その九 答え合わせ
「ん……うぅ〜ん……ふわぁ〜………ここ、どこ?」
「うーん、むにゃむにゃ、もう食べられないのじゃー」
俺は横で寝ているデビを退かし、現在地を確認する為に荷台から顔をだす。
その時、コウバを操っていたリドルと視線が合う。
「あ、かつさん起きてたんですね。ちょうどよかったです、もう森を抜けます」
その瞬間森を抜けると、広大な街がそこには広がっていた。
ここに来るのも久しぶりだな。
「カルシナシティ………待ってろよ、風間翔太」
―――――――――――――――――――
俺達は一旦カルシナシティを周るためにコウバを近場に停めておく。
「コウバはここに置いておきましょう。用事が済んだらまたここに集合です。それでいいですね、かつさん」
「ああ、大丈夫だ。じゃ、また後で会おうな」
「はい」
そう言って俺達は個々の目的の為に別々に行動した。
ただ1人を除いて。
後ろを振り替えると何故かデビがこちらに付いてきていた。
「何で付いてくるんだ、デビ」
「え!駄目なのか!?」
なんでこいつこんな驚いてんだ。
「いや、駄目じゃないけど、俺これからカジノ店に行くんだぞ。お前はそんな所別に興味ないだろ?」
「何言ってんのじゃ。妾はカジノ店に行きたいから、こっちに来たのじゃ。別に、断じて、妾は、お主と居たいからという理由では……って置いていくでない!」
そして小うるさいデビを連れて俺達はカジノ店に向かった。
「『申し訳ありませんが、暫く臨時休業とさせてもらいます』だと?」
カジノ店には扉の前にそんな内容の張り紙が貼っていた。
どうやら臨時休業で店は閉まってしまっているようだ。
「やっておらんのか?」
「なんで、こんなちょうどいいタイミングで………ああ、もう!こうなったら直接行くしかねえ!」
「直接行くってどこにじゃ?」
「決まってんだろ!あいつの城にだよ!」
――――――――――――――――
「ここだな」
「ここじゃな」
カルシナシティで1番デカイ建物だ。
ここ以外考えられないだろう。
「いかにも大富豪が住みそうな城だな。金持ちアピールか?うざ」
「お主、あの男の事になると悪口がすごいのう」
「そりゃそうだろ。大っきらい!な奴の事を褒める人なんていないだろ。ていうかお前なんでここまでついてくるんだよ。カジノが目的だったんだろ。閉まってたんだから他の所に行ってこいよ」
「暇じゃからな。お主と居た方が楽しいのじゃ」
子供ってなんでこんなに懐きやすいのだろう。
「とりあえず中に入るか。これ、真正面から入ったら即効で追い出されるよな。何か侵入できる場所は………」
「かつ、かつ、これは何じゃ」
そう言ってデビが見つけた物は塀の壁に付いてある何やら見たことがあるものだった。
「これってもしかして、インターホンか?」
異世界に違和感ありまくりのインターホン。
一瞬疑ったがどっからはどう見てもインターホンだな。
「いんたーほん?それってなんじゃ?」
「家の主を呼び出す道具だよ。おちょくりやがって、場所を考えろよ」
日本にあるからって異世界でも作ったら雰囲気が台無しだろ。
せめてもうちょっとデザイン何とかなんないのか。
くそ、何かムカついてきた!
こうなったら思いっきり押してやる………
俺はインターホンを思いっきり押した。
その瞬間、いつものピンポ〜ンと言う音はならず代わりに足元が無くなった。
「は?」
「え?」
「「ぎゃあああぁぁぁ!!」」
あいつ絶対に許さない!!
俺はまっ逆さまに落ちていくなかそう強く心の中で思った。
「ぎゃああああ―――ぐふっ!」
俺はそのまま地面に激突する。
どうやら生きているようだ。
半獣の体の堅さに感謝しなければ。
「痛てて……ここは何処だ?」
そこは何にも無い真っ暗な地下室だった。
その瞬間、奥からスポットライトが順番に照らし出す。
そしてそこにやつが現れた。
「久しぶりだな、絶対かつ。相変わらずドジな奴だな。まさか上から登場するとわ」
そう言って嫌味を言いながら椅子に踏ん反り返って座る風間の姿があった。
「風間!お前よくも俺を騙しやがったな!あんなしょうもないもん作りやがって………今日という今日は絶対許さねえ!」
ぶん殴ってやる!
そう思って風間の元に俺は走り出す。
「よっと」
何かのボタンを押した瞬間俺の足元に少し膨らみが出来る。
「え?―――おわっ!?」
俺はそれに呆気なくつまづいてしまった。
「ははははは!はーはっはっは!やっぱりお前をいじめるのは楽しいな」
「く、くそ………」
落ち着け〜絶対かつ、やつのペースに乗せられるな。
俺はもう変わったんだ、冷静になれば大丈夫だ……よし!
「おい、風間。お前に聞きたい事が会って来た」
「ああ、そうだろうと思ってお前を地下に呼んだんだ。お前なら必ず押してくれると信じてたぞ。分かりやすいくらいに引っかかってくれて俺も作りがいがあったよ」
落ち着け〜落ち着くんだ俺。
「そんな事を話しに来たんじゃない。お前が前言ってた事についてだ。お前俺に嘘を教えただろ」
「なんの事だ?」
「とぼけるな!法律が存在しないとか裏で誰かが牛耳ってるとか死ぬ思いをすれば例の人に会えるとか、それに!本当に日本とこの世界の時間軸は違うのか?」
「証拠がないだろ?せっかく教えてやったのに嘘つき呼ばわりされるのは心外だな」
そう言って俺の言葉を笑って誤魔化す。
「証明してやってもいいぞ。法律に関してはお前が1番理解してると思うけどな」
「ふっ……お前は本当に感だけは鋭いよな。日頃のいじめのおかげで鍛えられたのかもな」
「そんな事はどうでもいい。俺の質問に答えろ」
「おいおい、ずいぶん偉そうだな。いくら幼馴染だって怒る時は怒るぞ」
「話を誤魔化すな!」
俺は風間の胸ぐらを掴む。
だが風間の顔色は変わらず相変わらず人を馬鹿にする様な顔をする。
「忘れんなよ、かつ。今お前の目の前にいるのは、この街の王だぞ。俺の1言で、お前の人生は大きく変わる」
「っ!?」
こ、こいつー!
だが風間の言う通りだ、今のこいつには力がある。
俺は風間から手を引いた。
「冗談だよ。そんな怖い顔すんな。俺はお前をそんなつまらない理由で殺したりしない。お前をいじめるのは面白いからな」
「お前みたいな奴が1番権力を持っちゃいけねえよ」
「持っちまったんだからしょうがないだろ。それに、この座は自分の力で勝ち取ったもんだぞ。前王に次の後継者として選ばれる為に、印象を良くするために媚びたり、無理難題な指令を受けたり、上の奴らからの執拗や妬むを買ったりと大変だったんだぞ。だからこそ王としての俺を馬鹿にするのはやめてくれ」
こいつ自身頑張ったってことか?
知らねえよそんなもん、こっちはお前のせいでどれだけの苦しみを………いや、今考える事じゃなかったな。
「話を戻すぞ。お前はいつも、俺に嘘を付いたりしていたが、その中に真実も入ってる。だからこそ質が悪いが、こっからは真実を言ってくれ」
「いいぜ。俺もそろそろこの島のことについて、知りたい所だったからな」
よし、これで情報を得ることができるな。
「まずお前が俺に教えた事、本当の事だけを改めて教えてくれ」
「まあ、教えてくれって言っても法律くらいしか嘘は言ってない。日本とここでは時差があるのは本当だし、裏で牛耳ってる奴も本当っていうか、俺の予想だ。後、この島にはデカイ扉もあるし、柱のせいで外からも見えなくなってる。因みに外に出ようとすると落雷が降り注ぎ外に出ようとする者に天罰を与えると言う言い伝えがある。それによってこの島の奴らは外に出ようとしない」
「落雷?それってどういうことだ?まさか神様がやってるとか思ってんのか?」
「ああ、大体の人はそう思ってるな」
まじかよ、やっぱり日本みたいにあり得ないことが起きた時空想上の物がやったと思うんだな。
「まっそれの原因も分かってる。答えは単純明解柱がやってる」
「柱?その例の外からこの島を認識できなくなるやつか」
「そうだ。島に誰かが出ると柱が感知し撃退システムが作動する。それが落雷だ」
「そういうことか。てか、その情報どっから手に入れてんだ?」
「おいおい、情報源を聞くのは野暮じゃねえか。それは教えられないな」
う〜ん、これだけの情報、普通なら入手するのは難しいはず。
もしかして協力者がいるのか?
「そういえばその柱って誰が作ったんだ?昔の人が作ったのか?」
「いや、少なくとも今の技術ではあの柱を作るのは不可能だろう。まっ例外も居るけどな」
「例外?まさかそいつが作ったのか」
「いや、それはありえない」
風間はそう断言する。
「何で、そんな自信満々に言えんだよ」
「浜崎陸矢を知ってるか?」
「ああ、黒い建物の中にいた日本人だろ」
「お前も会ったか。あいつは天才だ。日本の物を作って欲しかったらあいつに言えば何でも作ってくれるぞ。浜崎陸矢ならあの柱を作れるかも知れないがあいつは今から8年前にここに来た。あの柱はそれよりも前に作られている。とても最近作られたものには見えないしな」
「え?ちょ、ちょっと待て。8年前?13年前の間違いだろ」
すると、風間が驚いた様子でこちらを見る。
「驚いたな。まさかそんな事も知らなかったのか」
「な、なんの事だ?」
なんか馬鹿にされてる気がする。
「ふっもしほんとに浜崎が13年前に異世界に来てるならあの戦争の跡地を見てるはずだろ」
「血滅戦争が終結して、壊された建物などを修繕してた期間だったか」
「ああ、もし本当にあいつがその時期に居たならもっとこの異世界は繁栄してたと思わないか」
「確かに……浜崎俺に嘘ついてたのか。なんで嘘なんか付いたんだ」
「俺も初めて会った時、言われた。まっ俺はすぐに嘘だと分かったが、あいつにとっては一種のテストかもな」
「テスト?何の?」
「さあ?馬鹿か馬鹿じゃないかじゃねえか?」
「なっ!?」
こいつ……ど直球で言いやがった。
こいつの言葉にいちいち怒ってたらきりが無い。
今は、情報が先だ。
「そういえば浜崎はこの世界に事について興味なさそうだったんだけど、お前なんか知ってるのか?」
「知らねえな。元々あいつは日本でも機械イジリが好きだったからな。実は博士号も余裕で取れたらしいぜ」
「なんで取らなかったんだ?」
「『そんなもん取る暇あったら俺は機械を弄っていた方が断然良い』だとよ。天才の考えてる事はよく分からないな」
そこに関しては同感だな。
「それと後、半獣を奴隷にしてたんだけど、それは何でだ」
「あーそういえば、そんな事もやってたな。俺たち元々人間だろ?この島は人間に当たりが強いからな、浜崎にとっては半獣は嫌悪感を抱く対象なんだろ。だから腹いせに奴隷をとして働かせてんだ。あと、資金稼ぎの為にだとよ」
「そうなのか………」
そうだよな、俺は元々人間なんだよな。
でも、俺は半獣派でも、人間派でも無く、どっちも仲良くなって欲しいんだけどな。
「で、質問は終わりか?」
「いや、後もう何個か本当か知りたい。俺がもうすでに日本人に会っているってのは浜崎陸矢の事か?」
「違ぇよ。俺と会った時点の話だ。因みにこれは本当だぞ」
「それじゃあ最後に俺が死ぬ思いをすればあの人に会えるのか」
「それは言えないな。自分で考えろ。これで質問は終わりだな」
「えっ?ちょ、まっ!」
「終わりだ」
風間の威圧に俺は口を出せなくなった。
何だこいつ何で急にやめさせるんだ。
チクショウ1番聞きたかった会い方が分からなかった。
「それじゃあ俺からの質問だ。お前、何か体に異変が起きてないか?」
「え?どう言う意味だ?」
「他の人とは違う所を言えってことだよ」
まさか、こいつ知ってるのか?
俺が魔力レベルが10ある事。
もしかして、日本から来た人はそういう現象になるのか?
言ってみるか?
「実は………俺、魔力レベル10何だよな」
「………は?さっきの衝撃で頭馬鹿になったか。元々馬鹿だとは思ったが悪化したら一大事だぞ。頭に回復のポーション塗ってやろうか?」
カッチーン!
「うせぇー!このクソド変態サイコパス野郎が!お前何かに喋ろうとした俺が馬鹿だった!もういい!早く俺をここから帰らせろ!」
「おいおい、何切れてんだよ。短期の男は嫌われるぞ」
「うるせえー!お前の声なんか聞きたくもない!やっぱり俺はお前の事が大っ嫌いだ!!行くぞ、デビ!……デビ?」
あれ?そういえば、あいつ何処に行った?
「お前の仲間なら今客間でたらふく飯を食ってるぞ」
「いつの間に……あのバカ。何処から行けんだ。案内しろ」
「まあ待てよ。俺は今色々あって、忙しいんだよ。少しはお前と話して癒やされたいんだよ。だから大人しく俺に馬鹿にされて泣け」
「そんな偉そうな頼み事聞いたことねえよ。ていうかお前忙しいとか言いながら、何でカジノ店閉めてんだよ」
「しょうがないだろ。ここが急遽島王選選ばれちまったんだから。こっちは毎日が地獄だ」
「島王選?何だそのバトルロワイヤルみたいな名前は」
すると、風間はまたしてもこいつまじかという顔をしてくる。
やばい、すごいムカつく。
「おい、殴っていいか?殴っていいんだよな?」
「いやいやいや、お前……異世界来て何年目だ?」
「大体1年目かな?」
「1年間過ごしてるくせに島王選を知らないとわ。お前よほどぽけらぁって過ごしてたんだな。こうやってよぽけらぁって」
そういって俺の真似してると言ってアホヅラを俺に見せてくる。
その顔面に思いっきり右ストレートをぶつける。
「おらっ!」
「おっとあぶねえ。だてにキャリア積んでないんだぜ」
くそ、避けられた。
「仕方ないから教えてやるよ。島王選はこの島の王を決める、4年に1度の大会みたいなもんだ。開催場所はそれぞれの街の王、6人が集まって会議をして決められる。そして元々決まってた場所が急遽変更になって俺の街でやる事になった。だからそれの準備で今忙しいんだよ。分かったか、頭空っぽ」
「お前は本当に小学生と一緒だ!」
「それに怒ってるお前も小学生だ。よし、あの水式エレベーターで上に戻れる。お前の仲間も上に居るから連れて帰れ」
「そうかよ。じゃあな、もう会う事は無いと思うけどな」
そう言って俺は急いで水式エレベーターに乗る。
「また会うと思うぜ!俺とお前は離れられない。そうだろ」
「気持ち悪!じゃあな変態サイコパス野郎」
そこにはレバーがあり下には数字が書かれていた。
「レバーを5に合わせろ!」
俺は言われた通りレバーを5に合わせる。
すると、上空の籠の中に魔法陣から水が生成され溜まっていく。
そして徐々に上に向かって行った。
「ふぅ……やっぱり話すんじゃなかったな。あいつと話すといつも気分が悪くなる。でも、情報はゲット出来た。後はミノルを取り戻すだけだな」
すると、急に水式エレベーターが止まった。
「おっついたのかな」
俺は扉を開けた。
「え………」
「あれ?」
そこは女子更衣室だった。




