その十二 ラッキースケベ
「ここが例のガルア様が住んでいる城か………」
それはとてつもなくデカく頂点を見ようとすると首が折れてしまうんじゃないかと思うくらい高かった。
「城なんて某遊園地とかでしか見たことないしな」
すると城の周りに大勢の警備のような人が騒がしそうにしている。
「何かあったのかな?もしかしてガルア様が誘拐されたとか?」
身代金目当てだとしてもこの島の王を誘拐するやつなんていないか。
「とりあえず中に入るか」
俺は中に入ろうと堂々と真正面の扉に入ろうとした。
「ちょ、ちょっと君!何やってるの!?」
あ、やべバレた。
さっき騒がしそうにしていた警備の人がこちらに近づいてきた。
「中に入ろうと思ってて」
「城の中に入りたいのか。君許可証持ってるの?」
「えっと………」
やっぱりそう言う許可証とか必要なのか。
ダメ元で行こうとしたけど正攻法じゃ無理だってことだな。
「や、やっぱり中に入るのやめときます!」
俺は別の作戦に切り替える為足早にその場を立ち去った。
「あ、ちょっと君!」
捕まったら色々面倒だし一旦逃げよう。
俺は城から少し離れて作戦を練り直す。
「う〜んどうしようかな………」
真正面からは無理だってことは分かった。
何か事件があったのか城の周りの警備が多いし、近づいただけでもう怪しまれそうだな。
「そうなってくるとやっぱりこっそり忍び込むに限る」
俺は城を観察し何処か入れそうなところが無いか探した。
「警備や誰にも見つからずにこっそり入れそうな場所は………ん?何だあれ」
数多くの窓がある中で1つだけ窓が開けられている。
「あそこからなら入れそうだな。それにしてもこの距離からあれが見えるなんて半獣になったおかげで視力バク上がりしてるな」
半獣になった事で身体能力が上がったのだろう。
俺はそんな事を思いつつこっそりバレないように窓に向かった。
「よし!あとはこの窓から入れば」
「あー忙しい忙しい!」
入ろうとした瞬間忙しそうな声が向こうから聞こえてきた。
誰か来たのか!
「まずい!こっちに来る!」
俺は急いで窓を開けて中に侵入する。
「はー、忙しい忙しい!」
声が通り過ぎそのまま遠くに行ったのが分かり俺はほっと胸を撫で下ろす。
「ふー、危機一髪だな」
「キャッ!?」
すると誰かの叫び声が聞こえた。
俺はその声がする方を見ると、下着姿で恥ずかしそうに胸を隠す女の人がいました。
「あ、え、えっと………こんにちは」
「ぶっ殺す!!」
そんな物騒な言葉を吐き魔法陣を展開させる。
「ちょ、ちょっと待て!これは事故だから!故意じゃないから」
「そんなこと知らん!お前を殺して私も死ぬ!」
「なんでお前も死ぬんだよ!」
「こんな恥を晒して私はもう生きる資格はない!」
するとさっき出した魔法陣が光り輝く。
やばい!これまじで殺される!
「ちょっと落ち着けって!そんなことない!ほら別にそういう事もあるっていうかそれにとっても美人だから自身持ってもいいよ!うん!」
自分でも何言ってるか分からなくなっているが、とりあえず助かりたくて必死に弁解する。
「き、キレイだと!?私が?」
すると魔法陣の光が少し弱まる。
もしかして効いてる?
「そ、そうだよ!凄くキレイだから大丈夫だよ!」
何が大丈夫なんだと自分で自分を突っ込みたいが、もう弁解する余力も残っていない。
「そ、そうなのか……いやでも私はガルア様の護衛としてそんな言葉で喜んでも良いのか。だがそう言うのは素直に受け入れるべきか」
何かぶつぶつ呟いている今の内にここを出よう。
俺は見つからないようにこっそりと四つん這いで扉を目指した。
「よし、これで出られる」
俺はドアノブに手を伸ばそうとした瞬間俺の頬をかすって、扉に杖が突き刺さった。
「あ……え………?」
俺は恐る恐る後ろを見ると女の人がこちらを睨みつけていた。
そしてこちらに近付いて来た。
「いや、あの、ちょっと………」
俺は逃げようとするも扉があり、これ以上逃げられない。
そして俺は容赦なく女の人に胸ぐらを掴まれる。
「う、うぐ!ちょ、ちょっと落ち着いて!」
「お、お前!」
や、やばい今度こそ本当に殺される!
俺はそう思い身構えた。
「この事は誰にも言うなよ!」
「へ?は、はい」
俺はつい咄嗟に返事をしてしまった。
えっと、俺……助かったのか?
「よし、約束だからな。言ったら殺すからな」
「わ、分かりました」
そう言って胸ぐらを掴む手を離す。
「助かった………」
「それで貴様は誰だ?」
そう言って、堂々とした格好で質問をしてくる。
「えっと……」
「どうした?急に目を逸らして、何か不審なところでもあるのか」
俺は目線を逸らしながら問題の箇所を指摘する。
「えっと、その前に服着たほうがいいですよ」
「―――――!?」
女の人はそれに気づくと頬を赤らめ素早く隠す。
「見たか?」
「いや、ピンクの可愛い下着なんて見てません」
「見てるじゃないかーー!!」
「ぐほう!?」
俺はそのままグーでぶん殴られた。
――――――――――
「ま、待たせたな」
着替え終わった女の人が恥ずかしそうに出てくる。
「えっと………すみません。何かお邪魔しちゃって」
「っ!?そ、それは別にもう気にしていない。申し遅れたな、私はミレイ、ガルア様の護衛をしているものだ。君は?」
口調が先程よりも柔らかくなった。
素がこっちなのか?
「俺は絶対かつ。それにしてもミレイさん凄く怖い人だと思ったけど意外と優しそうでよかったです」
まだ殴られた頬がヒリヒリするけど。
俺がその箇所を労っているのを気づくと1つ咳払いをする。
「そ、それは君が悪いんだぞ。こんなところに勝手に入って来て。ん?でもどうしてこんな所に入ってきたんだ?」
やばい!また何か起こりそうな気がする。
これは早めに説明をするしかないな。
「えっと実はここに仲間が来ていて、迎えに来ようと思ってたんですけど」
「なるほど、それなら私が案内しよう。そういえばガルア様は今日客人が来ると言っていた。もしかしたら君のことを言っていたのかもしれないな」
そういってミレイさんが部屋を出る。
「多分それは俺の事だと思いますよ」
俺も同じように部屋を出ると何かが足に引っかかった。
「え?うわっ!?」
何でだ!?
足元を見ると先程突き刺さった杖がまだ突き刺さっていた。
「うわああぁぁぁ!」
「え!?ちょ!」
俺はミレイさんを巻き込んでそのまま転んでしまった。
「いててて!すみませんミレイさん」
立ち上がろうとするとなにか柔らかいものを掴んだような気がした。
「ん?何だ」
自分の手元を見ると、ミレイさんの胸を鷲掴みしていた。
「あ、え、えっと………」
ミレイさんの方を見ると恥ずかしさと怒りが混ざり合ったような複雑な表情をしていた。
「や、柔らかいですね」
「貴様をぶっ殺す!!」
―――――――――――
「ん?」
「どうしたんですか?向こうの方を見て」
「今、かつの声が聞こえたの」
「かつがこんな所に居るわけなかろう。会いた過ぎて幻聴が聞こえたのか?」
「ち、違うわよ!本当に聞こえたのよ」
「ちょっと待って下さい。向こうから誰かが走ってきますよ」
「あれは………かつ!?」
俺は現在命懸けで逃げ続けていた。
「たーすーけーてーくーれー!!!」
「絶対ぶっ殺す!逃げるな!」
ん?あそこに居るのは………
「おーい!みんな!助けてくれ、このままじゃ殺されちまう!」
俺はすぐさまみんなの元に向かいミノルの背後に回り匿ってもらう。
「おい貴様!男が女の後ろに隠れるなんて恥ずかしいと思わないのか!」
「うるせー!殺されそうになってるんだから恥も何もないだろ!」
他の人から見たら何ともみすぼらしい姿だと思うがこの状況で迷ってる暇はない。
「ちょ、かつ、この人誰なの?ていうか何でこんな所にいるの?」
「それは後だ!とりあえず助けてくれ!」
俺はもう必死にミノルの後ろに隠れる。
「お主、男としてのプライドはないのか?」
「そんなもん守って死ぬよりマシだろ!」
するとデビが俺の事を可愛そうな人を見るかのような視線で見てきた。
しょうがないだろ命かかってんだから。
「おい、そこの女、すまないがどいてもらえないか。こいつは今ここで抹殺しなければならない」
そう言って、ミレイは臨戦態勢に入る。
「どなたか存じ上げませんが、かつさんをそう簡単に渡すわけには行きません」
「リドル………」
まさかこいつがこんな事を言うなんて。
何だか少し感動した気がする。
「それでかつさんはどんな酷い行為をしたんですか?」
前言撤回こいつやっぱりクソだ!
「ちょっとリドルいきなりかつが悪いって決め付けるのは偏見よ。ちゃんと話を聞きましょう」
ミノル、弁明してくれるのはありがたいがその提案は駄目だ!
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「教えてやろう。私がこの男にされた醜態を」
あ、これやばいやつだ。
「私はこの男に着替えてる途中の更衣室に入られ、舐め回すのような視線で私の下着を見て、さらにその感想まで私に伝えたまでには至らず!最後は私の胸を強引に――――」
「ちょ、ちょっと待て!それは………」
ミレイが一通り話し終わった後みんながこちらを一斉に見る。
「かつ。これ本当なの?」
「え、えっと………大体は………」
その瞬間ゴミを見るような視線でこちらを見てきた。
「最低ね」
「クズじゃのう」
「流石にこれは笑えないですね」
おっと、これは完全なアウェイ空間だな。
「これでこのクズを殺すのに反対の者は居ないな」
その言葉にみんな頷く。
「ちょ、ちょっとまて!これは事故なんだって!故意じゃないんだ!まじで言ってんの?ちょ、助け―――――うわああぁぁぁ!!」
俺は今日2度目の正拳を体に刻まれた。
「いててて………何で俺がこんな目に」
「すまない。まさかあなた達の仲間だとは知らずに」
申し訳なさそうにミレイが謝る。
「良いの良いの、今回はかんっぜんに!かつが悪いんだから」
「だからあれは事故だって言ってるだろう」
「事故が2回続くのも怪しいものだがな」
そう言ってミレイはこちらを睨みつける。
完全に敵対されてるな俺。
「申し遅れました。私はガルア様の護衛を務めさせていただいているミレイと言います」
「私はミノルよ」
「僕はリドルです」
「妾はデビじゃ」
一通り自己紹介を終えるとこれからの事についての話になった。
「とりあえずどうするのじゃ。ガルアと言うやつもいないし」
「ガルア様がいない!?どういうことだ!」
興奮気味にミレイさんがデビに詰め寄る。
「うおっ!?いきなり大声を出すでない!心臓が止まるかと思ったじゃろ」
「す、すまない。それよりガルア様はどうなされたんだ」
何だ?ああそういえばこいつはガルア様の護衛をしてるんだったな。
そりゃ主に何かあったら心配するのは当然か。
「それが今回、ガルア様に招待されて来たのにガルア様が全然現れないんですよ。執事のシニアさんも消えてしまって」
「シニアが?そういえば何やら外が騒がしかったな。もしかしてガルア様の身に何かが」
ミレイが心配そうな表情をする。
「なあどういう事なんだよ。話が全く見えないんだが」
「貴様は黙っていろ」
また怒られてしまった。
これはもう俺喋れないかもしれない。
「とりあえず近くの警備員に私は話を聞いて来ます。皆さんはここで待っててください。特にかつ、貴様は変な真似をするなよ」
「分かったよ」
そう言って、最後まで俺を睨み付けてその場を離れた。
「はー……怖かった」
「災難でしたね。まさかたまたま開いていた窓が更衣室何て」
少し嬉しそうに俺の災難話をする。
「お前って絶対性格悪いよな」
「それよりこれからどうするのじゃ?」
何かデビが俺の事を見ながら言ってるような気がするが、それはこれからの行動であって、俺のことを指してるわけじゃないだろうな。
「とりあえず、ミレイさんが来るのを待ちましょうか」
「そうですね。むやみに動くよりはいいでしょう」
みんな待機モードみたいになっているが俺はそれどころでは無い。
「みんな聞いてくれ!実は俺の知り合いが連れて――――」
「皆さん!待たせてしまい申し訳ない。大変な事が分かった」
くそ!何て魔が悪い。
「ん?かつなんだその顔は。まさかまたあのような下劣な行為をしようとしていたのか!」
「してねえよ!勝手な事言うなよ」
俺が不満の声を言うもまるで信じていないのかこちらを再び睨みつける。
「どうだかな。ま、そんな事はどうでもいい。実はガルア様の妹様が行方不明になったのが分かった」
「妹様が!?だからこんなに騒がしかったのね」
何だ何だ?何の話をしているんだ。
「ガルア様は妹様を探しているため留守だったようだ。まさかこんな大変な事態になっているなんて。私はすぐにガルア様と合流するつもりだ。皆はどうする?」
話の内容から察するに重要な誰かが攫われたってことしか分からないな。
「私も探します。私達の王が困っているのなら力になりたいです」
「ありがとう。ミノルさんがいれば心強いです。他の方達はどうします?」
ミレイが残った仲間に呼びかける。
「僕も一緒に行きますよ」
「妾もじゃ!王に恩を売れば好きなだけ飯が食べられそうだしのう」
デビは完全に欲望のままに言ってるな。
「俺ももちろん行くけど先に頼みたい事があるんだけど」
「貴様は来るな!そして黙っていろ!」
そう強い口調で仲間に入るのを拒否られる。
「あのー確かにさっきのは悪かったけど、仲間外れにするのはちょっと違うんじゃないのか?」
俺もミレイの態度に苛立ってきた。
「あれがちょっと?貴様にとってはちょっとでも私にとってはとてつもなく大事なことだ!うう……誰にもあのような醜態を見せたことがないのに。どう責任を取るつもりだ!」
「知らねえよ!ていうかそもそもお前が窓の鍵なんて開けてあるのが行けないんだろ!」
俺はミレイを睨むとミレイも同じように俺を睨み返す。
「「ふん!」」
そしてお互い同時にそっぽを向く。
「何か見たことある光景ですね」
「それ私に言ってる?」
ミノルが恥ずかしそうに頬を掻く。
何かあったのか?
「とりあえず皆に言わなきゃいけない事がある。実はお前らが居なくなったあと街を歩いていたら今にもやられそうな娘がいて俺はその子を助けてしばらく行動をしてたんだよ。そして何やかんやあってその子が攫われちまったんだよ。だから一緒に助け――――て、おい!話を聞けよ!」
ムカつく女に連れてかれて俺達は城の外に出た。




