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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第六章 ガルア様と黒の魔法使い
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その十八 ラミアとガルアの過去

「行くぞ!絶対かつ!」


そう言って強く握りしめた拳を俺の顔面目掛けて迫って来る。


「おわっ!?」


俺は避けようとしたがバランスを崩しその場に倒れた。

だがそのおかげでガルアの拳は空を切り直撃は免れた。


「お、おい!いきなり殴ってくるか普通!?」


俺は体制を立て直しいきなり殴ってきたガルアに注意をする。


「さっき言っただろう。勝負だって」


そう言ってまた拳を強く握り構える。


「待て待て!勝負ってバチバチの肉弾戦なのか!?てっきり魔法バトルかと思ったんだが」

「何言ってるんだ。お前レベル1だろ?そんなレベルで戦っても勝負は目に見えてる。違うか?」


煽るようにこちらを見る。

言い返してやりたいが確かにそれは事実。

ここはおとなしくこいつのルールに従うしか無いな。


「でもまだ俺はこの勝負に了承したわけじゃないぞ!」

「何言ってんだよ今更。お前はラミアを黒の魔法使いに助けを求める以外の方法で助けようとしてるんだろ。それにお前はあいつの………ナイトなんだろ!」


何故だがナイトという言葉を怒った口調で言っている。

どうしたもんかこのまま煽られっぱなしっていのも何か嫌だしな。


「何だ?絶対かつ、こっちをジロジロ見て。覚悟決めたのか」


こいつがこの国の王…………


「ふっ!」

「な!?テメェ今鼻で笑いやがったか!お前俺がタメ口許したからって調子乗ってるだろ!」


やべ、つい吹き出してしまった。

俺は慌てて口を抑える。

まあもう遅いと思うけどな。


「ごめんごめん、ちょっとお前が王ってのが信じられなくてな」

「まだお前俺のこと疑ってんのか?」


あれ?もしかして俺なにかまずいこと言ったか。

でも今隙だらけだよな。


「分かった。お前が俺の事をこの島の王と認めないなら、ちょっと実力を見せてやろう」


その時ガルアは目を瞑り大きく息を吸い込みそして静かに吐く。

その姿は隙だらけで狙ってくださいと言ってるようなもんだった。

レベル1だからといってナメてる。


「そっちがその気ならやってやる」


俺は一気にガルアに間合いを詰める。

この距離ならもし目を開けたとしても防ぐ事はできないはず。


「もらったーーー!!」

「っ!」


そして俺はそのままの勢いでガルアの腹を思いっきり殴った。

これは完璧に入った。

殴った瞬間の感触はあった。

少し子供なのにやりすぎた気もするがここは勝負の世界、それに王なんだし多少は鍛えてるだろう。


「へへ、悪いなガルア。この勝負俺の勝ち……ん?何だ、これ」


俺は腕を戻そうとしたが何故かピクリとも動かない。


「ど、どうなってんだ!?なんで腕が」


俺は、とっさに自分の殴った箇所を見た。

確かに感触があった。


「こ、これって………」


だがその感触は自分の拳がガルアの腹に当たったものではなくガルアの手でガードされた感触だった。


「ふっ、奇襲とは中々やるじゃねえか。自分には戦意が無いと見せかけて油断してるところをドーンか。ま、お前ならそうやってくるって思ってたけどな」


あの瞬間あの距離でガードされたのか。

なんつー反射能力だよ。

こんなの倒せるわけ無いだろ。


「気付いてたってことか」

「気付いてたって言うか選択師の1つに入ってたかな」


どっちにしろ俺はこいつに魔法でも肉弾戦でも勝てないってことだ。

するとガルアは俺の手を振り払う。


「ま、これでお前も戦意ありってことが分かったし、再開するか」


そう言って、拳を構えまるで格闘家のような視線でこちらを睨む。

まずい、これガチモードだな。

あんな反射能力がやばいやつなんてパンチもやばいに決まってる。

これは回避に徹するしかない!


「あの、もうやめないかこんなこと。俺はこんな事をするためにここに来た訳じゃない。ラミアを助けに来ただけなんだよ!」


俺は何とかこの場を収めようと必死に訴える。

だが相変わらず体制は先程と変わらずファイティングポーズだ。


「お前だってラミアのこと救いたいんだろ。確かに王としての立場でどちらか選ぶのは苦痛の選択だと思う。だからといって今日あったばかりの俺何かにその選択を任せるのは間違ってると思う!」


俺は、最初はその場しのぎのつもりで話し始めたがだんだん感情的になっていき、まるで説教するかの様に喋ってしまった。

するとなんの変化かガルアは構えるのをやめてこちらを真っ直ぐ見る。


「なんかじゃ無いんだよ。もう……」

「え?」

「もうお前とラミアの関係はなんかって言えるような関係じゃないんだよ!」


突然の怒鳴り声に俺は少したじろぐ。

怒ってるのか?

俺なんかまずいこと言ったか?


「ど、どういう意味か聞いてもいいか?」


先程の勢いは何処えやら、俺は完全にガルアの迫力に怖気づいてしまった。


「お前は今ラミアにナイトって呼ばれてるんだよな」

「ああ…………」


緊迫した雰囲気が辺りを包む。

一体どういうことなんだ。


「お前がナイトって呼ばれた瞬間、もうラミアの未来はお前しか決められないんだよ!!俺の言葉じゃ、あいつに届かないんだよ」


泣きながらまるで自分の愚かさを悔やむかの様に、やり場のない怒りを地面にぶつける。

その地面は数回殴られただけでぽっかり穴が開いてしまっていた。


「えっと………こんな事、言うのは何だけど、まだよく分からないんだよ。どうして、俺がその……ナイトって呼ばれただけで……その……決めなきゃならないのかなって」


これ以上の質問は相手を怒らせてしまうんじゃないかと思い、俺は少し、しどろもどろになってしまった。

ガルアの言葉は何故か本質を避けているような気がする。

それはもしかして察してほしいと言う意図なのかもしれない。

だが俺にはそんな事できるはずもなかった。


「…………今から話す事はラミアの過去だ。だがこれを聞いたらお前はちゃんと選択できると約束してくれるか?」


とてつもなく重い約束。

それはガルアの言葉を聞けば明白だ。

安易な気持ちで頷いてはいけない。

でも俺は………


「このまま何も知らずに答えを出すのと、知って答えを出すのは、たとえ同じ答えだとしても本質的に違う気がする。だから聞くよ。聞かせてくれ、ラミアの過去を」


俺は、ガルアを真っ直ぐ見つめる。

それは相手も同じだった。

するとガルアがあぐらをかいて座る。

俺も同じように地面に座る。


「これはまだラミアが赤ん坊の頃の話だ。その時俺は、18歳になっていた」


最初っから疑わしき箇所があるがまあ気にせず話を聞こう。


「ラミアは生まれたばかりで、その時まだあの忌まわしき100年戦争がまだ続いてた時だった」


100年戦争?あれ?確かケインは10000年前からと言ってたはずだけど、もしかして本格的に戦争が始まったのが100年間って事なのだろうか。


「戦争が続いてる中産まれたばかりのラミアを守る為その時最も信頼されていた男に俺の父、ガイスが護衛を任せた」


そうか、そういえばこの島にはガルアの前に王がいたんだったな。

ガイスっていう人が戦争中に何者かに殺されたのか。


「そいつの名がナイト。お前がラミアに、呼ばれている名前と同じだ」

「っ!?それってどういうことだよ」


あれはラミアを助けたから、そうあだ名で呼ばれているもんだと思ったが、もしかしてナイトって奴の名前をそのまま呼んでいるってことか?


「頭を抱えるのはまだ早いぞ。ちゃんと最後まで話を聞け」

「分かった」


俺は考えるのをやめ、話を聞くのに意識を向けた。


「ナイトは元々正義感が強くて、いつも誰かを助けたり、人の悲しみを自分の事のように泣いたり、仲間思いで、自ら戦いに行って他の魔法使いを鼓舞したりと、王に気に入られるのは十分なほどの人柄と成績を持っていた」


ナイト……俺とは完全に真逆の存在だな。


「その人柄のおかげでラミアもとても良い子に育っていったんだ。兄思いにもなって自慢の妹だよ。それもこれもあいつのおかげ何だけどな」


今聞いた限りでは元気そうな女の子だな、でも初めて会った時は少し暗い印象を得た気がする。


「それから数年が経ってラミアが5歳の時に、父が死んだ」

「っ!?…………そうなのか」


5歳の頃にそんな体験をしたのか。

どれほど苦しかっただろう。


「父が死んで、母は現在も重い病気で寝込んでしまっていて、まだショックが残っている中で俺は王としての責任を果たさなければいけなかった。悲しんでなんかいられなかったんだ」


何とも言えない雰囲気の中俺は話を聞き続けた。

心が痛くなるけどそれしか今の俺にできることは無いから。


「その中でも1番ショックを受けてたのが、ラミアだ。まだ幼い子供の時に、まだまだ甘えたい年頃で死んでしまった父の墓で下手したら1日中泣いていた。そんな姿を見ていたたまれない気持ちになったがどんなに慰めようとしてもラミアの心には届かなかった」


大切な人が死んだ悲しみは計り知れないものだろう。

それを幼い頃に体験してしまえばそうなってしまうのも無理は無い。


「そんな傷ついた心を癒やしたのが、ナイトだった。ナイトはラミアが産まれた頃からずっと一緒に居た、まるで父親のような存在だったに違いない。ナイトに励まされ何とか傷も癒えて、食事をとれるくらい回復出来た。それもこれもナイトのおかげだ。俺にとってもあいつにとってもナイトは家族の様な大切な存在だった」


家族の様な大切な存在か………

俺はそんな大切な人居ただろうか。


「ナイトが居てくれたおかげで今まで通りの明るさを取り戻して来たそんなある日、そう、それは忘れもしない1年前の3月2日……今までの大切なかけがえの無い日常はその日から狂い始めたんだ」


俺はもうガルアの話に夢中になっていた。

周りの音が聞こえないくらいに。


「ラミアは突然森に行きたいと言い出した。なぜならその日はナイトの誕生日だったからだ。ラミアはナイトに誕生日プレゼントとしてライビと言う体がキレイな七色に光る魚のモンスターがたくさんいる水辺にナイトと向かおうとしてたんだ。そこはこの島の観光名所としても有名な場所だった。そこに2人だけで夜遅く行ったんだよ。俺はその日仕事が合って2人の帰りをバースデーケーキを準備して待ってたんだ」


俺はただただガルアの話を聞いた。

呼吸をするのも忘れるほどのめり込んでいた。


「だけど中々帰って来なくて心配になって様子を見に行こうとすると扉が勢いよく開いたんだよ。その時の光景は今にも目に焼き付いているんだ。目の前には呪いの術が体中に刻み込まれた姿のまま、ぐったりと涙を流しながら気絶してるラミアとそれを抱っこしているナイトの姿がそこには映ったんだよ」


それはとても経験したことの無いようなそんな苦しみがあったに違いない。

こいつらそんな経験をして来たのか。


「その後ナイトは呪いによって死んでしまい、ラミアも傷は浅かったが呪いの影響を受けていた。それ以来ラミアはナイトが死んでしまった事がショック過ぎて、ナイトの死を受け入れられずに未だに、ナイトは何処かに行ってしまったと思って、ナイトを探しに街に繰り出すようになったのさ」


話が終わりしばらく静寂が続いた。

予想以上の耐え難いに事実に話を聞いた俺も胸が痛む。

俺は、重い口を開き、ガルアに質問した。


「ガルアはラミアにナイトが死んだ事は伝えて無いのか」


あまりこういう質問はしたくない。

でも苦しいけど選択するには自分が納得しなければいけないと思ったからだ。


「目の前で死ぬ瞬間も見たし、何度も訴えかけても聞く耳も持たない。そのせいで今は見つけては、俺が何とか間違いだと気付かせ、そしてまた見つけて来るの繰り返しだ」

「そうだったのか………」


てことは俺は何人目のナイトなのだろうか。


「なあ、それって俺はナイトに似てるってことなのか」

「ああ……そうだ、しかも、お前は今まであった中で1番似てるよ。俺も初めて会った時一瞬ナイトって呼びそうになったしな」


そんなに俺は似てるのか。

何か申し訳ない気持ちになってきたな。


「何の話をしてるの?」

「「っ!?」」


声がする方に振り向くとそこには先程ガルアに眠らされてたラミアが心配そうな目をして立っていた。

しまった、話に夢中になってて気付かなかった。


「ナイトさん、何の話をしてるの?」


その目は純粋にこちらを心配する目だった。

ここからが本番だ。



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