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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第七章 結成!問題児だらけのパーティー
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その九 屋敷に住む者

「はい、これが掃除道具一式だよ〜」


そう言ってリツは沢山の掃除道具を持って来た。

それはモップや雑巾、小さい掃除機みたいな物など色々な種類があった。


「ありがとなリツ。色々貸してもらって」

「別にいいよ〜。いつも買って来てくれるんだから、これくらいお安いご用だよ〜」


そう、俺達はクエストで手に入れた屋敷を綺麗にすべくリツに掃除道具を借りに来ていたのだ。

それにしてもこんなに沢山貸してくれるなんてリツは優しいな。


「それじゃあ掃除終わったら返しに来るわね」


そう言ってミノルはバケツと雑巾を持った。


「よし!それじゃあデビはそのモップを持ってくれ」


俺は小型の掃除機みたいな物を4個持つ。

それは丸いトランペットみたいな形をしていた。


「えー!妾こんなに持てないぞ。それにレディーにこんな量持たせるなんてお主は女心を分かっておらぬな」


デビはそのまま怠そうに床に寝転がる。


「知らねえよそんなの。ていうか皆持ってんだからお前も持て!」


俺は無理矢理デビを起こして4個のモップをデビに押し付ける。


「ちょっと待て、皆持ってるって言っておるがリドルは何も持ってないぞ」

「は?そんなわけ無いだろ」


俺はすぐにリドルの方に視線を移す。

そこには手ぶらのリドルがその場に立っていた。


「お前何やってんの?」

「かつさん、何か勘違いしているので弁解しますが僕は手ぶらではありませんよ」


こいつ何言ってんだ。


「いや、俺の目に映るお前はどう考えても手ぶらにしか見えないんだけど」

「いやいや、違いますよ。僕は皆さんが何かあった時の為にすぐ動ける様にあえて手ぶらにしているんですよ」


ムカ!!

あまりのウザい発言に思わずイラッとしてしまった。


「おーそうか、もしもの時の為にあえて!手ぶらにしてるんだなお前は。それじゃあ早速緊急事態だ。俺さっき机の角に腕ぶつけて痛いんだよ。落としたら大変だからお前持っといてくれ」


俺は持っていた小型の掃除機をリドルに全部渡した。


「え?ちょ、かつさん?そういう意味じゃ」

「おーリドル!お主妾達の為にそんな事をしてくれるのか!それじゃあ妾はお腹減って力でないからよろしく」


俺と同じようにリドルに持っているモップを押し付ける。


「え?デビさん、それはもう論外ですよ」

「何言ってんだよ。お前の仕事は仲間の危機を助けることだろ?だったら今がその時だろ」

「確かにそう言いましたけどおニ方の理由は大した理由じゃないように思えるんですが」


抱えるように掃除道具を持っているリドルがそんな事を言ってきた。


「何やってんのよ2人共」


そう言ってバケツと雑巾を持っているミノルが俺達を呆れたような顔で見て来た。


「リドルが持ちたいって言ったから仕方なく持たせてあげてるんだよ。なあデビ」

「そうじゃ、妾達はリドルの願いを叶えただけじゃ。うん!妾はなんて仲間思いなんじゃ」

「ミノルさん、騙されないでください。この人達は僕を陥れようとしてるんです」


するとミノルが深いため息を吐く。


「リドルがなんて言ったか知らないけど、ふざけて掃除道具を壊しても知らないわよ。壊したら弁償だから」

「そうだよ〜、そのスイットは300万ガルアするんだよ〜」

「さ、300万!?」


まじかよ、そんなにするのかよ!

ちなみにスイットは俺が小型の掃除機みたいな物と言ったやつだ。


「ちなみに壊したらこのパーティーの代表としてリーダーのかつに払ってもらうからね」

「は!?ちょ、ちょっと待て!まじで言ってるのか!?」


300万何て大金、1人で払えるわけが無い。

俺は両手に物を抱えているリドルの方を振り返った。


「リドル大丈夫か?俺が少し持ってやるよ」


俺は慎重にスイットを4個手に取った。


「かつさん………」

「何をビビっておるのじゃかつ。リドルに任せておけば大丈夫じゃろ」

「デビちゃんも皆持ってるんだから持ちなさい。じゃないとご飯抜きにするわよ」

「リドル重そうじゃのう。妾は優しいからな、持ってあげよう」


そう言って手のひら返しでリドルのモップを持つ。

するとさっきまで大量に掃除道具を持っていたリドルの手元には何も無くなった。


「えっと、僕は何を持っていけば」


先程まであえて手ぶらと言っていたのに急に自分から頼むなんて、流石に申し訳なくなったのか、それともミノルに何か言われる前に言っとこうと思ったのかのどっちかだな。


「それじゃあリドルはあそこのスプレー持って来て」


ミノルの視線の先には何に使うか分からないスプレー缶が置いてあった。


「なるほど。分かりました」


そう言ってスプレー缶をリドルが4つ手に取る。

リドルは何に使うか分かってる様子だが、俺はさっぱり分からないな。


「それじゃあリツ、また後でね」

「うん〜、がんばってね〜」


俺達は掃除道具を持って屋敷に向かった。


――――――――――――

「ふー、やっと着いたな」


ここまで掃除道具を運びながら30分も掛かるのはどうにかしたいな。


「妾もう駄目ー、腹減ったぞ」


そう言って疲れた体に従うように地面に尻もちをつく。


「デビちゃん休んでる暇ないわよ。こっからが本番なんだから」

「ていうかおかしくないか?普通クエストをクリアした報酬として貰うんだからきれいになってるもんだろ?」

「私もよく分からないのよね。ここを忘れていたのか、もしくは誰も貰わないと思ったのか。それかモンスターの巣が近くにあって掃除できなかったのかのどれかね」


この屋敷中々の広さがあるのにも関わらずモンスターが近くに居るからという理由で安くなるのも何か変な気もする。


「とりあえず早く掃除しましょう」

「そうだな。よし!皆、ここからが本番だからな!」

「えー!?妾もう腹減って動けないんじゃが」

「文句を言うな!ほら、立て!」


俺は座っているデビの手を取り、怠そうにしている足を無理やり立たせた。


「それじゃあ扉を開けますよ」


そう言って、リドルは屋敷の扉を開いた。

その瞬間中に入っていた蜘蛛が一斉にこちらの方に向かって来た。


「うおっ!?何だ!」

「リドル!」

「はい!」


それとほぼ同時にミノルがリドルの名前を叫び、リドルはそれに答えるように先程貰ったスプレー缶を屋敷の中に投げ入れた。


「カマイタチ!」


するとリドルが魔法でスプレー缶を真っ二つに切った瞬間扉を閉めた。


「え、えっと……今のは一体……」

「コグモが居たので」

「コグモ?」

「まあ見てなさい」


未だ納得出来てない俺を差し置いて2人は屋敷を見る。


「おいデビ、コグモって何だよ」

「あんな気持ち悪い奴らのことなんか知るわけ無いじゃろ」


何だよ使えないな。

それよりコグモって言い方が引っかかるんだよな。

まるでオオグモが居るみたい言い方が。

すると屋敷の中で普通は聞こえない叫び声が聞こえた。


「今の声、もしかして中に誰かいるのか!?」

「やっぱり居たわね」

「ええそうですね」

「いや、だから何なんだよ。何がいるんだよ」


すると再び屋敷の中から苦しそうな声が聞こえてくる。


「誰だ!こんなことやったの!」

「奴らは古い建物や誰も住んでいない家を住処にするの」


罵声を叫びながら近付いてくる。

な、なんだなんだ。


「そして家中に白い粘着性のある糸を張り侵入者を捕まえる」

「覚悟しろよ!刻んで糸で縛って食料にしてやる!」


怒りの籠もった声と足音が外に響き渡る。

この声の大きさからして扉のところにいないか?


「そしてコグモが居るところにあいつが居る。あいつが居る所にコグモが居る。そいつの名前は女王グモ」

「ぶっ殺してやる!!」


そう言って勢い良く扉を開かれる。

そこには明らかに人の姿をした蜘蛛のような面影を残すモンスターだった。


「も、モンスター!?マジかよ!モンスターがいるなんて聞いてないぞ!」


さすが異世界どこに行ってもモンスターだらけだな。


「かつさんは下がってて下さい。あのモンスターはかなりの強さです」


確か知性があるモンスターは強いって言ってたな。

俺達と同じ言語を喋れるってことはかなりの知性がある強いモンスターってことだろう。

俺が戦っても邪魔になるだけだな。


「分かった。でも気をつけろよ」


俺は巻き込まれない様に出来るだけ離れた。


「て、何でお前まで付いてきてんだ?」


俺の隣には何故かデビがピッタリとくっついていた。


「何を言っておる。妾は最強な故、小物には興味無いのじゃ」

「あ、そうですか。まあ俺も人の事言えないからこれ以上は言わない」


すると早速女王グモが動き出した。


「あんた達だけは生きて帰さない!」

「ミノルさん。相手は例のスプレー缶で弱っているとはいえ強敵です。気をつけてください」

「分かってるわよ。気を抜いたりしないわ」


すると女王グモが突然飛んだ。

それはかなりの脚力で一瞬で10数メートルも飛んでいく。

そして空中で女王グモが口からミノルとリドルに向かって糸を吐き出した。

それを2人が後ろに飛び回避する。


「アイスガン!」

「アグレッシブフルート!」


ミノル達は瞬時に空中に居る女王グモに向けて魔法を放つ。

するとまた口から糸を吐きミノルの氷を巻取り、それをリドルの魔法にぶつけて相殺させる。


「ふふ、ははは!この程度で私に勝てると思ったのかい?」


さすが、知能が高いモンスターは違うな。

相手の攻撃を利用して戦うスタイルも他のモンスターには無かったな。


「やっぱり強いわね。でも勝てないわけじゃないわ」

「そうですね。動きも弱まってるせいか、かなり遅いですし」

「ふっまだ勝てると思ってるの?あんた達ってバカねえ!見せてあげるわ。私の力!」


すると思いっきり息を吸い込んだと思ったら空中に巨大な蜘蛛の巣を張った。


「さあーて私と遊びましょう!」


するとミノルに向かって糸を吐いた。


「プリズンフリーズ!!」


ミノルは糸に向かって氷の魔法を放つが糸はまるで意思を持ってるかのように氷が当たる瞬間に避ける。


「はあ!?何今の!」


その後も魔法を放つも全部避けられる。

そしてミノルはそのまま足に糸を巻き付けられ空中に持ってかれた。


「きゃっ!」

「ミノルさん!」

「ミノル!」


ミノルは糸に逆さ吊りにされて必死にスカートを抑える。

俺は思わずじっと見つめてしまった。


「ちょっと!見てないで助けてよ!」


おっとばれてしまったか。

だがすぐに解くのももったいないな。

あともうちょっと見てみたい気もする。


「ミノル!すまない!ちょっと助け方がわかんないや」

「いや、あんたの得意なファイヤボールでこれ焼いてよ!」

「この糸はそう簡単に焼き切れるわけ無いわ!特にあんたらのしょぼい炎になんてね!」

「だそうだ!」

「だそうだじゃないわよ!きゃ―――――!?」


すると女王グモが余裕の表情でミノルをそのまま空中に張ってある蜘蛛の巣に叩きつける。


「うぐっ!な、何これ!?体が動かない!」

「ふふ、これであなたはもう動けない。美味しく頂かせてもらうわ」


すると女王グモが自分の張った巣に飛び移る。


「ふふふ、ジュルリ」


すると美味しい食べ物を見るような目でミノルの元に近づいていく。


「ちょ!マジでやばいだろ!どうすんだよ」


試しにインパクトを撃つか?

でもそれじゃあミノルも巻き込んじまう。

するとリドルが手でこっちに来いと手招きする。


「かつさん、ちょっと………」

「え?何だよ」


するとリドルが耳元でゴニョゴニョと何かを言う。

それは今回の作戦内容だった。


「え?マジでやるの?」

「はい、これならいけると思います」


それ俺が大変な目に合うしかないんだが。

まあいいか。


「分かった。やってやるよ」

「何じゃ何じゃ?何の話をしておるのじゃ?」

「お前は何もしなくていいから大人しくしてろ」

「なんじゃと!仲間外れにするでない!」

「きゃーー!!」


するとミノルの叫び声が聞こえる。


「ミノル!」


そういえば今捕まってるんだった。


「ちょっと早く助けてよ!」

「ですがミノルさん!ここで魔法を撃つとミノルさんにも当たってしまいます!」

「はははは!!残念だったわね!あんたはもう助からないの。安心して美味しく切り刻んであげるから」


そう言ってジリジリとミノルに近づいて行く。


「くっ!このままじゃ……」

「それじゃあ1人目いただきます!!」


すると大きく口を開けミノルに迫る。


「ふっかかったわね!プリズンフリーズ!!」


するとミノルの魔法で蜘蛛の巣が一気に凍る。

それによって女王グモの足も凍りついた。


「な、何なのこれ!?」

「残念だったわね!この程度で私は超えられないだったかしら?そんなの余裕に決まってるでしょ!」

「こ、この弱小種族が!」

「あなたはその人達に負けるのよ。かつ!」

「分かった!いくぞ!ファイヤボール!!」


俺はミノルの背中にファイヤボールを当てる。

その衝撃でミノルの背中に付いていた凍った糸が壊れ、ミノルが糸から開放された。


「くっ!この!早くこの氷を解け!!」


女王グモは未だに足が凍りついて動けないでいる。

かなり苛ついているのか足が取れるくらいの勢いで暴れる。


「リドル代わりに取ってあげなさい」

「分かりました。それでは行かせていただきます」


そう言ってリドルは女王グモの真下に行く。


「早くしなさいよ!弱小種族が!」

「それでは行きます。キルトルネード!!」


それはゴリゴリの攻撃魔法だった。

やっぱりそうなるよな。


「ぎゃああああ!!」


竜巻の中で悲痛な叫び声をあげる女王グモ。

何かめちゃくちゃ可愛そうだな。


「これで討伐完了ね。リドルもうやめてもいいわよ」

「分かりました」


そう言って指を弾いた。

そして竜巻が消えそこから女王グモが全身擦り傷だらけで血を垂らしながら力なく倒れる。


「終わったのか?」

「ふふ、どうだ見たか!これが妾達の力じゃ!やっぱり雑魚だったのう」

「バカお前!そんなフラグみたいなこと言うんじゃねえよ!」


すると女王グモがいきなり立ち上がったその瞬間女王グモの口から糸が吐き出される。

それはデビの方に向かって一直線に向かって行った。


「あ、まずい」


その瞬間俺はデビに背中を押された。


「え?」


そして俺は一瞬の内に腰に糸が巻き付けられる。

俺はあまりの出来事に思考が追いついていない中デビが俺の方を見て。


「ごめん!」


ニッコリと満面の笑みで謝罪した。


「えええええ!?」


そして俺はそのまま女王グモまで引き込まれていく。

あいつ後で絶対覚えておけよ!


「クソが!1人だけでも細切れにしないと気が収まらない!!切り刻んでやる!」


まるで鬼の形相みたいに、それはまさしくモンスターの顔そのものだった。


「殺す殺す殺す殺す!!!」

「女王グモ、すまないけど………これも作戦の一部なんだわ」

「は!?」


俺は手に魔力を込めた。


「じゃあな女王グモ」

「クソがァァァァ!!」

「インパクト!!」


俺は女王グモに向かって魔法を放った。

それにより糸がブチ切れそのまま俺は地面に落ちる。

そして女王グモの姿は無くなっていた。


「討伐完了だ」


すると皆が俺の方に走って来た。


「やったわねかつ!」

「かつさん、作戦がうまく行って良かったですね」


そう言って激励の言葉をかけてくれる中1人だけ状況を掴めてないやつがいた。


「何じゃ何じゃ?もしかしてかつが糸に捕まるのは作戦のうちじゃったのか?なら妾のおかげじゃな!」

「お前のさっきの行動は一生恨むからな」

「何でじゃ!?」


するとミノルが2回手を叩く。


「それじゃあ早速切り替えて行きましょう!まだ仕事が残ってるんだから」

「そう言えばそうだったな。こっからが本番だった」


俺は掃除道具の方を見る。

どうやら壊れてはいなさそうだな。


「じゃあやりますか?」

「ああ、そうだな。それじゃあ早速、掃除スタートだ!!」



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