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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十章 奪われた花嫁
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その十三 リドルの探索

「それじゃあ先ずは、上を目指した方が良さそうですね」


大切な物は1番上に置くのが半獣の心理ですね。

今回は大切な物がミノルさんなので多分最上階に閉じ込められているでしょう。

早速行動に移そうとした時、近くで話し声が聞こえてきたので身を隠して聞き耳を立てる。


「なあ、知ってるか?ムラキ様の婚約者の事」

「ああ、確か貴族じゃなくて、一般の人らしいな。何でそんな奴と結婚するんだ?」

「噂だと一目惚れらしいぞ」

「まじかよ。でも、あの女がここに来てからしばらく経つけど、まだ結婚してないよな。何でだ?」

「噂によるとムラキ様自身結婚にはノリノリだが女の方はそこまでらしい」

「まだ決めきれてないってことか?普通貴族としかも、その街の王と結婚出来るんだから、女からしてもこれ以上ない話だろ」

「本当に意味分かんないよな。何でそんな奴と結婚しようとしてるんだ?」

「ムラキ様はよく分からないお方だからな、そもそも、王になるのも早過ぎたし。ユウリ様が生きていれば……」

「馬鹿野郎、その話はするな。誰かに聞かれて王の耳に届いたら首が飛ぶぞ」

「おうすまねえ。確かにそうだな」


二人はそのままヒソヒソと話ながら行ってしまった。

なるほど、今の話を聞くとミノルさんはまだ結婚してないみたいですね。

それに、まだ結婚に踏み込めてないという事も。

それなら、説得すればまた戻ってくる可能性がありますね。


「おい」

「っ!?」


しまった!?見つかった!


「そこで何やってんだ?」

「…………」


まさか、後ろを取られてしまうとは、少し平和ボケし過ぎましたか。

でも、1人だけなら何とかなりますね。

それにこの人からミノルさんの情報を聞き出せば一石二鳥です。

逆に運が良かったと思いましょう。


「もしかして、お前………」


眠ってもらいますよ。


「新人か?」


その瞬間、僕の手が止まる。

新人?どういうことでしょうか?

まさか、人違いをしている?


「お前、俺が募集した新人コックの応募者だろ?ここで何やってんだ」


間違いないですね。

完璧に人違いをしている。

なら、この状況を利用しますか。

人を呼ばれても困りますしね。

僕はそのまま後ろを向くと出来るだけ爽やかな笑顔を見せる。


「はい、そうです。ちょっと道に迷ってしまって。リドルです。よろしくお願いします。それにしても広いですね、この城」


そう言って、僕は手を差し出す。

相手に好印象を抱かさせればこちらが疑われることはまずありません。


「がっはっは!そうか、道に迷ってたのか。確かにこの城は広くて複雑だからな。道に迷うのはしょうがねえ。俺はアズマだ!今日からよろしくな」


そう言って僕の手を強く握る。

どうやら第一印象は好感触のようですね。


「よろしくお願いします、アズマさん。それにしてもかなり大きい手ですね。料理は10年ほど前からやられてますね。流石プロです」

「おっ!分かるのか?手を握っただけで俺の料理歴を見破るとは大したもんだな」

「プロの料理人を目指しているので」


そう、アズマさんに自信満々に言う。

気軽に来たのではなく本気でプロになるために来たと思わせたほうがこの手の人は喜ぶでしょう。


「がっはっは!そうか!流石、俺が見込んだ料理人だ!よし、早速この厨房を案内してやるついて来い」


そう言ってアズマさんは先頭を歩く。

まっざっとこんなもんですね。

人と親密になるのに時間はいらない。

対話さえしっかりすれば、後は自然と人が来る。

僕が長年培った技の1つです。


「ここの部屋が厨房だ」

 

そう言ってアズマさんは1つの部屋を指す。

近くに、階段が見えますね。

これなら隙を見て脱出して、すぐに上の階層に行けますね。

まっ後は、その出られるタイミングですけど、あせらずゆっくり待ちますか。

中に入ると、そこには最高級の食器や鍋など色々な物が揃っていた。


「これは凄いですね……どれもこれも最高品質ですね」


そのあまりの光景に僕も思わずつばを飲む。

予想はしていましたが、少し驚きましたね。

持っていきたい所ですが、ここは変な事をせず我慢ですね。


「それじゃあ早速作ってもらうぞ。味によってはお前をここに置いておくことは出来ない。覚悟はいいな」

「最初から出来てますよ。いつでもやれます」


するとアズマさんは笑いながら僕の肩を叩く。


「がっはっは!言うじゃねえか!」

「ははは……痛いです」

「よし、早速着替えろ。その服じゃ神聖な厨房には立たせられない」

「でも、僕は服を持ってませんけど」


すると奥からアズマさんと似たような服を持ってくる。


「服は俺が用意してある。これに着替えろ。一着しかないから破いたりするなよ」


僕は簡単に着替えを済ませて、アズマさんの所に戻る。

素材も最高品質なのか肌を包み込むような質感で着ているだけで、心地よいですね。


「中々似合ってるじゃないか。よし、早速お前の腕を見せてもらおうか」


そう言って僕に厨房に立てとせがんでくる。

僕はアズマさんに言われた通りに厨房に立ち、食材を取り出す。

そしていつも通り、仲間達に振る舞っている料理を作った。


「はい、トマトソースパスタの完成です」


僕は作った料理を早速アズマさんの机に置く。


「トマトソースパスタ?本気で言ってるのか?」

「美味しいですよ。どうぞ、召し上がってください」


するとアズマさんはフォークを手に持ち、恐る恐る口に運ぶ。

そして、1口また1口とどんどん食べるスピードが上がる。


「うまい!こんなに美味しいトマトソースパスタは初めてだ!」


そう言ってあっと言う間に完食をした。


「文句無し!合格だ!お前を正式にこの城の料理人として雇う!」

「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします」


そう言って僕は頭を下げる。

一応ここまでは何とかいってますが、さてどうやってここから脱出しましょうか。

ん?何でしょうか、人一人分が入れるほどの扉がありますね。

そこからパイプのようなものが上に続いていますね。

僕が目の前に物に疑問を抱いているのを察してかアズマさんは聞いてもいないのに答えてくれた。


「そこに料理を置いて、最上階に居るムラキ様の所に届けられるんだ」

「そうなんですね」


てことは狭そうですが、ここに入れば一瞬でムラキ様の所に行けるってことですね。

多分そこにミノルさんも居ると思いますし。


「念のため言うがその中には入るなよ。中に入ったら狭い管を通るから体が押しつぶされるぞ。それに温かい状態で送る為に中は高温になっている。もう1回言うが気をつけろよ」


その作戦は無しの方向で行きますか。


「よし、早速ムラキ様の昼食を作るぞ。お前はメイン担当だ。俺は前菜を作る」

「分かりました」


僕は言われるがままに料理を作る。

それにしても困りましたね。

このままじゃ、逃げるのは難しそうですね。

ここで、この人を眠らせるのは簡単ですが、神聖な厨房でそんな事はしたくありませんし、どうしますか。

そう考えていると、後ろの扉が勢いよく開いた。

僕が振り返るとそこには見知った顔が居た。


「あれ?デビさん?」


まさか、デビさんが来るなんて、もしかして匂いでここまで引き寄せられた?


「リドル!?なんでこんな所で、美味そうな料理を作っておるのじゃ!?」


やっぱり匂いですね。


「ん?何だこの娘は?お前の知り合いか?」


ああ、そうでした。

変な事になる前に、適当に話しておいた方が良さそうですね

嫌な予感もしますし。


「ええ、そうなんですよ。実は僕の――――」

「まさかお主、裏切るのか!?」


僕の言葉を遮って、唐突におかしな事を言い出す。


「え?ちょっデビさん?」


だがデビさんは僕の言葉を無視してなおを話し続ける。


「そういう事じゃったのか。お主はミノルを助けられないと知り、それで捕まるくらいならとこの城の料理人になる道を選んだんじゃな!」


嫌な予感はデビさんに関しては早めに当たるみたいですね。


「まて、お前らは知り合いじゃないのか」


まずい、疑いだしてますね。

これ以上は流石に正体がバレる可能性もありますし、黙らせますか。


「お主が裏切ると言うのなら妾も裏切ってやる!おいそこのあごひげ!」

「あごひげって俺の事か?」

「リドルはなぜったい――――――」


その瞬間、僕はデビさんの口を手で塞ぐ。


「うううん!うう!」


デビさんは塞がれた口を必死に開こうとしている。


「デビ、ちょっと落ち着きましょうね」


ここは一早くデビさんに落ち着いてもらって協力をしてもらいましょう。


「おい、そいつお前の仲間なのか?」

「はい、そうです。この人は僕の弟子なんですよね」


さあ、デビさん、僕の考えを感じ取ってください。

だが、僕の言葉を聞いても全く察せず暴れだす。

これは直接言ったほうがいいですね。


「デビさん。黙って聞いててください」


そう僕はデビさんの耳元で伝える。

その言葉でようやく暴れなくなった。


「僕は今、あの人にここに新しく来た料理人と思われています。誰かを呼ばれるのも面倒くさいので、あの人の話に乗っています」


デビさんはしっかりと僕の言葉を聞いている。

僕は続けて耳元で伝える。


「デビさんは僕の弟子という設定でお願いします。行けますね」


もちろんじゃ!っと言いたげにデビさんは頷く。


「おい、お前ら何こそこそ話してんだ。まさか、お前ら………」

「ああ、すいません。今このデビに仕事を教えてたんです。そうですよね」

「そ、そうじゃ。よろしくなのじゃあごひげ」


ちょっとぎこちないですが、まあいいでしょう。


「いや、俺はあごひげじゃなくてアズマだ。それにしてもお前に弟子が居るなんて聞いてないぞ。しかも、デビだったな、お前は何で遅れてきたんだ」

「あ、えっと………」


あからさまに目が泳いでますね。

流石にアドリブは無理ですか。


「方向音痴なんですよ。だから途中で逸れてしまって、でも、鼻がよく効くので料理の匂いでここまで来れたんですよ」

「そ、そうじゃ」


何とか納得したみたいですね。


「そうか。方向音痴は師匠譲りってか?がっはっは!」


そう言って、機嫌良さそうに高らかに笑い出す。


「まあいい。で、料理の腕は確かなんだろうな」

「りょ、料理か?えっと………」


また、デビさん目が泳いでますね。

この人は本当に世話が焼ける人ですね。


「デビは作るのでは無く、味見担当ですよ。繊細な舌を持っているので細かく感想を言ってくれますよ。僕が保証します」

「そうなのじゃ!味見は任せるのじゃ!」


そう言って、自信満々に宣言する。

調子が良いですね、デビさんは。


「そうか!なら、俺の料理を味見してくれ。半熟卵のハンバーグだ」


そうきますか。

まさか、料理を出されるとは思ってませんでした。

ですが、普通に考えて、そうですよね。

僕が試験をしたみたいに味見担当の試験が来るのは当然。

ここでデビさんが、ちゃんとした感想を言わなければ……あれ?言えなくてもデビさんが不合格になるだけで別に今回の目的には何も関係しませんね。


「おお!美味そうなのじゃ!それじゃあ早速いただきますなのじゃ!」


そう言って、美味しそうにかぶりつく。

さて、どうなるんですかね。


「うん、美味いのじゃ!半熟の目玉焼きも上手く絡まって更に美味しいのじゃ!ジュージュー焼けた鉄板がいい味出してる。でも……」

「でも?」

「ちょっとボリュームが足りないのじゃ。せっかくハンバーグがメインなんだからもっと強調したほうがいいのじゃ。この目玉焼きも半熟じゃが、何か半熟なのに半熟じゃない微妙なところじゃな。多分早く終わらせちゃったのが原因じゃな。それをやればもっと美味しくなるのじゃ。後トッピングも入れた方が良いと思うのじゃ。例えばコーンとか。後ソースも変えた方が良いと思うのじゃ。それと――――」

「ああ、分かった分かった!お前の舌が優秀なのは分かったから、もういい!」


そう言って、デビさんの感想を止めて料理を奪い取る。

まあ、そんな言われたらそうなりますよね。


「何か、怒ってないか?」


天然の料理殺しですね。


「言い過ぎですよ。まあ、能力は認められたんで良かったですけどね」


今度、デビさんに料理の感想でも聞きますか。


「それで、これからどうするのじゃ?」

「を見て逃げます。それまではまだ弟子のふりをしてください」


まあ、それがいつまでかは分かりませんが。


「了解したのじゃ!」


僕達が話し合っていると後ろからお呼びがかかる。


「おい、リドル!早く来い!お前にはムラキ様の飯を作って貰うんだからよ」

「はい、分かりました!それじゃあ、よろしくお願いしますよ」


そう伝えて、僕はアズマさんの所へと向かう。


「それじゃあ先ずはさっきのパスタを作ってくれ」

「分かりました」


僕は先程と同じ様なスピードでパスタを作る。


「よし、どんどん持ってくるのじゃ!」

「はい、デビ」


僕は出来たばかりの料理をデビさんの机に置く。


「うお〜!!美味そうなのじゃ!それじゃあ、早速。いただきまー………」

「きゃああああ!!」


その瞬間、何処からか叫び声が聞こえた。


「何じゃ!?今の声は!?もぐもぐ」


そう言いつつ、やることはきっちりやってるんですよね。


「お前らはここで待ってろ!俺が見に行ってくるから」


そう言って、アズマさんは慌てた様子で部屋を後にした。

今の叫び声、もしかしてかつさんが見つかった?


「行ってしまったのじゃ」

「それじゃあさっさと行きましょうか。デビさんも逃げる準備をして下さい」

「わ、分かったのじゃ。あれ?お主、さっきまで妾の事をデビと言っておったよな」


そういう所はちゃんと聞いてるんですよね、この人は。


「ただ単に弟子に対してさん付けは、違和感があると思っただけです。それくらいですよ」

「普通にデビと呼んでもいいのじゃぞ」


そう言って、子供の純粋なお願いを僕にぶつけてくる。


「僕はこっちの呼び方の方が性に合ってるので。無駄話はこの辺で、長居してると帰ってきちゃうので。それじゃあ、お互い頑張りましょう」


そう言って、僕は部屋を出ようとしたその時、デビさんに引き止められる。


「ちょ、ちょっと待つのじゃ!何でお主だけ、そんな服を着ているのじゃ?」


そういえば、デビさん達と着てた服とは違う服に着替えたんでしたっけ。


「アズマさんに貰ったんです。デビさんの分は多分無いですね」

「ずるいのじゃ。妾も欲しいのじゃ」


そう言って、駄々をこね始める。

ここで渡してしまえば、デビさんの精神的成長が見られなくなってしまう。

仲間として自分で解決させた方が得策ですね。


「欲しいんでしたら、見回りの人を捕まえて服を剥ぎ取ればいいんですよ。それじゃあもう行きますよ」

「ちょ、待て―――――」


僕はデビさんを振り切って部屋を出た。


「ふぅ……これでデビさんも少しは自分でやるという事が出来ますね。それじゃあ上の階に行きますか」


周りを見渡したが人の気配がしなかった。

さっきの叫び声の方に全員向かった?


「なら、好都合ですね。さっさと2階に行きますか」


僕は早速2階へと足を進めた。



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