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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十章 奪われた花嫁
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その二十 欠けたピース

「失礼します」


そう言ってミノルのお世話係は扉を数回叩き中に入る。


「お食事を持って参りました」


銀色のワゴンの上には色とりどりの料理が置かれていた。


「いらないわ」


ミノルは体育座りで顔を見せずに断る。

それを聞いたお世話係の人は困った様子でミノルの方にワゴンを引いて行く。


「そんなこと言わないでください。朝ごはんも食べてないんですから、食べなきゃ体を壊しますよ」

「でも、要らない…………」


そう言って頑なにご飯を食べようとしないミノルの隣に腰を下ろす。


「今日侵入者が来たんですよね。実は私、その侵入者の1人に着替えてるところ見られたんですよ」

「っ!?それってもしかしてかつ!?」


先程まで俯いていたが、その話を聞いてミノルはお世話係の人の方に食いぎみに顔を近付ける。


「やっと、顔を見せてくれましたね」

「っ!…………ごめんなさい。私、もう何が何だか分からなくて。自分の選んだ選択肢が正しいのかも今となっては分からないの」


そう言って、ミノルはまた瞳に涙を浮かべる。

それを見てお世話係の人は笑みを浮かべる。


「私はミノルさんの味方ですよ。何があっても味方です」

「うう、マナー!!」


そう言って、お世話係のマナを抱き締める。


「よし、よし。好きに泣いてください、好きに泣いていいですよ。私はミノルさんのお世話係ですから」


しばらくミノルの泣き声が部屋に響き渡るのだった。


――――――――――――――


「おっさん、コウバ返しに来ました」


俺達はコウバを借りた場所で返却をしていた。

おじさんはコウバを見ると嬉しそうに頭を撫でる。


「おお、ちゃんと返しに来たか。帰ってこないかと思ってたが、不要な心配だったな」


そう言って笑顔でコウバを受けとる。


「それじゃあ、もう行きます」


俺はその言葉だけを伝えて、その場をあとにする。


「おお、ちょっと待て!」


だがおじさんは俺を引き留めると、ポケットから紙を取り出し、渡してくる。


「それはサービス券だ。次回は無料で乗せてやるよ」

「そうですか。ありがとうございます」


俺はその券をポケットに入れ、今度こそその場を後にした。

俺はしばらくぼーっとその辺をぶらぶらと歩いた。

何をしていいかも分からず、ただただ歩いた。

すると、知らない人に声をかけられる。


「すいません、絶対かつさんですか!?」

「え?あ、そうですけど。どこかで会いましたっけ?」


その男は俺にとっては全くの知らない男だった。


「いや、知り合いではないんですけど、ファンなんでサインください!」


そう言って、俺にペンと色紙を渡してくる。


「ファン?えっと、どう言うことですか?」


俺のファンが居る?

それは別にいいが何でいつの間にファンなんか出来てんだ?

しかも何で男なんだ。


「だって黒の魔法使いを倒したんですよね!俺、その強さに引かれて1発でファンになりましたもん」

「黒の魔法使い?………ああ、そういえば倒したな」

「え?忘れてたんですか?流石です!自分の功績を見せびらかさないその謙虚な姿勢、大物は違いますね!」

「いや、別にそう言う訳じゃ。まあいいや、とりあえずサインしますよ」


俺はペンを受け取り色紙にサインを書く。


「はい、これでいいんだろ」


そう言ってサインが書かれた色紙とペンを返す。


「ありがとうございます!うわー、家の家宝にしよう!」


男は嬉しそうにスキップしながら帰って行った。

いつもの俺ならファンが居ると言う事実を知って人が大勢居る所に行くが、今の俺はそんな余裕などなかった。


「帰るか」


そう呟き、俺は帰路へと歩き出す。


――――――――――――――――

「ただいま………………」


俺はいつもよりテンション低めで扉を開ける。

すると同じようにテンションの低いデビが出迎える。


「お帰りなのじゃ。無事にサンダーホースを返せたか?」

「ああ、ちゃんと返したよ」


すると、リドルがキッチンから出てくる。


「かつさん、お帰りなさい。料理出来てますよ。お腹空きましたよね」


そう言って机の上に料理が並べられる。

いつもならこれらの料理を見ただけでお腹が鳴るのだが、今は食欲が沸かない。


「…………リドル、俺は今そんな気分じゃないんだ」

「気分とかそう言う問題じゃないですよ。食べる時に食べないと本当に食べたい時に食べられなかったら餓死しますよ」


そう言って、俺の肩を掴み無理やり椅子に座らせる。


「だからそんな気分じゃないって言ってるだろ」


だが、俺が断っているのにも関わらず無理やりにでも食わせようとする。


「ほら、かつさん。箸を持っていただきますを言って食べてください」

「ミノルの事、心配じゃないんだな」


そんな行動をするリドルに、俺はつい言ってしまった。

自分の思っていたことを、思わず口から出てしまったのだ。


「どう言うことですか?」

「お前はどうせミノルの事なんてなんとも思ってないんだろ?居なくなったところで、自分には関係ないことなんだろ?」


リドルが聞き返してしまったことで、口が止まらなくなっていた。


「何で、そう思うんですか?」

「お前はいつも、笑っているよな。まるで他人事みたいに、いつもいつも笑っている。本当は俺達の事、仲間何て思ってないんじゃないか」

「笑顔は第一印象を良くするためです。それとも不機嫌な顔をすればよかったんですか?」


そう言って、ニコリと笑う。


「言ったのに、笑うのやめないんだな」

「僕はミノルさんの事をどうでもいい人なんて思ったことないですよ」

「じゃあ、帰ってきて早々料理を作る元気はあるんだな」

「いつまでも暗い雰囲気のままでいろってこと何ですか?」

「空気読めって言ってんだよ」


俺達はお互いの顔を見る。

俺は睨み付けているが、リドルは口元をにやけさせながら、俺を見る。


「お前はいつも何考えてんのか分かんないけどよ。これだけは分かるぞ。お前には仲間を思う気持ちがない」

「かつさんは人の気持ちが分かる見たいですね。悩み相談でも開いたらどうですか?」


リドルは俺の言葉をスルリと返す。

それがさらに苛立ちを覚える。


「お前は何者なんだよ」

「それじゃあ僕も言わせてもらいますけど、かつさんの方こそ何者なんですか?」

「どういう意味だ?」

「知らない言葉を知っていたり、特殊な魔法を持っていたり、特殊な体の構造をして至りと、とても普通の人には見えません。何者なんですか?」


そう言って、俺の事を疑惑の視線で睨む。

こいつ……

口を開いた瞬間、重なるようにデビの大声が聞こえてくる。


「な、なあ!妾閃いたぞ!」


デビはわざとらしく手を振り上げる。

リドルはそちらに反応して視線をデビの方に向ける。


「何が閃いたんですか?」

「おい、話をすり替えるな。俺の質問に答えろ」

「僕はデビさんが閃いたと言っていたので聞き返しただけです。仲間の言葉に耳を貸さないなんてリーダー失格ですね」

「なんだと?」


俺はリドルの胸ぐらを掴む。


「妾の話を聞けー!!」


そう言って俺とリドルの間に飛び込もうとするので俺は避ける。


「うげっ!何で避けるのじゃ!」


ソファーにぶつかったおかげで怪我もなく、すぐに突っかかってくる。


「いや、向かってきたから」

「確かにそうじゃな!って受け止めてくれてもよいじゃろ!」

「一瞬認めてましたけどね。それより、閃いたって何がですか?」

「ミノルの事をよく知っている奴が居るのじゃ?」

「誰だよ、そのミノルの事をよく知っている奴って」


すると、不適な笑みを浮かべたあとに高らかに名前叫ぶ。


「ふっふっふ、それはリツじゃー!!」


――――――――――――――――――――


と、言うことで久しぶりにリツのお店に来ました。


「確かにここならミノルの事を教えてくれるな。よし、早速入るぞ」


これでやっとミノルの考えてる事が分かる気がする。

俺はそんな期待を持って扉を開けようとしたが、何故か開かなかった。


「あれ?開かない」

「そんなわけないのじゃ!力が足りないだけじゃ」

「足りないって、扉を開けるのに力なんていらないだろ」


すると、デビがドアノブを掴む。


「お主は引きが足りないのじゃ!おもいっきり引けば、いいのじゃっ!」


そう言ってデビは無理やり、ドアノブを引く。


「無理やり引くな!壊れるだろ!」

「デビさん、多分中に誰も居ないんですよ。鍵かかってるから開きませんよ」


そう言って、リドルはデビを引き離そうとする。


「何するのじゃリドル!離すのじゃ!」

「お前が離せ!ん?おい、今なんか変な音が」


その瞬間、デビがドアノブを掴みながら後ろにすっ転ぶ。

そしてデビの手には先程掴んでいたドアノブが握り締められていた。


「ぎゃ、ぎゃあああ!!!おま、これ!取れちゃってるじゃねえか!」

「妾は悪くないのじゃ!リドルが引っ張ったのが悪いのじゃ!」

「僕はただ掴んでただけですよ」

「と、とりあえず、修理だ!それ貸せ!」


俺はデビからドアノブを受け取りすぐにくっ付けた。


「よし、これで一時的には何とかなるだろう」

「何が何とかなるって~?」


後ろからいつものおっとりとした口調の中に怒りを感じる声が聞こえた。


「えっと…………もしかして、リツ?」


俺は後ろを見れず顔を見ないまま質問する。


「正解~」

「ですよねー」


その瞬間、めちゃくちゃ怒られました。



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