その十六 リドルの探索2
「………よし、通り過ぎましたね」
2階に着いてからはしばらくは見られてもバレなそうな人を見極め何とか3階近くまで来たが、そろそろ隠れながらはきつくなってきた。
重装備している見回りの人はかなりのベテランと呼べる人だろう。
鋭い眼光で少しの異変も逃さない。
下手に出てしまえばすぐに正体がバレてしまう。
例え、ここの服を着ていたとしても。
「何か大きな事が起きれば良いのですが……」
とりあえず、今の現状は焦らず気を待つしかなさそうですね。
そう思い一旦その場を離れようとすると、何処からか叫び声が聞こえる。
その声は昔から知っている声だった。
「どうやら、かつさんもこの階に来たみたいですね」
声が聞こえてしばらくすると、物凄い魔力量と共に大きな地響きが城全体を揺らす。
「うおっと!もしかしてかつさん、インパクトを使ったんですか。あまり目立つような事はするなって言っていたのに、僕にとっては好都合ですけど」
僕の予想通り、先程の地響きと叫び声の方に見回りの人が集まって行く。
そして、あっという間に僕の周りには人が消えて行った。
「すみませんが今の内に行かせてもらいますね、かつさん」
僕は素早く3階へと駆け上がった。
3階は、1、2階とは違い少し廊下が狭くなっている。
上に行くに連れて部屋数も少なくなっているみたいだ。
このまま行くと部屋を無駄に開ける心配は無さそうですね。
「とりあえず、ここにも居ないと思いますし上を目指しますか」
早速行動に移そうとしたその時、足音が聞こえた。
僕はすぐに物陰に隠れる。
そして、そのまま素通りしたのを確認する。
「ふう……危なかったですね。狭まると言うのはその分人に会う確率も上がるということですから、素直に喜べませんね」
だが、どんなに階層が上がろうとも場所は最初から決まっていた。
最上階に行くための階段、そこへ行く目的は変わらない。
はずだったのだが………僕は驚きの人物を目撃してしまった。
ここを探索していると正面にはお世話係だと思われる女の人が2人居るのと、もう1人は派手な服を着た貴族のおばさんが居た。
何故貴族でおばさんだとわかったかと言うと、見た目もそうですが、その人が見た事ある人だったからだ。
僕はすぐにその貴族を追跡した。
追跡するのは昔の仕事柄慣れていたので、バレずに順調に後を付けた。
「っ!………今」
僕は貴族のおばさんが1人になったのを見計らい、拘束する。
「んっ!?あんたは!?うぐっ!」
僕はすぐに口を塞ぎ、叫べない様にする。
「ちょっと静かにしていてくださいね。下手な真似をすれば首をへし折るので」
そう言うと、先程まで暴れていた貴族は顔が青ざめておとなしくなる。
やはり、脅迫は1番の安定剤ですね。
「僕の質問に頷いて答えてください。あなたはあの裁判の時に居た貴族の方ですよね」
するとその人は何回も頷く。
やっぱりそうでしたか。
「それじゃあ、もうちょっと詳しい事をお聞きしたいので抵抗せずに来てくださいよ」
拘束されている貴族の人が頷いたのを確認して、僕は近くの人気の居ない扉の中に入る。
「よし、ここなら大丈夫そうですね」
僕は周りを確認して、その貴族を解放する。
「ぷはぁ!はあ、はあ、はあ、死ぬかと思いましたわ」
その貴族は顔を青ざめながら、大きく深呼吸をする。
「すみません。少し強く押し付けたかもしれませんね」
僕が軽く謝罪するとこちらを鋭い目つきで睨みつけてくる。
「あなた、こんなことをしてただで済むと思わないことね!私の権力を持ってすればあなたを処刑することもいとわなくてよ!」
「それならばここで殺した方が良いってことですね」
「へ?や、やめて!殺さないで!そ、そうだ、金でしょ?金がほしいんでしょ?いくら、ほしいの?望む金額を出してあげる!」
冗談を言ったつもりだったんですけど、予想以上に効果覿面だったみたいですね。
やはり貴族みたいな命のやり取りをしてこなかった人々にはこういう言葉が直で聞くんですね。
「別に僕は金が欲しくてここに来た訳じゃありません」
「じゃ、じゃあなんでこんな所に居るのですか?」
「ミノルさんを助けに来たんですよ」
「な!?あいつを!」
予測通りの反応ですね。
だとすると、場所を知っている可能性が高いですね。
「もう分かってると思いますが、ミノルさんの所まで案内してください。拒否は出来ませんよ」
「くっ!あなた、本当に覚えておきなさい。これが終わったら牢獄に打ち込んでやるわ」
何か変な事を言ってますが無視しますか。
その時、誰かがドアノブに手を掛けた。
入ってくる?
そう思った瞬間、ドアがゆっくりと開いて行った。
リドル現在の階層[3階]




