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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十章 奪われた花嫁
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その六 Mの称号

「おいおい!コウバが何処にもいないぞ!?」


周りを見渡してもコウバの姿が一切見当たらない。

完全に消えちまった。


「それどころかデビさんも居ませんね」


たしかに、リドルの言う通りデビもいなくなってるな。

その様子を見て村長が不安そうに呟く。


「もしかしたらデビさんがコウバに乗って行ってしまったのでは?」

「いや、あいつは時々面倒くさいことをするが、自分勝手な事はもうしないはずだ。成長してるし、多分違うだろ」

―――――――――――――――――――――――


「ふっふっふだいぶコウバを乗るのが上手くなってきたのう。これなら妾が皆を乗せてあっという間にキンメキラタウンに行けるな」


デビは相変わらずだった。

―――――――――――――――――――――――

「よし、とりあえず早く追いかけよう。まだそう遠くには行ってないはずだ。すぐ追いかければ追いつくだろう」

「そうですね。それじゃあ早く行きましょう」

「ああ、ちょっとお待ちください。いいものを持ってきます」


そう言って村長は自分の家?に一旦帰っていった。

良いもの、良いものか……


「良い物ってなんだと思う?」

「例の毒でしょうか」

「ああ、ドラゴンを殺す毒か。確かにそれがあったら便利だな」

「お待たせしました!いやぁ、結構古い物で取り出すのに時間が掛かってしまいましたよ。では、どうぞ」


そう言って、少し長くて太い筒状の棒を渡してきた。

何か全くの予想外の物を持ってきたな。


「何だこれ?」

「それは自分の居場所を他の人に知らせる事ができる。ハナビというものです」

「ハナビ?これが、ハナビ?」


俺の知ってる花火では火薬を使って空に色鮮やかな花を咲かせる物だけど、これは本格的な花火というより家庭用の花火か?

ていうかハナビというより。


「これはどうやって使うんですか?」

「そこに糸が出てるでしょう。そこに火をつけてもらえば後は火が糸に沿っていき、最後に上空に赤い閃光が出るのでそれを目印に私達は向かいます」

「なるほど、分かりました。それじゃあこれはかつさんに持っておいてもらいますね」


リドルはハナビを受けとると平然と俺の手にこのハナビを乗せる。


「おい、ちょっと待て何で俺が持たなきゃいけないんだ」

「だってかつさんはこのパーティーのリーダー何ですから、重要な物はかつさんが持っておくのは普通ですよ」


まるで何の企みもなさそうな爽やかな笑顔で俺に押し付ける。

いや、そんなことよりも俺はこのハナビの形状に疑問を持っているのだが。


「はあ、分かったよ。持っておけばいいんだろ」


やっぱり俺の気のせいだよな。

俺は考えないようにしてハナビを受けとる。


「よし、それじゃあ行ってくるよ」

「気をつけてくださいね〜!それを付けてくださればすぐに駆け付けますから!!」


そう言って村中の人々が俺達を見送ってくれた。


「さて、先ずはどこから探すか」

「そうですね。あっちでしょうか」


リドルは迷わずにその道に進む。


「おい、ちょっと待てよ。何でそっちだって思うんだよ」

「それは地面にコウバの足跡がありますから」


リドルが進もうとしている先にはたしかにコウバの足跡が続いていた。


「本当だな。分かりやすいくらいの足跡だな」


この広い森を探すのは苦労すると思っていたが、意外と簡単かもな。


「よし、それじゃあ走って行こうぜ。リドル、俺について来れるか?」

「かつさん、すみませんが僕だって脚力には自信がありますよ。置いてかれないようにしてくださいね」

「おっ言うじゃねえか。よし、それじゃあ競争だ。位置について、よ〜い、ドン!」


――――――――――――――――――――

「きょっほ〜い!物凄く早いのじゃ!叩けば叩く程早くなるのじゃ!これでキンメキラタウンまでひとっ飛びじゃな!」

「ヒヒィ〜ン!!」

「よし、もうそろそろ帰ろうかのう。よし、止まるのじゃ!」


だがコウバはデビの言葉を無視して走り続ける。


「何しておるのじゃ!早く止まるのじゃ!」

「ヒヒィ〜ン!!ヒヒィィ〜ン!!」


デビは必死にコウバのケツを叩くがそのたびにスピードが早くなる。

止まることなくコウバはさらに興奮していく。


「ぎゃあああぁぁ!止まらないのじゃぁぁ!!」


デビの悲痛な叫び声はも利重に響き渡っていく。


一方その頃かつ達は………


「おりゃ!1番だ!」


俺はしばらくコウバの足跡を見ながら森を全力疾走していた。


「どうだリドル!こっちは地獄の修業を乗り越えてきたんだよ!負けるわけにはいか……あれ?あいつどこ行った?」


後ろを振り替えるもそこにはリドルの姿がなかった。

見える場所には何処にもいないな。


「先に進み過ぎたか?でも、コウバの足跡を辿ってきてるし直に会えるだろ」


すると奥から何やら叫び声が聞こえる。


「何だ?誰かが襲われてるのか?」


すると声が徐々に大きくなっていく。


「もしかしてこっちに来てるのか?」


その瞬間俺の嫌な予感が的中した。


「助けてなのじゃあぁぁぁぁ!」

「で、デビ!?とコウバ!」


まずい、これぶつかる!?

俺はすぐさま全速力でコウバとデビから逃げる。


「ちょ!何故逃げるのじゃ!?」

「逃げるに決まってんだろ!轢き殺すきか!」

「逃げずに止めてほしいのじゃ!このままじゃ、妾一生をこのコウバで過ごすことになるのじゃ!」

「知らねえよ!お前が勝手にやったんだろ!」

「違うのじゃ!妾はミノルの為に!」

「ミノルって―――しまっ!」


俺は後ろの方に注意を向けてしまい足元がおろそかになって、石につまずいてしまった。


「え?」

「やばっ」


俺は転けるのはまずいと思い足に力を入れて何とかジャンプする。

だが、バランスも悪く上手く力が入らなかったせいで、あまり高く飛べずデビと目が合う。

そして、そのまま正面衝突した。


「ヒヒィ〜ン!」


コウバが走り去っていく中俺達は頭を抑えてうずくまっていた。

デビと正面衝突した、頭割れたかと思った。


「…………っ!痛った………」

「頭がグワングワンするのじゃ。気持ち悪いのじゃ」

「やばいな、血が出でる。でも、これくらいなら回復のポーションで何とかなるな」


俺は頭の痛みを我慢しながら回復のポーションを飲んだ。

うん、痛みがいくぶんかマシになったな。


「それにしても半獣が頑丈なのは本当みたいだな。普通だったら頭蓋骨粉砕だぞ。血が出たくらいで良かったよ」

「妾にもくれ〜」


倒れたままデビは腕だけをこちらに伸ばす。


「お前は怪我してないんだからいいだろ。……一応聞くが、何でこんなことしたんだ」


するとデビがゆっくりと起き上がる。

そして座ったまま痛む頭を抑える。

するとデビはばつが悪そうに口許をゴニョゴニョとしながら喋り始める。


「妾がコウバを上手く操れたら早くキンメキラタウンに付けると思って………」

「それで1人で練習してたと」


デビがゆっくりと頷く。


「はあ……お前まだ何にも分かってないんだな」

「な、何がじゃ?」

「お前は何だ」

「わ、妾は妾じゃ」

「そうだ、お前はお前だ。で、俺達はお前の何だ?」

「友達じゃ」

「まあ、そうとも言うが仲間だろ」


すると今度は大きく頷く。


「それが一体何なのじゃ」

「だから、仲間だったら1人で行動すんな。助けたいって気持ちがあるのは別にいい事だが1人で先走るな。せめてリーダーの俺に言え。もうお前は1人じゃないんだから。分かったか?」

「………かつ〜!!」


するとデビが泣きながら抱きついて来る。

こいつ、頭痛いんじゃなかったのかよ。


「おいおい、お前どんだけ泣くんだよ。ほら、離れろって。おいお前今鼻水俺の服で拭いただろ。ほんとに離れろ!」

「あっかつさん!デビさん、見つかったんですね」


リドルが追い付いてきたと思い振り替えると、その手にはコウバの手綱を握りしめていた。

どうやら俺達がここで遊んでいる間にやることやってくれていたようだ。


「ああ、お前もコウバ捕まえといてくれたんだな。よし、これで目的は達成されたな」

「そうじゃのう。それじゃあ帰るとするか」

「誰のせいでこうなったと思ってんだ。とりあえず帰って支度してさっさと出発しよう」


俺が早く帰ろうとするとリドルが俺の事を呼び止める。


「かつさん、どうせならあれ使いましょう」

「え?あ、あれか……いや、別にあの人達を呼ばなくても帰れるからいいだろ」

「あれってなんなのじゃ?」


まずい、デビが興味を示しだした。

話題を変えなくては。


「いや、それは―――」

「さっきあの村の村長さんから火をつけると空中に閃光が出る道具を貰ったんですよ」

「何!?そんな面白そうなもん貰ったのか?」


あっ遅かったか。

デビがこちらをキラキラ目で見てくる。

これは出さないと後でめんどくさいことになるやつだな。

俺は観念してポケットから例の物を取り出す。


「これだろ?」

「これがその例の……」

「ハナビです」

「ハナビというのか!かつ、早速やってくれ!」

「いや、これハナビというか。ダイ――――」

「かつさん、お願いします!」


何か、空気が読めないやつみたいになってるな。

仕方ない俺の思い過ごしなだけかも知れないし、大人しく点火するか。


「いくぞ!ファイヤー!」


点火した瞬間ジジジという音を立てながらどんどん糸が短くなってくる。

これはハナビだよな。

もうこれあれにしか見えないんだけど。


「デビ、ほらお前やりたがってただろ。持たせてやるよ」

「ほんとか!……ちょっと待つのじゃ。かつが素直に妾に物をくれるなんて怪しいのじゃ」

「おいおい、俺を何だと思ってんだよ」


チッ!こういう時だけ感が鋭いなこいつ。


「妾はもう十分じゃから、リドルが持ってくれ」


そう言って、デビは危険な物を渡すかの様にさっとリドルに渡す。


「僕もそこまでやりたいと思いませんし、ここはリーダーのかつさんが持っておいてください」


そう言ってすぐ俺に渡してくる。


「いやいや、リーダーだからってやる理由にはならないだろ」


俺も同じ様にデビに渡す。


「妾はこの中で1番背が小さいからお主の方が適任じゃろ」

「そうなったらこの中で大きくもない小さくもないかつさんが適任です」

「それ、なんか中途半端だな」

「中途半端だなで渡すんじゃないのじゃ」

「そう言いながら僕に渡さないでください」


そう言ってお互いなすりつけあっている間にもうあともう少しで爆発しそうなところまで来てしまった。


「おい!いい加減にしろ!渡すって言ってんだから素直に受け取れ!」

「だからいらないと言ってるだろ!」

「だったら3人で持ちますか?」

「「持たない!」」


お互いがあーだこーだしている内にハナビの導火線はもう既になくなりかけていた。


「ああ、もうこうするしかねえ!」


俺は咄嗟にハナビを空中に放り投げる。

その瞬間糸が燃やし切った時、空中で大爆発した。


「…………これ、ダイナマイトじゃねえか!」

「なるほど、これが閃光なのじゃな」

「いやいや、どう考えても爆発してんだろ!閃光ってレベルじゃないだろ!」

「かつさん、あれ」

「なんだよ。お前もそう――――」


リドルが指差す方向には沢山のドラゴンがこちらを見ていた。


「うわぁぁぁぁ!!ドラゴンじゃねえか!」


俺はそれを見た瞬間全力で走る。


「ちょ、かつ!どこ行くのじゃ!」

「どこ行くって逃げんだよ!あんな数のドラゴン、相手にできるわけ無いだろ」

「いや、かつそう言う意味じゃなくて、目の前にもドラゴンが居るって意味じゃ」


俺はその場で立ち止まる。

すると目の前に生暖かい風が顔に触れる。

縦に長い目がこちらを凝視していた。


「こ、こんにちは〜」

「グワァァァァァ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」


やばい、これ完全にやばい!

さっきの爆発で来たのか!?

どっちにしろ、この状況はまずい!


「かつさん、やるしかないですよ」

「そうじゃのう。安心しろ、妾が一掃してやるのじゃ!」

「しょうがねえ。やるしかないか!」


俺は覚悟を決め魔法陣を展開する。

その瞬間、どこからともなくドラゴンに矢が突き刺さる。


「グギャァァァァ!!」

「なんだ?この矢って」

「皆のもの!打てー!!」

「「「「「おおーー!!!!!」」」」」


すると村長と弓矢を持った村人が一斉に矢を放つ。

ドラゴンにその矢が当たるたびに苦しそうに悶える。


「大丈夫でしたか!いやはやご無事で何よりです」

「後は俺達に任せてくれ英雄さん!」

「英雄さん達は先に村に戻っててください!」


そう言って村の人達はドラゴンに立ち向かって行く。


「すごいなあの霧の毒って本当に効くんだな」

「さあさあ皆さん先に村に戻っててください。後は私達がやっておきますので」

「本当にいいのか?」

「はい、なんてったって私達はドラゴンのエキスパートですから、このくらいのドラゴンなど一瞬ですよ。ほら、早く」


そう言って俺達をコウバに乗せる。


「じゃあお言葉に甘えて、頼む」

「分かりました」


俺達は先に村に戻ることになった。


「おら!死ねドラゴン!」

「私達に勝てると思わないでよね!」

「くたばりやがれ!!」


何かすごい、暴言が聞こえてくるんだけど。


「ドラゴンにだけ強気なんだよなこいつら」

「人には、得意な事不得意な事がありますからね。デビさんお尻叩いてください」

「いやじゃ。こやつお尻を叩くたびにスピードが上がるか息をハァハァと吐いてなんか気色悪いのじゃ」

「おいおい、ただでさえ興奮させて走らせるド変態コウバがそんなことしたらいよいよだな」

「そらそうなりますよ」


リドルがまるで全てを分かってるような口調で言う。

ていうか俺も何となく分かったんだけど。


「え?それってつまり……」

「はい、このコウバは叩かれて興奮を覚えるコウバですから」


それ、ドMじゃねえか。



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