エピローグ 日本は何処?
かつが修業を開始した日の出来事
「はあ……」
私は目の前の嘘発見器の記録を見てため息をつく。
仕事が終わりこうしてこの紙を見るのが私の日課になっていた。
そしてそれを見るたびため息が出てしまう。
「ルル!これから飯食べに行かないか!?」
「っ!?え、ええ!そうね、お腹も減ったし食べに行こっか」
私はウルフの声を聞くなり紙を後ろに隠す。
「ルル、何見てたんだ?」
「へぇっ!?な、何にも見てないわよ!」
「嘘つくなよ。背中に今何か隠してただろ?何だ?もしかして、また変な物買ったのか?見せろー!」
「ちょっ!ウルフ!来ないで―――――――きゃあ!」
私はウルフの思わぬ突撃により、バランスを崩し椅子から転げ落ちる。
ウルフの胸が重たい………
「う、ううん……ちょっとウルフ重いんだけど………」
「あ、悪い悪い。ん?この紙って…………」
「あっ!」
ウルフは私が隠していた紙を手に取る。
「これってかつの記録か?何でこんなもん持ってんだよ」
「そ、それは……」
私が言いにくそうにしているのを気にしてそれ以上追及せず、読み始める。
「こ、これって!」
ウルフは驚いた表情でこちらを見る。
私が初めて読んだ時と同じ反応だ。
「私も最初見た時は驚いたわ。ウルフは知ってる?日本の事」
「いや、私はそんな場所聞いたこともないな」
「そうだよね、やっぱり知らないわよね」
私だけじゃなかったやっぱりこの日本って所はこの島のことじゃない。
「なあこれって意外と大問題じゃねえか?」
「大問題どころじゃないわよ。下手したら他の島から来た不法侵入者かもしれない。ねぇ、ウルフどうしよう!これどうしよう!」
私はことの重大さに改めて気づいてしまいパニクってしまう。
「落ち着けルル!とにかくこの事は私とルルだけの秘密だ!」
「そ、そうよね!秘密よね。だったらこんな物すぐに燃やして―――――」
コンコン。
「っ!?も、もしかしてバレちゃった!そんな、私達逮捕されちゃう!?」
「落ち着けルル!お前はここで待ってろ…」
震えている私を置いて、ウルフは扉の所に向かう。
そしてゆっくりと顔が確認出来るくらいの隙間分開ける。
「誰だ?」
「ガルア様の執事をしておりますシニアです。例の件について少しお話をと思い伺いました」
「ああ、あの件か。分かった」
するとウルフは警戒を解いたのか扉を開け人を招き入れる。
「へっ?あ、あなたは……」
「どうもお嬢さん。ガルア様の執事をしておりますシニアです」
「シニアさんですか……どうも」
警察の人じゃなさそうね。
「て、ガルア様の!?し、失礼しました!今お茶を――――」
「構いません。少し、話をするだけなので」
そう言ってシニアさんはゆっくりと椅子に座る。
すると机に置いてあった紙に視線を移す。
「あっ!?そ、それは!」
見つかってしまった!
すぐに取ろうとしたが既に時は遅く、シニアさんはもう読み始めてしまった。
「………なるほど」
読み終えたのか、不敵な笑みを浮かべ紙を置く。
すると座ったばかりなのに席を立った。
「今日はもうこの辺で帰ります」
そう言ってシニアさんは扉の方に向かう。
「例の話はしないのか?」
「それはまた後ほど。では、おやすみなさい」
そう言ってシニアさんは帰って行ってしまった。
「はあ、何だったんだ一体。て、うおっ!?何で泣いてんだルル!?」
「見られちゃったよー!ガルア様に報告されちゃうよー!クビになっちゃうよー!」
「仕事一筋でやって来たから、クビになるかも知れないってなるとすぐ泣くなお前」
「だってー!」
私は溢れ出る涙を手で拭う。
「ああ、分かった分かった。ほら、こっち来いよ。私の胸で好きなだけ泣け」
そう言って手を広げ豊満な胸を叩く。
「ウルフー!」
私はその胸に顔を埋める。
そして、今日も朝まで飲み明かすのだった。




