表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第六章 ガルア様と黒の魔法使い
114/827

その十五 黒の魔法使いの恐怖

その瞬間ミノルは、鬼の形相で相手の名前を叫びながら1番に突っ込んで行った。


「はははは!久しぶりミノル!ライトニングサンダー!」


出会い頭にその男は魔法を放った。

ミノルの目の前に電気を纏った巨大な槍が現れると同時に物凄い速さでミノルの方に飛んでいく。


「ミノル!!」


だがミノルは物怖じせずそのまま突っ込んでいく。


「うおおおお!!ビックマウンテン!!」


あたる!

そう思った瞬間地面に魔法陣が現れ、そこから巨大な岩が現れた。

それは俺達を覆い尽くすほどの大きさだったが相手の魔法が当たったのか物凄い音を立てて粉々に砕け散った。


「くっ!ミノル!大丈夫か!」


砂埃のせいでミノルの姿が見えない。

だんだんと砂埃が晴れてきたおかげでようやくミノルの姿を捉える。


「ミノル!良かった、無事だったのか………」


だがそこに居たのは俺の知っているミノルの表情とは全く違かった。

あの時と同じ、最初に俺が会った黒の魔法使いのトガと戦っていた時の顔に戻っていた。


「ミノルおい!ミノルってば!」


俺の声に反応は無い。

何やら2人で話している様子だ。

俺の声は今は届かないみたいだな。


「くそ!ミノル、気をつけろよ」


俺はこれ以上話しかけても無駄だと思い、倒れている人の救助に向かった。

まず最初はリドルだ。

俺はリドルの元にかけより体を揺する。


「おい、リドル!おい、起きろ!」

「……………や、やめろ!やめてくれ!」


するとリドルが苦しそうに顔を歪め、何かを呟く。


「リドル!どうしたんだよ!返事しろ!」


だがこちらの応答に反応せずただただ苦しそうにもがく。

もしかしてあの男に何かされたのか?


「や、やめてくれ………ガルア様………私頑張りますから……解雇だけは……」

「う〜父上………モンスターの巣には………入れないでくれー!」


すると他のみんなもリドルと同じ様に苦しそうな声を上げる。


「どうなってんだよこれ、何が起きてんだ」


とりあえずみんな生きてるってことが分かっただけでも良かった。

その時ミノルの方からすさまじい衝突音が聞こえる。


「くっ!ロックガン!」

「ギガサンダー!どうしたんだミノル?トガと戦った時はもうちょっと強かっただろう?」


ミノルもかなり激しい戦いをしていて俺が入れる隙がない。


「うーどうすればいいんだ俺は!」


仲間は変な状態だしミノルは戦ってるしで何をするべきなのかが分からない。


「きゃっ!」


するとミノルが苦しそうにその場に倒れ込む。


「ミノル!」


俺はすぐにミノルの元へ駆け寄った。

手を差し伸べるもそれを振り払いミノルは自力で立つ。


「大丈夫よ。まだ……やれる」


そう強がりを言うが体はすでにボロボロだ。


「やっぱり少し弱くなった?ミノル、昔の方が強かったよね」


そう余裕そうに男は言う。

こいつかなりやばそうだな。


「昔の事なんかどうでもいいのよ」

「え?昔って君が僕によって―――――」

「ラルダ!!!」


今までに無いほど大きな声で名前を叫ぶ。

そこには明らかな殺意が込められていた。


「み、ミノル………」

「あっ!ご、ごめんなさい」


自分が大声をあげたことに気付いたのか謝罪をする。


「やっぱりミノルのその歪んだ表情は相変わらず美しいね。もっといじめたくなっちゃうなー」


何言ってんだこいつ?

俺は目の前の異質な存在にただただ恐怖を覚えるしか無かった。


「あ、そういえば自己紹介がまだだったね。僕はラルダ、もう気付いてるかもしれないけど、黒の魔法使いのひとりだよ」


思い出したように自己紹介をする。

やっぱり黒の魔法使いだったのかこいつ。


「何で黒の魔法使いがこんな所に居るんだよ」


確か他の皆はガルア様の所に向かったはずだ。

なのに何で皆はこんなところで倒れてるんだ?


「それはリーダーに命令されたからだよ。お前達を足止めしておけって」

「それってもしかしてクラガの事か?」


するとラルダが驚いた表情をする。


「まさかお前からクラガの名前を聞くなんて思わなかったよ。そうか……クラガはもうお前に話していたのかじゃあ話が早いね」


そう言って、ニッコリと笑う。


「それじゃあ早速腕の骨折る?それとも足の骨にする?かつはどっちがいいかな?」


その瞬間体中に寒気が走った。

こいつ何言ってんだ。

だがその言葉をキラキラとした目で言ってくるこいつは完璧に危険なやつだ。


「させないわよラルダ。私の仲間に……手出しはさせない!」


そう言って、ふらふらの体をなんとか立たせる。


「ふらふらだよミノル?もう立っているのもやっとなんじゃないの?」

「そんなわけ……ないでしょ!コールドプレス!」


ラルダの真上に氷の塊が落ちる。

普通ならかなりのダメージが入るはずだけど。


「無駄だよ。ギガサンダー」


ラルダはいとも簡単に氷を真っ二つに割る。


「なっ!?きゃっ!」


するとその雷は四方八方に飛び散りミノルを襲う。


「ミノル!?」


ミノルの方を振り返るもすでに倒れていた。


「さ、これで邪魔者は居なくなったね。それじゃあ僕と遊ぼうか?」


そう言って相変わらず笑顔のままこちらに近寄ってくる。


「く、来るな!撃つぞ!」


俺は魔法を撃つ構えをする。

するとラルダは素直にその場で立ち止まる。


「かつの魔法は確か特殊なんだよね。トガを殺す程の威力を持ってるとか。少し厄介だな」

「動くなよ!動いたら撃つぞ!」


俺は何度も忠告してラルダをその場に止まらせる。

どうやら言うことは聞いてくれるみたいだ。


「よし、それじゃあ俺の質問に正直に答えろよ。もし、拒んだり濁すような言い方したり嘘をついたら即撃つからな」

「分かったよ。嘘はつかない」


意外と素直に応じるラルダを若干警戒しつつ、質問を始めた。


「それじゃあまず何で俺の名前を知ってるんだ」

「トガに聞いたんだよ。面白いやつがいるって言ってね」


躊躇うことなく答えを返す。


「あそこで苦しそうに倒れている俺の仲間に何をしたんだ!」

「あそこで倒れている奴等には特殊なポーションを飲ませたんだよ。飲めばたちまち自分が1番恐怖を覚える夢を見る事ができるんだよ」


出来るんだよって皆は好きで見てる訳じゃないのに。


「じゃあ次はガルア様は何処にいる?」

「この奥だよ。ちなみにかつが探している人も居るよ」


表情を変えず質問に答える。


「な、何で俺の探してる人を知ってるんだよ!」

「さあ、何でだろうね」


そう言って嬉しそうに笑う。

こいつ心でも見透かせるのか。

この異質な状態に気づけば俺の手は震えていた。


「濁すような言葉は使うなって言ったよな」


俺はラルダを脅迫する。


「ああ…そう言えばそうだったね。ミスっちゃった。じゃあ撃ちなよ」


その顔はまるでこの状況を楽しんでるかの様だった。

今まさに魔法が撃たれるってのに何でこんなに平然としていられるんだよ。


「嘘、言ってると思ってんのか?」

「いや、何もしかして嘘なの?それじゃあ遠慮なく動こうかな」


そう言って俺の方に歩を進めようとする。


「動くな!嘘じゃないぞ」

「なあんだ。やっぱり嘘じゃないんじゃん」


こいつ死ぬのが怖くないのか?

それか感情が無いのか?

あまりの変化の無さにそんな事を思ってしまう。


「………お前何なんだよ」

「それも質問?だったら答えるよ。俺はね、相手の苦しむ姿とか見るとうれしくなっちゃうんだよ。悲鳴とか相手の骨の折れる音とか凄くいいと思わない!」


今までに無いくらい生き生きとした表情で語りだす。


「お前………イカれてるよ」

「はははは………黒の魔法使いに正常なやつなんているわけ無いだろ。俺達に常識を押し付けるなよ」


そう言うと約束を破り前に進んで来る。


「う、動くな!」

「かつ、このままで本当にいいのか?お前はレベル1だというのにトガと渡り合った。お前には素質がある」

「動くなって言ってんだよ!」


だがラルダは俺の忠告を聞かず前に進む。


「俺達の仲間にならないか?それで全てが丸く収まる」


ほぼ近距離まで詰め寄ってきた。

今魔法を撃てば確実に当たるだろう。


「答えはノーだ!」


俺は一気に魔力を溜めた。


「そうか、それがお前の――――――」

「インパクト!!」


俺の体の中で発生した魔力暴走が一気に放たれる。


「はあ……はあ……はあ……」


あの距離だ避けるのは無理だろう。

ていうか普通に魔法出たな。

今までなんで出なかったのだろう。


「サンダー」

「っっ!?」


後ろから声がすると思い振り返ろうとした瞬間膝から崩れ落ちた。


「な、何で……力が入らない」


体中がまるで痺れているみたいな感覚に襲われる。


「俺の得意魔法は雷なんだよ。だからこうして気絶させるくらいの電気を出すのもお手の物ってわけ。ま、無駄話はこれくらいにして早速遊ぼうか」

「遊ぶ?何をするんだ」

「ははは……楽しみにしてて」


やばい!絶対やばい!

俺はそう思い一刻も早く逃げるために必死に体を動かそうとする。

だが体は俺の意思では全く動きはしなかった。


「無駄だって悟りなよ」


すると俺の体を起こし木にもたれかかさせられる。


「それじゃあまず親指からね」

「へ?何が―――――」


その瞬間親指からボキンっと言う音が響き渡った。


「うわぁ!すっごい、いい音なったよ今!」

「痛ええええええ!!!痛い!痛い!うぐぅ!痛え!!」

「ねえねえ!もう1本やってもいい?いいよね!それじゃあもう1本やってみようか」


俺はあまりの痛さに絶叫するが体が痺れて動けないせいでもがく事もできずただただ叫ぶ事しかできなかった。

そしてまた別の指からボキンという音が鳴る。


「ぐわぁぁぁぁ!!痛い!や、やめて!痛い!痛い!痛い!痛い!」


その痛みに耐えている俺を見てラルダは恍惚な表情をする。


「やっぱりいい音だー!今まで折った中で1、2を争う程の音だった」

「痛い!痛い!うぐぅ!痛えよ!」


俺はラルダの言葉を聞く余裕が無く痛みにただ泣き叫ぶ事しかできなかった。


「お前すごいよ。おもちゃの才能あるよ。ああ我慢できねえ。次は腕言ってみよっか」


そう言って、俺の腕に力を込める。


「や、やめっ!やめてくれ!折らないで!やめて!」


抵抗しようにも体が痺れて動けない為泣き叫ぶしか俺には出来なかった。

だがラルダが聞く耳を持つわけもなく、徐々に腕の力が増していく。


「ひぐぅ、ぐすっ、や、やめて!やめてくれ!!」


俺は折れた指の痛みと腕を折られる恐怖でもうどうにかなりそうになっていた。


「それじゃあ、奏でようか。骨のカンタービレを」


そう意味不明な事を言って腕の力が一気に込められたと思ったらラルダが動きを止める。


「ひっひぐぅ、ぐすぅ……ふえ?」


俺は一体どうなっているのか訳がわからずにいた。

助かったのか?


「これはこれはクラガじゃないか。なんでこんな所にいるの?」


涙も拭けないため前がぐちゃぐちゃで見えない。

その時誰かが俺の前に来た。


「酷い顔だな。見るに耐えないほどに」

「だ、誰だ?助けてくれ!」


俺は今のこの状況から脱出する為に必死に助けを求める。


「黒の魔法使いに助けを求めるのか?ずいぶん変わったな」


黒の魔法使い?もしかして仲間が来たのか!?


「や、やめてくれ!これ以上折らないで!」


俺は必死に抵抗しようとするがまだ痺れが取れないのか動かす事ができない。


「安心しろ。貴様はまだ殺さない」

「へ?殺さないのか?」

「まだな」


まだという言葉に少し引っかかるが今の俺にとっては殺さないという事実だけで十分だった。


「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます」


俺はただただお礼をしつづけた。

相手は黒の魔法使いとか今の俺にはどうでも良かった。

助けてくれるなら悪魔でも何でも良かったんだ。

それくらい俺の精神は追い詰められていた。


「貴様少し精神が壊れかけてるのか?ラルダ、まだこいつは利用価値があるからあまり手荒な真似はするなと言ったはずだぞ」

「ごめんクラガ、我慢できなくって。でもおかげでいい音聞けたよ」


何の話をしているんだ?

だが今の俺には指の折れた痛みを我慢するので必死だった。


「それじゃあそろそろ行くか。おい、ラルダ」

「分かったよ。ほら行くよ」


そう言って動けない俺を担ぎ上げる。


「痛!やめてくれ……これ以上折らないで」

「あれ?痛かった?ごめんごめん、でも俺的には悲鳴が聞こえて嬉しかったけどね」

「おい、そいつを黙らせろ。うるさくしてしょうがない」


すると腹に衝撃が走った。


「ぐふっ――――」


薄れる意識と痛みの中で俺は意識を失った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ