プロローグ 新しい旅立ち
「よし、これで準備万端だな」
俺は今まで使ってた部屋の整理をした。
ここを出るんだから最低限のマナーとして最初よりも綺麗にしとかないとな。
「それにしても今日でこの部屋ともお別れか。1年間しか居なかったが、だいぶ濃い1年だったな」
俺はこの部屋での思い出に浸りながらローブを着て、部屋を後にする。
居間には誰も居なかった。
「ダリ師匠もサクラも居ないか、まあそうだよな」
この時間帯はさすがに二人も寝ているだろう
「色々お礼とかちゃんと言いたかったんだけど……それはまた今度だな」
本当に色んな事があった。
感謝してもし切れないな。
俺は道場の扉を開ける。
「う〜ん、すぅ……はぁ………」
俺は背伸びをして、大きく深呼吸をする。
新たな門出にはぴったりの星空だ。
「よし!行くか……」
「ちょっと待て!」
その時後ろから声が聞こえた。
振り返ると扉の所にダリ師匠が居た。
「ダリ師匠………」
「師匠に黙って出ていくのは弟子として、少し礼儀が足らんじゃないのか」
「いやぁ〜寝てたんで起こすのは可愛そうだなと思って………」
「深夜2時に出て行こうとする弟子が言うセリフか?」
「ごめんなさい。また師匠達と会うと名残惜しくなっちゃうと思って」
すると師匠は優しく笑う。
「ふっ強くなったなかつ」
「………!?本当に……ありがとうございました!この恩は一生忘れません!」
思わず溢れ出そうになる涙を必死にこらえて頭を下げる。
「何言っておる。わしはただ師匠としてお主を強くさせた、それだけじゃ」
「こんな俺を見捨てずに強くして下さってありがとうございました。師匠との修業は辛くて苦しくて死ぬ覚悟を何度もしたけど、それでも……楽しかったです!!」
「わしの修業が楽しかったじゃと?そうか、ならば今お主に何も教えることはない!」
「はい!」
俺はダリ師匠に向かって改めてお辞儀をする。
「本当にありがとうございました!!」
「………行って来い、仲間が待っておるんじゃろ」
「はい!それじゃあ行ってきます」
俺はダリ師匠に背を向け走り出す。
「いいのか?会わなくて」
「別に良いわよ。私はただ泣き虫なあいつがむかつくから修業を付けただけだし」
「あっ!そうだ言わなきゃいけない事があった」
俺は他に言うべき事を思い出し、またダリ師匠の方に向く。
「ダリ師匠!ちょっと伝えて欲しいことがあるんだ!」
「ん?何じゃ!」
「サクラに、お前のおかげで強くなれた、色々助けてくれてありがとう!また会おうなって伝えてくれ!」
「っ!?」
するとダリ熟練所の扉が勢いよく開く。
そこには口許を震わせるサクラの姿があった。
「うおっ!?サクラ!お前居たのかよ」
「うるさいわね!私は別にあんたの為にやった訳じゃないんだからね!」
「ああ、知ってる」
「……私が修業を付けたんだから負けんじゃないわよ!」
そう言って頬に涙が伝う。
「……っ分かってるよ!!」
俺は目に滲む涙を拭き、大きな声で俺は誓った。
「俺はもう誰にも負けない!!2人が教えてくれたんだ、負けるなんて事あるわけ無いだろ!」
「……ふふ、当たり前でしょ!そうなの!」
そう言って俺達は笑い合った。
「じゃあ、また!」
「死ぬんじゃないわよ!!」
「当たり前だ!」
俺は背を向け走る。
待たせた仲間を迎えに行く為。
「……何おじいちゃん、何で泣いてんのよ。弟子が1人居なくなっただけでしょ」
「ふっ久しく忘れていた、弟子が旅立つ姿を。本当に立派になったな」




