その十五 クラガとポーション
「やっぱり、ここに居たのね。クラガ……」
私はテレポートで以前クラガ、ラルダと戦った森に来ていた。
「よく来たな。ミノル」
私が思ってた通り、クラガはその森にいた。
「以前あんた達のアジトがここって知ったからね」
「昔はな。今はもう拠点は別だ」
「じゃあ何で、ここに居るのよ」
「貴様がここに来ると思ってな。勘だ」
そう言って不気味に笑う。
「嘘でしょ。どうせ誰かに私達の後を付けてたんでしょ」
「……まっ流石に分かるか。それより体が少し赤いな。火傷でもしたのか?」
「話をそらさないで!私はそんな事を話にここに来たわけじゃない!」
私はクラガを睨みつける。
「……本当に貴様の目は獣の目だな。変わったな」
そう言って懐に手を入れると何かを取り出す。
「貴様が欲しいのはこれだろ?」
そう言って私にポーションを見せつける。
「そうよ。早く渡して!」
「恐喝か?俺がただで渡すと思うか?それは貴様が1番知っていると思うが?」
「くっ!お得意の交換条件ってやつ?元はと言えばあんたがマリクダに何かしなければ、ラミア様が呪いに苦しめられることは無かった!」
「マリクダは失敗作だ。相手を見境なく呪いにかける。あれじゃあ戦力にならない」
こいつ、自分のやった事になんにも責任を感じてないの!?
そうだ、こいつはそういう奴だった。
「何でマリクダをそのまま放置してたの?!」
「気付いた時には居なかった。失敗作だし、追う必要も無いと判断しただけだ」
「そのせいで犠牲者が沢山出てるのよ」
「半獣だろ?死んで当然だ」
っ!?
こいつ…………!
私は拳を力強く握る。
「そうやって、いつもいつも……何で命を軽く見るの!」
「別に命を軽く見てる訳じゃない。ただ半獣は死んで当然なだけだ」
顔色を一切変えずに、平気で命を奪うこいつらにまともな話なんて出来るわけ無かった。
「あんたを今更改心させようなんて思ってないわ。でも、そのポーションは渡してもらう」
「言っただろ?交換条件だ」
「あんたに渡す物なんて何も無いわよ。それでも渡さないって言うなら力ずくで奪う!」
私はクラガに杖を付き出す。
「何で、お前がそこまでする?依頼には無かったろ?報酬だけ貰えばいいだろ」
「あんたらには分からないだろうけど、目の前で助けられる命があったら、助けるのが普通でしょ!」
「……普通か、貴様がそんなことを言うとわな」
するとクラガは持っていたポーションをこちらに投げ捨てる。
「え!?ちょっ!」
私はそれを急いで受け取る。
本物だ、偽物じゃない。
「どういう風の吹き回し?あんたが素直に渡すなんて」
「特に意味はない。あのガキの妹が死んだら、報復に来るかもしれないからな。今、あいつの相手をしてる暇はない。一応ガキだがこの島の王の息子だ。単純な戦闘力で言えばこの島最強だろ。相手にするにはまだ早いと判断しただけだ」
「あっそ。安心して、黒の魔法使いは私がぶっ潰すから」
「やれるもんなら、やってみろ」
そう言って小馬鹿にする様な笑みを浮かべ、クラガは消えていった。
「……テレポート!!」
――――――――――――――――
「行く!俺は行くぞ!お前ら邪魔をするな!!」
「ガルア様!駄目です!勝手な行動は困ります!」
「うるせぇ、ハイト離せ!俺はあいつらをぶっ殺す!!黒の魔法使いー!」
「おいミカ!お前も手伝え!」
「いやぁー何か怖そうなんでやめときます」
「怖そうなんでじゃねぇよ!おわっ!?ガルア様!落ち着いて下さい!」
「にしてもミノルさん、どこに行ってしまったんでしょうか」
「ん?ミノル!帰ってきたぞ」
私が帰ってくるとそこはかなり荒れていた。
「えっと……とりあえずガルア様、このポーションを飲ませてください」
「ん?何だこれ?」
「いいから、早く飲ませてあげてください。本当に死んでしまいますよ」
「分かった」
ガルア様はすぐに蓋を開けて、ラミア様の口の中にポーションを流し込む。
すると早速効果が現れ始めて段々、体に刻まれた文字が消えてきた。
「……ごふっ!はあ……はあ…あれ?私……」
「ラミア!!」
ラミア様が目を覚ますと同時にガルア様が抱きつく。
「ちょっ!お兄ちゃん、苦しい……」
「ああ、すまん。でも、本当に治って良かった」
「でも何で?薬は効かなかったんじゃないの?」
「ミノルが持ってきてくれたんだよ。さすがかつの仲間だな!」
「ミノル……さんが?ありがとうございます」
そう言って、丁寧にお辞儀をする。
「いえいえ、そんなこと無いですよ。頭を上げてください」
「俺達からも礼を言わせてくれ。俺の妹を助けてくれてありがとう」
続けてガルア様とハイトとミカちゃんも頭を下げる。
「そ、そんな私ただやるべきことをしたまでです。だから頭を上げてください」
「うむ、苦しゅうない。おもてをあげい!」
その瞬間リドルがデビの頭を引っ叩く。
「ありがとう、リドル」
「いえいえ、お仕置きは僕に任せてください」
「よし!今日はお祝いだ!お前らも飲んでけ!」
「え?いいんですか?」
「やったぁー!豪勢なごちそうが食べれるのじゃー!」
「おい、お前ら料理を準備して来い!」
「分かりました、ガルア様」
「了解っす!」
こうして私達はガルア様の城で長い長い1日を過ごした。
―――――――――――――――
「はあ………ただいまぁ!」
「久しぶりの我が家じゃ!」
「やっぱり我が家が1番ですね」
私達はガルア様の城で1日を泊まらせてもらい、報酬を貰って家まで送ってもらった。
「それにしても料理すごく美味しかったわね」
「確かにそうじゃのう。でも、妾はやっぱり家の料理が1番かのう」
「まあそうね。確かにそうかも」
「そう言って頂けると作りがいがありますね。それじゃあせっかくですし軽く作りましょうか」
そう言って早速リドルはキッチンに向かう。
「妾、肉が食べたいのじゃー!」
「私はからあげでいいわよ」
「分かりました。それじゃあ待っててください」
そう言ってキッチンからジュ〜っと美味しそうな音が聞こえる。
私は懐からじゃらじゃらとなる袋を取り出す。
「それにしてもかなり報酬を貰えたわね。これでしばらくは大丈夫ね」
「それに何か別の依頼も貰ったしのう」
「それがかつが帰ってきてからでしょ。まだ貰ったとは言えないわ」
「そうじゃのう。早く帰って来ないかのう」
「そうね。私もそう思うわ」
「皆さん出来ましたよ!」
そう言って、机の上に私達がオーダーした食べ物が置かれる。
「待ってたのじゃ!」
「それじゃあ一段落ついた記念を祝してカンパ―――――」
ドンドン!
「ん?誰でしょう。こんな時間に」
「あっ私出るわ」
何気なく椅子から立ち上がり扉へと向かう。
そしてゆっくりと扉を開けた。
「どちら様―――――」
「ひさしぶりだね。ミノル」
「あ、あんたわ……」
「一緒に来てもらうよ」
この出来事をきっかけにパーティーが崩壊する事になるとはかつ達はまだ知らない。




