その十四 破滅の洞窟の始まり
「………着いたのか?」
「そうよ。ここが破滅の洞窟よ」
それは洞窟と言うより遺跡みたいな場所にあった。
「この中に入ってしまえばもう出て来れなくなりますよ」
「妾は大丈夫じゃぞ!何でもかかってこいじゃ!」
デビは気合十分みたいだな。
「覚悟を決めるしかないな。よし!気合を入れるためにも円陣組もうぜ」
俺達は互いの肩を掴む。
そして顔を見合わせる。
「よし!俺達はこれから何があっても絶対に仲間を見捨てないこと!分かったな!」
「うん!」
「はい!」
「了解じゃ!」
力強い返事と共にまた顔を見合わせる。
まさか退屈な日常を過ごしていた俺がこんな命のやり取りをする日常になるとは誰も思わなかっただろう。
俺はそんな事を考えながら深く息を吸って。
「行くぞ!」
「「「おお!!!」」」
覚悟を決め俺達は洞窟の中に入った。
「中は意外と明るいんだな」
外から見ると中は暗く見えたはず。
だが実際入ってみると少し薄暗いが見えないというわけではない。
「ここの洞窟にはウスビカリホタルって言う生物がいるおかげで少し明るいのよ。鉱物から抽出される液体を体内に溜め込むことで光るのよ」
「へえーそうなのか」
確かに壁にたくさんのホタルが居るような気がする。
「なあモンスターは外には出たりしないのか」
「外に特殊な見えない魔法陣が張られていて出られないようになってるんですよ」
「そんなもんがあるのか」
その時何やら大きな足音が聞こえた。
「かつ」
「ああ…」
俺達は岩陰に隠れながらそのモンスターの様子を探る。
そいつは体中触手の様な細長いブヨブヨした物を体中に巻いている人型のモンスターだった。
まだこっちには気づいていないみたいだな。
「バレないように行きましょう」
「そうね。こっちよ」
俺達は足音を立てないようにゆっくり歩き出す。
するとデビが急に立ち止まる。
「おい、デビどうしたんだよ。行くぞ」
「何を言っておるのじゃ。あれくらい妾は余裕じゃぞ」
「ばっ!?お前何言ってんだ!余裕とかそういう問題じゃねえんだよ!わざわざ戦いに行くバカはいないだろ!お前の出番は見つかった時だ!だから今は黙ってついてこい!」
俺はモンスターに気づかれないように出来るだけ小声で、それでもデビには十分効いたようで、何も言い返せず黙って俺の後ろに着いてきた。
「よし!とりあえずあのモンスターには見つからずに済んだみたいね」
「ああそうだな。うん?もしかしてあれ階段か」
そこには下に続く階段がすぐ近くにあった。
「なああの階段妙に人工的じゃないか?」
洞窟と言っていたから結構自然的に作られていると思ったけど違うのか?
「確かにそうね。私もここは初めて来たから知らなかったけど昔誰かが階段を作ったとかかしら」
「僕もあまりよく分からないですけど昔は何かの建物を建てようとしてたみたいですよ。ですがモンスターが住み着いてしまい、そのせいで無人の場所になったみたいです」
洞窟じゃないのか?
だとしたら何でこんな事になるまでほっておいたんだ。
「かつ気になるところが多いのは分かるけどとりあえず先を急ぎましょう」
「あ、ああ……」
まあ元々この島自体気になる点が多いしな。
俺達はとりあえず下に降りて行った。
「なあ最深部に何かあるって言ってたけどそれってどれくらいだ?」
「現在確認できてる階層は5階よ」
「5階!?そんくらいなのか。結構2桁は余裕で言ってると思ったんだけど」
でも、5階でも最深部じゃないのか。
「最深部は本当に分かんないのよ。6階かも知れないし10階かも知れない、もしかしたら100階かもね。とりあえず進むしかないのよ」
分からないか……そもそも本当に最深部何かあるのだろうか。
合ったとしてもそこに何か物があるのだろうか。
そんな事を考えると不安に思ってしまう。
やめよう、今はそんな気分になってる暇じゃないしな。
「なんかわくわくするのう。久しぶりに気持ちが高ぶってるぞ!」
「変なテンションになってんじゃねえよ。よし、2階に着いたぞ」
俺達は周りにモンスターが居ないか注意しながら2階に入って行く。
「よし、大丈夫そうね。聞いてみんなこっからは大分厳しくなるわよ。こっからは逃げようと思ってもすぐには逃げられない。それに1階はたまたまモンスターに会わずに済んだけどそんな運が続くわけ無い。だからさっきよりも気を引き締めていきましょう」
「ああそうだな」
「み〜つけた」
「っ!?」
その瞬間モンスターが思いっきりミノルに目掛けて拳を繰り出す。
「きゃっ!?」
「ミノル!?まさかモンスター!?」
ミノルはギリギリで避け、そのモンスターの拳は地面にめり込む。
「くっ!?かつさん!」
「ミノル大丈夫か!」
「モンスターか!?いきなり攻撃するでない!びっくりするじゃろう!」
「ギャハハハハハ!!久しぶりのメシが来たぜ!!」
そのモンスターは鬼の様に鋭い2本の角、そしてしゃくれた口から出てる2本の長い牙、そして太い腕に背の曲がった緑色の体その姿はゴブリンと鬼がミックスしたような姿だった。
「私は大丈夫、ごめん油断してた」
「ミノルお主は良くやった。後は妾に任せろ」
「待ってデビちゃん。まだデビちゃんの魔法はとっておきましょう。こんな奴に使うのは勿体無いわ」
「メシがいきがるじゃねぇか!それでこそ食いがいがあるぜ!」
舌を出しヨダレを舐めとる。
「オラァ!行くぞ!!」
そいつは拳を強く握り、物凄い速さでこっちに突っ込んでくる。
「プリズンフリーズ!!」
「っ!?すううぅぅぅ!ふしゅぅぅぅぅ!!」
するとモンスターがミノルの氷を息で吹き飛ばした。
「え!?嘘!」
「まず1人ーー!!!」
まずい!
「インパクト!!」
モンスターは、ミノルの方に向かって拳を繰り出そうとした瞬間、俺はミノルの前に立ち魔法を放った。
「な!?ぐはあぁぁぁ!!!」
そして悲痛な叫び声をあげそのままモンスターは吹き飛ばされた。
「はあ……はあ……はあ、危なかった」
「………っ!かつ!ありがとう!!」
ミノルが俺の手を強く握る。
「え?あ、ああ……まあリーダーとして当然のことをしたまでだ」
「かつさんここはすぐに離れましょう。またモンスターが来てしまいます」
「え?あ、そうね。行きましょう」
ミノルは握っていた手を離しそのまままっすぐ進む。
くそ、もうちょっと楽しみたかったのに。
「なあなあ妾の出番はいつ来るのじゃ?」
「お前は少し黙ってろ」




