その七 僕らの家の中
「討伐してきました!これがモグリンの歯と爪です」
俺はモグリンの体の一部をルルに渡す。
「はい、確認できました。これが報酬の10万ガルアです」
そう言って金の入った袋を渡してくる。
「それと後これも渡しておきますね」
ルルが持ってきたのは鍵と地図だった。
「これはもしかして家の鍵?」
「はい、かつさんは特定のクエストをクリアしたのでもうこの家は皆さんの物ですよ」
「俺の……家か………」
初めて家を持つってこんなに嬉しいものなのか。
日本では1人暮らしとか絶対やらないと思ってたけどやっぱり食わず嫌いは駄目だよな。
「何じゃ何じゃ!これは妾達が住む家の鍵なのか!?」
そう言って鍵を勝手にデビが持ち去った。
「ちょ、おい!勝手に持っていくな!おい、待て!」
俺はデビを追いかける為金の入った袋を握りしめ後を追う。
「ねぇリドル、あんたって昔何かやってたの?」
「そうですね。生きてく為には金は必要ですからね。バイトなど色々やってましたよ」
「待てー!お前、何でそんなに速いんだよ!」
「はっはっはっ!出来るものなら妾を止めて見ろ!」
クソ!捕まえたら絶対背中に冷気を当て続けてやる!
「何やってんのよ、あの2人は」
「まあいいじゃないですか。僕は賑やかな方が楽しいですし」
「待てって言ってんだろ!止まれよ!」
「何言っておるのじゃ!自分の力で止めてこそ人は成長できるのじゃ!」
「なんの話してんだよ!それ関係ないだろ!」
その時デビが後ろの俺に集中してたせいで前の注意を怠りぶつかってしまう。
「痛っ!な、何じゃ?」
「おい、お前人に迷惑かけんなよ。すみません」
その人は黒いフードを深く被り顔が見えにくいようになっていた。
「大丈夫かい?」
そう言ってその人はデビに手を出す。
「1人でも立てる!ナメるなよ!」
「バカ!初対面になんて口の聞き方してんだよ」
「そうかそれは良かった。それじゃあね」
すると謎の人はそのまま出ていってしまった。
「何なんだあの人?お前なんか言われたか」
「何も」
そんな事を謎の男を見ながらデビが言った。
「ていうか鍵返せ」
「あっ!何故取るのじゃ!」
鍵は傷は無く無事みたいだ。
「何やってるのよ。早く家に向かいましょう」
「そうだな。地図貰ってるからこれ見ながら行こう」
「確か天の空谷はシアラルスの端っこにある場所ですよね」
俺は机に地図を広げる。
「そうね。ここからだと1時間くらいかかるわね」
「まじか。でも今更四の五の言ってる場合じゃないだろ。とりあえず行こう」
――――――――――
「ここが俺達の家か」
それはまぁまぁのデカさで金持ちの別荘クラスの屋敷だった。
「結構大きいけど、なんか不気味ね。お化け屋敷みたい」
「これから住む家をそんな言い方するなよ」
その時モンスターの鳴き声が聞こえた。
「そういえば近くにモンスターの巣があるんだったな」
「妾に任せろ。ちょっと駆除してくるのじゃ」
「おい、虫退治に行くわけじゃないんだぞ。ヘタに刺激して巣から大量に出てきたらどうすんだ」
俺は駆除する気満々のデビを何とか抑える。
そんなもん想像しただけで鳥肌が立つ。
「とりあえず中に入りましょう。このあとのことはそれから決めましょう」
「そうだな、それじゃあ早速開けるとするか」
俺は早速扉に鍵を指した。
そしてそのまま右に回し、カチャっと開いた音が聞こえた。
「よし、開いたぞ!」
俺は早速ドアノブを捻りドアを開ける。
緊張で手汗をかいているのが分かる。
「これが俺達の住む家………だ……」
勢いよく扉を開けてソコに待っていたのは……蜘蛛の巣だらけのまるでお化け屋敷のようだった。
俺は勢いよく扉を閉めた。
「ねえかつ、今のって」
「いや、あれだよ。住所間違えたかもな」
「いえ、ここで間違いありませんよ。もらった地図も住所もあってますし」
そう言って地図を再確認する。
「じゃああれだな。多分見間違いかなんかだろう」
俺はそう思い再びドアを開ける。
すると蜘蛛の巣が舞い上がり奥から大量の虫が湧いた。
俺はまた扉を閉めた。
そしてそのまま振り替えるみんなの方を見て
「なあお前ら、モンスター退治したくない?」
――――――――――――――――
「久しぶりだね〜。借金返し終わったの〜?」
「リツ久しぶり。実はまだ残ってるんだよな」
俺達は巣をぶっ壊す為魔道具店に来ていた。
「そういえば何か増えてるけどどちら様〜?」
リツは2人の事を不思議そうに見つめる。
「そういえば自己紹介がまだだったわね。こちら、私達のパーティー仲間のデビちゃんとリドルよ」
「はじめまして」
「よろしくお願いしても良いぞ」
「何でお前が偉そうなんだよ」
するとリツが驚いた表情でミノルを見る。
「ミッちゃん!パーティー、決めたんだね」
「うん、いつまでも後ろばかり見てられないからね。私変わるよ」
「うん、そっちのほうがいいよ〜」
何か2人だけで盛り上がってるな。
「何じゃこの魔道具は?」
そう言って棚に置いてある魔道具を触る。
「おいばか!勝手に触るなよ。壊れたらどう済んだ」
「何を言っておるのじゃ!妾がそんなことするわけ無いじゃろ!」
そう言って足で早速魔道具を踏む。
「いや、これは無しじゃ」
「いや、無しなわけ―――――」
その瞬間体が突然引き寄せられいつの間にか机に体を押さえつけられて、顔の真横にナイフが突き刺さっていた。
「え?リツ?」
「ねぇ〜心臓か脳、どっち売る〜?」
そんな恐ろしい事を笑顔で言ってきた。
「え?ちょ、どういうこと!?おい、ミノル!」
「あ〜実はリツ、家計が火の車で少しでも商品に傷をつけられると豹変しちゃうのよ」
「ねぇ〜どっち売る〜?」
「いや、豹変ってレベルじゃないだろ!もう別人じゃん!いつも優しい声が凄く恐怖を覚えるんだけど」
その瞬間ナイフがより一層顔に近づく。
「おい、ミノル!これどうやってやめさせるんだよ!」
「リツ!もうこの商品私が買うからやめなさい」
「本当〜?毎度あり〜!」
するとその瞬間いつものリツに戻った。
「あいつ怖いのう」
「お前のせいだぞ」
俺は痛む腰を叩きながらミノルの所に向かう。
「おい、ミノル。そろそろ買おうぜ」
「そうね。ねえリツ。ゴブリンの巣を壊したいんだけど」
「ゴブリン退治用のやつだね〜今持ってくるよ〜」
そう言って奥の部屋に入って行った。
「かつさん、ここの魔道具店は売れているんですか?」
「見ての通りだ。でも欲しい物はある程度揃ってんだよな」
「隠れた名店みたいですね」
「ほら〜持ってきたよ〜」
するとリツがゴブリン退治の道具一式を持ってきた。
「はい、お金。ありがとね、また買いに来るわ」
「いつでも待ってるよ〜」
俺達はリツに別れの挨拶をして魔道具店を後にした。




