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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第八章 奪われた道場
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その十一 昔のサクラ

「えっと……お久しぶりですね。ダリ師匠」

「…………」


何故黙ったままなのだろうか。

物凄く気まずいんだけど。


「お主がそこにいるということは、わしとの約束を覚えていてここに居るのか?」

「っ!……はい、借金は全額返しましたよ。だから道場に行ったんですけど」


ダリ師匠はお茶を1口啜る。


「なら、わしの今の状況が分かるじゃろ」

「道場破りに会ったんですよね。それで道場を……」

「取られたもんはしょうが無い。わしの力不足だったというだけじゃ」

「でも、戦ったのはサクラ何だろ?サクラも自分のせいで道場を取られたと思って、責任を感じて何回もあの道場に通って、あのハムスに道場破りとして戦ってますよ」

「サクラに会ったのか。なら余計な説明は不要じゃな。今日でお主は破門だ」

「なっ!?破門!?」


突然の破門という言葉に思わず前のめりになる。


「道場が無いのに弟子を雇えるわけ無かろう。お主と後、あのお譲ちゃんにも伝えておけ」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!道場が無いなら取り返せばいいじゃないですか!サクラだって口は悪いけど、ダリ師匠とあの道場の事は大切に思ってるんだぞ!それに取り戻そうとしているサクラの気持ちはどうなるんだよ!」

「サクラは勝てん」


間もおかずダリ師匠はサクラは勝てないときっぱり言い切る。


「な、何でそう言い切れるんだ」

「サクラは魔法を使えん」

「魔法が使えない?どういう意味だ」

「お主にそれを言う理由があるのか?」

「うぐっ!それは……」


たしかにサクラの事を俺に言う理由がない。

でも、俺としてもサクラを追わなきゃいけないからサクラが何で魔法が使えないかの理由を知りたい。


「冗談じゃ。どっちみち言わなきゃ納得しないんじゃろ?」

「よろしく、お願いします」

「サクラは幼い時いじめらとった。魔力レベルが最低の2だった事もあり。バカにされ、そして友達の輪からも入れずいつも1人ぼっちじゃった。だがサクラは負けず嫌いな面もあり、見返してやろうと沢山の努力をした。勉強して魔法を覚え、モンスターとも戦い、試験に何度も受けた。世の中には才能ある者と才能無い者がおる。才能ある者は一瞬で魔法を覚え、魔力レベルも上がっていく。だが才能無い者はどんだけ努力しても、成長する事は無い。それが現実じゃ」

「まさかサクラは」

「あいつは3年間努力し続けた結果が魔力レベル3じゃった」


3年間でたったの1、そうかそりゃ挫折もするよな。


「それでも、サクラは諦めんかった。3年で1上がるなら、もっと努力すれば早く上がる。そう信じて、努力を惜しまなかった。じゃが、それがサクラを追い詰めることになるとわな。サクラは、ある日倒れた」

「っ!?倒れたってどういう事だ!」

「強くなる事だけを考えて努力し続けたせいで、寝る事も惜しむ様になり、不眠不休で頑張ったせいじゃ。食事もろくに取らず、栄養失調となりしばらくはちゃんとした食事と適度の休憩を余儀なくされた。サクラも流石にこれでこりたのか、ちゃんとご飯を食べ休む様になった。今思えば、あの時もう強くならなくていいんじゃぞと言えば良かったのかもしれんな」


そう言って乾いた喉を潤す為ダリ師匠はお茶を飲む。


「ふぅ……そして、退院して早速サクラは、今まで我慢してた物を開放するかのように再び勉強に没頭した。だがその次の日じゃ。サクラはいきなり大きな声を上げた。何事かと思いサクラの部屋に入ると、右腕を掴みうずくまるサクラと本や紙などがそこには散乱していた。サクラは魔法を覚えられないストレスとどうしても強くなれない劣等感のせいで魔法陣を見るだけで、手が動かなくなり、呼吸も乱れ吐き気を催す様になってしまったのじゃ」

「…………」

「そして、魔法を使えず、友達もおらんあいつは部屋に閉じこもる様になってしまった。あの子は頑固で負けず嫌いじゃからよっぽど悔しかったんじゃろう。毎日毎日、部屋からはサクラの泣いている声が聞こえとった。わしはそれを聞くたびに心臓が割かれるくらい心苦しくてのう。道場の事も手につかず、休んでばかりいたら、気付くと門下生は誰1人いなくなってしもうた。だが、何かを失って得る事もある。サクラを何とか説得して、外に出す事は出来たのじゃ。だが1度折れてしまった心を直すのは難しい。じゃからわしは魔法の代わりに足を鍛える事を教えたのじゃ。そしたら何とか立ち直ったのじゃが、根本的な解決はしておらん。結局わしは新しい強くなれる方法を教えただけじゃ。今もサクラは足を鍛え続けておる。そうしてまた、サクラは心が折れそうじゃ。今度こそ立ち直れなくなるかもしれん。だからこれ以上は、分かるじゃろ」


サクラは想像以上の苦労をしてきたんだ。

なのに俺はあいつにあんな事を。


「そっとしてやってくれ。サクラを、あの子をこれ以上苦しむような事はしないでくれ」

「……俺が弟子になる為にサクラと戦った時、サクラは負けて泣いてたよな。あの後どうしたんだ」

「あの後も自分が弱いから負けたんだと、修行に没頭しとった」

「そっか、やっぱり………」


あいつは負けず嫌いの頑固女だ。


「よく分からんがこれでお主と、関わることはないじゃろう。すまないな長話しちまって、お主は強く生きろよ」

「残念だけど、そう言うわけにはいかないんですよ。俺、サクラと喧嘩したばかりだから謝らないと」


そう言って俺は飲み物を全部飲み干し、立ち上がる。


「そうか、もしサクラに何かあったらわしは」

「大丈夫ですよダリ師匠。俺はただ謝りに行くだけなんで。その後の事はサクラが決める事ですから。それじゃあ」


俺はダリ師匠に別れの挨拶を言って魔法協会を出た。


「ふっ、絶対かつか。お主が友達になっておったら。いや、分かりもしない妄想はやめるか」


そう言って静かにお茶を啜るダリだった。



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