その十六 仲違い
「よっしゃあー!3階突破したぞ!」
「やったわねかつ!」
「そうですねやりました!」
俺達は嬉しさのあまりにハイタッチをする。
「なんか自信ついてきたな!このまま突破できるんじゃないか?」
「そうね!今の私達に怖いものは無いわね!」
「それはどうでしょうか?」
俺達が盛り上がっている時に冷静な言葉を投げかけてきた。
「このフロアをクリアしたからと言って、次のフロアをクリアできると決まった訳では無いので、気を抜かず行きましょう」
そんな冷静な言葉を言われたせいで先程まで高ぶっていた気持ちが一気に冷めた。
「ま、まあ確かにそうだが。もうちょっとその場のノリとかをだな」
「ま、リドルの言う通りよ。こっからも気を抜かずに行きましょう」
「そうじゃのう!妾も早く魔法を撃ちたいぞ」
すると急にデビが偉そうに前に出てくる。
「お前、自分がした事忘れた訳じゃないだろうな」
「え?いや、あれは妾がわざとやった訳じゃ無いのじゃ!足が勝手に」
そう言って自分の足を指差す。
「言い訳はいいんだよ!そんな事よりまず言うことがあるだろ!」
俺は言い訳をして責任逃れをしようとするデビを叱る。
「悪かったと思っておる。だが、妾は自分の意思ではやっておらん!」
「んなこと、どうでもいいんだよ!先ずは謝れ!」
「そこまで言わなくてもいいじゃろ!」
「いーや言うね!謝れ!」
「そんなに言われたら謝るのも謝れないじゃろ!」
「謝れ!」
「やだ!」
「おまえ〜!」
「うう〜ふん!」
俺は中々謝らないデビに腹を立てデビの事を無視する事に決めた。
「ちょっと2人共!喧嘩してる場合じゃないでしょ!皆で協力しないと洞窟攻略なんて夢のまた夢よ!」
そう言って俺達の手を取って無理矢理手を繋がせようとする。
「やめろミノル!今はこいつの手すら触りたくないんだよ」
「な!?妾だってこやつの手など触りたくないのじゃ!」
そう言って再びお互いそっぽを向く。
「はあ〜こりゃ駄目ね。どうする?」
「まあ、こんな所にいても仕方ないので先を急ぎましょう」
「そうね……」
俺はデビと喧嘩したまま4階へと向かった。
「さあ、遂に4階まで来たわよ」
「ここは少し空気が淀んでいますね。それに少し臭います」
リドルの言う通り4階は腐った卵のような刺激臭がする場所だった。
「あんまり長いはするもんじゃないな」
すると近くからとてつもない臭い匂いが鼻を曲がらせに来ていた。
「何だこれ!?くっさ!」
「まずいわね。モンスターが近付いて来てるのかも。こっち行きましょう」
そう言ってミノルが先頭に立って俺達を誘導する。
するとデビが俺の後ろから俺の前に無理矢理入って行く。
「おい、何だよ。無理矢理前に行くなよ。邪魔だろ」
「何言っておるのじゃ。お主はレディーファーストを知らないのか?」
「レディーじゃ無くてロリだろ」
「な!?お主今何と言った!」
その瞬間デビが俺に飛び乗ってくる。
「だぁ〜!お前何すんだ!」
「取り消すのじゃ今の言葉を!」
「ちょっと2人共!何やってんのよ!」
「知らねえよ!こいつが勝手に――――痛たたた!髪引っ張んな!このロリっ子が!」
「だからロリっ子と言うな!」
そう言って取っ組み合ったままデビと俺は床を転げ回る。
「だいたいお前はいつも自分勝手なんだよ!少しは周りの事をちゃんと考えろ!」
「あー……」
「妾は自分勝手ではないぞ!お主こそいつも妾のことを叱って、少しは優しくできんのか!」
「あーー……」
「お前みたいな自己中ロリっ子を優しくするわけ無いだろ!少しは反省しろよ!」
「あーーー………」
「何じゃと!」
「何だと!」
「あーーーー……」
「「ていうかさっきからうっさい!」」
俺達が向いた方には顔が半分溶けていて目玉が抜け落ちている生物がいた。
「「ぎ…ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」」
それはまさしく日本で言うゾンビそのものだった。
実際に見ると吐き気がするほど気持ち悪く、俺は思わず逃げ出していた。
「ちょ、かつ!どこ行くの!」
「ミノルさん、追いかけましょう!」
俺は無我夢中で逃げるように走った。
その時デビが俺の足を自分の足に引っ掛けた。
「え?うわっ!?」
俺はその衝撃で見事にすっ転ぶ。
「おまっ!?何すんだよ!痛いじゃねえか!」
だがデビはこちらを見ずにまっすぐ前を見つめる。
「ん?何見てんだ」
その前にはシルクハットの様な帽子をかぶってマジシャンのような赤い服を着ている人形のモンスターがいた。
「ニヤっ」
「っ!?デビ逃げ―――」
謎のモンスターが不気味に笑った瞬間、俺は何かを感じ取りデビの腕を掴んで逃げようとしたが、指を鳴らす音と共に俺は目の前が真っ暗になった。
「かつ!あれ、居ない………」
「ミノルさん……あのモンスターは何でしょう」




