は今外で鬼ごっこしてるよ」

「やっぱり……外に居た絶対かつは偽物だったのか。だけど、何でお前がここにいるんだ!ここには盗むものなんてないだろ!」

「あなたの隣に居るじゃない。純白のドレスを身に纏った、可憐な少女がね」

「え!私!?」


あ~もしかして~怪盗のスイッチ入っちゃたのか~。


「今回はキャラ付けなしの本気モードよ。ここにはもう警備員は居ないし、居るのは金と名声だけのボンボンばっかだしね」

「な、なんだ貴様!私らをバカにするのか!」

「真実を言っただけでしょ。それじゃあ、盗ませてもらうわよ」


そう言って、ローはミノルの方に向かう。


「お~い、こちらリツ~聞こえてる~?」


駄目だな~皆に繋がんないよ~このままじゃ、ロッちゃんがミッちゃんを…………この魔力。

リツはすぐに上を向いた。


「やっと来た~」

「インパクト!!」


その瞬間、式場の天井が爆発する。


「何だ!何だ!何がおきてんだ!!?」


その時、瓦礫の中から人影が見える。


「いてて、何とか生きてるな」

「……………っ!!かつ!!」

「よお、ミノル!まだ、誓いのキスしてねえだろうな」



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