その八 ゴブリン退治
「グヘヘ、今日もモンスター狩りまくったぜ」
不気味な笑みを浮かべながらデカイ棍棒を肩に乗っけていた。
それを俺達は遠巻きで確認する。
「ゴブリンを確認しました。どうぞ」
「よし、よくやった。どうぞ」
「どうぞ、じゃねえよ!お前ら隣同士で何やってんだよ!」
デビとリドルは草むらに隠れながら糸電話で話していた。
「何言っておるのじゃ。情報を確認するのは重要じゃろう」
「情報確認ていうかお前らわざわざ隣にいるのに何で糸電話で会話してんだよ」
「雰囲気ですよ。遠くで話せませんからね」
するとほとんどのゴブリンが洞窟の中に入って行く。
「かつ、早くしないとゴブリン全員居なくなっちゃうわよ」
「まずいな。おい、遊んでないで早く行くぞ」
俺達はすぐに草むらを移動し輪から離れてるゴブリンの元に向かう。
「早速拠点に戻ってパーティーだ。グヘヘ―――グエ!?」
「ちょっとごめんよー」
俺達はゴブリンを1体拉致った。
そして仲間に助けを呼ばれないようにすぐさま移動してから木の枝にロープで体をグルグル巻きにして逆さまの状態で吊るす。
体は動かせず、顔しか出せない。
「お前ら人間だな!こんなことして俺の仲間が黙ってないぞ!」
「おいおい、こんな状況でそんなこと言えんのか?いいからお前らの洞窟の出口を教えろよ」
「俺は絶対口を割らないぞ!」
ゴブリンは意外と仲間思いな奴らだ、だからこそ良心を捨てて拷問するしかない。
それにうってつけの奴が俺の仲間にいる。
「そうかなら拷問のスペシャリストを呼ぶよ。それじゃあ、リドルお願いします」
するとリドルが喜々とした表情でゴブリンに近付く。
「任せてください。僕が必ず拷問してみせますから」
「おいおい、目的が違うぞ。出口は何処か聞き出すんだよ」
「大丈夫です。それもついでにやりますんで」
「ついでじゃねえよ!本命だから!」
するとリドルが、早速そこに座る。
「おいお前!俺は絶対言わないぞ!」
「言わないなら別にいいですよ。それよりこれはあなたのですか?」
そう言って、ネックレスのような物を取り出す。
「そ、それは俺の母ちゃんがくれたネックレス!お前それ返せよ」
「そうですか、これはあなたのお母様がくださったネックレスなんですね。それでは返さなくてはいけませんね。あっ!」
その時リドルがわざと!手を滑らせ、謎の液体が入った瓶に入ってしまった。
「ちょ、お前何してくれてんだ!て、臭!」
ちなみにその液体はゴブリンが最も嫌いな匂いが出る液体だ。
「すみません。はい、お返ししますね」
「おい、臭いって!やめろ!近づけるな!」
そんな事も聞かずリドルはゴブリンにネックレスを付ける。
逆さまになっているためネックレスがちょうど顔の部分に辺り、ゴブリンは顔を歪ませる。
どうやらリドルお手製のこの液体は効果抜群のようだ。
「似合ってるじゃないですか。返してもらったんだからもっと笑って下さいよ」
「笑えるか!こんな臭い匂いを放つネックレスを付けてるんだぞ!」
「笑って下さい」
「だから!」
「早く、笑って」
リドルの強い圧に負け、ぎこちない笑顔を見せる。
「まあ、ちょっと気持ち悪いですが、別にいいでしょう。それよりお腹空きましたよね?」
「いや、空いてな―――――」
「空きましたよね」
「………はい」
またもやリドルの圧力に負け、同意する。
「ほら、ゴブリンさんの大好物のスライムゼリーですよ」
そう言って水色のプルプルとした艷やかなゼリーを取り出した。
「そ、それは!俺の大好物!」
「先程ネックレスを落としてしまった、謝罪も兼ねて用意させてもらいました。ちょっと待って下さい、最後のひと手間を」
「ハニーハニーシロップだな!」
そう、ゴブリンはこのスライムゼリーにシロップをかけるのが大好物だ。
もちろんそんなこと分かってるのでそのままかけるわけもなく。
ゴブリンが嫌いな液体をスライムゼリーにぶっかけた。
「ぎゃああああ!!!スライムゼリーーー!!」
「はい、召し上がって下さい」
「召し上がれるか!こんなのもうドブ飯だ!」
ギトギトの液体でより一層テカリがます。
「美味そう?そうですよね、ゴブリンさんの大好物ですもんね」
「もう違うから!大好物から大嫌いに仰天チェンジしたから!」
「大好物から超大好物に仰天チェンジした!?そんなに喜んでくれて僕も用意したかいがありますよ」
「その耳飾りなの!?人の話聞けよ!あ、俺モンスターだった」
するとリドルがスプーンでゼリーを掬ってゴブリンに近づける。
「はい、口開けてください」
「嫌だ!俺は食べたくない!」
そう言って口を開かず、抵抗する。
「あ〜、口が開けられないんですね。大丈夫です。僕が手伝ってあげます」
そう言ってゴブリンの口を無理やりこじ開ける。
「あが!あががごぶげむ!(顎がはずれる!)」
そして口の中にゼリーを放り込む。
「うぐ!まず!」
するとゴブリンが吐き出そうとした瞬間に口を無理やり閉ざせる。
「駄目ですよ。食べ物を粗末にしてわ」
「お前閉じるの強すぎだろ!下噛んだぞ!これ取れてない!取れてないよな!?」
「落ち着いてください。はいまだありますよ」
「嫌だ!やめてくれ!」
そう言って全力で首が取れるって位首を降る。
「やめてほしかったら、分かりますよね?」
「く!俺は絶対言わないぞ」
「言わないって事は食べたいって事ですよね。はい、どうぞ」
「やめ!くぼ!ちょ、まじで!くふっ!ほんとに!うぐっ!」
しばらく苦しそうな声とグチュグチュと口の中で混ぜられていくゼリーの音が響き渡った。
そしてしばらくしてゼリーを完食した。
「う、うえっ!う……ゴクン!はあ……はあ……どうだ……全部食べたぞ……」
「そんなに好きだったんですか。でしたらお代わりありますよ」
そう言って追加のゼリーにも例の液体をかける。
「な、何で!?」
「まだまだ沢山ありますよ。それでは行きましょうか?」
そのリドルの顔が悪魔の顔に見えたのは言うまでもない。
「や、や、やめてくれーー!!!」
――――――――――――――――
23杯目
「それが、俺達の出口だ……」
「ありがとうございます」
そこには顔中ゼリー塗れのゴブリンとスッキリした表情のリドルがいた。
「それで俺はもう、解放してくれるんだよな」
「はい、解放しますよ」
「ほんとか!?て、何やってんだ」
するとリドルが、テープに液体を塗りたくっている。
「解放はしますよ。ですが……」
そう言ってテープをゴブリンの口につける。
「ん!?んん!んんんんん!!!ん―――――」
するとリドルがゴブリンの首を掴み、魔法で首をちょん切った。
「苦しみの方ですけどね」
そしてゴブリンから噴水の如く血が吹き荒れた。
ゴブリンの首が地面を転がる。
そしてリドルはこちらを笑顔で振り返った。
「終わりましたよ。皆さん」
「妾、リドルに今後あまり近付かないようにしようと思う」
「同感だ」
「みんなー!ゴブリンは全員中に入ったわよ!て、何よこれ!」
洞窟の監視をしていたミノルが戻ってきた。
「リドルが殺ったんだよ。あのサイコパスがな」
「そんな言い方しないで下さいよ。それに殺すのを提案したのはかつさんですよ」
「俺は提案しただけでまさか本当に殺るなんて思ってなかったんだよ」
「まあどっちみちゴブリン達にバレないように、逃さないことにはしてたから、結果オーライよ」
やっぱり異世界生活まだまだの俺には考えられない発想だな。
生き物でしかも、喋れる奴を殺すのは少し心に来る。
「かつ、また辛気臭い顔してない?」
「いや、別になんでもないよ」
「もしかして、ゴブリン退治今更躊躇ってるんじゃないでしょうね」
「いや、そんなわけ無いだろ?」
図星をつかれたせいで一瞬顔が引きつる。
「分かりやすいわね。かつは」
「かつさん、モンスターとは共に生きる者でもあり、共に殺し合う者でもありますよ」
「そうじゃ、そうじゃ、ためらってはお主が殺されるぞ」
「そういう事。前にも言ったでしょ?この世は弱肉強食、モンスターに情何て抱けば一瞬であんたは死ぬわよって」
みんなから一斉に説教を喰らう。
そう言われるとさらに惨めな気持ちになるんだが。
「分かってるって」
「ていうか今回の作戦もかつが決めたんだからね。ちゃんとしてよねリーダー」
「分かってるって言ってんだろ!早くお前らは配置に付け!」
俺は説教されている事に恥ずかしくなり、大きな声でみんなに指示を出した。
「分かりましたよ」
「分かっておるわ」
そう言って2人は先程教えてもらった洞窟の出口に向かった。
「かつ、私達も行くわよ」
「ああ……」
俺は異世界人ではなく日本人だ。
――――――――――――――
「おい、もうすぐ焼き上がるぞ!」
「やったぜ!今夜はパーティーだ!」
その時大きな轟音と共に洞窟内が揺れる。
「な、何だ!?」
「おい!出口が無くなったぞ!」
よし!準備完了だ!
「よお、ゴブリン共!お前らを討伐しに来たぜ!」
俺は岩陰から飛び出しパーティーをやっていたゴブリン達に殴り込みした。
ゴブリン達は何が起こったのか分からずキョトンとしている。
「残念だけどあなた達の出口は全部閉ざさせてもらったわ!逃げる事は考えないことね!」
「お前らがやったのか!」
「俺達をナメんなよ!」
「生きて帰れると思うな!!」
「それはこっちの台詞だ!ミノル!」
「ええ!ワイドスプラッシュ!」
すると魔法陣から大量の水が出てくる。
「ぎゃあ!何だこれ!?」
「まだよ!プリズンフリーズ!!」
すると大量の水がゴブリンを巻き込んで凍る。
「が……さ、寒い……」
「何しやがんだお前……」
「こうするんだよ!インパクト!!」
俺は洞窟の天井にインパクトを喰らわす。
それにより天井が崩れ、岩が落ちていく。
「ぎゃああああ!!落ちてきたー!て、避けれない!!」
「インパクト!!インパクト!!インパクト!!」
俺はさらに魔法を放ち天井を崩させる。
「や、やめ――――」
「い、いやだ!死にたくな――――」
次々と何も出来ずにゴブリンが岩に潰されていく。
見てるだけで気分が悪くなるな。
「おい、ミノル。早くテレポートしてくれ」
「分かってるわよ。それじゃあしっかり捕まっててね。テレポート!!」
ゴブリンの悲痛な声を聞きながら俺達は洞窟を脱出した。
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「ふー、無事脱出成功だな」
すると前からリドル達が走って来た。
「かつさん!良かったです。無事みたいですね」
「妾の活躍のおかげじゃな」
「何でお前だけなんだよ。とりあえずこれでモンスター騒ぎも収まるだろ。俺はもうクタクタだ」
「そうね、早速家に帰って休みましょうか」
そういえば俺達家買ったんだったな。
「そうだな、早速帰るか」
「妾は早くフカフカのベッドで寝たいのじゃ」
そう言ってだるそうにその場に座り込む。
「おい、寝るなよ。おんぶするの面倒くさいんだから」
俺は体を休めてるデビを無理やり叩き起こす。
「分かっておるわ!ほれ早く行くぞ!」
するとデビは俺の手を掴みそのまま走り出す。
「おわっ!?いきなり走るなよ!」
「ふふっ仲間っていいわね」
「そうですね…………」
――――――――――――――
俺は蜘蛛の巣だらけの屋敷の扉を勢いよく閉めた。
「今日は宿に泊まるか」




