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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十章 奪われた花嫁
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その三十一 十二魔道士

「こちら絶対かつ。リツとロー聞こえるか?」


通信機に応答を呼び掛けるとすぐに二人の声が聞こえてくる。


「聞こえるよ~」

「ちゃんと聞こえてるざます」


先程の焦っていた声色とは違い二人とも冷静そうだ。


「その様子だとさっきの問題は解決できたみたいだな」

「なんとかね~そっちはどう~」

「こっちもそろそろ向かおうと思う。結婚式場に客が全員入ったら向かう」

「りょうか~い。それじゃあまた後でね」


そう言って通話が切れた。


「どうやら今のところ順調そうですね」

「ああ、だけどあっちは完全に俺達が侵入しているのを疑っている」

「知らない人がいないかチェックしてたしのう。本当にばれないのか?」

「一度見られてるならまだしもまだあいつらは顔を見られてないからな。たぶん大丈夫だろう」


まあ、さっきみたいなアクシデントは今後も起こりそうだが。


「確かにそうですね」

「いや、リツは顔ばれしておるじゃろ。あのムラキがもっと小さかった時に」

「…………あっ!そう言えばそんなこと言ってたな!?すっかり忘れてた!」

「でも、小さい頃のことは話していましたが実際に会ったとは言ってませんよね」

「とりあえず、リツに確認だ!」


俺はすぐにリツに連絡する。

だがその前に誰かの声が聞こえた。


「えっとーこちらハイ。無事中に侵入したぞ」


ハイか、そういえばあいつは二人よりも先にキンメキラタウンに行かせたんだったな。


「そうか、分かった。それじゃあ俺が指示するまでそこで待っててくれ」

「了解。てか、それまで暇だから話さないか?お前らもあいつらが結婚式場に入るまで暇だろ」

「今そんなことしてる場合じゃないだろ!私利私欲のために通信を使うな!早く切れ!」

「え?あ、すいません」


そう言って通話が切れると同時にすぐにリツに連絡する。


「おい、リツ!聞こえるか!?」

「聞こえてるよ~どうしたの~?」

「お前、昔ムラキと会ったことあるんだろ!その時に顔を見られてるか?」

「見られてるけど、もっとムラキが小さかった時だし~覚えてないと思うよ~」

「本当に大丈夫なんだよな」

「大丈夫だよ~そもそもムラキに会う機会が少ないから~見つかる危険はないって~」


確かに直接顔を会わせる機会は早々ないか。


「分かった。それじゃあ、計画通りによろしくな」

「うん、りょうか~い」


そう言って通信を切る。


「大丈夫そうですね」

「ああ、リツの言う通りムラキに会う場所は限られてるし、それにリツのこと事態は覚えてない可能性はあるからな。結婚式でも周りに視線はやらないと思うしな」 

「にしても、お主ら記憶力ないのう」

「たまたま忘れてただけだ。それより、お前ら準備はいいんだろうな」

「僕はいつでも大丈夫ですよ」

「それじゃあ、リツから連絡が入り次第出発するぞ」


―――――――――――――――――――


「ふう、何で俺こんな所でこんなことしてんだろ」


キンメキラタウンのひと気がない場所で思わず愚痴をこぼす。

俺はリツとローが結婚式場に入るまでここで待機することになっている。


「いやぁ確かによ。やるとは言ったけどな、最初は嫌々で結果的に自分からやらせてくれって言ったけどよ………」


計画が進むまで暇なので愚痴が止まらないでいた。


「ていうか、さっきも年下のかつにぼろくそ言われたしよ。あーあ、俺って何か大人っぽくないのかな?もしかしてなめられてる?」


確かに、この仕事をして大人っぽさが出てきた様子はない。

元々俺には親と言える人がいなかったし、そういう教育もされなかったしな。


「大人にはなりたいが、薄汚いやつにはなりたくないな。なるならあの人みたいな…………」

「おいっ」


俺は声が聞こえた方を振り向く。


「お前、キンメキラタウンの者じゃないな」


そいつは街中で見かける見回りと同じ服をしていた。


「っ!?フラッシュ!」


俺はすぐに目眩ましをして、その場から逃げる。

やばいやばいやばい!

見つかった!油断した!くそ、普段の仕事ならこんな失敗はしないのに。


「とりあえず、今は身を隠すしかねえ」

「くっ!目眩ましい!おい、お前は王に報告!俺は後を追う!」

「分かりました!」


―――――――――――――――――――

結婚式が行われる場所の休憩室でムラキが使用人達によって着替えを行っていた。

そんな中、ムラキは上機嫌に鼻歌交じりに独り言をこぼす。


「いよいよだなぁ。俺様とミノルが結婚する時が!くう、俺様は今!最高に気分がいい!」

「ムラキ様、動かないでください。お召し物が上手く出来ないので」

「おお、それはすまんな!ふっふふーん!楽しみ楽しみ」


そんな中、扉が勢いよく開く。

慌てた様子で警備の者がムラキへと駆け寄る。


「ムラキ様!侵入者です!」


その言葉を聞いたムラキの眉毛がピクリと動く。


「侵入者?この式場の中か?」

「いえ、キンメキラタウンです」

「何人だ?」

「現在1人だけです。もしかしたら、他に仲間がいる可能性も」

「だったら、おまえらで対処しろ。俺は結婚式の誓いのキスの練習で忙しいからな。おい、棒は持ってきてるだろうな」

「で、ですが………」


口ごもる警備の者に向かってムラキは鋭い視線を向ける。


「俺の言葉が聞こえなかったのか?」

「し、失礼します!」


そう言って、急ぎ足でその場を立ち去る。

そして、その様子を聞き耳を立てていた人物が1人。


「侵入者?もしかして、絶対さん達?」


その人はすぐにミノルの元に向かう。

すぐにミノルが居る別の休憩室の扉を開くと、ミノルがドレスを着ようと奮闘していた。


「あっマナ。お願い、何かこの服の着方が分からなくて」

「それより、ミノル大変ですよ。侵入者が現れたって!」

「え?侵入者?今の時期に侵入してくるなんて、物好きが居るものね」


ミノルは未だにピンと来ていないのか世間話のように聞き流す。


「そうですよ。そんな物好き早々いませんよ」

「え、ええ?何で、嬉しそうなの?」

「分からないんですか?絶対さんですよ!こんなことするのはあの方達しかいませんよ!」


絶対かつの名前が出たことで先程まで無表情だったその顔に笑みがこぼれる。


「え?かつ達が?………来てくれたんだ」

「よかったですね。ミノル」

「ありがとう、マナ」

「お礼を言うのはまだ早いです。待ちましょう皆さんを」

「ええ、そうするわ」


――――――――――――――――――――

「ふう、ここまで来れば大丈夫だよな」


完全にやらかした。

だが、こっちだって盗みを生業としてるんだ、見つかった時の対処法くらい心得てる。

先程の警備達を何とか巻き俺は周りの様子を注意深く観察する。


「よし、まあ俺が何者かはバレてなさそうだし、ギリギリセーフだよな」


この事は別に報告はしなくていいだろう。

別に侵入者が居ると言うことしかあっちは分かってないんだし、今回の計画には支障は出ないだろう。

変に皆にこの事を伝えても困惑させるだけだしな。


「とりあえず、バレずに隠れながら行動しよう。そして、その時が来れば変身して、逃げればいい。これ以上へまをしなきゃいいわけだしな」

「ここら辺だね。例の侵入者は」


声?

うそだろ、まさかここがバレたのか?

いや、そんなわけはない。

ここは事前に下調べして見つけた、隠れスポットの1つだぞ!?


「分かるんですか?」

「うんうん、匂うね………ここに隠れるってことは相手はかなりの慎重派だね。事前に下調べしなきゃここは見つけられないよ」


くそ、声が少しずつ近づいてきてるな。

でも、場所まではバレてないみたいだな。

隙を見て逃げるしかない。


「そう言う奴が侵入する理由は2つだね。1つは誰かに依頼されて何かを盗みに来たか。もう1つは誰かと何かを阻止するためだね」


その瞬間、体中から寒気が走る。

見られてる、あいつは今俺の事を見ている。


「おそらく後者だろうね。金銭目的なら道端で見つかるようなへましないだろうからね」


これは俺に話しかけられてるのか?

完全にバレてるな。

俺は大人しく姿を現す。


「本当にいたのか!」

「ほお、あんた見かけない顔だね。何しにここに来たんだい。観光って訳じゃないだろ?」

「まあな」


見回り2人に謎の女魔法使いが1人。

周りのやつはどうとでもなるが、問題なのはあの女だ。

振り切れるかどうか。


「それで、どうすんだい?ここで大人しくお縄につくか、あたいと戦うか」

「もちろん………」


俺は腕を前に出す。


「逃げるだ!」


その瞬間、回りが光に包まれる。


「くっ!フラッシュか!?鬼ごっこをご所望かい?お望み通り付き合ってやるよ!」

「すぐに追いかけましょう!」


ここではあまり使いたくなかったが、やるしかねえか。


「例の侵入者が、外で暴れています!」


外から見回りが情報を伝えに来た。

と言うていで見回りの人に変装している。

正攻法じゃ叶わない。

これならさすがのあいつも分からないだろう。

その言葉に見回りの奴がすぐに食いついた。


「何!?」

「サラさん!すぐに上に行きましょう!」

「ああ、先に行っといてくれ」

「分かりました。おい、お前ら行くぞ!」

「あっ!あんたはちょっと待ちな」

「うっ!」


なぜピンポイントで俺を呼び止めるんだよ。

この状況で聞こえないふりして逃げるのは怪しいよな。

俺はそのまま大人しく足を止めて女魔法使いの方を向く。


「あんた、どうしてここにあたい達が居ると分かったんだい?」

「先程、こちらに行かれたのが見えたので」

「あたいはここに入るまで細心の注意を払ってきたんだよ。仲間が他にも居るかもしれないからね」

「たまたまそちらからまばゆい光が見えたので」


きついか?

もしバレたのならやるしかないけど。

周りが緊張感に包まれる中、その緊張を解いたのは女魔法使いだった。


「そう、ならいいけど。待ってな侵入者。鬼ごっこならいくらでも、付き合ってやるからさ」


そう言ってそのまま行ってしまった。

やつの視線は完全に俺を見ていなかった。

にもかかわらず変装している俺に言っているようだった。

なるほど、こいつが噂の。

初めてあったが分かるぜ。

王直属の護衛部隊、別名十二魔道士か。

その時、通信機から音声が入る。


「こちら絶対かつ。ハイ聞こえるか?そろそろ、リツとローが結婚式場に侵入する。お前も準備しとけよ」


今回の仕事は一筋縄じゃ行かないようだな。


「了解」



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